来週の為替相場見通し:『ジャクソンホールを経てドルは全面高。来週は米雇用統計に注目』(8/27朝)

今週は再び137円台半ばを回復するなど、全値戻しに向けて底堅い動きが続きました。

来週の為替相場見通し:『ジャクソンホールを経てドルは全面高。来週は米雇用統計に注目』(8/27朝)

『ジャクソンホールを経てドルは全面高。来週は米雇用統計に注目』

〇今週のドル円、135.81-137.72レンジ、週末のジャクソンホール会合に向け上下
〇パウエル議長は物価安定重視姿勢強調、ドル買いとなるも週間高値は超えず
〇ユーロドル、欧州経済先行き不安と米長期金利上昇にパリティ割れ、一時0.9901まで下落
〇ドル円、テクニカルの地合い強く、ファンダメンタルズもドル円上昇トレンド継続をサポート
〇短期、中長期とも、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想
〇7/14高値139.40に向けて続伸する公算大きく、状況次第で140.00もターゲットに
〇来週の予想レンジ(USDJPY):135.00ー140.00、(EURUSD):0.9650−1.0150

今週のレビュー(8/22−8/26)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初136.88で寄り付いた後、@米7月シカゴ連銀全米活動指数(結果+0.27、予想は▲0.25、前回▲0.19)の力強い結果や、A米長期金利の反転上昇(米10年債利回りは7/21以来となる節目3%の大台突破)、B上記Aを背景としたドル全面高の流れが支援材料となり、翌8/23にかけて、週間高値137.72(7/22以来、約1ヵ月ぶり高値圏)まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、C米8月製造業PMI速報値(結果51.3、予想52.0、前回52.2)の市場予想を下回る結果や、D米8月サービス業PMI速報値(結果44.1、予想49.2、前回47.3)の大幅悪化、E米7月新築住宅販売件数(結果51.1万件、予想57.5万件、前回59.0万件)の急低下、F米8月リッチモンド連銀製造業指数(結果▲8、予想▲4、前回0)の冴えない結果、

G上記@ABCを背景とした米長期金利の急低下、H短期筋の大規模ロスカット(ドル円LONGポジションの投げ)が重石となり、同日海外時間に、週間安値135.81まで急落しました。もっとも、8/19安値135.71や、一目均衡表雲上限をバックに下げ渋ると、I米7月耐久財受注の航空機を除く非国防資本財=コア資本財(結果0.4%、予想0.3%、前回0.9%)の市場予想を上回る結果や、J米4ー6月期GDP価格指数(結果+8.9%、予想+8.7%、※前期比)の市場予想を上回る結果、K米4ー6月期実質GDP改定値(結果▲0.6%、予想▲0.7%、※前期比年率)の市場予想を上回る結果、L米新規失業保険申請件数(結果24.3万件、予想25.2万件)の良好な結果、Mミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「最も懸念すべきはFRBや市場が基調的なインフレ圧力の強さを過小評価していること」「インフレを克服するためには自身が想定しているよりもさらに積極的な利上げが必要」とのタカ派的な発言、

Nアトランタ連銀ボスティック総裁による「年内にまだ利上げ余地がある」「インフレがピークアウトしたと判断するのは時期尚早」とのタカ派的な発言、Oフィラデルフィア連銀ハーカー総裁による「金利を上げてからすぐに下げるというスタンスではない」「FRBは年末までに金利を制限的な水準まで引き上げる必要」とのタカ派的な発言、Pカンザスシティ連銀ジョージ総裁による「4%以上の金利を維持することは問題外ではない」「インフレが低下しているという証拠が出るまで利上げを行うべき」「利上げ余地はもっとある」とのタカ派的な発言、Qセントルイス連銀ブラード総裁による「利上げ局面は長引く必要があるかもしれない」とのタカ派的な発言、

RパウエルFRB議長による「物価を安定させるためには、金融引き締め政策を一定期間維持することが必要」「歴史は早急過ぎる政策緩和を強く戒めている」とのタカ派的な発言、S米8月ミシガン大消費者信頼感指数確報値(結果58.2、予想55.2、前回55.1)の力強い結果が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間8/27午前3時35分現在)では、137.41前後まで持ち直す動きとなっております。尚、週末に発表された米7月PCEデフレータ(結果6.3%、予想6.4%、前回6.8%)および、米7月PCEコアデフレータ(結果4.6%、予想4.7%、前回4.8%)は共に市場予想・前回を下回る結果となりましたが、市場の反応は限定的となりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0041で寄り付いた後、@ドイツ連銀ナーゲル総裁による「ドイツのインフレ率が今後数ヵ月で10%を超える可能性がある」「景気後退に突入する可能性が高まっている」との悲観的な発言や、A先週末金曜日に発表されたドイツ7月生産者物価指数の伸び率加速(1949年の統計開始以来最大の伸び率を記録→欧州圏のインフレ加速懸念)、Bロシア国営ガスプロム社による「ノルドストリーム1について圧縮機点検を目的に8/31から9/2までガス供給を停止する」との発表(天然ガス先物価格高騰)、C上記@ABを背景とした欧州経済の先行き不透明感、Dドイツ連銀月報における「ドイツ経済はリセッションの可能性が高まっている」との悲観的な見解、E7/14に記録した直近安値0.9952を割り込んだことに伴う仕掛け的なユーロ売り圧力、F米金利上昇に伴うドル買い圧力が重石となり、翌8/23にかけて、2002年12月以来、約19年8ヵ月ぶり安値となる0.9901まで急落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、Gユーロ圏8月総合PMI速報値(結果49.2、予想49.0、前回49.9)の市場予想を上回る結果や、Hロンドンフィキシングにかけてのユーロ買い圧力、Iジャクソンホール会議を控えた短期筋のショートカバー(ドル高の巻き戻し)、J対オフショア人民元でのドル売り圧力、K複数のECB当局者が9/8の定例理事会で75bpの利上げについて議論することを希望しているとの観測報道、L上記Kを背景とした欧州債利回りの急上昇が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.0089まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、Mスタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる大幅利上げは欧州経済の逆風との悲観的な見方(欧州株の下落)や、NパウエルFRB議長のタカ派発言、O上記Nを背景としたドル買い再開の流れが重石となり、本稿執筆時点(日本時間8/27午前3時35分現在)では、0.9966前後まで値を崩す冴えない動きとなっております。

来週の見通し(8/29−9/2)

<ドル円相場>
ドル円は7/14に記録した約23年10ヵ月ぶり高値139.40をトップに反落に転じると、8/2に一時130.40まで値を崩す展開となりましたが、今週は再び137円台半ばを回復するなど、全値戻しに向けて底堅い動きが続きました。この間、主要レジスタンポイント(一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や雲上限、7/14高値139.40と8/2安値130.40を起点としたフィボナッチ61.8%戻しや76.4%戻し)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する強気のパーフェクトオーダーやダウ理論の上昇トレンドも継続するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。来週前半には遅行線の26日前のローソク足上抜けを経て、一目均衡表三役好転の実現も期待されることから、ドル高・円安トレンドに拍車がかかるシナリオに警戒が必要でしょう。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派傾斜観測の高まり(先週・今週と2週連続で米当局者によるタカ派的なコメントが相次ぐ結果。注目されたジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長講演でも利上げ後の早期利下げ観測を否定。CMEが提供するFedWatchで次回9月FOMCでの75bp利上げ確率は57.5%へ上昇)や、A日銀による金融緩和の長期化方針、B上記@Aを背景とした日米金融政策格差(日米名目金利差が再び拡大傾向)、C米政府・米当局によるドル高容認スタンス(インフレ抑制に繋がるドル高を黙認する構え)、D米経済指標の良好な結果(米経済を巡るリセッション懸念後退→米FRBがインフレ抑制に集中できる外部環境)など、ドル高・円安トレンドの継続を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、短期的にも中長期的にも、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は8/30 に予定されている米8月カンファレンスボード消費者信頼感指数や、8/31の米8月シカゴPMI、9/1の米8月ISM製造業景況指数、9/2の米8月雇用統計に加えて、8/30のブレイナードFRB副議長講演や、リッチモンド連銀バーキン総裁講演、8/31のニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁講演、クリーブランド連銀メスター総裁講演、9/1のアトランタ連銀ボスティック総裁講演など、複数の米当局者発言にも注目が集まります。米当局者はこれまで、9月FOMC(9/21)における利上げ幅は「今後のデータ次第」とのコメントを一貫して発してきましたが、ここでいう「データ次第」とは具体的に9/2の米8月雇用統計と、9/13の米8月消費者物価指数を指しているため、来週は数あるイベントの中でも、週末に予定されている米8月雇用統計(米非農業部門雇用者数、米失業率、米平均時給)に注目が集まりそうです。

米長期金利やそれに伴う米主要株価指数の動きに振らされながらも、ドル円は7/14高値139.40に向けて続伸する公算が大きく、状況次第では心理的節目140.00もターゲットに入ってきそうです。月末・月初に絡むフィキシングフローなどトリッキーな動きも警戒されますが、来週は対主要通貨でのドル全面高の流れを想定いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):135.00ー140.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は8/10に記録した約1ヵ月ぶり高値1.0369(7/5以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週は年初来安値を更新し、2002年12月以来、約19年8ヵ月ぶり安値となる0.9901まで急落しました(週末にかけて一時的にパリティを回復するも上髭を付ける形ですぐにパリティ割れ)。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転も点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます(弱気のパーフェクトオーダーやダウ理論の下落トレンドも継続中)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(8/24時点でロシアがウクライナ侵攻を開始して半年が経過→収束の兆しが見えず)や、A欧州圏で広がる歴史的猛暑の発生、B上記@Aを背景としたエネルギー危機発生リスク(ロシア国営ガスプロム社によるガス供給停止懸念→天然ガス先物価格の高騰→欧州圏のインフレ加速)、C欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる金融引き締め→欧州経済への強い逆風→欧州株下落)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は8/30に発表される独8月消費者物価指数や、8/31のユーロ圏8月HICP速報値に注目が集まる他、複数のECB当局者発言(8/29のレーンECB専務理事講演や、8/31のオーストリア中銀ホルツマン総裁講演、ギリシア中銀ストゥルナラス総裁講演、ベルギー中銀ウンシュ総裁講演、エストニア中銀ミュラー総裁講演、9/1のポルトガル中銀センテノ総裁講演など)も予定されております。一部メディアより「複数のECB当局者が9/8の定例理事会で75bpの利上げについて議論することを希望している」との観測報道が出ていることもあり、来週は欧州当局者発言の一挙手一投足に注意が必要でしょう。

タカ派的な発言(次回ECB理事会での75bp利上げ観測)が出てくる場合には、一時的にユーロ買いで反応する可能性があるものの、スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる大幅利上げは、欧州経済への下押し懸念を通じて、欧州株下落→ユーロ下落の波及経路に繋がり得ることから、これまで同様、一巡後のユーロドル下落が警戒されます。今週踏みとどまった対ドルの節目0.9900を下抜けできれば、0.98台や0.97台への大幅下落も想定されるため、来週も週を通してダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(パリティ割れの常態化を想定)。

来週の予想レンジ(EURUSD):0.9650−1.0150

注:ポイント要約は編集部

『ジャクソンホールを経てドルは全面高。来週は米雇用統計に注目』

ドル円日足

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