ドル円見通し 米雇用統計の平均時給低下とISM非製造業景況指数悪化によるドル安続く
〇ドル円、1/6夜の米雇用統計発表後ドル安反応、1/7早朝には131.98まで急落
〇1/9は昼に131.29まで下げた後一旦132.65まで戻すも、132円台維持できず1/10未明131.52まで反落
〇米雇用統計、就業者は増加するも平均時給が低下、ISM非製造業景況指数も悪化し市場はドル安反応
〇次回FOMCの利上げ幅は0.25%と0.50%の両方が選択肢
〇米長期債利回りは週末に大幅低下、週明けも続落、NYダウは大幅上昇後の反落、ナスダックは小幅続伸
〇131.29割れ回避のうちは132.20超えから上昇再開、132.65超えからは133円前後への上昇を想定する
〇131.29割れからは、129.50前後を試す下落期入りを想定する
【概況】
ドル円は1月3日に129.50円の安値をつけて昨年10月21日高値151.94円以降の最安値とした後は売られ過ぎへの警戒感から買い戻し優勢となり、1月6日夜の米雇用統計発表前には134.77円へ上昇、1月3日安値からの戻り幅を5.27円に拡大していた。しかし1月6日夜の米雇用統計では非農業部門就業者数が前月比22万3000人増と市場予想を上回ったもののインフレ指標である平均時給の前年同月比が4.6%と予想を大幅に下回ったことで米FRBの利上げ長期化問題に対する過度の警戒感が後退したとしてドル安反応となり、その後の米ISMによる12月非製造業景況指数の大幅な悪化からドル安が加速する展開、ドル円は1月7日早朝には131.98円まで急落した。米長期債利回りは大幅低下、NYダウは急伸、ユーロやポンド等が急伸してドル全面安の様相となった。
1月9日は昼に131.29円まで安値を切り下げた後、一旦132.65円まで戻したが132円台を維持できずに10日未明には131.52円まで反落しており、週末からの急落が一服したものの上値の重い展開となっている。ユーロやポンドは1月6日夜からの反騰継続でいずれも高値を切り上げ、米長期債利回りも週末からの連続低下となった。
【米雇用統計、就業者は堅調に増加だが平均時給が低下】
1月6日夜米労働省が発表した12月雇用統計では非農業部門就業者数が前月比22万3000人増となり、市場予想の20.0万人を上回ったものの、11月分は当初の26.3万人増から25.6万人増へと下方修正された。失業率は3.5%となり、市場予想の3.7%を下回り、11月分は当初の3.7%から3.6%へ下方修正された。
一方で、平均時給の伸び率は前月比で0.3%となり市場予想の0.4%を下回り、11月分も当初の0.6%から0.4%へ下方修正され、前年同月比は4.6%で予想の5.0%を大幅に下回り11月分も当初の5.1%から4.8%へと下方修正された。市場は平均時給の伸びが鈍化したことに注目してドル安反応となった。
12月のISM非製造業景況指数は49.6となり、11月の56.5から6.9ポイントの大幅低下で市場予想の55.0を大幅に下回った。好不況の目安である50を割り込んだのはパンデミック発生直後の2020年5月以来2年7か月振りで、内訳では事業活動が11月から10.0ポイント低下の54.7、新規受注が10.8ポイント低下の45.2、雇用が1.7ポイント低下の49.8となった。これらはFRBによる今後の大幅利上げ継続を躊躇させるものと市場は受け止め、雇用統計後の米長期債利回り大幅低下とドル安をさらに助長した。
【次回FOMCの利上げ幅は0.25%か0.50%か?】
雇用の増加は堅調な水準を維持しつつ、CPIの鈍化と共に賃金インフレ指標となる平均時給が前月比及び前年同月比で予想以上に低下したことは、インフレがピークアウトしつつも金融引き締めによる景気への影響も深刻ではなくソフトランディングしうる流れであり、米FRBによる今年2月や3月の利上げ幅は通常ペースの0.25%に落ち着くのではないかとの見方を強める内容だった。
米FOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)は1月31-2月1日、3月21-22日に開催されるが、1月12日の米12月CPIが予想通りに鈍化すれば当面する2会合の利上げ幅も通常ペースの0.25%利上げに落ち着くのではないかと思われる。
サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は1月9日に「次回FOMCでの利上げ幅については0.25%と0.50%の両方が選択肢」とし、政策金利のピーク水準については「5%程度に引き上げる必要がある」とした上で「5%をどれくらい上回るべきかはまだはっきりしない、今後の指標で協議される」とした。また「米国民は既に高インフレで痛みを受けているが、景気減速で失業が増えれば痛みになる」「インフレ抑制をできるだけ穏やかに行うためにバランスを取って進めなければならない」として景気への配慮も示した。
【米長期債利回りは週末に大幅低下、週明けも続落】
米雇用統計における平均時給の伸び鈍化とISMサービス業景況指数の悪化を受けて米長期債利回りは総じて大幅低下となり、指標の10年債利回りは1月6日に前日比0.16%低下の3.56%、9日も前日比0.02%低下の3.54%と続落した。
30年債利回りは1月6日に0.11%低下の3.69%、9日に0.03%低下の3.66%となり、2年債利回りは1月6日に0.20%低下の4.26%、9日は0.05%低下の4.21%となった。
10年債利回りは昨年10月21日に4.34%へ上昇して2020年以降の最高値を更新したところから12月7日に3.40%まで低下、その後の持ち直しで12月30日には3.82%まで戻したが、年明けから再び低下に入り12月7日以降の戻り幅の過半を解消した。独長期債利回りも年初から大幅低下しているが、米FRBの利上げペース減速がECBに先行するとしてユーロは急伸しており、昨年までの歴史的なドル指数の大上昇が一巡してのドル安局面入りという印象を強めているようだ。
一方でNYダウは1月6日に前日比700.53ドル高の大幅上昇、9日は急騰一服で前日比112.96ドル安と反落したが、ナスダック総合指数は1月6日に前日比264.05ポイント高の大幅上昇となり、9日も66.36ポイント高と小幅ながら続伸している。ドル安による押し上げと金融引き締めによる景気への悪影響もソフトランディングが可能な範囲として楽観的な受け止め方となっているようだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は1月3日午前安値を起点とした上昇期入りにより戻りを試しているところとして6日にかけての上昇を想定してきた。1月6日午前時点では132.80円割れからは下落期入りとしたが、米雇用統計をきっかけとして急落し、ISMサービス業景況指数悪化で132.80円を割り込んでから9日昼には131.29円まで続落したが、9日夜には132.65円まで1円を超える反発が入った。このため、1月6日夜高値で戻り一巡として下落したが、1月3日安値から4日目となる1月9日昼安値で目先の底を付けて持ち直しを試しているところと思われる。
1月9日昼安値131.29円を割り込まない内は11日にかけての上昇余地ありとするが、9日昼安値を割り込む場合は1月6日夜高値からの下落が二段目に入るので16日昼にかけての下落を想定する。
60分足の一目均衡表では1月6日夜の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。1月9日昼安値からの下げ渋りで遅行スパンは実線と交錯しやすい位置にあるが、先行スパンを上抜き返せないうちは一段安警戒とし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は1月6日夜の急落で30ポイントを割り込んでから戻したものの50ポイント台を維持できずにいるため、50ポイント台回復からは上昇再開余地ありとするが、50ポイント以下での推移中は下向きとし、40ポイント割れからは20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月9日昼安値131.29円を下値支持線、9日夜高値132.65円を上値抵抗線とする。
(2)1月9日昼安値割れ回避のうちは132.20円超えから上昇再開とし、132.65円超えからは133円前後への上昇を想定する。133円前後は反落警戒とするが、9日昼安値割れ回避が続くうちは11日も高値試しへ向かう可能性が残るとみる。
(3)1月9日昼安値割れからは1月6日夜高値からの下げが二段目に入るため、1月3日安値129.50円前後を試す下落期入りを想定して、130.50円や130.00円等を順次試す下落を見込む。
【当面の主な予定】
1/10(火)
スウェーデン中銀主催シンポジウム (米FRB議長、英中銀総裁、日銀総裁ら参加)
18:30 (日) 黒田日銀総裁、シンポジウム参加
23:00 (米)パウエルFRB議長、講演
24:00 (米) 11月 卸売売上高 前月比 (10月 0.4%)
27:00 (米) 財務省3年債入札
1/11(水)
アジア金融フォーラム(AFF)、1/12まで
09:30 (豪) 11月 小売売上高 前月比 (10月 -0.2%、予想 0.7%)
09:30 (豪) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 6.9%、予想 7.3%)
14:00 (日) 11月 景気先行指数CI速報値 (10月 98.6、予想 97.6)
14:00 (日) 11月 景気一致指数CI速報値 (10月 99.6、予想 99.1)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省10年債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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