145円台序盤へ続落、米中間選挙結果にらみ米長期債利回り低下
〇ドル円、米長期債利回り低下とユーロ急伸背景に9日未明145.30へ下落
〇米下院「ねじれ議会」懸念で長期債利回り続落とドル安進む、CPI鈍化でさらなる助長可能性も
〇ユーロドル、ドル安基調と独2年債利回り高進で1.0096へ上昇
〇NYダウ3連騰、米長期債利回りは総じて低下、利上げペースダウン可能性等から上昇一服
〇146以下での推移中は一段安警戒、144.90割れから続落の場合は144前後試しへ下値目途を引き下げる
〇146.20超えからは上昇期入りとみて、147を目指す上昇を想定する
【概況】
ドル円は11月8日深夜にかけての下落で146円を割り込み9日未明に145.30円へ下落、10月27日午後安値145.10円に迫った。その後は145円割れ回避で下げ渋ったものの9日朝には145.30円を割り込み145円台を維持できるか試している。
11月3日未明の米FOMCを通過してのドル全面高が3日夜で一巡となり、ドル安へと風向きが変化、4日夜に米雇用統計をドル安継続で通過したことでドル全面安の様相となってきた。11月8日夜は米中間選挙での野党共和党優勢による「ねじれ議会」化がバイデン政権による財政政策の手を縛り、国債発行が制限される可能性を踏まえて米長期債利回りが低下した。一方、ECBによる利上げのピークが切り上がるとの見方から独2年債利回りが2008年12月以来の高水準へ上昇したことで、ユーロドルが9月28日以降の高値を更新する一段高となりドル安をけん引した。ドル円は米長期債利回り低下とユーロの急伸を見て11月3日夜からの下落基調を継続している。
【米中間選挙始まる、ねじれ議会見通しがドル安を助長】
米中間選挙が始まった。上院は与野党接戦とみられているものの下院では共和党優勢となり、バイデン大統領の与党民主党とのねじれ議会となると予想されている。中間選挙の大勢は米国時間8日夜に判明する見込み。
米下院が「ねじれ議会」状態に陥ればバイデン政権による大規模財政政策の実行が制限され、新発の国債発行にも支障が出かねないこと、債務上限を巡る与野党攻防で米政府の一時的な債務不履行(デフォルト)や政府機関の一時的な閉鎖等の事態も懸念される。国債発行制限による米長期国債の供給減少感から利回りが低下しやすい状況となり、政局の先行き不透明感がドル安を助長している。
11月10日には米10月CPIの発表もあるが、伸び率が鈍化すれば先のFOMCで示された12月会合での利上げペースダウンの可能性も高まるため、中間選挙結果と10日の米CPI発表内容次第では米長期債利回りの続落とドル安がさらに進む可能性もあるところだ。
【11月3日夜からのドル安基調続きユーロドルは1.010ドルに迫る】
ユーロドルは11月3日未明の米FOMC後のドル高局面で0.9728ドルへ下落したが10月31日安値0.9703ドル割れを回避して買い戻され、4日夜の米雇用統計を通過してからの続伸でFOMC声明発表直後の高値を超えてきた。米長期債利回り低下によるドル安に加えて独2年債利回りの上昇を背景に9日未明には1.0096ドルへ上昇、10月27日高値を超えて9月28日安値0.9534ドル以降の高値を更新した。昨年1月天井以降の長期的な下落基調から抜け出したとまでは言えないものの、9月28日以降は戻り高値を切り上げ、その後の安値も底上げをしてきており、ひとまず今年1月以降のドル全面高による下落が落ち着いた可能性を示している。
ECBの利上げペースは米FRBよりもかなり遅れを取ってきたが、インフレ進行が収まらない中で大幅利上げ継続の可能性が強まっており、11月8日の独2年債利回りは一時2.25%をつけて2008年12月以来の高水準に達している。ECB理事会メンバーである独連銀のナーゲル総裁が8日に「高インフレとの戦いをやめるわけにはいかない」、「たとえECBの措置で経済発展が圧迫されたとしてもECB理事会が早すぎる時期に利上げをやめないよう全力を尽くす」と述べたこともユーロ買い要因となった。
ポンドドルも11月3日夜からの反騰を継続、豪ドル米ドルや南アランドが10月13日以降の高値を更新するなどドル安感が強まっている。
【NYダウは連騰、米長期債利回りは低下】
11月8日のNYダウは前日比333.83ドル高と上昇、11月4日の401.97ドル高、7日の423.78ドル高からの3連騰となったが、高値を33355.39ドルまで伸ばしてから終値の33160.83ドルまで200ドル近い反落となった。ナスダック総合指数は51.68ポイント高となり、11月4日の132.31ドル高、7日の89.27ドル高からの3連騰となったものの上げ幅が徐々に小さくなっている。
米FRBによる超ハイペースでの利上げが減速するとの見方が支えとなっているものの、中国の感染拡大が収まらないことや、8日は仮想通貨市場が暴落したことで仮想通貨関連株安となるなど先行きへの不安も抱えている。
11月8日の米長期債利回りは総じて低下した。指標の10年債利回りは前日比0.07%低下の4.15%、30年債利回りは0.04%低下の4.28%、2年債利回りは0.07%低下の4.66%となった。依然として歴史的な高水準を維持しているものの、米中間選挙やFRBによる利上げペースダウンの可能性等から上昇一服の様相だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円はFOMC声明発表後に145.66円へ一段安してから148円台へ反騰したものの、3日夜からは下落基調に転じたとして8日午前時点では8日の日中から10日未明にかけての間への下落余地ありとした。
11月9日午前序盤へ続落しているためまだ9日の日中から10日未明にかけての間への一段安余地ありとみるが、3日夜からの下落も3日を経過したので146円を超えてくれば強気転換を注意したい。さらに146.20円超えからは上昇期入りとみて10日深夜にかけての上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では、11月4日夜への下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、遅行スパンが好転するところからは戻りを試しに入るとみて先行スパンの突破を試す上昇を想定する。ただし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は11月9日未明への下落で20ポイント台へ低下してからも40ポイント以下での推移にとどまっているのでまだ一段安余地ありとし、40ポイント超えからは反騰注意とし、50ポイント超えからは上昇再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、145.10円から145円を下値支持線、146.20円を上値抵抗線とする。
(2)146円以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは一段安警戒とする。145円割れでは買いも入りやすいとみるが、144.90円割れから続落に入る場合は144円前後試しへ下値目途を引き下げる。また146.50円以下での推移か直前安値から1円を超える反騰を見せないうちは10日も安値試しを続けやすいとみる。
(3)146.20円超えからは上昇期入りとみて147円を目指す上昇を想定する。147円手前では売られやすいとみるが146.20円を超えた後も146円台を維持しての推移なら10日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
11/9(水)
10:30 (中) 10月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (9月 2.8%、予想 2.4%)
10:30 (中) 10月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (9月 0.9%、予想 -1.5%)
14:00 (日) 10月 景気ウオッチャー現状判断 (9月 48.4、予想 50.0)
17:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
22:00 (英) ハスケル英中銀委員、講演
24:00 (米) 9月 卸売売上高 前月比 (8月 0.1%、予想 0.5%)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
25:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省10年債入札
11/10(木)
08:50 (日) 10月 マネーストックM2 前年同月比 (9月 3.3%、予想 3.2%)
22:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
22:00 (英) ラムスデン英中銀副総裁、講演
22:30 (米) 10月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (9月 0.4%、予想 0.7%)
22:30 (米) 10月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (9月 8.2%、予想 8.0%)
22:30 (米) 10月 CPIコア指数 前月比 (9月 0.6%、予想 0.5%)
22:30 (米) 10月 CPIコア指数 前年同月比 (9月 6.6%、予想 6.5%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件、予想 22.1万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 148.5万人)
23:35 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、講演
26:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省30年債入札
27:30 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、講演
28:00 (米) 10月 月次財政収支 (9月 -4297億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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