ドル円見通し ドル円は8月2日以降の高値更新、揺れ返しのドル安収まり再びドル高へ(22/8/31) 

30日夜には138.03円まで安値を切り下げたが、138円台を維持したところで米CB消費者信頼感指数やJOLTS求人数等が市場予想を上回ったことでドル高再開感が強まった。

ドル円見通し ドル円は8月2日以降の高値更新、揺れ返しのドル安収まり再びドル高へ(22/8/31) 

ドル円は8月2日以降の高値更新、揺れ返しのドル安収まり再びドル高へ

〇ドル円、30日夜138.03まで安値切り下げるが、強い米経済指標受け深夜139.06到達
〇米8月消費者信頼感指数、7月雇用動態調査ともに予想上回りドル高感再開
〇NYダウ3日続落の前日比308.12ドル安、景気後退への警戒感、中国の景気鈍化が影響
〇米10年債利回り、前日比変わらずの高止まり、2年債利回りは一時15年ぶり高水準
〇今後の米雇用統計やCPI等結果良好なら、次回FOMCにおいて0.75%利上げとなる可能性高まる
〇138円以上での推移中は一段高余地ありとし、139.09円超えからは139円台中盤を目指すとみる
〇138円割れからは137円台前半への下落を想定する

【概況】

ドル円は8月26日夜のパウエル米FRB議長によるジャクソンホール講演でのタカ派姿勢からドル全面高となる中で8月26日夜安値136.28円から29日午後高値139.00円まで2.72円の大幅上昇となり7月14日高値139.39円以来の139円台到達となったが、その後はドル買い一巡によりユーロドルがパリティ超えまで戻すなど重要イベント通過後の揺れ返し的なドル安となり、ドル円も29日午後高値以降をジリ安の推移として30日の日中も軟調な推移が続いた。

8月30日夜には138.03円まで安値を切り下げたが、138円台を維持したところで米CB消費者信頼感指数やJOLTS求人数等が市場予想を上回ったことでドル高再開感が強まったために30日深夜には139.06円をつけて29日午前高値をわずかに超えた。
ユーロドルは1.00ドルのパリティを挟んでの揉み合いで推移しているが、ポンドドルは8月29日安値を割り込んで一段安に入り、豪ドル米ドルも29日午後安値に迫り、南アランドやメキシコペソも29日安値を割り込んで一段安しており、全般にドル高が再開している印象だ。ただ、クロス円全般の下落も大きいためにドル円は高値を切り上げたものの勢い付かずに30日深夜以降は139円台を維持できずにいる

【米消費者信頼感指数とJOLTS求人数が予想を超える】

米コンファレンス・ボードによる8月の消費者信頼感指数は103.2となり7月の95.3から4か月振りの改善となり市場予想の97.7を大幅に上回った。現況指数は145.4で前月の139.7から上昇、期待指数も75.1で前月の65.6から改善した。
米労働省による7月の雇用動態調査(JOLTS)では非農業部門求人数が前月比19万9000件増の1123万9000件となり4か月振りに増加して市場予想の1045万件を上回った。また6月分は1104万件となり速報の1069万8000件から上方修正された。
これら経済指標が強かったことは米FRBの大幅利上げに寄与するものと市場は受け止めてドル高反応となった。8月31日はADP民間雇用報告とシカゴ購買部景況指数、9月1日はISM製造業景況指数、9月2日は8月米雇用統計の発表と続くが、それらが良好なら9月20-21日の次回FOMCにおける利上げ幅が0.50%ではなく0.75%となる可能性が高まりドル高も勢い付く可能性があると思われる。

【NYダウは3日続落、景気後退懸念先行】

8月30日のNYダウは前日比308.12ドル安と下落した。一時は400ドルを超える下落幅だった。8月26日にはパウエル米FRB議長講演による大幅利上げ姿勢が再確認されてリセッション入りへの懸念が強まったことで前日比1008.38ドル安の大幅下落となり、29日に前日比184.41ドル安、30日も下げ止まれずに3営業日続落に終わった。ナスダック総合指数も前日比134.53ポイント安に終わり、8月26日の前日比497.56ポイント安、29日の前日比124.04ポイント安から3日続落となった。
大幅利上げへの警戒感と共に中国の感染拡大による景気鈍化も影響している。深セン等では交通機関の停止やイベント中止、大規模繁華街の封鎖等が始まっているが、中国すべての省でこの10日間に感染者が確認されており、大豆や鉄鉱石輸入の主要港である大連では9月4日までロックダウンされる。

【米長期債利回りは高止まり、2年債利回りは15年ぶり高水準】

8月30日の米長期債利回りはまちまちだったがいずれも高止まり。指標の10年債利回りは前日比変わらずの3.11%だったが、23時の米経済指標発表後に3.15%まで上昇するなど高止まりの様相。30年債利回りは0.02%低下の3.22%となったが、2年債利回りは0.02%上昇の3.45%となり、高値の3.49%は前日と変わらなかったものの終値ベースではパンデミック以降の最高値で15年ぶり高水準となっている。

8月26日の米FRB議長によるジャクソンホール講演からのドル全面高が落ち着いて揺れ返しのドル安が見られたものの早くもドル高再開へ進み始めた。
米FOMCは年内にあと3回、9月20-21日、11月1-2日、12月13-14日の開催が予定されており、今後の米雇用統計やCPI等を見ながら次回会合では0.50%の大幅利上げか3会合連続で0.75%の超大幅利上げとなるのか決まってくると思われる。

NY連銀のウィリアムズ総裁は8月30日に「労働市場が強すぎる」「金融引き締めにより需要を抑えて供給に見合ったものにする必要がある」とし、中立金利を3.0〜3.5%として引き締めには3.5%よりも政策金利を引き上げる必要があると述べた。また米アトランタ連銀のボスティック総裁は「インフレが明らかに減速し始めれば9月会合での利上げ幅を0.75%から縮小する理由になる」としたが、インフレ抑制についてはまだ「かすかな光」としており、インフレ動向次第では0.75%利上げもあり得るとの認識を示した。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月23日夜安値から3日目となる8月26日夜安値で直近のサイクルボトムをつけて強気サイクル入りしたとしてサイクルトップ形成期を8月29日夜から31日深夜にかけての間と想定した。
8月30日は138円割れを回避して高値を切り上げているのでまだ上昇余地ありとみるが、米雇用統計前にいったん調整安を入れる可能性もあるところとみて138円割れからは弱気サイクル入りと仮定して8月31日夜から9月2日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では8月26日夜の急騰から遅行スパンが好転、先行スパンからも上抜けたが、29日午後高値の後は139円強から138円までのレンジで推移しているため遅行スパンは悪化と好転を繰り返している。8月30日夜高値超えからは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、138円割れからはいったん下げに入るとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。またその際に先行スパンからの転落を回避して再び先行スパンを上抜き返す場合は上昇再開とするが、先行スパンから転落の場合は下げ足が早まる可能性もあると注意する。

60分足の相対力指数は8月30日夜に40ポイントまで下げたところから持ち直しているが70ポイント超えへ進めておらず、29日午後高値からの一段高に際しては弱気逆行型となっている。65ポイント超えからは上昇再開とみるが29日高値時からは弱気逆行となりやすいと注意し、40ポイント割れからは20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、138.00円を下値支持線、8月30日夜高値139.09円を上値抵抗線とする。
(2)138円以上での推移中は一段高余地ありとし、139.09円超えからは139円台中盤(139.30円から139.70円)を目指すとみる。139.50円以上は反落警戒とするが、138円以上での推移なら9月1日午前にかけても高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)138円割れからは137円台前半(137.50円から137.00円)への下落を想定する。137.25円以下は反騰注意とするが、138円を割り込んでの推移なら9月1日午前にかけても安値試しへ進みやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/31(水)
休場、マレーシア、インド
10:30 (中) 8月 国家統計局製造業PMI (7月 49.0、予想 49.2)
14:00 (日) 7月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (6月 -2.2%、予想 -3.5%)
14:00 (日) 8月 消費者態度指数・一般世帯 (7月 30.2、予想 29.3)
16:55 (独) 8月 失業者数 前月比 (7月 4.80万人、予想 2.70万人)
16:55 (独) 8月 失業率 (7月 5.4%、予想 5.5%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価(HICP)指数速報値 前年同月比 (7月 8.9%、予想 9.0%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価(HICP)コア指数速報値 前年同月比 (7月 4.0%、予想 4.1%)
21:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
21:15 (米) 8月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (6月と7月は発表無し、予想 30.0万人)
22:45 (米) 8月 シカゴ購買部景況指数 (7月 52.1、予想 52.0)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計

9/1(木)
07:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
07:30 (豪) 8月 Aig製造業PMI (7月 52.5)
08:00 (豪) 8月 S&Pグローバル製造業PMI速報値 (7月 54.5)
08:50 (日) 4-6月期 法人企業調査・全産業設備投資額 前年同期比 (1-3月 3.0%、予想 3.0%)
10:30 (豪) 4-6月期 民間設備投資 前期比 (1-3月 -0.3%、予想 0.4%)
10:45 (中) 8月 財新製造業PMI (7月 50.4、予想 50.1)
16:55 (独) 8月 S&Pグローバル製造業PMI改定値 (速報 49.8、予想 49.8)
17:00 (欧) 8月 S&Pグローバル製造業PMI改定値 (速報 49.7、予想 49.7)
17:30 (英) 8月 S&Pグローバル製造業PMI改定値 (速報 46.0、予想 46.0)
18:00 (欧) 7月 失業率 (6月 6.6%、予想 6.6%)

21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 -4.6%、予想 -4.6%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.3万件、予想 25.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 141.5万人、予想 145.0万人)
22:45 (米) 8月 S&Pグローバル製造業PMI改定値 (速報 51.3、予想 51.3)
23:00 (米) 8月 ISM製造業景況指数 (7月 52.8、予想 52.0)
23:00 (米) 7月 建設支出 前月比 (6月 -1.1%、予想 -0.1%)
28:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演


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