リスクはドル高、年初来高値を意識した展開(週報10月第2週)

先週のドル/円相場はドルが小高い。再び年初来高値145.90円を意識した展開で、週末NYクローズも145円台だった。

リスクはドル高、年初来高値を意識した展開(週報10月第2週)

リスクはドル高、年初来高値を意識した展開

〇先週のドル円、一時143円半ばへ下げるも年初来高値145.90を意識した展開、週末も145円台で終える
〇リスクはドル高方向で、今週は145.90の攻防にまずは注目、上抜ければ1998年高値147.64が視界内に
〇最近の為替市場の主役はユーロやポンド、実際の値動きもやや荒っぽく、今週も欧州通貨の動きに注目
〇今週はFOMC議事録要旨公開や消費者物価指数・小売売上高などの米経済指標が発表予定
〇今週のドル/円予想レンジは、143.00-146.50、ドル高・円安については145.44が最初の抵抗
〇ドル安・円高方向は、144円近くまで値を上げている移動平均の21日線をめぐる攻防に注目

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場はドルが小高い。再び年初来高値145.90円を意識した展開で、週末NYクローズも145円台だった。

前週末は、英紙が「トラス英首相、有権者の不満が高まっていると世論調査が示しているなかでも、財政計画をすべて堅持する意向」と報じ話題に。また、ロシアに関する話題も引き続き多いなか、とくにウクライナが東部要衝の「リマンをロシアから奪還した」と伝えられたことが思惑を呼んでいたようだ。
そうした状況下、ドル/円は144.60-70円で寄り付いたのちドル買い優勢。ただ、9月22日にドル売り・円買い介入が観測された145円台では上値も重く、一時回復するも定着できなかった。逆に上値トライが失敗したことで、143円半ばまで振り落とされる局面も観測されている。しかし、週末に発表された米雇用統計を受けて再びドル買い機運が高まると、今度はしっかりと145円台乗せ。週末NYでも145円台を維持し取引を終えた。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「北朝鮮情勢」と「ロシア情勢」について。
前者は、4日早朝に北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、日本はプチパニックに。北朝鮮によるミサイル発射は、その時点で今年23回目を数えており、悪い意味で慣れっこになっていた感もあったが、北海道などでJアラートが発令されたこともあり一部では緊張感が急速に高まった。また、北朝鮮の威嚇行為であるミサイル発射はその後も続き、6日はICBMとみられるミサイル発射が観測されたうえ、週末9日の未明にも同じくICBMを発射したと推測されている。なお、一連のミサイル発射で日米韓をはじめとする各国からの非難に対し、北朝鮮は「米国の直接的な軍事的脅威からの自衛のためであり、近隣の国や地域の安全は阻害していない」と反論。自身の行動を正当化していた。

対して後者は、ウクライナ戦線における戦況が目まぐるしい。プーチン氏はテレビ演説で「併合4州の状況を安定化させる」と発言するなか、ウクライナ大統領から「ウクライナ軍がリマン、そして南部ヘルソン州の3集落を奪還した」との発表が聞かれるなど、むしろ情勢はウクライナ側が大きく巻き返している感を否めない。そうしたなか、プーチン氏がサポロジエ原発国有化の大統領令に署名したとの報道や、ノバク副首相による「価格上限導入なら石油減産の可能性」といった発言など、西側への脅しや圧力と思しき動きも幾つか観測されていたものの、ロシアが一方的に「併合」したウクライナ東部のヘルソン地域に送り込んだストレモウソフ次官が、自国のショイグ国防相を痛烈に非難したとして話題になるなど、ロシアの内部崩壊がはじまっている可能性も取り沙汰されていたようだ。

<< 今週の見通し >>

先週のドル/円は、年初来高値145.90円を意識した動き。高値にはとどかなかったが、週明け3日にドル売り・円買い介入が観測された9月22日以来の145円台乗せ。そして週末にかけてはさらに上値を広げる格好となった。リスクは依然としてドル高方向で、今週は前述した145.90円の攻防にまずは注目。ただ、上抜ければ1998年高値の147.64円が名実ともに視界内に捉えられそう。さらなるドル高の進行もあり得るだろう。
ここ最近の為替市場の主役は、材料的にも注目要因の多いユーロやポンドとなっており、実際の値動きもやや荒っぽい。ドルは対円以外でも堅調推移で、ユーロ/ドルがパリティ(1ユーロ=1ドル)をなかなか超えていけないことなどは気掛かりでもある。今週も欧州関連ニュースとともに、欧州通貨の動きにまずは注目。それに対して、日米は一時期後退していた米金利先高観が復活し、ドル高・円安を支援している感を否めない。そうしたなか今週は、FOMC議事録要旨公開や消費者物価指数などの米経済指標発表に、とくに注目が集まっているようだ。

テクニカルに見た場合、先週のドル/円相場は先々週まで形成していた144.90円を上限としたレンジを早いタイミングで上抜けると、そのまま145円台へと上伸している。いわゆる「円安シーリング」を超えるような状況下、今週は年初来高値145.90円をうかがう展開を見込む向きも多い。なお、これまでに発せられた本邦の要人発言によると、具体的なレベルより、円安進行スピードを警戒している感がうかがえる。それからすると、「緩やかなドル高進行」であれば、ある程度は許容されるとの見方も取り沙汰されているようだ。

今週は、9月の消費者物価指数や同小売売上高といった重要な米経済指標の発表が予定されている。市場予想を上回る高インフレが確認された場合には、ドル高の支援要因となる可能性も。また、週央12-13日にはワシントンでG20財務相・中銀総裁会議、14日からはIMF国際通貨金融委員会が開催される見通しだ。それらも一応注意しておきたい。

そんな今週のドル/円予想レンジは、143.00-146.50円。ドル高・円安については、先週高値の145.44円が最初の抵抗で、超えればいよいよ145.90円。そして、それも超えれば1998年高値が現実的な上値メドに。
対してドル安・円高方向は、本稿執筆時に144円近くまで値を上げている移動平均の21日線をめぐる攻防に注目。下回ると、先週安値の143.53円などがターゲットとなりそうだ。

リスクはドル高、年初来高値を意識した展開

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