ドル円見通し 10月24日午前の急落時安値を割り込んでから戻すも乱高下の様相
〇ドル円、10/27午後145.10へ下落、10/24午前安値145.61を割り込むが、夜146.92へ2円近く切り返す
〇しかし米長期債利回り続落により深夜145.66まで反落となり、その後また146円台へ戻す乱調な展開
〇昨日発表の米GDP速報値、3四半期ぶりの改善となるも個人消費の伸び鈍化
〇NYダウは5連騰だがナスダックは続落、米経済指標の低調により米長期債利回りは大幅低下続く
〇146円以上での推移中は上昇余地ありとし、10/27夜高値146.92超えから148円を目指す上昇を想定する
〇昨夜の安値145.66割れからは下向きとして、10/27午後安値145.10試しとする
【概況】
ドル円は米長期債利回り低下が続く中で10月27日午後に145.10円へ下落、10月21日夜の大規模市場介入による急落でつけた安値146.19円及び24日午前の2営業日連続介入と思われる急落でつけた安値145.61円を割り込んだ。27日夜には146.92円まで2円近い切り返しとなったものの、ECBの利上げ姿勢がトーンダウンしたことや米GDP統計での個人消費の伸び鈍化を見て米長期債利回りが続落したために深夜には145.66円まで1円を超える反落となってからまた146円台へ戻すという乱調な展開となった。
本日は日銀金融政策決定会合と黒田総裁会見がある。声明発表は12時前に済ませる場合は現状維持が多く、政策の大きな転換や新たな政策発表等がある場合は12時を回ることが多いようだが、大方の見方は現状維持によりマイナス金利や指値オペによる長期金利の抑制は変わらないとされている。また152円に迫るところまで急伸した後の市場介入と米長期債利回り低下により145円台までいったん下げたこともあり、円安への牽制も先週よりもややトーンダウンしているのではないかと思われるが、内容次第では円安の再開や円高感が強まる展開になる可能性もあるので波乱に注意したい。
【米GDP速報値、3四半期ぶり改善だが個人消費弱い】
10月27日夜に米商務省が発表した2022年7-9月期GDP速報値は年率換算で前期比2.6%増となり3四半期ぶりのプラスで市場予想の2.4%増を上回った。しかしGDPの凡そ7割を占める個人消費は1.4%増にとどまり市場予想の1.0%増を上回ったものの前期の2.0%増から鈍化した。設備投資は前期の0.1%増から3.7%増へ、輸出が13.8%増から14.4%増へ改善したものの、大幅利上げが続いたことによる住宅ローン金利上昇の影響で住宅投資は前期の17.8%減から26.4%減へとさらに悪化した。
米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると米国の30年固定型住宅ローン金利平均は7.08%で前年同期からは4%上昇して2002年4月以来20年ぶり高水準となっている。
9月の耐久財受注額は前月比0.4%増で8月の0.2%増を上回ったものの市場予想の0.6%増を下回った。設備投資の先行指標である航空機除く非国防資本財受注は0.7%減で予想の0.5%増を裏切る低下となった。
米労働省による新規失業保険申請件数は10月22日までの週間で前週比3000件増の21.7万件となり市場予想の22万件を下回ったものの2週ぶりに悪化した。失業保険受給者総数は10月15日までの週間で143.8万件となった。
【NYダウは5連騰だがナスダックは続落、米長期債利回りは大幅低下続く】
10月27日のNYダウは前日比194.17ドル高と上昇、一時は500ドル高を超えたところから上げ幅を削ったが10月21日から5連騰となった。米FRBによる大幅利上げペースの鈍化期待と3四半期ぶりのGDP改善で深刻な景気後退には陥らないとの楽観が優勢だった。しかしナスダック総合指数は178.32ポイント安で前日の228.13ポイント安からの続落となった。IT大手の決算不振が響いている。
米長期債利回りは大幅低下が続いている。指標の米10年債利回りは前日比0.08%低下の3.92%となり4%を割り込み、10月21日に4.34%をつけたところをピークとして10月25日から3営業日続落となった。28日午前序盤には3.90%へ続落している。
30年債利回りは0.05%低下の4.09%で10月24日の4.43%をピークとして3営業日続落、2年債利回りは0.13%低下の4.28%で10月21日の4.64%をピークとした低下を続けている。
10月24日夜からは米経済指標が低調だとして米FRBの12月FOMCにおける0.75%利上げの可能性が後退したとして長期債利回りが低下に転じており、27日夜の米GDP速報等もその流れを変えるほどの内容ではなかったとして発表後に長期債利回り低下反応となっている。ECBが2会合連続で0.75%利上げを決定したものの今後の利上げペースの鈍化をにおわせる姿勢が見られ量的金融引き締めについて慎重な議論はなかったとしたことでユーロが売られたが、前日のカナダ中銀が0.50%利上げに抑えたことも含めて米FRBによる利上げペースの鈍化を連想させたようだ。
ドル円としては日米長期金利差の拡大が歴史的大上昇のエンジンであり、現状は150円台到達まで大上昇したところから米長期債利回り低下を見て大きな修正安に入った状況と思われる。ただし米長期債利回りはこれまでも大きな調整を入れては一段と上昇してきており、インフレ抑制を最重要課題とするバイデン政権とパウエル米FRB議長の金融引き締めによるインフレ退治への姿勢は変わらないとすれば、現状の調整を消化した後に再び上昇期に入る可能性もあると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は10月24日午前序盤の一段安から切り返したものの24日に149円台前半へ戻した後は伸びずに25日夜に一段安したために26日午前時点からは買い戻し一巡による下落期入りとして26日夜から31日午前にかけての間への一段安を想定してきた。
10月27日午後に145円割れを回避して2円近い反騰を入れたため、27日午後安値で目先の底をつけたところと思われる。27日午後安値割れを回避するうちは28日の日中から11月1日にかけての間への上昇余地ありとみるが、安値更新からは新たな下落期に入るとみて11月1日から3日にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、10月27日午後安値からの反発で遅行スパンが実線に絡むところまで持ち直しているが先行スパンから転落した状況は解消していない。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とし、先行スパンを上抜き返すところからは上昇が勢い付くとみるが、先行スパンへ潜り込んでも上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転しても悪化するところからは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は10月27日午後の20ポイント割れから50ポイント台へ切り返し、その後も40ポイント以上を維持しているので55ポイント超えからは60ポイント台後半を目指す上昇を想定するが、40ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月27日午後安値145.10円を下値支持線、27日夜高値146.92円を上値抵抗線とする。
(2)146円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、27日夜高値超えからは148円を目指す上昇を想定する。日銀金融政策や黒田総裁会見内容次第では148円を超える可能性もあると注意する。
(3)昨夜の安値145.66円割れからは下向きとして27日午後安値試しとし、底割れからは144円前後への下落を想定する。144円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、下げ足が厳しい場合は143円前後へ下値目途を引き下げる。
【当面の主な予定】
10/28(金)
昼 頃 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
昼 頃 (日) 日銀展望レポート
15:30 (日) 黒田日銀総裁、会見
17:00 (独) 7-9月期 GDP速報値 前期比 (4-6月 0.1%、予想 -0.2%)
17:00 (独) 7-9月期 GDP速報値・季調前 前年同期比 (4-6月 1.8%、予想 0.7%)
18:00 (欧) 10月 経済信頼感 (9月 93.7、予想 92.5)
18:00 (欧) 10月 消費者信頼感確定値 (速報 -27.6、予想 -27.6)
21:00 (独) 10月 CPI(消費者物価指数)速報値 前月比 (9月 1.9%、予想 0.6%)
21:00 (独) 10月 CPI(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (9月 10.0%、予想 10.1%)
21:30 (米) 7-9月期 雇用コスト指数 前期比 (4-6月 1.3%、予想 1.2%)
21:30 (米) 9月 個人所得 前月比 (8月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 PCE(個人消費支出) 前月比 (8月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 9月 PCEデフレーター 前年同月比 (8月 6.2%、予想 6.3%)
21:30 (米) 9月 PCEコア・デフレーター 前月比 (8月 0.6%、予想 0.5%)
21:30 (米) 9月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (8月 4.9%、予想 5.2%)
23:00 (米) 9月 住宅販売保留指数 前月比 (8月 -2.0%、予想 -5.0%)
23:00 (米) 9月 住宅販売保留指数 前年同月比 (8月 -22.5%)
23:00 (米) 10月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 59.8、予想 59.8)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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