ドル円見通し 12月13日の米CPIと15日未明のFOMCで年末年始の方向を決める局面(週報12月第二週)

ドル円は12月2日安値133.60円から12月7日高値137.85円まで4.25円の戻りを入れたがその後はやや軟調な推移となっている。

ドル円見通し 12月13日の米CPIと15日未明のFOMCで年末年始の方向を決める局面(週報12月第二週)

12月13日の米CPIと15日未明のFOMCで年末年始の方向を決める局面

〇先週のドル円、135円台中盤へじり安の後、米PPIの伸びにドル高が若干ぶり返した印象
〇先週末の米PPI上昇率予想を上回りドル高反応となるもミシガン大消費者信頼の期待インフレ低下で戻す
〇米10年債利回り12/7に3.40%まで低下したところから3.57%まで反騰して越週
〇今週は米CPI、FOMCを見ながら米長期金利が上昇基調に転じるか一段と低下するかが試される
〇12/9夜安値135.59を上回るうちは12/7夕高値137.85試し、高値更新からは139円台を目指す上昇想定
〇135.59割れからは下向き、12/2夕安値133.60を再び試す下落を想定、割れれば130円前後を試すか

【概況】

ドル円は10月21日高値151.94円から12月2日安値133.60円まで18.34円の大幅下落となったところで下げ一服となり、12月7日夕高値137.85円まで4.25円の戻りが入った。その後はややジリ安の推移で12月9日夜安値135.59円まで2.26円の反落となり、戻り幅の半値を削ったものの米PPI上昇率が予想を上回ったことで9日深夜に136.89円へ上昇、136円台を維持して週を終えた。
10月21日からの大幅下落は政府・日銀による二度目の大規模市場介入による急落で開始し、11月10日の米CPI上昇率が予想を下回ったことによる「逆CPIショック」で直前の三角持ち合い型の下げ渋りから一段安となり、11月24日未明の米FOMC議事録で利上げペース減速感が強まったこと、12月1日未明のパウエル米FRB議長講演の内容も市場予想と比較してハト派的なものに留まったことでさらに一段安へと進んできた。

12月2日からの反騰は12月2日夜の米雇用統計内容が予想以上に堅調だったこと、12月5日夜の米ISMサービス業景況指数などの経済指標が総じて予想を上回ったことにより利上げペースがさほど鈍化せずに利上げ期間の長期化と利上げピーク水準の引き上げへの懸念が再認識されたことによるドル高が背景であった。そのドル高も一服したところでドル円はややジリ安の推移となり135円台中盤へ下げていたのだが、12月9日夜の米PPIも予想外に前月から伸びたことでドル高が若干ぶり返しした印象だ。

【米PPI上昇率は予想を上回る】

12月9日に米労働省が発表した11月PPI(生産者物価指数)上昇率は前月比0.3%で市場予想の0.2%をやや上回った。10月は速報値の0.2%から0.3%へ上方修正されたため10月と同じ上昇率だったものの高止まりの様相を示した。前年同月比は7.4%となり10月の8.1%(速報値の8.0%から上方修正)を大きく下回り、2021年5月以来の低水準となったものの市場予想の7.2%を上回った。
コア指数の上昇率は前月比0.4%で10月の0.1%(速報の0.0%から上方修正)を上回り、市場予想の0.2%も上回った。また前年同期比は6.2%で10月の6.8%(速報の6.7%から上方修正)を下回ったものの市場予想の5.9%を上回った。

その後に発表された12月のミシガン大消費者信頼感指数は59.1となり、11月の56.8から上昇して市場予想の56.9も上回ったが、1年先の期待インフレ率が11月の4.9%から4.6%へ低下、5年先の期待インフレ率は11月の4.9%から4.6%へ低下した。
米PPI上昇率が予想を上回ったことは米FRBの利上げペースをさほど鈍化させず利上げ時期の長期化を懸念させるものと市場は受け止めてドル高反応となりNYダウが下落、長期債利回りは上昇したが、ミシガン大の1年先期待インフレ率が低下したことでドル高の勢いがやや削がれたためにドル円の反騰も一時的なものに留まった。

【米10年債利回りが連騰で上昇】

12月9日の米長期債利回りは総じて上昇した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.10%上昇の3.59%となった。12月7日には3.40%まで低下して10月21日の4.34%以降の最低としたが、12月8日の前日比0.07%上昇からの連騰で持ち直しを図っている。
30年債利回りは0.14%上昇の3.57%で終了、一時は3.40%を付けて10月24日の4.43%以降の最低としたところからの反騰で12月7日の0.12%低下を解消する反発となった。
利上げ動向により敏感な2年債利回りは前日比0.04%上昇の4.35%で終了、一時は4.25%まで低下したところから切り返しており、11月4日の4.88%以降の最低値となった12月2日の4.18%以降は下げ渋っている。

長期債利回りは10月後半ないし11月序盤からの大幅低下に一服感が見られていることはドル円の下支えとなっているが、長期債利回りが下降トレンドから脱却したとまでは言えず、今週の米CPIからFOMCを見ながら米長期債利回りが上昇基調に転じてドル円の上昇再開となるか、米長期債利回りが一段と低下してドル円も一段安へと進むのか試されることになるのだろうと思われる。
一方、12月9日のNYダウは前日比305.02ドル安、ナスダック総合指数は同77.38ポイント安と下落しており、FRBによる利上げ長期化への懸念が10月後半からの戻りを一巡させて圧迫感を強め始めている印象だ。NYダウは12月1日に8月16日高値を超えるところまで反騰した後の反落だが、ナスダック総合指数は10月13日安値から12月1日への戻りでは8月16日からの下落幅の半値戻しに届かずに失速しており、利上げ長期化による圧迫感がダウと比較して重い状況にあるようだ。

【米11月CPIとFOMC、英中銀とECBの利上げへと続く重要イベント週】

今週は12月13日夜に米11月CPIの発表がある。市場の事前予想では全体の上昇率は前月比で0.3%と見込まれて10月の0.4%から鈍化し、前年同月比は10月の7.7%から7.3%へと鈍化すると見込まれている。コア指数の上昇率も前月比で10月と変わらずに0.3%、前年同月比は10月の6.3%から6.1%への鈍化が見込まれている。
10月のCPI上昇率は全体及びコア指数の前月比と前年同月比がいずれも市場予想を下回る鈍化となったことで「逆CPIショック」と言われるドル安のトリガーとなったため、今回も二度目の「逆CPIショック」的なドル安のきっかけとなるのか、12月9日の米PPIが予想を上回ったことを踏まえて予想以上の上昇率となる「CPIショック」でのドル高発生のきっかけとなるのか注目される。

12月13-14日に開催のFOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)は15日未明に声明発表、議長会見が予定されている。市場は0.50%利上げで衆目が一致しているところだが、年明け以降の利上げペースが早々に通常レベルの0.25%利上げに落ち着いて先行きの利上げ終息が見通せるのか、利上げ期間の長期化と利上げピーク水準の引き上げによる景気への悪影響が再認識されるのか注目となる。

バイデン政権にとってはインフレ抑制が最重要であり、パウエル米FRB議長会見が12月1日未明の講演時におけるややハト派的なものと同様になるのか従来の「景気よりもインフレ抑制」との姿勢を強調するのか注目される。12月15日の英中銀及びECBの利上げと今後の利上げペースについても米FOMCとの比較によりドルの強弱を大きく左右する可能性がある。

【当面のテクニカルポイント】

【当面のテクニカルポイント】

ドル円は12月2日安値133.60円から12月7日高値137.85円まで4.25円の戻りを入れたがその後はやや軟調な推移となっている。11月15日安値137.67円から11月21日高値142.25円まで4.58円の反発を入れたところから一段安した経緯もあり、現状までの戻りでは10月21日以降の下落基調から抜け出したとは言えず、下げ渋り程度のとどまった動きの範囲といえる。
10月21日高値からの下落が一巡したとして反騰入りするには、まず、12月7日高値を上抜いて戻り高値切り上げ型に入り、12月2日安値から5円を超える反騰として11月21日へ戻した時のレベルを超える必要がある。
日足チャートでは26日移動平均及び一目均衡表の26日基準線が下落トレンドの抵抗線となるため、26日移動平均(現在139.74円)及び26日基準線(現在141.00円)を超える規模まで戻すことが中勢レベルの強気転換目安となるのではないかと考える。
12月2日安値を割り込む場合、チャート上の下値支持線となる過去の安値は8月2日安値130.39円、5月24日安値126.35円へ順次切り下がる可能性があるが、2021年1月底から今年10月21日天井までの上昇幅に対する3分の1押しラインが135.48円、半値押しラインが127.25円にある。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月9日夜安値135.59円を下値支持線、12月7日夕高値137.85円を上値抵抗線とする。
(2)135.59円を上回るうちは12月7日夕高値試しとし、高値更新からは139円台を目指す上昇を想定する。米CPIやFOMCをきっかけとしてドル全面高となる場合は140円台回復を目指す上昇を想定する。
(3)135.59円割れからは下向きとして12月2日夕安値133.60円を再び試す下落を想定する。直前安値から1.50円を超える上昇なら反騰入りの可能性を優先して12月7日高値試し、さらに139円、140円を順次試してゆく上昇期入りと考えるが、FOMCを通過し安値試しが続く場合は12月2日安値割れから130円前後試しへ向かう流れと考える。

【当面の主な予定】

12/12(月)
休場、タイ
08:50 (日) 11月 国内企業物価指数 前月比 10月 0.6%、予想 0.5%)
08:50 (日) 11月 国内企業物価指数 前年同月比 (10月 9.1%、予想 8.8%)
08:50 (日) 10-12月期 大企業全産業業況判断指数(BSI) (7-9月 0.4)
08:50 (日) 10-12月期 大企業製造業業況判断指数(BSI) (7-9月 1.7)
16:00 (英) 10月 月次GDP 前月比 (9月 -0.6%、予想 0.4%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 0.2%、予想 -0.1%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 -3.1%、予想 -2.6%)
16:00 (英) 10月 貿易収支・物品 (9月 -156.56億ポンド、予想 -153.00億ポンド)
16:00 (英) 10月 貿易収支・全体 (9月 -31.35億ポンド、予想 -35.00億ポンド)
25:30 (米) 財務省3年債
27:00 (米) 財務省10年債入札
28:00 (米) 11月 月次財政収支 (10月 -878億ドル、予想 -2480億ドル)

12/13(火)
ウクライナ支援国際会議(パリ)、米アフリカ首脳会議(ワシントン、12月15日まで)
米連邦公開市場委員会(FOMC)初日
08:30 (豪) 12月 ウエストパック消費者信頼感指数 (11月 78.0)
09:30 (豪) 11月 NAB企業景況感指数 (10月 22)
16:00 (独) 11月 消費者物価指数(CPI)改定値 前月比 (速報 -0.5%、予想 -0.5%)
16:00 (独) 11月 消費者物価指数(CPI)改定値 前年同月比 (速報 10.0%、予想 10.0%)
16:00 (英) 10月 失業率・ILO方式 (9月 3.6%、予想 3.7%)
19:00 (独) 12月 ZEW景況感  (9月 -36.7、予想 -26.7)
19:00 (欧) 12月 ZEW景況感 (9月 -38.7)
19:30 (英) 英中銀、金融安定報告書

20:00 (英) ベイリー英中銀総裁、記者会見
22:30 (米) 11月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (10月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (10月 7.7%、予想 7.3%)
22:30 (米) 11月 CPIコア指数 前月比 (10月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 CPIコア指数 前年同月比 (10月 6.3%、予想 6.1%)
27:00 (米) 財務省30年債入札

12/14(水)
EU・ASEAN首脳会議
英中銀金融政策委員会(MPC)初日
06:45 (NZ) 7-9月期 経常収支 (4-6月 -52.24億NZドル、予想 -102.00億NZドル)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (7-9月 8、予想 7)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業製造業先行判断 (7-9月 9、予想 7)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (7-9月 14、予想 16)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業非製造業先行判断 (7-9月 11、予想 16)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (7-9月 21.5%、予想 20.9%)
08:50 (日) 10月 機械受注 前年同月比 (9月 2.9%、予想 1.2%)
13:30 (日) 10月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 3.7%)
13:30 (日) 10月 設備稼働率 前月比 (9月 -0.4%)

16:00 (英) 11月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (10月 2.0%、予想 0.6%)
16:00 (英) 11月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (10月 11.1%、予想 10.9%)
16:00 (英) 11月 CPIコア指数 前年同月比 (10月 6.5%、予想 6.5%)
16:00 (英) 11月 小売物価指数(RPI) 前年同月比 (10月 14.2%、予想 13.9%)
19:00 (欧) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 0.9%、予想 -1.5%)
19:00 (欧) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 4.9%、予想 3.5%)
22:30 (米) 11月 輸入物価指数 前月比 (10月 -0.2%、予想 -0.5%)
22:30 (米) 11月 輸出物価指数 前月比 (10月 -0.3%、予想 -0.5%)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 3.75-4.00%、予想 4.25-4.50%)
28:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、記者会見

12/15(木)
EU首脳会議(ブリュッセル、12月16日まで)
06:45 (NZ) 7-9月期 GDP 前期比 (4-6月 1.7%、予想 0.9%)
06:45 (NZ) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4-6月 0.4%、予想 5.4%)
08:50 (日) 11月 通関貿易収支・季調前 (10月 -2兆1623億円、予想 -1兆6803億円)
08:50 (日) 11月 通関貿易収支・季調済 (10月 -2兆2992億円、予想 -1兆2182億円)
09:30 (豪) 11月 新規雇用者数 (10月 3.22万人、予想 1.70万人)
09:30 (豪) 11月 失業率 (10月 3.4%、予想 3.4%)
11:00 (中) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 -0.5%、予想 -3.9%)
11:00 (中) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 5.0%、予想 3.7%)

13:30 (日) 10月 第三次産業活動指数 前月比 (9月 -0.4%、予想 0.7%)
16:00 (独) 11月 卸売物価指数(WPI) 前月比 (10月 -0.6%)
21:00 (英) 英中銀(BOE) 政策金利 (現行 3.00%、予想 3.50%)
22:15 (欧) 欧州中銀(ECB) 政策金利 (現行 2.00%、予想 2.50%)
22:30 (米) 12月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (11月 4.5、予想 -0.3)
22:30 (米) 11月 小売売上高 前月比 (10月 1.3%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 11月 小売売上高・除自動車 前月比 (10月 1.3%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (11月 -19.4、予想 -10.0)
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 23.0万件、予想 23.1万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 167.1万人、予想 165.0万人)
22:45 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、記者会見
23:15 (米) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -0.1%、予想 0.1%)
23:15 (米) 11月 設備稼働率 (10月 79.9%、予想 79.8%)
24:00 (米) 10月 企業在庫 前月比 (9月 0.4%、予想 0.4%)

12/16(金)
休場、南ア(和解の日)
09:01 (英) 12月 GFK消費者信頼感 (11月 -44、予想 -43)
16:00 (英) 11月 小売売上高 前月比 (10月 0.6%)
16:00 (英) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 -6.1%)
16:00 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前月比 (10月 0.3%)
16:00 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (10月 -6.7%)
17:30 (独) 12月 製造業PMI速報値 (11月 46.2、予想 46.5)
17:30 (独) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 46.1、予想 46.4)

18:00 (欧) 12月 製造業購PMI速報値 (11月 47.1、予想 47.1)
18:00 (欧) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 48.5、予想 48.5)
18:30 (英) 12月 製造業PMI速報値 (11月 46.5、予想 46.5)
18:30 (英) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 48.8、予想 48.5)
19:00 (欧) 10月 貿易収支・季調済 (9月 -377億ユーロ)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数(HICP)改定値 前年同月比 (速報 10.0%、予想 10.0%)
19:00 (欧) 11月 HICPコア指数改定値 前年同月比 (速報 5.0%、予想 5.0%)
23:45 (米) 12月 製造業PMI速報値 (11月 47.7、予想 47.6)
23:45 (米) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 46.2、予想 46.5)

注:ポイント要約は編集部

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