ドル円見通し 米雇用統計から乱高下するも140円割れを買われて確り、歴史的上昇の継続(週報9月第一週)

ドル円は雇用統計発表直後に140.58円へ上昇してから早々に139.94円へ反落、その後は139.90円台をサポートに買い戻し歩調で越週。

ドル円見通し 米雇用統計から乱高下するも140円割れを買われて確り、歴史的上昇の継続(週報9月第一週)

米雇用統計から乱高下するも140円割れを買われて確り、歴史的上昇の継続

〇ドル円、先週末米雇用統計前はドル高感継続、高値を140.49まで伸ばす
〇雇用統計、予想以上のNFPに対し過去分下方修正、失業率悪化、平均時給の伸び鈍化等まだら模様
〇市場の解釈定まらず、一旦139.94へ反落するも、買い戻され高値140.79つけ140.20レベルで越週
〇米主要株価指数は下落、米長期債は低下反応、10年債利回り3.19%に低下
〇9月FOMCの利上げ幅のコンセンサス形成には至らず、9/13-14の米8月CPI、PPIを注視
〇いずれにせよ米長期債利回りの上昇とドル高の基調は継続、ドル円も上昇続く
〇139.50以上での推移中は140.79超えから142円台143円台を目指す
〇直前高値から1円規模の反落入りやすく注意、但し、139円前後は買われやすいか

【概況】

ドル円は9月2日夜の米8月雇用統計へ向けたドル高継続感から9月1日夜に1998年8月以来の140円台に到達、2日午前に140.25円、雇用統計発表前には140.49円まで高値を伸ばしていた。
米雇用統計では非農業部門就業者数が予想を若干上回ったものの過去分の下方修正があり、失業率が予想外に3.7%へ悪化、平均時給の伸びも鈍化したため、これらの内容を見て米FRBの大幅利上げ姿勢が継続するのか若干緩むのか市場の解釈が定まらず、為替市場は当初にドル高反応を見せてからドル安へと変わり深夜以降はドル高へ戻るという乱高下型の反応となった。
ドル円は雇用統計発表直後に140.58円へ上昇してから早々に139.94円へ反落、更に140.79の高値をつけ、その後は139.90円台をサポートに買い戻し歩調で越週。やや乱調な展開となったが、ユーロドルが深夜から反落して再びパリティを割り込み、ポンドドルは深夜からの反落で昨年6月天井以降の最安値を更新するなど全般的には乱高下が落ち着いた後はドル高基調の継続という印象が強まったと思われる。

【米雇用統計通過で為替市場は乱高下、NYダウは反落、米長期債利回りは低下】

9月2日夜に米労働省が発表した8月雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比31.5万人増となり市場予想の30万人増を若干上回ったが7月からは伸びが鈍化した。6月分は速報の39.8万人増から29.3万人増へと大幅下方修正され、7月分も速報の52.8万人増から52.6万人増へと下方修正されて合計10.7万人の下方修正となった。失業率は3.5%の市場予想に反して3.7%への悪化した。また平均時給の伸び率は前月比が0.3%で7月の0.5%及び市場予想の0.4%を下回り、前年同月比は5.2%で7月と同じだったが市場予想の5.3%を下回った。

失業率の悪化と6月分の大幅下方修正にサプライズ感があったために市場の受け止め方も混乱が見られ、為替市場では9月1日夜から戻していたユーロやポンド、豪ドル等が雇用統計発表後に高値を切り上げたが、深夜から反落に転じてドル高基調の継続感を示して週を終えている。このうち9月8日のECB理事会で0.75%利上げが予想されているユーロドルは9月1日深夜安値割れには至らなかったが、利上げペースがそこまで上がらないとみられている英ポンドは9月1日深夜安値を割り込んで昨年6月1日天井以降の安値を更新して2020年3月底1.1404ドル割れへの余裕が乏しくなっている。

9月2日のNYダウは前日比337.98ドル安と反落した。8月26日に前日比1008.38ドル安の大幅下落から4日続落し、1日は買い戻しで下げ渋ったものの再び反落して8月16日高値以降の安値も更新したことで金融引き締めによる景気後退懸念の強まりを示した。ナスダック総合指数は9月2日を前日比154.26ポイント安として8月26日から6営業日続落となった。
一方で米長期債利回りは0.75%利上げの可能性がやや後退したとの受け止めで前日までの大幅上昇が一服して低下反応となった。10年債利回りは前日比0.06%低下の3.19%だったが、前週末の8月26日終値3.03%からは0.16%の大幅上昇だった。30年債利回りは前日比0.01%低下の3.35%だったが前週末の3.19%からは0.16%の上昇だった。2年債利回りは前日比012%低下の3.39%で前週末の3.38%からわずかな上昇だったが、9月1日には3.55%を付けて15年ぶり高水準に達している。

【米FOMCの9月利上げ幅とその後の展開を巡る思案は暫く続く】

米FRBは9月20-21日に次回FOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)を予定しており、0.50%ないし0.75%の利上げが予想されている。3月に0.25%、5月には通常の倍の0.50%、6月と7月は通常の3倍の0.75%ずつの利上げが決定されてきた。8月26日のジャクソンホールシンポジウムにおけるパウエル米FRB議長講演では従来からの「景気よりも物価抑制が最重要」との認識により物価抑制への強い決意が示されたことで0.75%利上げの可能性が高まり、地区連銀総裁達も雇用統計とCPIを見極めて0.50%か0.75%の利上げ幅を判断するとの見解を示していたのだが、8月米雇用統計の内容はいずれの利上げ幅になるのかという点では決定打にはならなかったと思われ、0.50%利上げがやや優勢となりつつも0.75%利上げの可能性を否定するものではなかったと思われる。

9月13日の8月米CPI、14日の8月米PPIの発表等を見て利上げ幅も判断されると思われるが、仮に9月の利上げ幅が0.50%であっても大幅な利上げであり、年末から来年への利上げ継続とその後も利上げした水準を維持する政策スタンスは劇的なインフレ低下が発生しないことには変わらないため、今後も米長期債利回りの上昇とドル高の基調は継続し、ドル円も高値追及への流れを続けるのではないかと思われる。

【ドル円は7月高値を超えて1998年天井へ挑戦の流れ続く】

【ドル円は7月高値を超えて1998年天井へ挑戦の流れ続く】

ドル円は7月14日高値139.39円から8月2日安値130.39円まで9円の急落調整が入ったが、その後の反騰により7月14日高値を超えてダブル天井破りとし、24年ぶりの140円台に到達した。
概ね3か月(2か月強から4か月)周期の底打ちサイクルでは8月2日安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りした状況にあると思われる。サイクルトップも概ね3か月前後の周期であり、7月14日高値を基準として次の高値形成期は10月序盤から11月序盤にかけての間と想定されるので、米国の利上げ継続と日銀の金融緩和継続の環境が変わらなければドル高円安基調はさらに続くと思われる。
今後の上値目途としては、5月24日から7月14日への上昇幅13.04円と同規模のN字型上昇として143.43円、8月2日への下落幅の倍返しで148.39円と計測されるが、歴史的な過去の高値としては1998年8月11日天井の147.63円があり、140円台を固めて高値切り上げに入ればそれらの目標を順次試す可能性も十分にあるのではないかと思われる。

直前安値から10円を超える上昇の直後には調整安も入りやすく、2月24日から3月28日にかけて10.71円の上昇後に3月31日安値まで3.84円の反落が入り、そこから5月9日高値まで10.08円の上昇後に5月24日安値まで4.99円のやや長い調整が入っている。現状も直前高値から3円前後、やや大きめなら5円規模の反落が何時入っても不思議ないと思われるが、そうした急落調整でも中長期的な環境が変わらなければバーゲンハント買いされやすいと思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、139.50円を下値支持線、9月2日夜高値140.79円を上値抵抗線とする。
(2)139.50円以上での推移中は9月2日高値超えから142円台、さらに143円台を目指す上昇を想定する。
(3)直前高値から1円を超える規模の反落は入りやすいと注意し、139.50円割れからは139円前後試しを想定するが、139円前後は買い拾われやすいとみる。

注:ポイント要約は編集部

【当面の主な予定】

9/5(月)
休場、米国、カナダ
OPECプラス閣僚級会合、EUウクライナ会合
東方経済フォーラム(9/8まで、ウラジオストク)
10:30 (豪) 8月 求人広告件数
10:45 (中) 8月 財新サービス業PMI (7月 55.5、予想 54.0)
16:55 (独) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 48.2、予想 48.3)
17:00 (欧) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 50.2、予想 50.2)
17:30 (英) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 52.5、予想 52.5)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前月比 (6月 -1.2%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 -3.7%、予想 -0.7%)
24:30 (英) マン英中銀委員、講演

9/6(火)
08:30 (日) 7月 全世帯消費支出 前年同月比 (6月 3.5%、予想 4.6%)
10:30 (豪) 4-6月期 経常収支 (1-3月期 75億豪ドル、予想 220億豪ドル)
13:30 (豪) RBA(豪中銀)、政策金利 (現行 1.85%、予想 2.35%)
15:00 (独) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 -0.4%、予想 -0.7%)
15:00 (独) 7月 製造業新規受注 前年同月比 (6月 -9.0%、予想 -13.4%)
22:45 (米) 8月 サービス業PMI改定値 (7月 44.1、予想 44.1)
23:00 (米) 8月 ISM非製造業景況指数 (7月 56.7、予想 55.2)

9/7(水)
未 定 (中) 8月 貿易収支・米ドル建て (7月 1012.6億ドル、予想 917.0億ドル)
未 定 (中) 8月 貿易収支・人民元建て (7月 6826.9億元)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前期比 (1-3月 0.8%、予想 1.1%)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 3.3%、予想 3.5%)
14:00 (日) 7月 景気先行指数速報値 (6月 100.9、予想 100.2)
14:00 (日) 7月 景気一致指数速報値 (6月 98.6、予想 100.0)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 0.4%、予想 -0.6%)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -0.5%、予想 -2.1%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP確定値 前期比 (改定値 0.6%、予想 0.6%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 3.9%、予想 3.9%)
21:30 (米) 7月 貿易収支 (6月 -796億ドル、予想 -703億ドル)
23:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
24:55 (米) ブレイナードFRB副議長、講演
27:00 (米) バーFRB副議長、講演
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

9/8(木)
07:45 (NZ) 4-6月期 製造業売上高 前期比 (1-3月 1.2%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.5%、予想 0.7%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP改定値 年率換算 (速報 2.2%、予想 2.9%)
08:50 (日) 7月 経常収支・季調前 (6月 -1324億円、予想 8009億円)
08:50 (日) 7月 経常収支・季調済 (6月 8383億円、予想 199億円)
08:50 (日) 7月 貿易収支・国際収支ベース (6月 -1兆1140億円、予想 -1兆1374億円)
10:30 (豪) 7月 貿易収支 (6月 176.70億豪ドル、予想 145.00億豪ドル)
12:05 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー現状判断 (7月 43.8、予想 43.8)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー先行判断 (7月 42.8、予想 44.3)

21:15 (欧) ECB(欧州中銀)、政策金利 (現行 0.50%、予想 1.25%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.2万件、予想 24.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 143.8万人、予想 143.8万人)
21:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
22:10 (米) パウエル米FRB議長、講演
28:00 (米) 7月 消費者信用残高 前月比 (6月 401.5億ドル、予想 325.0億ドル)
24:00 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
25:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、講演

9/9(金)
EUエネルギー担当相、臨時会合
08:50 (日) 8月 マネーストックM2 前年同月比 (7月 3.4%、予想 3.4%)
10:30 (中) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 2.7%、予想 2.8%)
10:30 (中) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 4.2%、予想 3.2%)
23:00 (米) 7月 卸売売上高 前月比 (6月 1.8%、予想 0.8%)
23:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、開会挨拶
25:00 (米) ウォラーFRB理事、講演

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