ドル円見通し FRB議長発言から乱高下、2月7日未明からの調整安は継続か
〇2/8未明パウエルFRB議長発言は市場の解釈分かれ、ドル安反応の後にドル高が若干ぶり返す動き
〇ドル円、議長発言後130.46へ一段安してから131.47へ反騰、その後131円近辺での揉み合いに落ち着く
〇米10年債利回り、前日比0.04%上昇の3.68%で1/6以来の高水準
〇2/8未明安値130.46を下値支持線、2/8未明反騰時高値131.47を上値抵抗線とする
〇131円以下での推移なら9日も安値試しへ向かいやすいとみる
〇131.47超えからは132円目指す上昇想定、131.30以上維持して推移中は9日も高値試しへ向かいやすい
【概況】
ドル円は2月3日夜の米雇用統計発表をきっかけとしたドル全面高により直前安値128.32円から131円台へ急伸し、2月6日朝には日銀新総裁に雨宮副総裁起用との報道から132.56円へ一段高、来週には日銀新総裁と副総裁人事の国会提出との続報とドル全面高継続により2月7日未明には132.90円へ上昇した。2月2日夜安値128.07円からは5円近い大上昇だったが、2月7日未明からは週明けの一段高を解消する修正安局面に入り、2月8日未明のパウエルFRB議長発言に先行して131円台序盤へ続落していた。
2月8日未明のパウエルFRB議長発言は必要ならより多くの利上げが必要というタカ派的な内容とともに2023年にインフレは顕著に低下して2024年には2%近辺となる見通しを示すハト派的な内容もあり、株式市場は強弱感が入り交じって乱高下してから上昇、米長期債利回りはいったん急低下してからプラス圏へ反騰、為替市場はいったんドル安反応の後にドル高が若干ぶり返す動きとなるなどまとまりに欠けたが、ドル円は議長発言が伝わって130.46円へ一段安してから131.47円へ反騰、その後は131円近辺での揉み合いに落ち着いた。
【パウエルFRB議長発言は市場の解釈分かれる】
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は2月8日未明のワシントンにおける経済クラブ会合でのインタビューに答え、先週末の1月米雇用統計で予想を大幅に超える就業者増加と失業率改善が見られたことについては「誰もが予想しているよりも強かった」とし、「強い労働市場を損なわずにインフレが低下し始めているのは良いことだ」との認識を示した。またインフレ低下のプロセスには相当な時間がかかりスムーズではないとし、当面は「利上げ継続が適切」、「経済指標次第では12月時点の予想を上回る利上げも検討される」と述べた。これについては年内に利上げ状態の維持が終了して利下げ再開へ向かうとの楽観論には水が差された印象だ。しかしインフレ見通しについては「2023年に大きく低下し、2024年にはFRBの目標とする2%に近づく」との認識を示したため、インフレ抑制が着実に進んでゆくことにより、米雇用統計をきっかけに浮上していた利上げペースが再び加速する可能性については過剰な心配と市場は受け止めた。
米FRBは2月2日未明のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げペースを12月の0.50%から0.25%へと減速させ、パウエル議長はあと2回の利上げを検討しているとしていたが、2月8日未明の議長発言はFOMC後の会見内容と大きく異なるものではないと市場は受け止めた。
議長発言に先立ってミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、メディアのインタビューに答えて「インフレ抑制のためにまだやるべきことがある」「政策金利を年5.25〜5.50%まで引き上げる可能性がある」との見通しを語っている。同総裁は1月の雇用統計が強かったことについては「労働市場においてこれまでの金融引き締めがそれほど影響していないことを示している」「政策金利のピーク想定を低下させるようなものは見当たらない」とし、ややタカ派的な発言を行っていた。
【米10年債利回りは反落後に上昇、ダウは乱高下から上昇】
2月7日の米長期債利回りはパウエル米FRB議長発言の解釈を巡って乱高下したが、終盤は上昇した。
指標の10年債利回りは前日比0.04%上昇の3.68%となったが、議長発言が伝わり始めた当初は3.60%へ低下し、その後の上昇でプラス圏に持ち直した。2月3日に前日比0.12%上昇、6日に0.11%上昇と続伸したところからさらに伸ばして1月6日以来の高水準とした。
30年債利回りは0.03%上昇の3.71%で2月2日に3.50%まで低下したところからの切り返しを継続している。利上げに敏感な2年債利回りは前日比変わらずの4.47%で終了したが、一時は4.40%まで低下してから反騰しており、2月3日の0.18%上昇、6日の0.18%上昇と大幅連騰した水準を維持した。
一方で米国株式市場は乱調な展開だったものの終盤に上昇した。NYダウは前日比265.67ドル高と上昇したが、400ドルを超える乱高下から切り返しており安値からは500ドルを超える上昇だった。ナスダック総合指数は226.34ポイント高だった。
米長期債利回りは利上げ回数が増える可能性や利上げ継続時期が年末よりも前倒しされる可能性が低下したとして上昇した印象だが、株式市場は利上げペースが再び加速することはなくインフレも落ち着いてゆくことへの楽観が優勢だったようだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は2月3日夜の急伸から2月7日未明へ大幅続伸したが、急騰一巡で修正局面に入っている。2月2日夜安値を基準とすれば安値形成期は9日夜にかけて想定されるので2月8日未明安値で目先の底をつけた可能性があるが、2月8日未明に一段安してからいったん戻して再び失速気味のため、強気転換には2月8日未明の反騰時高値(131.47円)を超える必要があると思われる。2月8日未明反騰時の高値を超えないうちは9日夜にかけて一段安余地ありとし、8日未明の反騰時高値を超えるところからは上昇再開とみて13日にかけての上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では2月7日夜に遅行スパンが悪化、8日未明安値で先行スパン下限を試したが転落はひとまず回避している。遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると注意する。遅行スパン好転からは反騰入りの可能性を優先するが、先行スパン上限が上値抵抗となりやすいと考える。
60分足の相対力指数は2月8日未明の下落時に20ポイント台へ低下し、その後も40ポイント近辺にとどまっているのでまだ一段安余地ありとするが、相場が安値を更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は反騰注意とし、50ポイント超えからは反騰入りとみて60ポイント台中盤への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月8日未明安値130.46円を下値支持線、2月8日未明反騰時の高値131.47円を上値抵抗線とする。
(2)131.47円を超えないうちは130.46円割れから130円前後への下落を想定する。130円割れは買い戻しも入りやすいとみるが、下げ足が速まる場合は129.80円から129.50円台へ下値目途を引き下げ、131円以下での推移なら9日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)131.47円超えからは反騰継続とみて132円を目指す上昇を想定する。132円手前は戻り売りも出やすいとみるが、131.47円を超えた後も131.30円以上を維持しての推移なら9日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
2/8(水)
14:00 (日) 1月 景気ウオッチャー現状判断 (12月 47.9、予想 48.2)
14:00 (日) 1月 景気ウオッチャー先行判断 (12月 47.0、予想 47.6)
23:20 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、WSJイベント参加
23:30 (米) クックFRB理事、討論会参加
24:00 (米) 12月 卸売売上高 前月比 (11月 -0.6%、予想 -0.3%)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:00 (米) バーFRB副議長、ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
26:30 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省10年債入札
27:45 (米) ウォラーFRB理事、講演
2/9(木)
EU首脳会議特別会合(2/10まで)
08:50 (日) 1月 マネーストックM2 前年同月比 (12月 2.9%)
18:45 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、議会証言
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 18.3万件、予想 19.3万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 165.5万人、予想 165.5万人)
27:00 (米) 財務省30年債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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