逆CPIショックによる急落時安値に迫る、底割れかダブル底か試される
○ドル円、11/24夜安値で138.04円を付け138円割れを試すところまで反落
○米11月雇用統計など週末にかけ相次ぐ重要指標、年末への上昇再開か一段安へ進むのか、重要局面へ
○11月25日の米10年債利回りは3.69%で週を終え、週間では3週連続の低下に
○米FOMC議事録では利上げピーク水準の上方修正見通しと共に超ハイペースな利上げ減速見通しが濃厚
○11/24夜安値割れを回避するうちは11/24夜高値139.59円超えから140円を試す可能性あり
○138.04円割れからは11/15夜安値137.67円を割り込む下落を想定、137円〜135円台を順次試す展開か
【概況】
ドル円は11月24日夜安値で138.04円を付けて11月15日夜安値137.67円へ迫ったものの、138円割れ及び底割れをひとまず回避して25日夜には139.59円まで戻したが、140円には届かずにやや失速、26日未明には139円近辺での推移となった。
10月21日に151.94円を付けて2021年1月6日底102.57円以降の最高値としたところから、政府日銀による二度目の大規模市場介入をきっかけとして急落し、145円を下値支持線として下げ一服の持ち合いだったところから11月10日夜の米CPI上昇率の伸び鈍化を「逆CPIショック」として11月12日未明安値138.45円へと大幅下落した。11月15日夜の米PPI発表直後に137.67円へ安値を切り下げた後は当面のドル売り材料消化として買い戻しに入り、11月22日未明高値142.25円まで戻したものの、11月24日未明の米FOMC議事録公開を挟んだドル売りの再開で24日夜に138円割れを試すところまで反落した。
11月15日夜安値割れを回避した状況から持ち直しに入り11月22日未明高値を超えればダブルボトム形成からの反騰入りとなり、8月2日安値からの上昇再開時の再現となる可能性を残すが、11月15日夜安値を割り込んで一段安に入る場合は2021年1月底からの歴史的大上昇に対する修正局面の継続として8月2日安値130.39円以降の上昇幅を解消する可能性も出てくる。週末の米11月雇用統計にかけて重要指標の発表や米FRB高官らの発言も相次ぐ。年末への上昇再開か一段安へ進むのか、重要局面に来ていると思われる。
【米10年債利回りは3週連続の低下】
米長期金利の指標である10年債利回りの11月25日は前日比0.01%低下して3.69%で週を終えた。11月16日に3.67%へ低下して10月21日に付けた4.34%以降の最低値としたところから11月21日に3.84%まで戻していたが、11月24日未明のFOMC議事録公開を挟んで11月22日に0.06%低下の3.76%へ、23日に0.07%低下の3.69%へと下げ、感謝祭明けの25日もさらに続落した。週間では前週比で0.14%低下となり、3週連続の低下で6月から7月末にかけての大幅低下時に匹敵する規模での低下となった。
30年債利回りの11月25日は前日比変わらずの3.75%で週を終えた。10年債利回りと同様に3週連続の低下で前週比は0.18%の大幅低下で7月末にかけての低下時を超える鋭角的な下げとなっている。
利上げ動向に敏感な2年債利回りの11月25日は前日比0.03%低下の4.46%で週を終えた。前週比では0.07%の低下だが、11月4日に4.88%まで急伸したところから11月10日に4.29%まで急低下した後は新たな安値更新を回避しており、10年債と比較すれば高止まりの様相となっている。
米FOMC議事録では利上げピーク水準の上方修正見通しと共に12月は超ハイペースでの利上げの減速見通しが濃厚となった。利上げそのものは12月に0.50%利上げ、年明け以降も0.25%利上げがしばらく続く公算のため、2年債利回りはまだインフレ市場次第で0.50%利上げが続く可能性を意識して高止まりしているものの、10年債や30年債利回りは先行きのピークアウトを意識して大幅に低下している印象。
今週は12月1日に10月の個人消費支出(PCE)デフレーター、12月2日に11月米雇用統計の発表があり、内容次第では12月の利上げ減速が見送られる可能性や年明けの大幅利上げ継続の可能性が高まるものの、低調な数字なら年明け以降の利上げペースもかなり落ち着くとの見方が強まる可能性があり、ドル円にとっても年末への上昇再開へ進む可能性を残すか一段安のトリガーとなるのか注目される。
【10月21日高値からの三段下げへ進むケース及び反騰入りの目安】
ドル円は11月15日夜安値割れをひとまず回避している状況にあり、底割れ回避を続けて11月21日高値142.25円を超えれば11月15日夜と11月24日夜の両安値をダブル底とした上昇期入りとして140円台後半回復を目指す上昇が見込まれるが、11月15日安値を割り込む場合は、2021年1月底から続いてきた歴史的大上昇が一巡しての下落期がさらに拡大するとの悲観的な見通しが優勢となり、下げ足も速まる可能性がある。
10月21日高値から11月15日安値まで14.27円の下落となり、11月21日高値まで4.58円の反発が入った。これらの値幅を基準とすれば、11月21日高値を超える上昇の場合は10月21日からの下げ幅に対する2分の1戻し144.80円、11月21日への上昇幅の二倍値で146.83円、3分の2戻し147.18円が順次上値目途となってゆくと思われる。
11月15日安値を割り込む場合は11月21日への戻り幅の倍返しで133.09円、10月31日の戻り高値から11月15日への下げ幅と同規模で131.08円、10月21日から11月15日への下げ幅と同規模の下落として127.98円等が下値計算値として意識されてゆく。つまり、11月15日安値を割り込む場合は最も下げが厳しい想定として8月2日安値130.39円割れを試す可能性も「無きにしも非ず」ということになるのではないかと思う。
米FRBが0.75%ずつの超ハイペースでの利上げから減速するとしても、12月の0.50%利上げや年明けの利上げ継続により政策金利そのものはさらに上昇してゆく。一方で日銀は黒田総裁在任中のマイナス金利と指値オペによる長期金利上昇抑制政策は継続すると思われ、日米の政策金利差は今後も拡大すると思われる。しかし、利上げペースと利上げ水準のピークを先読みして動くのが相場であり、主要な米長期債利回りも今後の利上げ推移とピークを先読みしてきたため、現状の想定を大きく超える政策金利上昇感が出てこなければ当面は頭打ちの状況か、ポジション調整的な低下を続けて落ち着きどころを探る展開となることも考えられる。
指標の米10年債利回りが3.5%を割り込んで3.0%の大台を試すところまで低下するようだと、ドル円にとっては大きな売り圧力となってくるだろうと推察される。ドル円の上昇再開にとっては米長期債利回りが少なくとも現状近辺で高止まりの様相をしっかりさせる必要があるだろう。
【当面のポイント】
(1)当初、11月24日夜安値138.04円を下値支持線、140.00円を上値抵抗線とする。
(2)11月24日夜安値割れを回避するうちは11月24日夜高値139.59円超えから140円を試す可能性があるとみるが、140円手前では戻り売りにつかまりやすいとみる。140円を超えてさらに上昇するには米長期債利回りの急反騰等、ドル全面高へ風向きの変わる情勢変化が必要と思われるが、その場合は142円から144円にかけての水準を試す上昇と考える。
(3)138.04円割れからは11月15日夜安値137.67円を割り込んでゆく下落を想定し、137円、136円、さらに135円台を順次試す展開とみる。135円台では買い戻しも入りやすいとみるが、米PCEデフレーターや週末の米雇用統計等をきっかけにドル全面安の様相となる場合は11月10日夜から12日にかけての間への下落時並みの勢いとなり、130円台序盤(133円から130円)へ向かう可能性もあると注意する。
【当面の主な予定】
11/28(月)
09:30 (豪) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.6%、予想 0.5%)
23:00 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、欧州議会経済金融委員会
26:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会
26:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、インタビュー
11/29(火)
08:30 (日) 10月 失業率 (9月 2.6%、予想 2.5%)
08:50 (日) 10月 小売業販売額 前年同月比 (9月 4.5%、予想 5.0%)
17:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
19:00 (欧) 11月 経済信頼感 (10月 92.5、予想 93.0)
19:00 (欧) 11月 消費者信頼感確定値 (速報 -23.9)
21:35 (英) マン英中銀委員、講演
22:00 (独) 11月 消費者物価指数(CPI)速報値 前月比 (10月 0.9%、予想 -0.2%)
22:00 (独) 11月 消費者物価指数(CPI)速報値 前年同月比 (10月 10.4%、予想 10.4%)
23:00 (米) 9月 米連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (8月 -0.7%、予想 -1.2%)
23:00 (米) 9月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (8月 13.1%、予想 10.5%)
24:00 (米) 11月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (10月 102.5、予想 100.0)
11/30(水)
06:45 (NZ) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 3.8%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産速報値 前月比 (9月 -1.7%、予想 -1.8%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (9月 9.6%、予想 5.2%)
09:00 (NZ) 11月 ANZ企業信頼感 (10月 -42.7)
09:30 (豪) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 -5.8%、予想 -2.0%)
10:30 (中) 11月 国家統計局製造業PMI (10月 49.2、予想 49.2)
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 1.0%、予想 -0.7%)
17:30 (英) ピル英中銀理事、講演
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 5.5%、予想 5.5%)
19:00 (日) 外国為替平衡操作実施状況(介入実績)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数(HICP)速報値 前年同月比 (10月 10.6%、予想 10.4%)
19:00 (欧) 11月 HICPコア指数速報値 前年同月比 (10月 5.0%、予想 5.0%)
22:15 (米) 11月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (10月 23.9万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 7-9月期 GDP改定値 前期比年率 (速報 2.6%、予想 2.8%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費改定値 前期比年率 (速報 1.4%、予想 1.5%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE改定値 前期比年率 (速報 4.5%、予想 4.5%)
22:30 (米) 10月 卸売在庫 前月比 (9月 0.8%、予想 0.5%)
22:50 (米) ボウマンFRB理事、講演
23:45 (米) 11月 シカゴ購買部協会景況指数 (10月 45.2、予想 47.0)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前月比 (9月 -10.2%)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前年同月比 (9月 -30.4%)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
26:35 (米) クックFRB理事、講演
27:30 (米) パウエルFRB議長、講演
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
12/1(木)
08:50 (日) 7-9月期 全産業設備投資額 前年同期比 (4-6月 4.6%)
09:30 (豪) 7-9月期 民間設備投資 前期比 (4-6月 -0.3%)
10:45 (中) 11月 財新製造業PMI (10月
14:00 (日) 11月 消費者態度指数・一般世帯 (10月 29.9)
15:10 (日) 黒田日銀総裁、挨拶
17:55 (独) 11月 製造業PMI改定値 (速報 46.7)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI改定値 (速報 47.3)
18:30 (英) 11月 製造業PMI改定値 (速報 46.2)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 6.6%)
22:30 (米) 10月 個人所得 前月比 (9月 0.4%、予想 0.4%)
22:30 (米) 10月 個人消費支出(PCE) 前月比 (9月 0.6%、予想 0.8%)
22:30 (米) 10月 PCEデフレーター 前年同月比 (9月 6.2%)
22:30 (米) 10月 PCEコア・デフレーター 前月比 (9月 0.5%、予想 0.3%)
22:30 (米) 10月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (9月 5.1%、予想 5.0%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 155.1万人)
23:25 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、イベント挨拶
23:30 (米) ボウマンFRB理事、講演
23:45 (米) 11月 製造業PMI改定値 (速報 47.6)
24:00 (米) 11月 ISM製造業景況指数 (10月 50.2、予想 50.0)
24:00 (米) 10月 建設支出 前月比 (9月 0.2%、予想 -0.2%)
25:45 (欧) レーンECB理事、講演
29:00 (米) バーFRB副議長、講演
12/2(金)
08:50 (日) 11月 マネタリーベース 前年同月比 (10月 -6.9%)
10:30 (日) 黒田日銀総裁、フォーラムで挨拶
11:40 (欧) ラガルドECB総裁、パネル討論会
16:00 (独) 10月 貿易収支 (9月 37億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (9月 1.6%)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (9月 41.9%)
21:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
22:30 (米) 11月 非農業部門就業者数 前月比 (10月 26.1万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 11月 失業率 (10月 3.7%、予想 3.8%)
22:30 (米) 11月 平均時給 前月比 (10月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 平均時給 前年同月比 (10月 4.7%、予想 4.6%)
24:15 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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