来週の為替相場見通し:『米金利上昇を背景にドル円は約24年ぶり高値圏へ急伸』(9/3朝)

ドル円(USDJPY)は8/2に記録した直近安値130.40をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約24年ぶり高値となる140.80(1998年8月31日以来の高値圏)まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『米金利上昇を背景にドル円は約24年ぶり高値圏へ急伸』(9/3朝)

『米金利上昇を背景にドル円は約24年ぶり高値圏へ急伸』

〇今週のドル円、週初の137円台半ばから週末にかけ約24年ぶり高値140.80まで急伸
〇ジャクソンホールでのパウエル議長のタカ派発言以降強まったFRBタカ派傾斜観測が基調
〇雇用統計はじめ発表された米指標の好調もドル円をサポート、米長期金利は急上昇
〇ユーロドル、1.0079-0.9912レンジ、方向感に欠けるがユーロ売りで出易いか
〇ドル円、主要ポイント上抜け、買いサインすべて成立、テクニカルの地合い極めて強い
〇ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想、週初は米国休日で静かなスタートか
〇来週の予想レンジ(USDJPY):138.50ー142.50、(EURUSD):0.9750−1.0150

今週のレビュー(8/29−9/2)

今週のドル円相場(USDJPY)は、週初137.65で寄り付いた後、早々に週間安値137.55まで軟化しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、@先週末のジャクソンホール会議でパウエルFRB議長が「物価を安定させるためには、金融引き締め政策を一定期間維持することが必要」「歴史は早急過ぎる政策緩和を強く戒めている」とタカ派的な見解を示したことや、Aリッチモンド連銀バーキン総裁による「インフレが予測通りに低下するとは思わない」とのタカ派的な発言、B米8月コンファレンスボード消費者信頼感指数(結果103.2、予想97.6、前回95.3)の力強い結果、Cニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「FRBが来年利下げする可能性は非常に低い」とのタカ派的な発言、D中川日銀審議委員による「今の時点では緩和バイアスを維持すると思う」とのハト派的な発言、

Eクリーブランド連銀メスター総裁による「来年の利下げを予想せず」「2023年初めに4%以上の金利引き上げを支持」とのタカ派的な発言、F米8月ISM製造業景況指数(結果52.8、予想52.0、前回52.8)の力強い結果、G心理的節目140.00突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、H米8月非農業部門雇用者数(結果31.5万人、予想30.0万人、前回52.8万人)の市場予想を上回る結果、I米長期金利の急上昇(米10年債利回りは一時6/21以来となる3.29%へ急上昇)が支援材料となり、週末にかけて、1998年8月31日以来、約24年ぶり高値となる140.80まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、J米3連休を控えたポジション調整や、K鈴木財務相による「為替の急激な変動は好ましくない」との円安牽制発言が重石となり、本稿執筆時点(日本時間9/3午前6時00分現在)では、140.20前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初0.9977で寄り付いた後、@フォンデアライエン欧州委員長による「電力市場への緊急介入を準備している」との発言(電力価格押し下げを目的とした緊急措置)や、A上記@を背景とした欧州経済を巡る過度な悲観論の後退(オランダTTF天然ガス先物価格の下落もユーロの支え)、Bオランダ中銀クノット総裁による「ユーロ圏ではインフレが恐らく当面は高い水準にとどまるためECBは迅速な利上げを続けるべき」とのタカ派的な発言、Cエストニア中銀ミュラー総裁による「異例の高インフレを踏まえECBは9月の理事会で75bpの利上げを選択肢に含めるべき」
とのタカ派的な発言、DレーンECB専務理事兼チーフエコノミストによる「金利引き上げを継続する必要がある」とのタカ派的な発言、

Eユーロ圏8月消費者物価指数速報値(結果+9.1%、予想+9.0%、前回+8.9%)の伸び率加速、Fユーロ圏8月消費者物価コア指数速報値(結果+4.3%、予想+4.1%、前回+4.0%)の伸び率加速、Gドイツ連銀ナーゲル総裁による「9月に強力な利上げが必要である」とのタカ派発言、Hフィンランド中銀レーン総裁による「来週の理事会で利上げを決定する予定でその後も追加利上げが必要になる」とのタカ派的な発言、I独債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力(次回ECB理事会での75bp利上げ観測)、J月末ロンドンフィキシングに絡むユーロ買いフローが支援材料となり、週央にかけて、週間高値1.0079まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、

K欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中での大幅利上げは景気への逆風との見方)や、L欧州圏のエネルギー危機発生リスク(ロシア国営ガスプロム社によるノルドストリーム1の稼働停止→天然ガス価格の急上昇→欧州圏のインフレ加速懸念)、M米経済指標の良好な結果、N米金利上昇に伴うドル買い圧力、Oパリティ割れに伴う仕掛け的なユーロ売り・ドル買いが重石となり、翌9/1にかけて、週間安値0.9912まで反落しました。週末にかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間9/3午前6時00分現在)では、0.9955前後で推移しております。

来週の見通し(9/5−9/9)

<ドル円相場>
ドル円(USDJPY)は8/2に記録した直近安値130.40をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約24年ぶり高値となる140.80(1998年8月31日以来の高値圏)まで急伸しました。この間、主要テクニカルポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転や強気のパーフェクトオーダー、強気のバンドウォーク、ダウ理論の上昇トレンドが全て成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。これまで上値目途として意識されていた7/14高値139.40や心理的節目140.00を上抜けした為、ここから先は青天井相場(上方に目立ったレジスタンスポイントが見当たらないため、どこまでも上昇トレンドが続く相場展開)が警戒されます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派傾斜観測の高まり(ジャクソンホール会議以降、米当局者によるタカ派発言が相次ぐ展開。良好な米経済指標も相俟って次回FOMCでの75bp利上げ確率は上昇)や、A日銀による金融緩和の長期化方針(ジャクソンホール会議で黒田総裁は「日銀は金融緩和策を維持する必要がある」と発言)、B上記@Aを背景とした日米金融政策格差(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、C米政府・米当局によるドル高容認スタンス(インフレ抑制に繋がるドル高を黙認する構え)、D米経済指標の良好な結果(米経済を巡るリセッション懸念後退→米FRBがインフレ抑制に集中できる外部環境)、E本邦貿易赤字拡大に伴う恒常的な円売り圧力など、ドル高・円安トレンドの継続を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は9/5が米国休日となるため、静かな週明けスタートが予想されますが、9/6以降は、米8月ISM非製造業景況指数(9/6)や、ブレイナード FRB 副議長講演(9/7)、ベージュブック(9/7)、パウエル FRB 議長講演(9/8)などの重要イベントが目白押しとなるため、来週も今週同様、米長期金利を睨みながらのボラタイルな相場展開が続きそうです(特に来週はブラックアウト期間入り最後の週となるため、ブレイナード副議長やパウエル議長など、米当局者発言に特に注目。75bp利上げが確実視される場合や、来年以降の利上げ観測が浮上する場合などには、米長期金利上昇→米ドル高の経路でドル円が141.00、142.00、143.00などの心理的節目を立て続けに突破する恐れあり)。

来週の予想レンジ(USDJPY):138.50ー142.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は8/10に記録した約1ヵ月ぶり高値1.0369(7/5以来の高値圏)をトップに反落に転じると、8/23に一時0.9901(2002年12月以来、約19年8ヵ月ぶり安値圏)まで下げ幅を広げましたが、今週は振れを伴いつつも小幅に持ち直す動きとなりました。但し、上方に複数のレジスタンスポイント(一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線)を控えている他、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーも成立しているため、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、A欧州圏で高まるエネルギー危機発生リスク(ロシア国営ガスプロム社によるガス供給停止懸念)、B欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる金融引き締め→欧州経済への強い逆風→欧州株に下押し圧力)、C米FRBによるタカ派傾斜観測(欧米名目金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い圧力)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。特に週末海外時間には懸念されていた通り、ロシア国営ガスプロム社より9/3再開予定だった「ノルドストリーム1」にオイル漏れが検出されたため修理まで稼働停止を継続するとの方針が示されるなど、上記Aを背景としたユーロ売りが出易い外部環境が続いております。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ安・ドル高トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は9/8に発表されるECB理事会に注目が集まります。8/31に発表されたユーロ圏8月消費者物価指数が過去最高を記録したこと(エネルギー価格のみならず食料品価格の上昇も確認→インフレ圧力長期化の恐れ)や、ECB当局者より立て続けにタカ派的な発言が出ていること等を踏まえると、9/8のECB理事会で75bpの利上げが行わる可能性は相応に高いと考えられます(ラガルドECB総裁も理事会後の記者会見でタカ派的なスタンスを強調する公算大)。このため、理事会直後は「ECBによる大幅利上げ→欧州債利回り上昇→ユーロ買い」の波及経路に注意が必要でしょう。

但し、上述の通り、スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締めはユーロ圏景気へ強い逆風をもたらすことから、一巡後は「欧州株下落→ユーロ売り」の波及経路に警戒が必要でしょう(先週・今週と2週連続で踏み留まっている心理的節目0.9900の支持帯を下抜けできれば、0.98台や0.97台への大幅下落を引き起こす可能性あり。パリティ割れの常態化がメインシナリオ)。

来週の予想レンジ(EURUSD):0.9750−1.0150

注:ポイント要約は編集部

『米金利上昇を背景にドル円は約24年ぶり高値圏へ急伸』

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