ドル円見通し 138円割れをひとまず回避で下げ渋るも11月15日夜安値へ余裕乏しい
〇ドル円、11/24夜138.04へ下落、11/15夜安値137.67への余裕が乏しい
〇FOMC議事録公開後、利上げ減速に入るとの見方優勢、米長期債利回り大幅低下、ドル全面安の様相
〇11/15安値割れを回避し現状を押し目に切り返すか、11/15安値割れから三段下げに入るかの瀬戸際
〇FOMC議事要旨はややハト派姿勢、ペースダウンの姿勢示しつつ、利上げ継続と利上げ状態長期化を示唆
〇ECB、英中銀、NZ中銀等はタカ派姿勢堅持、ドル全面安に対する修正感をもたらしているか
〇138.04割れを回避するうちは、139円超えから139.50前後への上昇余地ありとみる
〇138.04割れからは新たな下落期に入るとみて、来週前半にかけて136円台への下落を想定する
【概況】
ドル円は11月24日夜に138.04円へ下落、11月22日未明の戻り高値142.25円以降の安値を更新、11月15日夜安値137.67円への余裕が乏しくなっている。24日未明のFOMC議事録公開を挟んで米FRBによる超ハイペースでの利上げが減速に入るとの見方が優勢となって米長期債利回りが大幅に低下して為替市場はドル全面安の様相となったが、24日は米国が感謝祭休場だったことで手掛かりに欠けたものの流れは変わらなかった。
138円割れをひとまず回避して25日午前はやや戻り優勢での推移だが138円台後半では上値が重い印象だ。
【11月15日安値割れから三段下げに入るか、現状を押し目に切り返すかの瀬戸際】
ドル円は10月21日高値151.94円で2021年1月6日底102.57円以降の最高値をつけたが、政府日銀による二度目の大規模市場介入をきっかけに10月27日安値145.10円へ下落、その後は145円を下値支持線とした下げ渋りで三角持ち合いの様相だったところから、11月10日夜の米CPI上昇率が予想を下回ったことによる「逆CPIショック」で暴落商状に陥り11月15日夜の米PPI発表直後に137.67円へ一段安となり、10月21日高値からの下げ幅は14.27円と2021年以降で最大規模となった。
暴落商状一巡で11月22日未明高値142.25円まで4.58円の上昇幅で戻したものの、24日夜に138円へ迫ったことで上げ幅の大半を解消している。
11月15日安値割れを回避するかわずかに割り込んでも急速に切り返す場合は11月15日安値に対する押し目形成ないしはダブル底形成とし、8月2日安値から一段高へ進んだ当初に5円を超える上昇後に4円近い反落が入って押し目形成としたときの状況を再現することも可能と思われる。しかし11月15日安値を割り込んでから続落に入れば10月21日高値からの下落は三段下げ型に発展して先安感も強まり8月2日安値130.39円への「往って来い」となる可能性も出てくると懸念される。
【FOMC議事録でのややハト派姿勢】
米FRBは11月24日未明に11月1-2日に開催したFOMC議事要旨を公開したが、そこでは「参加者の大多数は利上げペースの減速が直ぐに適切になる」とする一方で「様々な参加者は従来よりも政策金利のピークが高くなる」とした。
パウエル米FRB議長はFOMC後の会見で12月の利上げ幅を検討するとして0.75%の超ハイペースでの利上げ継続からペースダウンさせる姿勢を示しつつも、政策金利の先行きのピークは9月想定時点よりも引き上げられるとして利上げの継続と利上げ状態の長期化を示唆していた。しかし利上げピーク水準に対する議事録記載では「多くの参加者」ではなく「様々な参加者」と表現されたことで、必ずしも利上げピーク水準が切り上がるという認識がFOMC内での多数派ではないとの印象を与えた。
金融引き締めの行き過ぎと少な過ぎに対する見解の分かれも示されたことで、FOMCメンバーがタカ派優勢で運営されているとも限らないという受け止め方もされた。楽観的に見れば12月FOMCで0.50%利上げ、年明け以降数回の0.25%利上げでインフレが落ち着けば暫くは水準維持ということにもなるのではないかと思われる。米長期債利回りとしては金利ピークが近くその後は落ち着いて利下げサイクル入りの条件が揃うのを待つという流れになるならば、これまでの大幅上昇により材料は消化され、年限の長いものについてはある程度修正的な低下へと進むという見方もできるだろう。そうなればドル円には米長期金利の上昇一服によりドル円の歴史的な大上昇も併せて一服して大きな修正局面に入ったとしても不思議ないという認識になるのではなかろうか。
【ECB、英中銀、NZ中銀等のタカ派姿勢】
一方でECBは10月27日の理事会議事要旨を発表したが、追加利上げ姿勢を強調する内容となり、デギンドス副総裁は「ECBは物価安定の定義に当てはまる水準に達するまで利上げを継続する」、「コアインフレ率は数か月は上昇し、今年第4四半期と来年第1四半期はマイナス成長に陥る公算」とも述べて景気減速を伴いながら利上げを継続する姿勢であることを示した。またシュナーベルECB専務理事もユーロ圏の賃金上昇圧力が高まり急速な賃金上昇が起きうる」としてインフレと賃金上昇のスパイラルを抑制するための利上げ継続が必要とし、「利上げ幅縮小を求めるのは時期尚早で逆効果」と指摘した。
英中銀は9月26日へのポンド暴落時に導入した一時的な債券購入分の売却開始を決定し、引き締め姿勢のゆるみを解消する。英中銀は11月3日に政策金利を年2.25%から3%に引き上げたが、中銀のチーフエコノミストであるピル委員は「政策金利が来年下期に5.25%近辺でピークに達するとの見方ほどには引き上げられないだろう」としたが、裏返せばそれに近い水準まで利上げが続く可能性があることを示した。
NZ中銀は11月23日に政策金利0.75%引き上げて14年ぶり高水準となる4.25%としたが、金利のピーク予想を従来の4.1%から5.5%へ上方修正した。
米FRBが超ハイペースでの利上げを繰り返してきたことで今後の利上げについてやや腰が引け始めている一方で、多の主要中銀がタカ派姿勢を堅持していることもドル全面安に対する修正感をもたらしているのではないか。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は11月15日夜安値を頭、12日未明安値138.45円を左肩、17日夕安値を右肩とする逆三尊型を形成して反騰入りしたが、11月22日未明高値で戻り一巡となり下落に転じた。24日午前時点では安値形成期を24日の日中から週明けにかけての間としたが、138円割れを回避して戻しているため、24日夜安値で目先の底をつけたと仮定する。22日未明高値を基準として高値形成期を25日未明から29日未明にかけての間と想定するが、24日夜安値割れからは一段安入りとなるので次の安値形成期となる29日夜から12月1日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、11月23日夜の急落で遅行スパンが悪化し、先行スパンからも転落したが、24日夜安値からやや持ち直しているために遅行スパンは好転を試しやすいところに来ている。遅行スパン好転からは戻りを継続する流れとみて先行スパンの下限を試す上昇を想定し、先行スパンへ潜り込む場合はその上限を試すとみるが、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は11月23日夜の急落時に20ポイント割れへ急低下したが24日夜への安値更新に際しては指数のボトムを切り上げて強気逆行を見せた。35ポイント以上での推移中は上昇余地ありとみるが50ポイント台では材料が伴わないと戻り売りにつかまりやすいとみる。35ポイント割れからは20ポイント以下を試す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、138.04円を下値支持線、139.00円を上値抵抗線とする。
(2)138.04円割れを回避するうちは139円超えから139.50円前後への上昇余地ありとみる。139.50円以上は反落注意とするが、138.50円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かう可能性が残るとみる。
(3)138.04円割れからは新たな下落期に入るとみて来週前半にかけて136円台への下落を想定する。
【当面の主な予定】
11/25(金)
米国(ブラックフライデー)で株式・債券市場は短縮取引
16:00 (独) 12月 GFK消費者信頼感 (11月 -41.9、予想 -39.6)
16:00 (独) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
16:00 (独) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 1.1%、予想 1.1%)
26:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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