ドル円見通し 日銀ショック、半日で7円近い暴落、材料消化には時間が必要
〇ドル円、日銀政策変更で137.47から133.09へ急落、一旦戻すも21日未明130.56まで7円規模の暴落に
〇日銀、長期金利許容変動幅を0.25%から0.5%に拡大、事実上の利上げに市場は円買い反応
〇黒田総裁、今回の政策修正は利上げではないとし、大規模緩和継続を強調、政府と日銀の共同声明は維持
〇米10年債利回り、本邦10年債利回り上昇を受け3連騰、NYダウは下げ一服で5営業日ぶりの反発
〇132.00から132.50にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる
〇131.50割れからは下げ再開とみて、130.56試しとする
【概況】
ドル円は12月20日昼過ぎの日銀金融政策決定会合声明発表をきっかけに暴落した。日銀は長期金利を0%程度に誘導するための許容変動幅を従来のプラスマイナス0.25%程度から0.50%程度へ拡大したが、大きな政策変更はないだろうとみていた市場にとっては事実上の利上げ効果を伴う政策変更として強烈なサプライズとなり、声明発表からの小一時間で発表前高値137.47円から133.09円へ暴落、夕刻には131.99円へ続落、夜に132.87円まで戻したところから21日未明に130.56円へ一段安となり、発表前高値からの下げ幅は6.91円に拡大、凡そ7円規模となる暴落に見舞われた。21日早朝にかけては暴落一服感で132円到達まで買い戻されているが直前の暴落規模に対してはわずかな反発という印象だ。
11月10日に米10月消費者物価上昇率が予想以上に鈍化したことを「逆CPIショック」としてドル円が急落した時は当日高値146.59円から安値141.19円まで5円を超える急落で日足の前日比は5.30円の下落だったが、さらに11月15日安値137.67円まで続落している。12月20日の前日比は5.26円で11月10日に近いが、当日の高安は11月10日を上回っている。12月2日以降のジグザグ型の持ち合いからの転落であり、130円の大台を維持できるかどうか、まだ試されている最中と思われる。
【日銀ショック、長期金利変動許容基準引き上げ】
日銀は12月20日昼過ぎに金融政策決定会合の声明を発表、長期金利をゼロ%程度に誘導するための許容変動幅を従来までのプラスマイナス0.25%程度から0.50%程度へ拡大した。許容変動幅の変更は2021年3月にそれまでの0.20%程度としてきたところから0.25%へ拡大して以来であり、市場は事実上の利上げと受け止めた。
日銀は短期金利をマイナス0.1%とし、長期金利をゼロ%に誘導する長短金利操作(YCC=イールドカーブコントロール)の大枠は維持するとし、毎営業日の0.50%利回りでの「指値オペ」による国債無制限買い入れを行う。国債買い入れ規模についはこれまでの月間7.3兆円から9兆円程度へ増額するとした。20日午後には固定利回りでの無制限購入とする指し値オペを中期債と超長期債に通告しており、従来の10年債だけではなく2年債、5年債、20年債等も指値オペの対象とする姿勢も示した。
2%の物価安定目標については政府と日銀の共同声明を維持するとし、そのための大規模金融緩和の枠組みを継続すると強調した。
黒田総裁は午後の会見で今回の変動幅拡大については「利上げではない」「さらなる変動幅拡大は必要ない」とし、「金融政策の点検と出口戦略の検討は時期尚早」と述べた。
政府と日銀の共同声明による2%物価目標に関する変更の可能性を一部通信社が報じていたことで、今回の日銀政策では若干のスタンス変更があるのではないかとの見方があったが、許容変動幅拡大はサプライズであり、市場は予想外の「事実上の利上げ」に対してショック型の暴落で反応したといえる。またインフレ進行の実情と主要国の利上げ政策と乖離する金融緩和の継続についても出口が近づいてきたのではないかとの受け止め方となり、黒田総裁在任中に今回以上の変更はないとしても次の総裁からは金融政策の変更となる可能性も否定できなくなったのではないかと思われる。しかし政策金利の利上げまで踏み込むにはインフレのさらなる進行とそれに見合った賃金の上昇が必要であり、不況感を伴いながら賃金の上がらない現状では利上げは深刻な不況を招きかねないために困難なことだと思われる。
【米10年債利回りは先週末から3連騰、NYダウは5営業日ぶり反発】
12月20日の米10年債利回りは前日比0.10%上昇の3.69%となり、一時は3.70%をつけて12月16日から3連騰となった。米FRBが利上げペースを減速しても利上げそのものはまだ続き利上げ状態も長期化するとの見方から反騰入りしているが、20日は日銀ショックによる日本10年債利回り上昇とドル円の暴落が米長期債利回り上昇とドル安のトリガーとなった印象もある。
30年債利回りは0.10%上昇の3.74%、2年債利回りは変わらずの4.26%だった。
一方でNYダウは5営業日ぶりの反発で前日比92.20ドル高と上昇、ナスダックも前日比1.08ポイント高とわずかながら5営業日ぶり反発となった。米国の利上げ期間長期化に伴う景気後退懸念で前日まで4営業日の続落だったところで下げ一服という印象だ。週末の米個人消費支出デフレーターの発表とクリスマス休暇を意識したポジション調整の範囲と思われる。
上海総合株価指数は12月19日の1.9%安に続いて1.07%安と続落、日銀ショックで日経平均は2.46%安だった。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は12月14日夜安値134.56円から16日未明高値138.17円まで戻したところからの下落であり、12月21日未明安値で目先の底をつけていったん戻す可能性があるとみるが、大暴落直後のためまだ日銀ショックを消化しきれていないとすればやや大きなリバウンドを入れても戻り売りから一段安しかねない状況と思われる。133円に届かない程度の戻りから安値を更新する場合は週末にかけて安値試しが続きやすくなるのではないかとみる。
60分足の一目均衡表では12月20日昼からの大暴落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。安値更新を回避して推移すれば遅行スパンも好転しやすくなるが、先行スパンに届かないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とし、好転できずに安値更新へ進む場合は下げ足が速まる可能性があるとみる。
60分足の相対力指数は12月20日午後の急落から21日未明への一段安に際しては指数のボトムが切り上がっているので40ポイント台後半へ戻す可能性があると思われるが、50ポイントを超えないうちは30ポイント割れから下げ再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、131.50円を下値支持線、132.50円を上値抵抗線とする。
(2)132.00円から132.50円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。132.50円超えからは133円試しとするがその後の下落再開に注意する。
(3)131.50円割れからは下げ再開とみて21日未明安値130.56円試しとし、底割れからは130.00円、129.50円、129.00円を順次試す下落を想定する。
【当面の主な予定】
12/21(水)
16:00 (独) 1月 GFK消費者信頼感 (12月 -40.2、予想 -38.0)
22:30 (米) 7-9月期 経常収支 (4-6月 -2511億ドル、予想 -2250億ドル)
24:00 (米) 11月 中古住宅販売件数・年率換算 (10月 443万件、予想 420万件)
24:00 (米) 11月 中古住宅販売件数 前月比 (10月 -5.9%、予想 -5.2%)
24:00 (米) 12月 コンファレンスボード消費者信頼感指数 (11月 100.2、予想 101.0)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省20年債入札
12/22(木)
14:00 (日) 10月 景気先行指数CI改定値 (速報 99.0)
14:00 (日) 10月 景気一致指数CI改定値 (速報 99.9)
16:00 (英) 7-9月期 経常収支 (4-6月 -338億ポンド、予想 -201億ポンド)
16:00 (英) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 2.4%、予想 2.4%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP確定値 前期比年率 (改定値 2.9%、予想 2.9%)
22:30 (米) 7-9月期 個人消費支出(PCE)確定値 前期比年率 (改定値 1.7%、予想 1.7%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE確定値 前期比年率 (改定値 4.6%、予想 4.6%)
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 21.1万件、予想 22.5万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 167.1万人、予想 168.5万人)
24:00 (米) 11月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (10月 -0.8%、予想 -0.4%)
27:00 (米) 財務省5年インフレ指数連動債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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