ドル円見通し 1月6日夜からの急落一服だが132円を挟んだ揉み合いで上値重い
〇ドル円、9日昼安値131.29までの急落一服、132円台序盤中心で小動き
〇新発10年債利回り、日銀許容上限0.50%まで上昇、東京CPIは82年4月以来の上昇率
〇日銀異次元金融緩和政策への修正圧力となるか、次回会合は1/17-18を予定
〇パウエル議長講演にサプライズなし、市場反応は限定的に
〇金利水準の5%下回る下方修正、利上げ期間短縮への期待感強まる、12日米CPI上昇率に注目
〇米10年債利回り、下落一服で3.62%へ反発、NYダウは再度買い優勢に
〇9日安値割れ回避のうちは上昇余地ありとし、132.65超えからは133円前後への上昇を想定
〇9日安値割れからは129.50前後を試す下落期入りとして、130.50、130.00等を順次試す流れを想定
【概況】
ドル円は1月6日の米雇用統計における平均時給の伸びが予想以上に鈍化した事と、ISMサービス業景況指数の悪化による米長期債利回りの急低下を背景に6日夜高値134.77円から9日昼安値131.29円まで大幅下落に見舞われたが、その後は急落一服で132円を挟んだ揉み合いとなっている。
1月10日午前安値は131.37円にとどまり9日昼安値割れを回避したが、10日夜高値は132.47円にとどまって9日夜高値132.65円には届かず、その後は132円台序盤中心で小動きとなっている。昨晩のパウエル米FRB議長講演では特にサプライズ内容はなく、市場の関心は12日夜の米CPI上昇率に向いている。
【新発10年債利回り0.50%に張り付き、東京CPI40年ぶり上昇率】
本邦の新発10年債利回りは日銀が12月20日の政策修正により長期金利変動の許容上限とした0.50%に張り付いている。
総務省が10日朝に発表した東京都区部2022年12月消費者物価指数は生鮮食品を除くコアCPIは前年比4.0%上昇となり、11月の3.6%及び市場予想の3.8%を上回り、1982年4月以来最大の伸び率となった。生鮮食品を含む総合CPIも前年比4.0%上昇、生鮮食品とエネルギーを除いたコアCPIでは2.7%となった。内訳ではエネルギーが前年比26.0%、都市ガスが同36.9%、ガソリンが11月に0.8%低下したものの12月は1.8%へ再上昇し、電気代は前年比26.0%、携帯電話機が同22.1%となった。
インフレ進行は日銀の異次元金融緩和政策への修正圧力となるが、1月11日早朝には財務省の斎藤理財局長がテレビ番組で「海外の状況を見ても分かるように今の(低金利)状況がいつまでも続くわけではない」と述べるなど、政府・日銀が異次元金融緩和政策の出口へ向けた地ならしを始めている印象もある。日銀の次回金融政策決定会合は1月17-18日に開催される。
【パウエル議長講演にサプライズ無し】
パウエル米FRB議長は1月10日にスウェーデン中銀主催のシンポジウムで講演したが、「物価安定は健全な経済の根幹」、「金融引き締めによって景気を冷やしても物価安定を目指すべき」、「高インフレ時に物価安定を回復するには景気を減速させるための金利引き上げという短期的には不人気な措置も必要となる」等と述べたが、次回FOMC以降の利上げペースの減速程度や利上げ期間などについての言及はなくサプライズ感無しとして市場の反応は限定的だった。
FRBのボウマン理事は10日に「急激な金融引き締めを進めているのにもかかわらず失業率が低水準にとどまっている」、「大きな景気落ち込みをもたらさずにインフレ抑え込みに成功できる有望な兆し」と述べてソフトランディングへの期待を示したが、一方では「インフレはあまりに高すぎる、利上げを続ける」と述べ、今後の会合での利上げペースや政策金利のピーク水準については経済指標次第とした。
市場は最近のインフレ指標が低下していることを踏まえてFRBが見込んでいる政策金利水準が5%を超えている現状から5%を下回る水準へ下方修正される可能性や、利上げ期間の短縮への期待感を強めている。12日夜の米CPI上昇率が市場予想よりも鈍化するようだとこうした楽観的見方が優勢となってドル安円高へと進みやすくなるが、予想外に高止まりする場合は利上げ長期化問題が再燃してドル高がぶり返す可能性もあると注意したい。
【米長期債利回りは大幅下落一服で反発】
1月10日の米長期債利回りは総じて上昇した。指標の10年債利回りは米雇用統計後の低下により1月6日に前日比0.16%低下、週明けの1月9日も0.02%低下と続落していたが、10日は大幅低下一服で前日比0.08%上昇の3.62%と戻した。
30年債利回りは1月6日に前日比0.11%低下、9日に0.03%低下と続落していたが10日は前日比0.10%上昇の3.76%と戻した。2年債利回りも1月6日の前日比0.20%低下、9日の0.05%低下と続落していたところから10日は前日比0.04%上昇とやや戻した。
一方でNYダウは前日比186.45ドル高と上昇、1月6日に700.53ドル高と急伸して9日は急騰一服で112.96ドル安と反落していたところから再び買い優勢となった。ナスダック総合指数は前日比106.98ポイント高で1月6日から3連騰した。金融引き締め継続でも景気減速は限定的となるソフトランディングへの楽観が勝っているようだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は1月6日夜高値からの急落が1月9日昼安値で一服したものの、その後は132円を挟んだ揉み合いのため、9日昼安値131.29円を割り込まないうちは13日にかけての上昇余地ありとするが、9日昼安値を割り込む場合は1月6日夜高値からの下落が二段目に入るため、安値形成期として16日昼にかけての下落を想定する。
60分足の一目均衡表では1月9日昼安値後の下げ渋りで遅行スパンは好転しているものの悪化しやすい位置にあり、先行スパンへ潜り込んでいるものの再び転落しやすい位置にある。先行スパンからの転落を回避しているうちは先行スパン上限の133円に迫る可能性ありとみるが、先行スパンから転落する場合は下げ再開からの一段安を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は50ポイントを挟んだ揉み合いで推移している。60ポイント超えからは上昇が勢い付く可能性もあるが、50ポイント以下での推移中は下向きとし、40ポイント割れからは20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)1月9日昼安値131.29円を下値支持線、1月9日夜高値132.65円を上値抵抗線とする。
(2)1月9日昼安値割れ回避のうちは上昇余地ありとし、132.65円超えからは133円前後への上昇を想定する。133円前後は反落警戒とするが、9日昼安値割れ回避が続くうちは12日も高値試しへ向かう可能性が残るとみる。
(3)1月9日昼安値割れからは1月6日夜高値からの下げが二段目に入るため、1月3日昼過ぎ安値129.50円前後を試す下落期入りとして130.50円、130.00円等を順次試す流れを想定する。
【当面の主な予定】
1/11(水)
アジア金融フォーラム(AFF)、1/12まで
14:00 (日) 11月 景気先行指数CI速報値 (10月 98.6、予想 97.6)
14:00 (日) 11月 景気一致指数CI速報値 (10月 99.6、予想 99.1)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省10年債入札
1/12(木)
日銀支店長会議
06:45 (NZ) 11月 住宅建設許可件数 前月比 (10月 -10.7%)
08:50 (日) 11月 経常収支・季調前 (10月 -641億円、予想 4761億円)
08:50 (日) 11月 経常収支・季調済 (10月 -6093億円、予想 6575億円)
08:50 (日) 11月 貿易収支・国際収支ベース (10月 -1兆8754億円、予想 -1兆6470億円)
09:30 (豪) 11月 貿易収支 (10月 122.17億豪ドル、予想 113.00億豪ドル)
10:30 (中) 12月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (11月 1.6%、予想 1.8%)
10:30 (中) 12月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (11月 -1.3%、予想 -0.1%)
14:00 (日) 日銀地域経済報告(さくらリポート)
14:00 (日) 12月 景気ウオッチャー現状判断DI (11月 48.1、予想 47.8)
14:00 (日) 12月 景気ウオッチャー先行判断DI (11月 45.1、予想 45.1)
22:30 (米) 12月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (11月 0.1%、予想 0.0%)
22:30 (米) 12月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (11月 7.1%、予想 6.5%)
22:30 (米) 12月 CPIコア指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 CPIコア指数 前年同月比 (11月 6.0%、予想 5.7%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.4万件、予想 21.8万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 169.4万人)
25:30 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、イベント参加
26:40 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省30年債入札
28:00 (米) 12月 財政収支 (11月 -2485億ドル、予想 -700億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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