米GDP速報予想を上回り、米長期債利回り上昇で129円割れ回避から戻す
〇ドル円、1/26夜の米4QGDP速報値が市場予想を上回り、129円割れ回避、130.61まで持ち直す
〇2022年10-12月期GDP速報値は前期比2.9%増、7割占める個人消費は2.1%増、米経済指標は強め
〇米10年債利回り前日比+0.06%の3.50%、FOMC0.50%利上げ可能性ありとの見方も出て上昇に反映
〇1/26、IMFは日銀の緩和的な政策姿勢は適切との声明発表するも、軌道修正継続すべきと指摘
〇129.50を下値支持線、1/27未明高値130.61を上値抵抗線とする
〇129.50以上での推移中は上昇余地あり、130円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいか
〇129.50割れからは下向きとし、底割れからは128円台前半への下落を想定
【概況】
ドル円は1月18日の日銀金融政策現状維持発表からの乱高下が落ち着き1月18日夜安値127.55円からの持ち直しを続けてきたが、1月24日深夜に131.11円まで高値を切り上げたところで戻り一巡となり、26日午後には129.01円まで失速した。日銀による共通担保資金供給オペ拡充により日本10年債利回りが低下したことによるドル円への押し上げ効果が一巡したことで戻り売り優勢となった印象だが、26日夜の米10-12月期GDP速報値が年率換算前期比で2.9%増となり市場予想を上回ったこと等から1月31日-2月1日開催のFOMCにおける利上げ幅が0.50%にとどまる可能性もあるとして米長期債利回りが上昇したため、27日未明には130.61円まで持ち直した。ただし、27日の米個人消費支出デフレーターの発表とFOMCでの0.25%利上げへの減速感も継続しているために131円に迫る勢いには欠けた。
【IMFは日銀へ軌道修正継続すべきと指摘】
日銀は1月26日に1月17-18日開催の金融政策決定会合における「主な意見」を公表した。その中では「2%の物価目標の持続的達成に時間を要することを踏まえると現行政策の継続が必要」などの金融緩和継続姿勢が示され、資金供給オペレーションの拡充策については「安定的な金利形成に役立つ仕組み」「金利上昇を抑制すべき」と長期金利上昇を抑制しようとする姿勢が強調されていた。
黒田総裁在任中は金融緩和を維持するとの姿勢が全体の共通認識とされている印象だったが、1月26日に国際通貨基金(IMF)が対日経済審査終了に伴って発表した声明では「緩和的な政策姿勢は引き続き適切だ」としたものの「長期金利の変動をより柔軟にすることも検討すべき」とし、「長期金利の目標を柔軟化すれば将来の急激な金融政策の変更を回避するのに役立つ」と指摘した。具体的には許容変動幅のさらなる拡大、誘導目標0%程度からの引き上げ、誘導対象金利の短期化、金利から量的目標への移行などを挙げた。
IMFは加盟国に対して定期健診的なヒアリングと審査を行い金融財政政策への指摘を行うが、今回の指摘については概ね市場が考える金融緩和の出口戦略へむけたプロセスに近いものと思われる。因みに日本の成長率については2022年が1.4%(従来予想の1.7%から下方修正)、2023年を1.8%(同1.6%から上方修正)。2024年を0.9%とした。
【米経済指標は強め】
1月26日に米商務省が発表した2022年10-12月期GDP速報値は年率換算前期比2.9%増となり7-9月期の3.2%増から鈍化したが、2四半期連続でプラス成長見込みとなり市場予想の2.6%増を上回った。2022年通年では前年比2.1%増でパンデミック後の急回復を反映した2021年の5.9%増からは大幅減速したが、金融引き締めによる景気減速についてはソフトランディングへの期待感を強めた。GDPの凡そ7割を占める個人消費は前期比2.1%増、設備投資が0.7%増、輸出が1.3%減、住宅投資は26.7%減で3四半期連続の大幅低下となっており住宅市況の先行き不安を顕著とした。
米商務省による12月の耐久財受注は前月比5.6%増となり11月の1.7%減から回復、市場予想の2.5%増を大幅に上回った。設備投資の先行指標である航空機を除く非国防資本財受注は0.2%減で市場予想の0%を下回った。
米労働省による新規失業保険申請件数は1月21日までの週間で前週比6000件減の18万6000件となり、4週連続の改善で市場予想の20万5000件を下回った。失業保険受給者総数は1月14日までの週間で167万5000人となり、前週比で2万人増となり市場予想の165万9000人を上回った。
米商務省による12月の新築戸建て住宅販売件数(年換算)は前月比2.3%増の61万6000戸で市場予想の61万7000戸を下回ったが3か月連続のプラス、前年同月比は26.6%減だった。
【米10年債利回りは上昇、ダウは連騰】
1月26日の米長期債利回りは総じて上昇した。指標の10年債利回りは前日比0.06%上昇の3.50%。30年債利回りは0.04%上昇の3.64%、利上げに敏感な2年債利回りは0.04%上昇の4.18%だった。米GDP速報値等が強めの数字だったことで、FOMCの利上げ幅については0.25%が予想中心ではあるものの0.50%利上げの可能性もあるのではないかとの見方も出て利回り上昇に反映したようだが、27日の個人消費支出デフレーターを見極めたいというところ。
一方で米経済指標が良好だったとしてNYダウは前日比205.57ドル高と上昇して5営業日続伸、ナスダック総合指数も199.05ポイント高で前日までの小幅続落から切り返して昨年末以降の戻り高値を切り上げた。株式市場は金融引き締めによる景気減速がソフトランディングにとどまるとの楽観が優勢となっている印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は1月18日夜安値からの戻りが1月24日深夜高値131.11円で一巡して下落していたが、26日午後の129円割れ回避から持ち直している。26日午後安値を割り込まないうちは27日夜から31日深夜にかけての間への上昇余地ありとみるが、24日深夜高値に届かないうちは戻りが短命の可能性もあると注意し、129.50円割れからは26日午後安値129.01円試しとし、底割れからは新たな下落期入りとみて2月2日午後にかけての下落と127円台試しを想定する。
60分足の一目均衡表では1月26日午後からの反騰で遅行スパンが好転、先行スパンもいったん上抜いたが伸びを欠いたために先行スパンへ潜り込んでいる。遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落する場合は戻り一巡による下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は1月27日未明に70ポイントへ迫ってから50ポイント近辺へ失速している。50ポイントを割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし60ポイント超えからは再び70ポイントを試すとみるが、相場が高値を切り上げても指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られる場合は反落警戒とし、45ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、129.50円を下値支持線、27日未明高値130.61円を上値抵抗線とする。
(2)129.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、130.61円超えからは24日深夜高値131.11円試しとするが、131円台序盤では戻り売りにつかまりやすいとみる。ただし27日夜の米経済指標をきっかけに急伸する場合は1月18日午後高値131.57円試しとし、130円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)129.50円割れからは下向きとして26日午後安値129.01円試しとし、底割れからは128円台前半への下落を想定する。米経済指標次第では下げ足が速まる可能性もあると注意し、129.25円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
1/27(金)
休場、中国、台湾
22:30 (米) 12月 個人所得 前月比 (11月 0.4%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 個人消費支出(PCE) 前月比 (11月 0.1%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 12月 PCEデフレーター 前年同月比 (11月 5.5%、予想 5.0%)
22:30 (米) 12月 PCEコア・デフレーター 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (11月 4.7%、予想 4.4%)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前月比 (11月 -4.0%、予想 -1.0%)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前年同月比 (11月 -38.6%、予想 -35.4%)
24:00 (米) 1月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 64.6、予想 64.6)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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