来週の為替相場見通し:『ドル売り基調が鮮明に。ドル円続落・ユーロ続伸がメインシナリオ』(11/26朝)

11/21に142.26まで持ち直すも、11/24に再び138.07まで反落するなど、ドル売り・円買い基調が鮮明となりつつあります。

来週の為替相場見通し:『ドル売り基調が鮮明に。ドル円続落・ユーロ続伸がメインシナリオ』(11/26朝)

『ドル売り基調が鮮明に。ドル円続落・ユーロ続伸がメインシナリオ』

〇ドル円、週明け142.26まで上昇後、週後半にかけ138.07まで急落、139円前後で越週
〇FOMC議事要旨のハト派的内容、米指標不冴えによるリセッション懸念等からの米金利低下が背景
〇ユーロドル、週明け1.0223まで急落するも持ち直し、週後半に1.0449まで急伸
〇ドル円、主要テクニカルポイント下抜け、強い売りシグナルも点灯、テクニカルの地合い悪化
〇ファンダメンタルズも米利上げペースの鈍化観測が重石に
〇ドル円相場の続落をメインシナリオとして予想、パウエル議長発言、米雇用統計等に要注目
〇来週の予想レンジ(USDJPY):136.00ー141.00、(EURUSD):1.0250−1.0650

今週のレビュー(11/21−11/25)

今週のドル円相場(USDJPY)は、週初140.26で寄り付いた後、(1)米当局者による相次ぐタカ派発言(前週末金曜日にボストン連銀コリンズ総裁やセントルイス連銀ブラード総裁がタカ派的な発言を実施→米ドルのショートカバーを誘発)や、(2)日米名目金利差に着目したミセスワタナベの円キャリートレード再開、(3)中国における新型コロナウイルス感染再拡大懸念(中国政府のロックダウン再開懸念)、(4)上記3を背景としたリスク回避のドル買い圧力(株安→ドル買い)、(5)サンフランシスコ連銀デイリー総裁による「インフレは容認できないほど高い」とのタカ派的な発言、(6)短期筋の大規模ロスカットが支援材料となり、週明け早々に、週間高値142.26(11/11以来の高値圏)まで急伸しました。

しかし、一目均衡表転換線をバックに伸び悩むと、(7)格付会社ムーディーズによる「FRBは早ければ2023年11月に25bpー50bpの初回利下げに踏み切る公算」とのハト派的な見解発表や、(8)米11月リッチモンド連銀製造業景気指数(結果▲9、予想▲8)の市場予想を下回る結果、(9)米新規失業保険申請件数(結果24.0万件、予想22.4万件)の冴えない結果、(10)米11月製造業PMI(結果47.6、予想50.2)および、米11月非製造業PMI(結果46.1、予想48.1)の市場予想を下回る結果、(11)上記8、9、10を背景とした米国のリセッション懸念再浮上(米景気後退への懸念から米当局が米利上げペースを鈍化させるとの見方が再浮上)、

(12)米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りは約2ヵ月ぶり低水準となる3.65%へ急低下)、(13)株式市場の堅調推移(米ダウ平均株価は4/22以来、約7ヵ月ぶり高値圏へ急上昇→リスク選好のドル売り再開)、(14)米FOMC議事要旨での「大多数の当局者が利上げペースの減速が近く適切になると認識」「急速な利上げによるリスク増大を認識」とのハト派的な見解発表、(15)米感謝祭前のポジション調整が重石となり、週後半にかけて、週間安値138.07(11/15以来の安値圏)まで急落しました。週末にかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間11/26午前4時20分現在)では、139.10前後で推移しております。

今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0331で寄り付いた後、(1)中国を巡る新型コロナウイルス感染再拡大懸念や、(2)上記1を背景としたリスク回避のドル買い圧力、(3)レーンECB専務理事兼主任エコノミストによる「75bpのような非常に大幅な利上げを検討するための土台もはや存在しない」とのハト派的な発言、(4)ポルトガル連銀センテノ総裁による「次回12月の理事会で75bpから利上げ幅を縮小する可能性がある」とのハト派的な発言、(5)ドイツ10月生産者物価指数(結果▲4.2%、予想+0.7%、前回+2.3%)の伸び率急低下、(6)上記3、4、5を背景としたECBによる利上げペース鈍化観測が重石となり、週明け早々に、週間安値1.0223(11/11以来の安値圏)まで急落しました。

しかし、一目均衡表転換線をバックに下げ渋ると、(7)オーストリア中銀ホルツマン総裁による「コアインフレが低下しつつある兆候は見られない」とのタカ派的な発言や、(8)ユーロ圏11月消費者信頼感(結果▲23.9、予想▲26.0)の市場予想を上回る結果、(9)ドイツ11月製造業PMI(結果46.7、予想45.0)および、ドイツ11月非製造業PMI(結果46.4、予想46.1)の市場予想を上回る結果、(10)ユーロ圏11月製造業PMI(結果47.3、予想46.0)および、ユーロ圏11月非製造業PMI(結果48.6、予想48.0)の市場予想を上回る結果、(11)米経済指標の冴えない結果(良好な欧州経済指標と不冴な米経済指標のコントラスト→欧米名目金利差縮小観測)、

(12)米FOMC議事要旨のハト派的な結果、(13)米金利低下に伴うドル売り圧力、(14)株式市場の堅調推移(リスク選好のドル売り圧力)、(15)短期筋のロスカット(200日移動平均線突破に伴う仕掛け的なユーロ買い・ドル売り)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0449(11/15以来の高値圏)まで急伸しました。その後は一時的に反落する場面も見られましたが、(16)ドイツ11月IFO景況感指数(結果86.3、予想85.1)の良好な結果や、(17)ECB理事会議事要旨における「極めて多くのメンバーが75bpの利上げを支持」とのタカ派的な見解発表が下値を支え、本稿執筆時点(日本時間11/26午前4時20分現在)においても、1.0405前後での底堅い動きが続いております。

来週の見通し(11/28−12/2)

<ドル円相場>
ドル円は10/21に記録した約32年ぶり高値151.95(1990年7月以来の高値圏)をトップに反落に転じると、11/15に、8/29以来、約2ヵ月半ぶり安値となる137.68まで急落しました。その後、11/21に142.26まで持ち直すも、11/24に再び138.07まで反落するなど、ドル売り・円買い基調が鮮明となりつつあります。この間、ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や90日移動平均線、一目均衡表雲上限や雲下限)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化が確認されます(目先は134円前後に位置する200日移動平均線を試すシナリオを想定)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米利上げペースの鈍化観測(CPIおよびPPIの鈍化+米経済指標の不冴な結果+米FOMC議事要旨のハト派な結果)や、(2)上記1を背景とした米長期金利の低下圧力(米10年債利回りは約2ヵ月ぶり低水準となる3.65%へ急低下→主要通貨で構成される米ドル指数/DXYも105台へ急低下)、(3)円キャリートレードの逆流リスク(米利上げペース鈍化期待と、ポスト黒田日銀体制下での金融緩和脱却懸念の組み合わせ→日米名目金利差縮小観測→円キャリートレード逆流懸念)、(4)米議会「ねじれ化」に伴うドル高政策の緩和観測、(5)米政府・米当局による円買い介入容認観測(米財務省は先般発表した半期に一度の為替報告書の中で日本の為替操作国認定を見送り→米国はドル独歩高がもたらしてきた世界各国への悪影響を認識済み)など、ドル売り・円買いを連想させる材料が増えつつあります。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は重要度の高い米国経済指標(米11月コンファレンスボード消費者信頼感指数、米11月ADP雇用統計、米第3四半期GDP改定値、米11月ISM製造業景況指数、米11月雇用統計など)と、米当局者発言(ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、セントルイス連銀ブラード総裁、ボウマンFRB理事、クックFRB理事、パウエルFRB議長、ダラス連銀ローガン総裁、バーFRB理事、シカゴ連銀エバンス総裁など)が複数予定されております。

市場では特に、パウエルFRB議長発言と、米11月雇用統計への関心度が高く、パウエルFRB議長がCPIやPPIの伸び率鈍化や足元の冴えない米経済指標の結果を踏まえて米利上げペース鈍化の可能性を滲ませる場合や、米非農業部門雇用者数や失業率の悪化を通じて労働需給緩和の兆候が見られる場合には、米金利低下→米ドル売りの経路で、ドル円には強い下押し圧力が加わるものと推察されます。状況次第では、11/15に記録した直近安値137.68を割り込み、200日移動平均線が位置する134円絡みまで急落する恐れもあるため、来週は週を通してダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(直近2週間と同様、1日に2円以上動くボラティリティの高い相場展開の継続を想定)。

来週の予想レンジ(USDJPY):136.00ー141.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/28に記録した約20年ぶり安値0.9535(2002年6月以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、11/15に、一時1.0481(7/1以来、約4カ月半ぶり高値圏)まで上昇しました。その後、11/21に1.0223まで反落するも、11/24には再び1.0449まで持ち直すなど、ユーロ買い・ドル売りトレンドの継続が確認されます。この間、ローソク足が主要レジスタンスポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」も継続するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状が続いております。市場参加者に意識されていた200日移動平均線も終値ベースで上方ブレイクできており、約1年半に亘って続いてきたユーロドルの中長期下落トレンドの終焉が期待されます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる利上げペースの鈍化期待や、(2)ECBによる積極利上げの継続観測、(3)上記1、2を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米名目金利差縮小に伴うユーロ買い・ドル売り)、(4)株式市場の堅調推移(リスク選好のドル売り再開)など、ユーロドル相場の続伸を連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は欧州圏のインフレ指標(11/29のドイツ11月消費者物価指数、11/30のユーロ圏消費者物価指数、12/2のユーロ圏生産者物価指数)と、欧州当局者発言(ラガルドECB総裁、デギンドスECB副総裁、レーンECB専務理事)に注目が集まります。

欧州圏のインフレ指標が市場予想を上回る場合や、欧州当局者より利上げに積極的な発言が見られる場合には、欧米金融政策の方向性の違いが改めて意識されるため、ユーロ買い・ドル売りの流れに拍車がかかるシナリオが想定されます。状況次第では、6/27に記録した戻り高値1.0616に向けて上値を伸ばす可能性もあるため、来週は週を通して上昇リスクに注意を要する1週間となりそうです(テクニカル的にもファンダメンタルズ的にもユーロ買い・ドル売りが出易い相場環境→まだ完全には切り切れていない中長期ユーロショート勢のロスカットを巻き込む恐れあり)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0250−1.0650

注:ポイント要約は編集部

『ドル売り基調が鮮明に。ドル円続落・ユーロ続伸がメインシナリオ』

ドル円日足

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