ドル円見通し リスク選好のドル安基調だが米長期債利回り上昇で146円割れを回避
〇ドル円、11/5早朝安値146.54から11/7夕刻に147.56まで戻したところから、深夜安値146.08へ下落
〇深夜以降は米長期債利回りが上昇に転じ、146円割れを回避するも147円には届かず、上値が重い展開
〇ユーロドルはパリティ回復、ポンドや豪ドル等も上昇、FOMC後のドル高を概ね解消しドル安基調で推移
〇11/8の米中間選挙、11/10の米10月CPIに注目集まる、ドル円の流れに影響する可能性
〇NYダウ・ナスダックともには連騰、米長期債利回りは総じて上昇
〇147円以下での推移中は、146円割れから145円前後への下落を想定する
〇11/7夕高値147.56超えからは上昇期入りとみて、148円台前半を目指す上昇を想定する
【概況】
ドル円は11月3日夜からのドル全面安に圧迫される展開で、先週末11月5日早朝安値146.54円から7日夕刻に147.56円まで戻したところから深夜安値146.08円へ下落した。深夜以降は米長期債利回りが上昇に転じたことで146円割れを回避したものの147円には届かずに上値が重い展開。
11月3日未明の米FOMC声明発表直後に145.66円まで急落してから3日夜高値148.44円まで切り返したものの4日夜の米雇用統計発表でも一時的な反発を入れてから146.50円台へ下落し、週明けの7日もユーロドルがFOMC直後の高値を超えて1ユーロ1ドルのパリティを回復、ポンドや豪ドル等も11月3日未明高値に迫り、FOMC後のドル高を概ね解消しておりドル安基調での推移が続いている印象だ。
【11月8日の米中間選挙、10日の米10月CPIをにらむ】
FOMCと米雇用統計を通過したことで当面のドル買い材料一巡とし、4営業日続落していたNYダウが4日と7日の両日に400ドル高を超える連騰となったことで金融市場全般のリスク選好感が強まっている。ただし株買い・債券売りもあり米長期債利回りは上昇しており、7日深夜以降はドル安がやや抑えられている。
11月8日は米中間選挙があるが、事前報道では野党共和党が上下院で優勢とされており、バイデン民主党政権と野党共和党優勢による「ねじれ議会」となるのではないかとの見方が強まっている。ねじれ議会になればバイデン政権による経済政策が進まなくなり、富裕層への増税圧力が鈍り財政出動に対する共和党の牽制により債務上限の引き上げに支障が出てデフォルトや政府機関の一時停止等の問題が再発する可能性も考えられるため、共和党優勢なら為替市場にはドル安要因となりやすいのではないかと思われる。
経済指標では11月10日の米10月消費者物価指数の発表が焦点となるが、現時点での事前予想では全体の前月比が0.7%上昇で9月の0.4%から伸びが加速するものの前年同月比は8.0%で9月の8.2%から鈍化するとみられており、コア指数では前月比が0.5%上昇で9月の0.6%上昇から鈍化して前年同月比も6.5%にとどまって9月の6.6%から低下すると見込まれている。
先のFOMCではインフレ抑制への利上げ継続と先行きの政策金利ピーク水準が上方修正される可能性が指摘される一方で、過度に急ぎすぎる引き締めへの懸念を踏まえて12月会合では超ハイペースでの利上げをペースダウンさせることが検討されるとした。米10月CPIの伸びが鈍化すれば利上げのペースダウンに寄与するとしてドル安要因となりやすいが、予想以上に上昇率が伸びる場合は12月会合でも超大幅利上げが継続しかねないとしてドル高がぶり返す可能性もあるところだ。
為替市場はFOMC後のドル高を概ね解消している状況だが、まだ振り出しに戻ったに過ぎない。9月後半からのユーロやポンド等の上昇にみられるドル安基調の一服から勢いあるドル安への転換を示す流れになるのか、ドル高のぶり返しとなるのか、米中間選挙結果と米10月CPIがかなり重要になってくると思われる。
【NYダウは連騰、米長期債利回りは上昇】
NYダウは前日比423.78ドル高と上昇、11月4日の401.97ドル高からの続伸で10月31日から11月3日までの4営業日続落による下げ幅の大半を解消した。10月13日安値で28660.94ドルまで下げて1月5日の史上最高値36952.65ドル以降の安値を更新したところからの切り返し基調を継続、FOMCと米雇用統計を通過したところの下落を押し目形成として高値切り上げを伺う動きと思われる。ナスダック総合指数も89.27ポイント高で4日の132.31ポイント高から連騰となった。
中国の感染拡大が気になるところだが、規制強化への懸念と規制緩和への政策転換期待が交錯しているものの上海総合株価指数は10月31日安値を底として反騰を継続しており11月7日もこの間の高値を更新しており、リスクオン優勢の市場心理に寄与している。
米長期債利回りは上昇、指標の10年債利回りは先週末比0.06%上昇の4.22%。10月21日の一昨年来最高値4.34%から10月27日の3.90%まで低下してから上昇再開に入っており、FOMCや雇用統計を通過してからも上昇基調は維持している、11月7日は株買い債券売りによる利回り上昇も影響したが、利上げペースが緩んだとしても暫く利上げは継続する見通しを反映している。
30年債利回りは0.07%上昇の4.32%で10月24日の1昨年来最高値4.43%へ徐々に迫っている。
2年債利回りは0.07%上昇の4.73%で15年ぶりの高値水準を維持している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円はFOMC声明発表後に145.66円へ一段安してから148円台へ反騰したものの、3日夜からは下落基調に転じている。7日夜は146円割れをひとまず回避したもののその後も下げ渋り程度のため、まだ8日の日中から10日未明にかけての間への下落余地が残る。
147円以下での推移中は一段安警戒とするが、147円超えからは強気転換注意とし、7日夕高値147.56円超えからは上昇期入りとみて8日夜から10日深夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では、11月4日夜への下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、7日夕刻に先行スパンへ潜り込んだところから再び転落している。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は11月4日夜から7日夜にかけての一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行の気配が見られる。50ポイント台に届かないうちはもう一段安余地ありとみるが、50ポイント超えからは上昇再開の可能性を優先して60ポイント台への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、146円を下値支持線、11月7日夕高値147.56円を上値抵抗線とする。
(2)147円以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは146円割れから145円前後への下落を想定する。145円以下は反騰注意とするが、146.50円以下での推移なら9日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)11月7日夕高値147.56円超えからは上昇期入りとみて148円台前半を目指す上昇を想定する。148円到達では売られやすいとみるが147.56円を超えた後も147円以上での推移なら9日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
11/8(火)
東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議(11/13まで)
EU財務相理事会、米中間選挙
14:00 (日) 9月 景気先行指数CI速報値 (8月 101.3、予想 97.6)
18:00 (英) ピル英中銀理事、講演
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前月比 (8月 -0.3%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 -2.0%、予想 -1.3%)
27:00 (米) 財務省3年債入札
11/9(水)
08:50 (日) 9月 経常収支・季調前 (8月 589億円、予想 2345億円)
08:50 (日) 9月 経常収支・季調済 (8月 -5305億円、予想 63億円)
08:50 (日) 9月 貿易収支・国際収支ベース (8月 -2兆4906億円、予想 -1兆6731億円)
10:30 (中) 10月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (9月 2.8%、予想 2.5%)
10:30 (中) 10月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (9月 0.9%、予想 -1.4%)
14:00 (日) 10月 景気ウオッチャー現状判断 (9月 48.4、予想 50.0)
17:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
22:00 (英) ハスケル英中銀委員、講演
24:00 (米) 9月 卸売売上高 前月比 (8月 0.1%)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
25:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省10年債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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