ドル円見通し FRB議長講演からのドル高一巡するもドル円は高止まり(22/8/30)

週明けもドル高が継続したために午後高値で139.00円をつけて7月14日高値139.39円以来の139円台到達となった。

ドル円見通し FRB議長講演からのドル高一巡するもドル円は高止まり(22/8/30)

ドル円見通し FRB議長講演からのドル高一巡するもドル円は高止まり

〇ドル円、ドル高継続により東京時間午後に高値139.00をつけ、7/14高値139.39以来の139円台到達
〇その後ドル買い一巡で夜138.26まで下げるも先高期待から買われて確り、深夜以降138.50を超えて推移
〇NYダウ・ナスダックともに続落、米長期債利回りは総じて上昇
〇138.26以上での推移中は一段高余地ありとし、139円超えからは140円を目指すとみる
〇138.26割れを弱気転換注意とし、137.70割れからは137円台序盤への下落を想定する

【概況】

ドル円は8月26日夜のパウエル米FRB議長によるジャクソンホール講演において金融引き締めへのタカ派姿勢が再確認されたとしてドル全面高となる中、26日夜安値136.28円から急伸となり137円台を回復して先週を終えていたが、週明けもドル高が継続したために午後高値で139.00円をつけて7月14日高値139.39円以来の139円台到達となった。午後から夕刻にかけてドル買いが一巡したことでユーロやポンド、豪ドル等が総じて買い戻されたためにドル円も29日夜安値で138.26円まで下げたが先高期待から買われて確りし、深夜以降は138.50円を超える水準を維持して推移した。
ユーロや豪ドルが26日夜からの急落幅に対して半値強を戻し、ポンドも3分の1以上を戻したが、ドル円は26日夜からの上昇幅2.72円に対して29日夜安値まで0.74円の下落幅であり、3分の1に満たない程度の下げだった。クロス円ではユーロ円が26日高値137.94円を超えて139円に迫るなど議長講演前の水準を大幅に超えるものが続出しており円安感が突出している印象だ。

【ジャクソンホール講演は材料消化】

パウエル米FRB議長はジャクソンホール講演において「高止まりしているインフレ抑制には金融引き締めをしばらくの間維持する必要がある」、「物価安定へ向けて決意を持って行動する」と強調した。9月FOMCでの具体的な利上げ幅については言及しなかったものの、8月25日から26日にかけての米地区連銀総裁達による発言を見れば0.50%ないし0.75%の大幅利上げが想定され、雇用統計やインフレ指標次第では0.75%利上げの可能性も十分にあるという印象を与えた。
議長講演に対して最も悲観的な反応を見せたのはNYダウであり、26日の前日比1008.38ドル安は今年5月18日の前日比1164.52ドル安以来の急落ぶりとなり、29日も前日比184.41ドル安の続落となった。ナスダック総合指数も26日の前日比497.56ポイント安から29日は同124.04ポイント安の続落となった。

8月半ばまでは金融引き締めやインフレ高止まりによりテクニカルなリセッションに陥っても深刻な不況は回避されるだろうとの楽観見通しが優勢だったが、ここにきてインフレの高止まりと米FRBによる引き締め状態の長期化が不況入りへの不安を強め始めていると思われる。
株安はドル円にとっての圧迫要因となりやすいが26日夜から29日にかけての推移をみるとリスク回避的な円買い戻しは意識されず、主要国の金融引き締め継続による円安感が勝る状況のようだ。

【米長期債利回りは上昇、2年債利回りは15年ぶり高水準】

8月29日の米長期債利回りは総じて上昇した。指標の10年債利回りは前週末比0.07%上昇の3.11%、30年債利回りは同0.05%上昇の3.24%、2年債利回りは同0.02%上昇の3.43%となった。
8月26日の議長講演当日はNYダウの大幅下落による株売り債券買いも入ったことで10年債利回りは前日比0.01%上昇の3.04%にとどまったが、利上げした水準の長期化見通しから上昇感を強めて8月2日の2.52%以降の最高値とした。利上げに敏感な2年債利回りは一時3.48%をつけて6月14日の3.46%を超え、2007年11月以来の水準に達した。

米FOMCは年内にあと3回、9月20-21日、11月1-2日、12月13-14日の開催が予定されている。今年3月からの連続利上げが年末まで続けば3.8%から4.0%への上昇が想定されるため、2年債利回りはまだ上昇余地があり、10年債利回り等も利上げ状態の長期化予想を踏まえれば現状からさらに上昇して不思議ない状況と思われる。
ドル円にとっては2年債及び10年債利回りの上昇基調が続くうちは2021年1月底以降の歴史的な大上昇を継続しやしい環境であり、ECBや英中銀、豪中銀等もFRBに追従して利上げを継続してゆけば利上げできない日銀とのスタンスの差とインフレの高止まりによる経常収支悪化感を背景にクロス円での円安が進み、ドルストレートでドル高が一服したところでもドル円が押し上げられる状況で推移しやすいのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月23日夜安値から3日目となる8月26日夜安値で直近のサイクルボトムを付けて強気サイクル入りしている。8月24日夜高値を基準としてサイクルトップ形成期は29日夜から31日深夜にかけての間と想定されるのでまだ一段高余地ありとみるが、急騰後の修正安も入りやすいところのため、29日夜安値138.26円割れを弱気転換注意とし、137.70円割れからは弱気サイクル入りと仮定して31日夜から9月2日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では8月26日夜の急騰から遅行スパンが好転、先行スパンからも上抜けたが、29日午後高値の後は上げ渋りから横ばい推移のために遅行スパンは悪化しやすい位置にある。
先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開へ進むとみるが、先行スパンへ潜り込み始めるところからはいったん下げに入る可能性ありと注意して先行スパン下限を試すとみる。

60分足の相対力指数は8月29日午後高値時に80ポイントを超えたがその後は低下傾向で60ポイントまで下げている。50ポイント以上を維持するうちは一段高余地ありとし、70ポイント超えからは再び80ポイントへ迫る上昇を想定するが、相場が高値を更新するところで指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られる場合はいったん下げに入りやすいと注意し、50ポイント割れからは40ポイント前後への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月29日夜安値138.26円を下値支持線、8月29日午後高値139.00円を上値抵抗線とする。
(2)138.26円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは一段高余地ありとし、139円超えからは140円を目指すとみる。139.70円以上は反落警戒圏とするが、138.26円以上での推移なら31日午前にかけても高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)138.26円割れを弱気転換注意とし、137.70円割れからは137円台序盤(137.30円から137.00円)への下落を想定する。137.20円以下は反騰注意とするが、138円を割り込んでの推移なら31日午前にかけても安値試しへ進みやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/30(火)
休場、トルコ
10:30 (豪) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 -0.7%、予想 -3.0%)
18:00 (欧) 8月 経済信頼感 (7月 99.0、予想 98.0)
18:00 (欧) 8月 消費者信頼感確定値 (速報 -24.9)
21:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
21:00 (独) 8月 消費者物価指数速報値 前月比 (7月 0.9%、予想 0.3%)
21:00 (独) 8月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (7月 7.5%、予想 7.8%)
22:00 (米) 6月 連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (5月 1.4%、予想 0.8%)
22:00 (米) 6月 ケース・シラー住宅価格指数 前年同月比 (5月 20.5%、予想 19.2%)
23:00 (米) 8月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (7月 95.7、予想 97.4)
24:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、WSJ主催討論会
25:00 (欧) オーストリア、ギリシャ、スウェーデンの各中銀総裁、アルプバッハ・フォーラム講演

8/31(水)
休場、マレーシア、インド
07:45 (NZ) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 -2.3%)
08:50 (日) 7月 小売業販売額 前年同月比 (6月 1.5%、予想 1.9%)
08:50 (日) 7月 鉱工業生産速報値 前月比 (6月 9.2%、予想 -0.5%)
08:50 (日) 7月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (6月 -2.8%、予想 -2.4%)
10:00 (NZ) 8月 ANZ企業信頼感 (7月 -56.7)
10:30 (中) 8月 国家統計局製造業PMI (7月 49.0、予想 49.3)
14:00 (日) 7月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (6月 -2.2%、予想 -3.5%)
14:00 (日) 8月 消費者態度指数・一般世帯 (7月 30.2、予想 29.3)

16:55 (独) 8月 失業者数 前月比 (7月 4.80万人、予想 2.70万人)
16:55 (独) 8月 失業率 (7月 5.4%、予想 5.5%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価(HICP)指数速報値 前年同月比 (7月 8.9%、予想 9.0%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価(HICP)コア指数速報値 前年同月比 (7月 4.0%、予想 4.1%)
21:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
21:15 (米) 8月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (6月と7月は発表無し、予想 30.5万人)
22:45 (米) 8月 シカゴ購買部景況指数 (7月 52.1、予想 52.5)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計


注:ポイント要約は編集部

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