ドル円見通し 1998年8月天井を超えてから乱高下するも147円台を維持(22/10/14)

13日夜の米CPI発表直後のドル全面高局面で147.67円をつけて1998年8月11日高値147.63円を超えた。

ドル円見通し 1998年8月天井を超えてから乱高下するも147円台を維持(22/10/14)

ドル円見通し 1998年8月天井を超えてから乱高下するも147円台を維持

〇ドル円、10/13夜米CPI発表直後のドル全面高局面で147.67をつけ、1998年8月11日高値147.63超える
〇直後に146.50割れへ急落するも早々に147円台前半へ切り返す、介入警戒感からの一時的な反落か
〇米CPIコア指数は8月から伸びが加速、市場は11月FOMCで4会合連続での0.75%利上げを確実視
〇CPI直後はドル全面高反応だったが、材料消化としてユーロ・豪ドルなど急落から一転買い戻し優勢に
〇ドル全面高の環境そのものが変わったわけではなく、買い戻し一巡後にはドル高再開へと進む可能性も
〇NYダウ急落後に切り返し大幅上昇、米長期債利回りは総じて上昇、10年債は2008年10月以来の高水準
〇146.48以上での推移中は上昇余地ありとし、147.67超えからは148円台序盤試しとみる
〇146.48割れからはいったん下げに入るとみて、146円前後への下落を想定する

【概況】

ドル円は10月13未明への上昇で147円に迫ったところから上げ渋っていたが、13日夜の米CPI発表直後のドル全面高局面で147.67円をつけて1998年8月11日高値147.63円を超えた。その直後に146.50円割れへ急落したものの早々に147円台前半へ切り返した。
13日22時台の急落については日銀による市場介入の報告はなく、介入警戒感からの売りが集中したことでの一時的な反落とみられるが、G20参加中の財務相同行筋は介入の有無には言及しないとしており、9月22日に続く第二弾の実弾介入への警戒感も高まるところだが、9月22日の介入前高値を超えたところでも新たな介入が見送られる中で147円台へ上昇したことにより、市場はさらに高値を追及しつつ政府・日銀の介入姿勢を試す動きで推移しやすいところと思われる。

10月13日夜の米9月CPIが高止まりしてコア指数が前月から伸びを加速させたことで当初はドル全面高の反応となったものの当面の材料消化としてユーロや豪ドルなどが反発、NYダウも大幅下落から一転して大幅高となるなど金融市場全般が乱高下となり、14日未明にかけてのドル安局面でドル円も下げたものの147円割れは買い戻されている。

【米CPIのコア指数は8月から伸びが加速】

10月13日夜に発表された9月の米消費者物価指数(CPI)上昇率は全体の前月比が0.4%となり8月の0.1%から伸びが加速、市場予想の0.2%を上回り、前年同月比は8.2%で8月の8.3%からは鈍化したものの市場予想の8.1%を上回った。コア指数の上昇率は前月比0.6%となり8月の0.6%と同じだったが市場予想の0.5%を上回り、前年同月比は6.6%で8月の6.3%から伸びが加速して市場予想の6.5%も上回った。
この発表を受けて米FRBによる11月FOMCでの4会合連続での0.75%利上げが確実視された上で12月のFOMCでも0.75%利上げが継続する可能性が高まったと市場は受け止めた。しかし当初は米長期債利回り上昇でドル全面高の反応となったものの、当面するインフレ指標発表を通過したことで材料消化としてユーロや豪ドルなどが急落から一転して買い戻し優勢となり、NYダウも前日比で500ドル安を超える急落から前日比800ドル高を超える上昇へと切り返した。

たしかに当面するイベントを通過したと言えるが、ドル全面高の環境そのものが変わったわけではなく、やや過剰な急落と買い戻し殺到による反騰で乱高下している状況とすれば、買い戻し一巡後にはドル高基調は変わらないとしてドル高再開へと進む可能性もあるのではないかと思われる。
米CPI発表後にイエレン米財務長官は「インフレ面でもっとやるべきことがある」「FRBには物価安定への責任がある」と述べ、バイデン大統領は「世界的なインフレとの闘いは最重要課題」「インフレとの闘いで若干の進展があったがまだやるべきことが多い」とし、FRBに対してさらなるインフレ抑制のための金融引き締めを暗に要求するような姿勢を示した。これら発言を受けてFRBも従来より一層タカ派姿勢へシフトしてゆくことも考えられる。

【政府日銀の市場介入効果への疑問符】

国際通貨基金(IMF)の対日審査団長を務めるサルガド氏は10月12日に日銀による24年ぶりの円買い介入について「介入による急激な円安を是正する効果は一時的なものにとどまる」と述べた。同氏は「世界が不況になると安全資産の円が買われて円高が進行する傾向があったものの、最近は各国の金融政策の違いを背景に円売りが加速している」としとてかつてのような円に対する安全資産的な魅力が後退しているとし、今回の市場介入も「円に対する信認低下を懸念したもの」との認識を示した。
10月12日にG20に先立って開催されたG7では為替市場の急激な変動についての懸念が声明として示されたものの、米財務長官やIMFはファンダメンタルズを反映した当然のドル高という認識であり、日銀の市場介入に理解は示すものの効果に対する評価は低いようだ。

日銀の黒田総裁はG20財務相・中銀総裁会合後に円安をけん制しつつも「今金利を引き上げる必要はない」として金融緩和政策の継続を強調している。また鈴木財務相は「G7とG20で日本の政策について説明したが具体的な協調策の議論はなかった」とし、今回は日米財務相会談の予定はないとした。
政府日銀としても介入で効果を発揮できない事態に陥ると制御不能の円安となりかねないことについての認識も踏まえて慎重な介入継続を検討している状況でもがいているのではないかと推察される。

【米長期債利回りは上昇】

10月13日のNYダウは一時500ドル安を超える急落から切り返して前日比827.87ドル高と大幅上昇、ナスダック総合指数も232.05ポイント高と反発した。
米長期債利回りは上昇した。指標の10年債利回りは前日比0.05%上昇の3.95%で一時は4.08%をつけて2008年10月以来の高水準に達し、30年債利回りは前日比0.04%上昇の3.92%。2年債利回りは0.17%上昇の4.46%で15年ぶり高値を更新している。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は10月5日午前に143.50円まで下げたところを起点とした上昇を継続しており、10月13日夜に147円台へ到達してから乱高下したものの14日午前は147円台序盤でジリ高の様相だ。10月13日夜の乱高下で付けた安値146.48円を割り込まないうちは14日午後から18日午後にかけての間への上昇を見込むが、13日夜安値を割り込む場合はいったん下げに入るとみて14日夜から19日未明にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では10月13日夜の乱高下においても遅行スパンの好転と先行スパンを上回る状況を維持している。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とし、遅行スパン悪化からは安値試し優先とするが、先行スパンを上回るうちは遅行スパンが悪化してもその後に好転するところから上昇再開とみる。先行スパンへ潜り込む場合はその下限を試すとみるが、強力な市場介入がなければ先行スパン下限では買いも入りやすいとみる。

60分足の相対力指数は10月13日夜に50ポイント台へ低下したところから70ポイント台へ戻し、再び反落したところも50ポイント台を維持しているので再び80ポイント前後を試す上昇余地ありとみるが、50ポイント割れからはいったん下げに入るとみて30ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、146.48円を下値支持線、147.67円を上値抵抗線とする。
(2)146.48円以上での推移中は上昇余地ありとし、147.67円超えからは148円台序盤(148.00円から148.20円)試しとみる。148円到達では売られやすいとみるが、口先介入にとどまるうちは高値警戒感から下げても押し目買いされやすいとみる。
(3)146.48円割れからはいったん下げに入るとみて146円前後への下落を想定する。146円前後は買われやすいとみるが、実弾介入で急落する場合は145円台中盤(145.70円から145.30円)へ下値目途を引き下げる。

【当面の主な予定】

10/14(金)
未 定 (中) 9月 貿易収支・米ドル建て (8月 793.9億ドル、予想 810.0億ドル)
未 定 (中) 9月 貿易収支・人民元建て (8月 5359.1億元、予想 5643.0億元)
10:30 (中) 9月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (8月 2.5%、予想 2.8%)
10:30 (中) 9月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (8月 2.3%、予想 1.0%)
15:00 (独) 9月 WPI(卸売物価指数) 前月比 (8月 0.1%)
18:00 (欧) 8月 貿易収支・季調済 (7月 -403億ユーロ、予想 -450億ユーロ)
18:00 (欧) 8月 貿易収支・季調前 (7月 -340億ユーロ)

21:30 (米) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 小売売上高・除自動車 前月比 (8月 -0.3%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 9月 輸入物価指数 前月比 (8月 -1.0%、予想 -1.1%)
21:30 (米) 9月 輸出物価指数 前月比 (8月 -1.6%、予想 -1.0%)
23:00 (米) 8月 企業在庫 前月比 (7月 0.6%、予想 0.9%)
23:00 (米) 10月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (9月 58.6、予想 59.0)
23:30 (米) クックFRB理事、講演



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