ドル円見通し 米雇用統計通過後はドル高、二度目の市場介入あるか試す(22/10/11)

8日早朝には145.44円をつけ、10日深夜には145.80円へ高値を伸ばして9月22日の日銀市場介入前の高値145.89円に迫った。

ドル円見通し 米雇用統計通過後はドル高、二度目の市場介入あるか試す(22/10/11)

ドル円見通し 米雇用統計通過後はドル高、二度目の市場介入あるか試す

〇ドル円、10/7は米雇用統計前の調整で144.70まで下げたが、米雇用統計発表後はドル高優勢
〇10/8早朝145.44をつけ10/10深夜145.80まで高値を伸ばす、9/22の日銀市場介入前高値145.89に迫る
〇二度目の介入が実施されるのか口先介入にとどまるのか、市場は政府・日銀の介入姿勢を試す状況
〇米雇用統計は堅調な内容、FRBの大幅利上げ継続感強め米長期債利回りが上昇、ドル全面高となる
〇NYダウは4日続落、ナスダックも続落、米長期債利回りは総じて連騰
〇145.22以上での推移中は上昇余地ありとして、146円を試すとみる
〇145.22割れからは、調整安入りとみる

【概況】

ドル円は10月5日午前安値143.50円からの上昇基調を継続、10月7日午前に145.14円をつけてから米雇用統計前の調整で144.70円まで下げたが、米雇用統計発表後は若干の乱高下を伴いながらもドル高優勢となり8日早朝には145.44円をつけ、10日深夜には145.80円へ高値を伸ばして9月22日の日銀市場介入前の高値145.89円に迫った。
米雇用統計では失業率がパンデミック発生前の水準へ改善、非農業部門就業者数が予想を上回って労働需給のひっ迫感が継続していることを示し、平均時給も高い伸びを維持しているために米FRBの大幅利上げ継続感を強めて米長期債利回りが上昇してドル全面高となっている。
ドル円は9月22日の市場介入による暴落後のリバウンドで144円台へ戻した後は145円台序盤では売られて144円割れを買い戻される持ち合い推移だったが、7日夜からの上昇により持ち合いから上放れに入ってきている。前回の市場介入前水準に達したことで、146円乗せを阻止する二度目の介入が実施されるのか口先介入にとどまるのか、市場としては政府・日銀の介入姿勢の強さを試す状況にある。

【米雇用統計は堅調内容でFRBの大幅利上げ継続に寄与】

9月の米雇用統計では、非農業部門就業者数は前月比26万3000人増となり8月の31万5000人増からは鈍化したものの市場予想の25.0万人増を上回り、堅調な水準を保った。7月分については53万7000人増へ当初発表の52万6000人増から上方修正された。
失業率は3.5%となり8月及び市場予想の3.7%を下回りパンデミック発生前の水準を回復した。
平均時給は前月比0.3%増で伸び率は8月と変わらず予想と一致したが着実な上昇が続いている。前年比は5.0%で8月の5.2%及び市場予想の5.1%を下回ったもののパンデミック発生前の3%台と比較しても高水準を維持している。総じて米FRBによる大幅利上げの継続に寄与するものとなった。

【米財務省はドル高を歓迎、円安を問題視せず】

10月9日に英紙フィナンシャル・タイムズ紙電子版に掲載されたインタビューでイエレン米財務長官は、ドル高については「国毎のマクロ的なファンダメンタルズの差」や「地政学的リスクによる安全資産買い」及び「金融引き締めのペースの差」によるものであり、「注意深く観察しているが市場はかなりうまく機能しており、国や政策、経済状況の根本的な違いを踏まえれば概ね適切」との見方を示した。
米財務省は9月22日の日銀による24年ぶりの単独での円買い介入について理解を示したが、インフレ高進を止めることを最重要課題としている状況にあってドル高はインフレ抑制効果をもたらすためにドル高を歓迎するスタンスと思われ、かつてのような円安による日本の対米輸出拡大に神経質となる状況とは異なる。英ポンドは史上最安値を更新、円は24年ぶり安値、ユーロは20年ぶり安値であり、日英欧の中銀協調介入でのドル高阻止でも行われない限りはドル高の流れも止まらないということだろう。

【NYダウは4日続落、米長期債利回りは連騰】

NYダウは10月7日に米雇用統計の堅調さと米FRBによる大幅利上げ継続による景気後退懸念から前日比630.15ドル安と大幅下落となり10月5日から3日続落となったが、10月10日も債券市場が休場で手掛かりに欠けたものの米雇用統計後の流れは変わらずとみて前日比93.91ドル安と4日続落に終わっている。10月3日と4日の2日間で1500ドルを超える反騰が入ったものの戻り売りから崩れて連騰による上昇幅の大半を解消している。ナスダック総合指数も10月7日に前日比420.90ポイント安と大幅下落となり10日は同110.31ポイント安の続落で昨年11月の史上最高値以降の安値を更新した。

米長期債利回りは10月10日が休場だったものの10月7日は総じて上昇した。指標の10年債利回りは前日比0.06%上昇の3.89%で週を終えたが10月5日の0.12%上昇、6日の0.07%上昇からの3連騰で9月28日の4.02%から10月4日の3.56%までの急低下を切り返している。
30年債利回りは前日比0.06%上昇の3.85%で、10月4日の3.63%からの反騰継続で4連騰となり9月28日の3.90%に迫っているが、終値ベースでは2020年3月のパンデミック発生以降の最高値とした。
2年債利回りは前日比0.05%上昇の4.31%で、9月26日の4.36%から10月4日に一時4.00%まで低下したところから切り返しに入り10月5日から3連騰となった。
ドル円としては二度目の市場介入を警戒しつつも日米金利差、金融政策スタンスの差によるドル高円安の継続感が強まっている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は10月5日午前に143.50円まで下げたところで目先の底をつけて戻しに入ったとして10月6日夜から10日夜にかけての間は高値切り上げを試しやすい時間帯と指摘した。
10月10日夜に145.85円をつけて9月22日高値に迫ったところからはやや下げているものの145円台中盤で確りしているので市場介入を警戒しつつもさらに高値更新を継続しやすい状況にあると思われる。
10月7日夕刻の小反落時安値145.22円を割り込まないうちは12日以降へ高値形成期が延びる可能性があるが、7日夕刻安値を割り込む場合はいったん調整安に入りやすいとみて11日の日中から12日の日中にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では10月5日午前安値からの反発で遅行スパンが好転、先行スパンを上抜いたがその後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、遅行スパンが悪化するところからはいったん調整安に入るとみて先行スパンの下限を試す流れを想定し、先行スパン転落からは下げ足が速まる可能性があると注意する。

60分足の相対力指数は10月10日午前から10日深夜への一段高に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られるので調整安に入りやすいところと注意し、50ポイント以上での推移中は65ポイント超えから上昇継続とするものの、50ポイント割れからは40ポイント割れを試す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、145.22円を下値支持線、146円を上値抵抗線とする。
(2)145.22円以上での推移中は上昇余地ありとして146円を試すとみる。口先介入にとどまって上昇が抑えられない場合は146円台中盤(146.30円から146.70円)への上昇を想定するが、145.80円以上では市場介入による急落に注意する。
(3)145.22円割れからは調整安入りとみる。実弾での市場介入がなく高値警戒感からの調整安なら144円台後半は買いも入りやすいとみてその後に145.30円を超えるところから上昇再開と146円試しを想定するが、実弾介入で急落する場合は144円前後への下落を想定する。ただし、介入規模が9月22日よりも厳しくなければ二度目の介入に対する市場反応は一度目よりも鈍くなり、急落場面ではバーゲンハントの買いも入ってくるのではないかと思われる。

【当面の主な予定】

10/11(火)
国際通貨基金(IMF)年次総会(10/16日まで)
14:00 (日) 9月 景気ウオッチャー現状判断 (8月 45.5、予想 47.8)
14:00 (日) 9月 景気ウオッチャー先行判断 (8月 49.4、予想 50.8)
15:00 (英) 9月 失業保険申請件数 (8月 0.63万件)
15:00 (英) 8月 失業率・ILO方式 (7月 3.6%、予想 3.6%)
21:45 (欧) レーンECB理事、講演
24:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
25:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省3年債入札
27:00 (英) カンリフ英中銀副総裁、講演
27:35 (英) ベイリー英中銀総裁、講演

10/12(水)
G20財務相・中央銀行総裁会議(10/13まで)
07:00 (豪) エリス豪中銀総裁補、講演
08:50 (日) 8月 機械受注 前月比 (7月 5.3%、予想 -3.0%)
08:50 (日) 8月 機械受注 前年同月比 (7月 12.8%、予想 12.1%)
15:00 (英) 8月 月次GDP 前月比 (7月 0.2%、予想 0.0%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 -0.3%、予想 -0.1%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 1.1%、予想 0.5%)
15:00 (英) 8月 貿易収支・物品 (7月 -193.62億ポンド、予想 -204.00億ポンド)
15:00 (英) 8月 貿易収支・全体 (7月 -77.93億ポンド、予想 -87.00億ポンド)
17:00 (英) ハスケル英中銀委員、講演
18:00 (欧) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 -2.3%、予想 0.6%)
18:00 (欧) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 -2.4%、予想 1.2%)

20:35 (英) ピル英中銀理事、講演
21:30 (米) 9月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (8月 -0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (8月 8.7%、予想 8.4%)
21:30 (米) 9月 PPIコア指数 前月比 (8月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 PPIコア指数 前年同月比 (8月 7.3%、予想 7.3%)
22:30 (欧) ラガルドECB総裁、国際金融協会年次会合で講演
23:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会参加
26:00 (英) マン英中銀委員、講演
26:00 (米) 財務省10年債入札
26:45 (米) バーFRB副議長、講演
27:00 (米) FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録 9/20-21日開催分


注:ポイント要約は編集部

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