米経済指標予想以上の悪化で一時136円を割ったが米長期債利回り上昇で持ち直す
〇ドル円、米経済指標悪化を受け135.80まで急落するも、米長期債利回り上昇基調維持で136.87まで反騰
〇8月米製造業PMI、市場予想52.0を下回る、7月米新築住宅販売も3年半ぶり低水準
〇NYダウ、3日続落し前日比154.02ドル安、米10年債利回りは3.05%へ上昇
〇パウエル議長26日講演予定、利上げペースについてタカ派姿勢の継続有無に注目
〇136.30以上での推移中は135.80からの反騰継続、137円超えからは137.71超えを目指す上昇とみる
〇136.30割れからは135.80試しとし、137円を超える場合は上昇再開とする
【概況】
ドル円は8月23日午前に137.71円をつけて8月2日安値130.39円以降の高値を更新、7月27日高値137.46円からの急落を解消し、23日夜にかけては137円台序盤で高止まりしていたが、22時45分発表の米製造業及びサービス業PMIが予想を超える悪化となったことで急落に転じ、23時発表の米新築住宅販売も予想以上の悪化となったために米FRBによる大幅利上げ姿勢が緩むのではないかとの見方で23時過ぎ安値で135.80円まで続落した。直前の水準からは2円近い急落だったが、米長期債利回りは上昇基調を維持したために136円割れを買い戻されて24日未明には136.87円まで1円を超える反騰となった。
8月24日午前序盤は137円には届かずにやや下げているものの、23日夜の急落を一時的なふるい落としとして押し目形成から上昇再開へ向かえるか、8月11日夜から一本調子で続いてきた上昇への修正局面に入るのか試されるところだ。
【米経済指標悪化、米10年債利回りは上昇、NYダウは3日続落】
8月23日夜に発表されたS&Pグローバルの8月米製造業PMIは51.3となり7月の52.2から低下して市場予想の52.0を下回った。同サービス業PMIは44.1となり7月の47.3からさらに低下して市場予想の49.2への改善期待を裏切った。総合PMIは7月の47.7から8月は45.0へ低下した。
リッチモンド地区連銀による8月製造業指数はマイナス8となり7月のゼロから悪化して市場予想のマイナス4も下回った。
7月の米新築住宅販売は年率換算件数で51.1万件となり6月の58.5万件から大幅低下して市場予想の57.5万件も下回った。前月比では7月のマイナス7.1%から8月はマイナス12.6%へと悪化した。2016年1月以来凡そ3年半ぶりの低水準となったが、住宅ローン金利の上昇とインフレを反映した価格上昇による買い控えが影響していると思われる。
米経済指標の悪化を嫌気してNYダウは前日比154.02ドル安と下落したが、8月19日の前日比292.30ドル安、22日の同643.13ドル安からの3日続落であり、6月16日安値29653.29ドルを起点とした反騰が8月16日高値34281.36ドルで一巡して下落に転じてきた印象だ。ナスダック総合指数は前日比0.27ポイント安と小幅下落だったが8月19日からは3日続落となり、ダウと同様に8月16日高値で戻り一巡となり下落に転じている。これまでは米経済指標が悪化すれば米FRBによる利上げペースが鈍化してリセッションも深刻な不況には至らないとして楽観的な上昇を継続してきたが、強気な市場心理が崩れ始めたのではないかと思われる。
米経済指標の悪化による米FRBの大幅利上げ姿勢が緩むのではないかとの見方から為替市場では一時ドル安となったが、米10年債利回りは前日比0.03%上昇の3.05%となり8月19日から3連騰の上昇で8月2日安値2.52%以降の高値を更新し凡そ5週ぶりの高値水準へ戻している。30年債は前日比0.03%上昇の3.26%となり凡そ8週ぶりの高値となった。利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.01%低下の3.30%と伸びなかったのは利上げペースがやや鈍化するとの市場心理を反映したといえるが高止まりして8月2日以降の上昇基調を維持している。
【8月26日のパウエル議長講演内容への思惑が交錯】
8月26日にジャクソンホール会合でのパウエル米FRB議長講演があり、年末から来年にかけての利上げペースが最近の地区連銀総裁達によるタカ派志向を示すのかどうか注目されている。
米ゴールドマン・サックスは議長講演について利上げペースの鈍化に言及されるのではないかとのレポートを発表した。同社は今後のFOMCにおいて9月に0.50%利上げされた後の11月と12月は0.25%利上げにペースダウンするのではないかと予想した。
ドル円は8月2日に130.39円の安値をつけて7月14日高値139.39円から9.00円の円高ドル安となったところから反騰してきたが、そのきっかけは利上げペースの鈍化や早期の利上げサイクルの終了への市場期待に対して8月3日にミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が「そうしたシナリオの可能性は極めて低い」と釘を刺し、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁が9月FOMCでは0.50%利上げを支持するが0.75%利上げもあり得ると述べたことだった。
8月18日には米セントルイス連銀のブラード総裁が「9月のFOMCでは0.75%利上げを支持する」とし、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁も「0.50%か0.75%の利上げが妥当だ」と述べたことでドル高感が一段と強まった。
経済指標の悪化が示すリセッションへの警戒感が米FRBの姿勢をやや緩める可能性もあると思われるが、パウエル議長はこれまでも「景気よりもインフレ抑制」を強調してリセッション入りもやむを得ずという姿勢を繰り返しており、ジャクソンホールでの講演においてもタカ派姿勢を継続するのではないかと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月18日夜安値をサイクルボトムとした強気サイクルにより22日夜から24日夜にかけての間への上昇を想定してきた。8月23日午前時点では8月17日夜高値から3日を経過したために8月22日夜安値(136.69円)割れからは弱気サイクル入りとした。
8月23日夜に22日夜安値を割り込んで急落したため、23日午前高値で直近のサイクルトップを付けていったん弱気サイクル入りしたと思われるが、23日深夜安値から1円を超える反騰となっているので、23日夜安値で既に直近のサイクルボトムを付けて新たな強気サイクル入りしたと思われる。次の高値形成期は26日午前から30日午前にかけての間として23日午前高値を超える一段高へ向かうとみるが、23日夜安値を割り込む場合は底割れによる弱気サイクル入りとして26日夜から30日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では8月23日夜の急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからもいったん転落したが、深夜からの反騰で先行スパンに潜り込んできている。先行スパンを上抜き返せないうちはもう一段安の可能性ありとみるが、先行スパンを上抜き返すところからは反騰継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月23日夜の急落時に30ポイントまで低下したがその後は持ち直しの気配となっている。50ポイントを超えないか一時的に超えても維持できないうちはもう一段安余地が残るが、50ポイント超えて続伸するところからは60ポイント台後半へ向かう上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、136.30円を下値支持線、137.00円を上値抵抗線とする。
(2)136.30円以上での推移中は23日夜安値135.80円からの反騰継続とし、137円超えからは23日午前高値137.71円超えを目指す上昇を想定する。137.50円以上は売られやすいとみるが、136.70円以上での推移なら25日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)136.30円割れからは8月23日夜安値135.80円試しとし、底割れ回避から137円を超える場合は上昇再開とするが、底割れからは134円台を目指す下落期入りとみる。
【当面の主な予定】
8/24(水)
21:30 (米) 7月 耐久財受注 前月比 (6月 1.9%、予想 0.6%)
21:30 (米) 7月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (6月 0.3%、予想 0.2%)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前月比 (6月 -8.6%、予想 -2.8%)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前年同月比 (6月 -19.8%、予想 -21.4%)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省5年債、2年物変動利付債入札
8/25(木)
カンザスシティ連銀、ジャクソンホールフォーラムを開催(9月27日まで)
岸田首相、チュニジア・中東歴訪出発(8/31帰国予定)
07:45 (NZ) 4-6月期 小売売上高 前期比 (1-3月 -0.5%、予想 1.7%)
08:50 (日) 7月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (6月 2.0%、予想 2.2%)
14:30 (日) 中村日銀審議委員、記者会見
15:00 (独) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (独) 4-6月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 1.5%、予想 1.5%)
17:00 (独) 8月 IFO企業景況感指数 (7月 88.6、予想 86.8)
20:30 (欧) ECB・欧州中銀、理事会議事要旨
21:30 (米) 4-6月期 GDP改定値 前期比年率 (速報 -0.9%、予想 -0.8%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP個人消費改定値 前期比年率 (速報 1.0%、予想 1.5%)
21:30 (米) 4-6月期 コアPCE改定値 前期比年率 (速報 4.4%、予想 4.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 25.0万件、予想 25.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 143.7万人、予想 144.3万人)
27:00 (米) 財務省7年債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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