来週の為替相場見通し:『日米金融政策イベント通過後のドル高・円安再開を想定』(9/17朝)

ドル円(USDJPY)は高値圏での一進一退の状態が続いております

来週の為替相場見通し:『日米金融政策イベント通過後のドル高・円安再開を想定』(9/17朝)

『日米金融政策イベント通過後のドル高・円安再開を想定』

〇今週のドル円、週初に141.84まで下落後、週央にかけ144.96まで急伸
〇米8月CPI鈍化が期待ほどではなく、コア指数は予想以上のインフレ加速を示したこと等が背景
〇ただ、直近高値144.99に迫るにつれ当局の口先介入増え、日銀レートチェック報道もあり、急落
〇142.55まで反落後143円近辺まで持ち直して越週
〇ユーロドル、ウクライナ反攻報道に1.0199まで上昇後、米CPIショックで急落、パリティ付近で越週
〇ドル円、高値圏での一進一退続くもテクニカルの地合い強く、ファンダメンタルズもドル円上昇材料多い
〇当局の介入実施、通貨安抑制の政策変更は想定し難く、来週はドル円が底堅さを取り戻す展開か
〇FOMC、日銀等の政策イベント要注目、FOMCは1%利上げ実施を予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):141.50ー146.50、(EURUSD):0.9800−1.0200

今週のレビュー(9/12−9/16)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初142.25で寄り付いた後、@米金利低下に伴うドル売り圧力(インフレピークアウト期待→米10年債利回りが一時3.26%へ低下→米ドル売り)や、A株式市場の堅調推移(リスク選好のドル売り圧力)、B対ユーロでのドル売り圧力が重石となり、翌9/13にかけて、週間安値141.84まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると(一目均衡表転換線をバックに押し目買い圧力が強まると)、C米8月消費者物価指数(結果8.3%、予想8.1%、前回8.5%)および、米8月消費者物価コア指数(結果6.3%、予想6.1%、前回5.9%)が市場予想を上回るサプライズを示したことや、D上記Cを背景とした米長期金利の急上昇(インフレピークアウト期待後退→米FRBによる次回FOMCでの100bp利上げ観測急浮上→米10年債利回りが3.26%から3.47%へ急上昇→米ドル全面高)、Eリスク回避のドル買い圧力(米FRBによるタカ派傾斜観測→市場心理悪化→株式市場急落→資産現金化需要のドル買い圧力)、F心理的節目145.00突破を目指した仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、週央にかけて、週間高値144.96まで急伸しました。

もっとも、9/7に記録した直近高値144.99を抜けられず失速すると、G上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売りや、H株式市場の急反落(日経平均株価の急落→リスク回避の円買い再開)、H神田財務官による「緊張感を持って監視し、あらゆるオプションを排除せずに適切な対応をしたい」「投機によるものには必要な措置を取らざるを得ない」「為替の過度な変動、無秩序な動きは経済・金融に有害」との円安牽制発言、I松野官房長官による「日銀と緊密に連携しつつ、高い緊張感をもって市場動向を注視する」との円安牽制発言、J鈴木財務相による「やるときは間髪入れずに瞬時にやる」との円安牽制発言、K日銀がレートチェックを実施しているとの観測報道、

L上記HIJKを背景とした為替介入への警戒感(レートチェックは為替介入の布石として捉えられることからドル円ロングの巻き戻しが活発化)が重石となり、同日(9/14)海外時間に一時142.55まで反落する場面も見られました。その後は、M本邦8月貿易収支(結果2兆8173億円赤字、予想2兆3820億円赤字、前回1兆4339億円赤字)の赤字額急拡大(比較可能な1979年以降で最大→構造的な円売り圧力)や、N本邦通貨当局による円安牽制やレートチェックが9/15以降ストップしたことに対する安堵感が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間9/17午前2時30分現在)では、143.00前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0080で寄り付いた後、@10/27に予定されている次回ECB理事会での連続大幅利上げ観測の高まり(ドイツ連銀ナーゲル総裁はインフレ傾向が続くのであればさらなる利上げが必要とのタカ派的な見解を発表)や、A上記@を背景とした欧州長期金利の急上昇(独10年債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力)、Bロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの後退期待(ロシアがウクライナ東部ハリコフ州のオスキル川以西の州全域から軍の撤退を命じたとの一部報道)、C上記Bを背景とした欧州株の堅調推移、D投資家ポジションの大規模ショートカバーが支援材料となり、週明け早々に、週間高値1.0199(8/17以来、約1ヵ月ぶり高値圏)まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、E米8月消費者物価指数および米8月消費者物価コア指数の市場予想を上回る結果や、F米8月生産者物価指数および米8月生産者物価コア指数の市場予想を上回る結果、G上記EFを背景とした米長期金利の急上昇、H資産現金化需要のドル買い圧力(米FRBによるタカ派傾斜→市場心理悪化→リスクオフ再開)、I心理的節目1.0000割れに伴う仕掛け的なユーロ売り・ドル買い圧力、Jドイツ9月ZEW景況感指数(結果▲61.9、予想▲59.6、前回▲55.3)の冴えない結果、Kユーロ圏7月鉱工業生産(結果▲2.4%、予想+0.3%、前回+2.2%、※前年比)の冴えない結果、

Lユーロ圏7月貿易収支(結果340億ユーロ赤字、予想315億ユーロ赤字、前回246億ユーロ赤字)の赤字額拡大、M欧州株の軟調推移が重石となり、週末にかけて、週間安値0.9945(9/8以来、約1週間ぶり安値圏)まで下落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、N週末前のポジション調整や、O米ミシガン大学が発表した期待インフレ率が昨年来の低水準を記録したこと(米金利低下→米ドル売り)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間9/17午前2時30分現在)では、1.0005前後まで持ち直す動きとなっております。

来週の見通し(9/19−9/23)

<ドル円相場>
ドル円(USDJPY)は高値圏での一進一退の状態が続いております(9/7高値144.99、9/14高値144.96と2週続けて心理的節目145.00をトライするも失敗→その後反落)。但し、ダウンサイドに複数のサポートラインを控えていること(今週は一目均衡表転換線がサポートとして確り機能)や、日足・週足・月足の全てで強い買いシグナルを示唆する一目均衡表三役好転や強気のパーフェクトオーダー、ダウ理論の上昇トレンドが継続していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「強い」と判断できます(今週の下落は上昇トレンドの過程で見られる一時的なポジション調整。一巡後の反発リスクに要警戒)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派傾斜(今週発表された米CPI・米PPIが共に市場予想を上回ったことで、来週の米FOMCでの100bp利上げ観測が浮上。本稿執筆時点で100bpの利上げが15%程度織り込まれている状況)や、A日銀による金融緩和の継続方針(黒田総裁は先月のジャクソンホール会合で金融緩和政策の継続を強調)、B上記@Aを背景とした日米金融政策格差(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り。日米10年債利回り格差は3.25%まで急拡大)、C日本とその他先進国との金融政策格差(米国のみならず、豪州やニュージーランド、カナダやスイス、欧州や英国など、日本以外のほぼ全ての先進国が金融引き締め政策に転換済→スイス中銀が来週9/22の会合で市場予想通り50bpか75bpの利上げに踏み切れば、マイナス金利採用国が世界で日本だけになる状態→日本とその他各国との名目金利差拡大→クロス円上昇→ドル円連れ高)、

D米政府・米当局によるドル高容認スタンス(米国はインフレ抑制に繋がるドル高を強力に支持する構え)、E本邦貿易赤字拡大に伴う構造的な円売り圧力(今週発表された米8月貿易収支は過去最大の赤字額を記録)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

本邦通貨当局による円安牽制やレートチェックが引き続き「円売り抑制」の一因として警戒されるものの、現実的に見て、諸外国の理解を得ないままでの単独為替介入(現在はどこの国も通貨高政策でインフレ抑制を図りたい為、日本が単独為替介入に踏み切ると、世界中で為替介入を通じた通貨高競争に進展する恐れ)や、通貨安抑制を目的とした短絡的な政策変更は想定しづらく、本邦通貨当局の対応はあくまで口先介入的な位置づけに留まるものと推察されます。この場合、市場への影響度は徐々に低下する公算が大きく(口先介入のみに留まって実際には動かないことを市場が見透かす可能性が高く)、来週は本邦通貨当局による口先介入効果の賞味期限切れを通じて、ドル円相場が底堅さを取り戻す展開が想定されます。

尚、来週は日米金融政策イベントに注目が集まります。9/22午前3時に予定されている米FOMCでは、75bpの連続利上げが見込まれると共に、一部で100bpの大幅利上げを期待する向きも少なくないため、市場参加者の関心は利上げ幅(75bpなのか100bpなのか)に集まっています。また、今回は四半期FOMCとなるため、FOMC参加者の政策予想分布図「ドットチャート」にも注目が集まります。更にパウエルFRB議長が記者会見でタカ派的なスタンスを強調するか否かにも警戒が必要でしょう。当方は、「100bp利上げ実施+ドットチャートでFF金利が年内4%を超過を示唆+2023年と2024年は政策金利据え置きを示唆+2025年利下げ開始示唆+パウエルFRB議長は景気よりインフレ抑制にコミット」のタカ派な組み合わせを想定しているため、FOMC通過後のドル高再開(米長期金利上昇→米ドル全面高)を予想しております。

一方、同日日本時間に予定されている日銀金融政策決定会合については、現行政策の現状維持が見込まれると共に、黒田総裁記者会見でも、為替相場についての踏み込んだ発言は出ないと想定されるため(記者からは先般の三者会合の件や、黒田総裁による「1 日に 2 円も 3 円も動くのは急激な変化」との牽制発言についての質問が見込まれますが、黒田総裁は「日銀は為替レートを目標にしていない」との見解に終始すると見られるため)、日銀金融政策決定会合通過後は、円安牽制への警戒感後退を通じて円売り圧力が強まるものと考えられます。以上を踏まえ、当方では引き続き、日米金融政策イベント通過後のドル高・円安トレンド再開をメインシナリオとして予想いたします(状況次第では心理的節目145.00を大きく突破する可能性あり)。

来週の予想レンジ(USDJPY):141.50ー146.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル(EURUSD)は、9/7に記録した約19年9ヵ月ぶり安値0.9864(2002年12月以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週前半に一時1.0199(8/17以来、約1ヵ月ぶり高値圏)まで持ち直しましたが、週末にかけて反落に転じると、パリティを挟んでの上下動に終始しました。但し、上方に複数のレジスタンスポイント(一目均衡表転換線や基準線など)を控えていることや、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーが成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「弱い」と判断できます(現在は下落トレンドの過程で見られる一時的な踊り場局面→来週の米FOMC後に下落トレンドが再開する恐れあり)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@欧州経済の先行き不透明感(今週発表された欧州経済指標は軒並み市場予想を下回る冴えない結果。スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる金融引き締め強化姿勢は欧州経済への逆風を通じて欧州株→ユーロ下落に波及する恐れあり)や、Aエネルギー危機顕在化への警戒感、B欧州エネルギー関連企業によるヘッジ先物取引の追い証に端を発した資金繰り悪化懸念、C欧米名目金利差拡大に着目したユーロ売り・ドル買い圧力、D米政府・米当局によるドル高容認スタンス、Eイタリアを巡る政局不透明感(9/25にイタリア総選挙が実施予定)など、ユーロドルの下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ安・ドル高トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は9/22に予定されているユーロ圏9月消費者信頼感指数速報値や、9/23のユーロ圏9月製造業・サービス業PMI速報値に注目が集まります。市場予想を下回る冴えない結果となる場合には、欧州経済の先行き不安→欧州株下落の波及経路で、ユーロドルに強い下押し圧力が加わるシナリオが想定されます。また、9/20−9/21の日程で開催される米FOMC(含むSEP・ドットチャート)でタカ派的な見解が示される場合や、パウエルFRB議長記者会見でインフレ抑制への強いコミットが示される場合にも、米金利上昇→米ドル高の経路で、ユーロドルに強い下落圧力が加わるものと推察されます。このため、来週は週央以降のユーロドル下落に特に警戒が必要でしょう(状況次第では9/7に記録した約19年9ヵ月ぶり安値0.9864を下抜ける恐れあり)。

来週の予想レンジ(EURUSD):0.9800−1.0200


注:ポイント要約は編集部

『日米金融政策イベント通過後のドル高・円安再開を想定』

ドル円日足

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