来週の為替相場見通し:『ドル円は145円台半ばへ急伸も介入警戒感から上値余地は限定的か』(10/8朝)

今週は週を通して買い戻しが優勢となり、週末にかけて、145.46まで持ち直す動きとなりました。

来週の為替相場見通し:『ドル円は145円台半ばへ急伸も介入警戒感から上値余地は限定的か』(10/8朝)

『ドル円は145円台半ばへ急伸も介入警戒感から上値余地は限定的か』

〇今週のドル円、週央にかけ143.52まで下落後、週末にかけ145.46まで急伸
〇週初台頭した米国の利上げ姿勢緩和期待、雇用統計堅調等で週末にかけ後退
〇ユーロドル、週前半パリティ回復するも、ECB議事要旨のハト派な内容等に週末0.9726まで急落
〇ドル円、主要レジスタンスを突破、強い買いシグナルも点灯、テクニカルの地合い強い
〇ファンダメンタルズでは、FRBのタカ派姿勢再確認される一方、介入警戒感残る
〇上昇余地乏しく、引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):142.50ー146.50、(EURUSD):0.9550−0.9900

今週のレビュー(10/3−10/7)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初144.61で寄り付いた後、@英国による市場安定化を目的とした9/28の緊急措置発動サプライズ(長期国債買い入れ再開とQT開始期限の延期)や、A豪中銀による予想より小幅な利上げ実施(50bpの利上げ予想に対して結果は25bpの利上げ)、B米ISM製造業景況指数及び米JOLTS労働力調査の不冴な結果、C上記@ABを背景とした米長期金利の急低下(米国の積極利上げ姿勢が幾分和らぐのではないかとの思惑浮上→米10年債利回りが9/28に記録した4.01%から3.56%へ急低下→米ドル全面安)、D政府・日銀による介入警戒感(鈴木財務相は「必要に応じて断固たる措置を取る」と発言)、E北朝鮮による5年ぶりとなる日本上空を通過する形式での弾道ミサイル発射(北朝鮮は直近10日間で弾道ミサイルを5度発射→リスク回避の円買い圧力)、F心理的節目144.00割れに伴う仕掛け的なドル売り・円買いが重石となり、週央にかけて、週間安値143.52(9/26以来の安値圏)まで急落しました。

しかし、一目均衡表転換線をバックに下げ渋ると、Gニュージーランド準備銀行(RBNZ)による50bpの利上げ実施(豪中銀に続いてRBNZも小幅利上げに留めるとの見方が浮上していたが、結果的に大幅利上げを決定したことで、市場参加者の間で広がっていた世界的な金融引き締めピークアウト期待が急速に後退)や、F上記Eを背景とした米長期金利の反転上昇(米10年債利回りは3.56%から3.90%へ急上昇)、G米9月ISM非製造業景況指数の良好な結果、Hサンフランシスコ連銀デイリー総裁による「インフレ抑制に向け断固(resolute)として利上げを継続する」とのタカ派的な発言、

Iミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「積極的な利上げを一時停止するのはかなり先」との市場で燻る利上げ休止観測を牽制する発言、JクックFRB理事による「持続的なインフレがFEDの急速な利上げを正当化する」とのタカ派的な発言、K米9月雇用統計の良好な結果(非農業部門雇用者数が予想を上回った他、失業率が予想以上に低下)が支援材料となり、週末にかけて、9/22以来、約2週間ぶり高値となる145.46まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間10/8午前4時20分現在)では、145.43前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初0.9800で寄り付いた後、@英国による市場安定化を目的とした9/28の緊急措置発動サプライズの余韻や、A豪中銀による予想より小幅な利上げ実施、B米経済指標の冴えない結果、C上記@ABを背景とした米長期金利の急低下(米ドル全面安)、D欧州株の堅調推移、E短期筋の大規模ショートカバーが支援材料となり、翌10/4にかけて、週間高値1.0000(9/21以来となるパリティ回復)まで急伸しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、F上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売り(心理的節目1.0000を上抜けられなかったことに伴う失望感)や、Gユーロ圏9月総合PMIの市場予想を下回る結果、Hロシア・ウクライナを巡る地政学的リスク、IECB議事要旨のハト派的な結果(9月ECB会合では75bpの利上げが決定されるも、議事要旨には一部当局者が50bpの利上げに留めることを主張していたことが判明)、

Jニュージーランド準備銀行(RBNZ)による50bpの利上げ実施、K米経済指標の良好な結果(米9月ADP雇用統計、米9月製造業PMI、米9月ISM非製造業景況指数、米9月雇用統計)、L米当局者(ミネアポリス連銀カシュカリ総裁やクックFRB理事など)によるタカ派的な発言、M上記JKLを背景とした米長期金利の急上昇が重石となり、週末にかけて、週間安値0.9726まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間10/8午前4時20分現在)では、0.9732前後で推移しております。

来週の見通し(10/10−10/14)

<ドル円相場>
ドル円(USDJPY)は9/23に記録した約24年1ヵ月ぶり高値145.90(1998年8月以来の高値圏)をトップに反落に転じると、政府・日銀による実弾介入を経て一時140.35まで暴落しましたが、今週は週を通して買い戻しが優勢となり、週末にかけて、145.46まで持ち直す動きとなりました。ローソク足が主要レジスタンスポイントを軒並み突破している他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」や「強気のパーフェクトオーダー」も成立しているため、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派傾斜観測(今週は米当局者よりタカ派的な発言が複数あり)や、A日銀による金融緩和の継続方針、B上記@Aを背景とした日米金融政策格差(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、C本邦貿易赤字拡大に伴う構造的な円売り圧力など、ドル高・円安を連想させる材料が残っています。

但し、145円台後半は、D政府・日銀による介入警戒感が残存するため、ドル円の上値余地は乏しいと判断できます(政府・日銀が円買い介入に踏み切った際のドル円高値が145.90であったため、同水準に近づくにつれて介入警戒感が意識される公算大)。事実、今週は岸田首相や鈴木財務相より円安牽制発言が見られた他、財務省の鈴木為替市場課長からは「介入資金に限界があるとは認識していない」との強気発言もありました。また、財務省が9/7に発表した9月末時点の外貨準備高によると、外国債券が急減しており、介入資金を米国債の売却で対応したことも明らかとなりました(市場コンセンサスであった介入資金を米国債売却で手当てすることは難しいとの見方が消失)。従って、政府・日銀による介入余力は今後も潤沢にあると見られ、146円や147円に向かって上昇することは容易では無いと考えられます。

こうした中、来週は10/12に開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議や、10/13に予定されている米9月消費者物価指数、10/14に期限を迎える英国の緊急国債買い入れ措置に注目が集まります。@G20でドル高是正を求める発言が出る場合(10/6にイエレン財務長官が「ドル高に伴う為替変動がもたらす潜在的な影響に留意している」と発言したことで市場ではG20でドル高是正議論が始まるとの思惑浮上→ドル売り再開期待)や、A米CPIが市場予想を下回る場合(インフレピークアウト期待再開→米金利低下→米ドル売り)、B英国が緊急措置の延期を発表する場合(英国による緊急国債買い入れ措置延長→世界的な金利低下→米金利低下→米ドル売り)などには、ドル売り圧力が強まる恐れがあることから、来週はドル円の反落リスクに注意が必要な時間帯が増えそうです(本邦介入警戒感に伴う円買いと、上記@ABを背景としたドル売りの組み合わせ)。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):142.50ー146.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は、9/28に記録した約20年3ヵ月ぶり安値0.9535(2002年6月以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、10/4に一時1.0000(パリティ)まで持ち直しましたが、週末にかけて再び0.97台前半へと下落するなど、冴えない動きとなりました。上方に複数のレジスタンスポイントを控えている他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の下落トレンド」も継続しており、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、@欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる積極利上げは景気への強い逆風)や、Aロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの継続懸念(天然ガスの海底パイプライン「ノルドストリーム」を用いた政治的揺さぶりの継続→天然ガス供給懸念の残存)、B英国による緊急安定化措置の賞味期限切れリスク(9/28に発表された英中銀による緊急安定化措置を受けて市場はひとまず落ち着きを取り戻したものの、国債の緊急買い入れ期限が10/14に迫っているため、来週は再び英国発で金融市場が不安定化する恐れあり)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ安・ドル高トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(英国で起きたようなトリプル安の動きが近い将来ユーロ圏でも発生するとの警戒感あり)。尚、来週は複数のECB当局者発言(ポルトガル中銀センテノ総裁、レーンECB専務理事、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、ラガルドECB総裁、オランダ中銀クノット総裁、スペイン中銀デコス総裁、オーストリア中銀ホルツマン総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁など)が予定されているものの、既に市場では次回ECB理事会での75bp利上げが織り込まれているため、余程極端な発言が出てこない限り、ユーロドル相場への影響は小さいと考えられます。このため、来週は、「英国の国債買い入れ期限に関するヘッドライン」や「米長期金利の動向」を睨みながらの他通貨主導の相場展開となりそうです(英ポンドや米ドルに振らされる神経質な展開を想定)。

来週の予想レンジ(EURUSD):0.9550−0.9900

注:ポイント要約は編集部

『ドル円は145円台半ばへ急伸も介入警戒感から上値余地は限定的か』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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