米中景気悪化懸念でドル高だがクロス円の大幅下落でドル円は軟調
〇ドル円、米中景気悪化で132.54まで下落、16日早朝133円割れを試す軟調推移
〇中国人民銀行、経済指標悪化で利下げ決定、ドル高人民元安が進行しクロス円では円高に
〇NY連銀8月製造業景況指数、予想大幅に下回る、景況感「悪化」回答急増
〇利上げペース緩むとの見方からNYダウ4連騰、米長期債利回りは前日比0.05%低下の2.79%
〇132.54割れからは、8/11夜安値131.72及び8/2安値130.39試しへ向かうとみる
〇133.89を超える場合は131.72を起点とした上昇の継続として、135円前後試しへ向かうとみる
【概況】
ドル円は8月10日に発表された米CPI上昇率の鈍化により135円前後の水準だったところから10日夜安値132.01円へ急落し、11日夜の米PPI上昇率の鈍化で131.72円まで安値を切り下げた。その後はインフレ指標をひとまず通過したことで買い戻されて先週末の12日夜高値では133.89円まで戻した。
8月15日は午前発表の中国経済指標が軒並み悪化して中国人民銀行が予想外にテコ入れの利下げを決定したことでドル高人民元安が進行、ユーロやポンドへも売りが波及してドルストレートではドル高となる一方、クロス円の全面安=円高となったためにドル円は15日の日中133円割れを買い戻されつつ133.50円台では戻り売りにつかまる持ち合いの様相となっていた。
8月15日夜に発表されたNY連銀8月製造業景況指数が予想外の大幅低下したことをきっかけにドル高に若干のブレーキがかかり、ドル円は132.54円まで下落した。その後はクロス円の反発もあって16日早朝には133.36円まで戻したもののユーロやポンド等の下落基調は深夜以降も続いたために16日早朝には133円割れを試す軟調推移となっている。
【米中の景気後退懸念深まる】
8月15日に中国国家統計局が発表した7月の小売売上高は前年同月比2.7%増だったが、6月の3.1%増から鈍化して市場予想の4.9%増への回復期待を裏切った。7月の鉱工業生産も前年同月比で3.8%増だったが6月の3.9%増から鈍化して市場予想の4.3%増を下回った。また1-7月の都市部固定資産投資も前年同期比5.7%増だったが1-6月期の6.1%増を下回った。
これら経済指標の悪化を踏まえて中国人民銀行は1年物中期貸出制度(MLF)と7日物リバースレポレートを予想外に引き下げた。上海総合指数は利下げもあり0.02%安にとどまったが、ゼロコロナ政策の継続が中国の景気回復を遅らせていることが再認識されたためにドル/人民元ではドル高元安が進行、ユーロやポンド等の売りも誘い為替市場はリスク回避的な手仕舞い優勢でドルストレートではドル高に、クロス円では円高となった。
8月15日夜に発表されたNY連銀の8月製造業景況指数はマイナス31.3となり7月の11.1から大幅に低下して市場予想の5.0を大幅に下回った。前月からは42ポイントの大幅低下でありパンデミック発生直後の2020年4月以来で最大の低下となった。
景況感が「改善」との答えは1.2%に急減し、「悪化」は43.6%に急増した。新規受注が7月の+6.2から-29.6へ、出荷が+25.3から-24.1へ、雇用が+18.0から+7.4へと大幅に悪化した。6か月先の見通しについては7月の-6.2から+2.1へ改善した。
8月のNAHB住宅指数も49となり7月の55から悪化して市場予想の55を下回った。住宅市況関連の悪化、景況感の悪化はインフレの高止まりと金利上昇による消費意欲の後退を示し、米FRBが懸念しているリセッションへの不安を拡大させている。
【米長期債利回りは低下、ダウは連騰】
米中の経済指標が悪化してドル高となったものの、米国株式市場は利上げペースが緩むとの見方を優先して楽観的に買われ、NYダウは前日比151.39ドル高となり8月10日から4連騰となった。ナスダック総合指数も80.86ポイント高で8月12日から2連騰となった。ある程度の景気減速は織り込みながらも深刻なリセッションには陥らないとの楽観が優勢のようだが、米国債はリセッション懸念に対する安全資産の受け皿として買われたために長期債利回りは低下した。
8月15日の米10年債利回りは前日比0.05%低下の2.79%、30年債利回りは同0.02%低下の3.10%、2年債利回りは同0.06%低下の3.19%で終了した。2年債と10年債及び30年債の逆イールドは継続している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月5日午前安値から4日半となる8月11日夜安値で直近のサイクルボトムを付けて戻していたが、12日夜高値でサイクルトップを付けて弱気サイクル入りしていると思われる。ボトム形成期は16日夜から18日夜にかけての間と想定されるので、12日夜高値133.89円を超えないうちは一段安余地ありとみる。
60分足の一目均衡表では8月15日夜の下落時に遅行スパンが悪化し、先行スパンからもいったん転落した。その後は先行スパンへ潜り込んでいるものの再び悪化しやすい位置にある。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンから再び転落するところから下げ足が早まる可能性があると注意する。先行スパンを上抜き返す場合は8月12日夜高値試しとし、高値更新からは8月11日夜安値からの反騰継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は8月15日夜の下落時に30ポイント台序盤へ低下してから50ポイント台へ戻したものの16日午前には50ポイントを割り込んでいる。60ポイントを超える場合は上昇再開とするが、40ポイント割れからは下落期入りとみて20ポイント台を目指す流れとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月15日夜安値132.54円を下値支持線、8月12日夜高値133.89円を上値抵抗線とする。
(2)133.60円から133.89円手前にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいところとし、132.54円割れからは8月11日夜安値131.72円及び8月2日安値130.39円試しへ向かうとみる。
(3)8月12日夜高値を超える場合は8月11日夜安値を起点とした上昇の継続として135円前後試しへ向かうとみるが、135円手前は反落警戒圏とみる。
【当面の主な予定】
8/16(火)
10:30 (豪) RBA・豪中銀 金融政策会合議事要旨
13:30 (日) 6月 第三次産業活動指数 前月比 (5月 0.8%、予想 0.4%)
15:00 (英) 7月 失業保険申請件数 (6月 -2.00万件)
15:00 (英) 6月 失業率・ILO方式 (5月 3.8%、予想 3.8%)
18:00 (独) 8月 ZEW景況感 (7月 -53.8、予想 -53.8)
18:00 (欧) 8月 ZEW景況感 (7月 -51.1)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調済 (5月 -260億ユーロ、予想 -220億ユーロ)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調前 (5月 -263億ユーロ、予想 -200億ユーロ)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数・年率換算 (6月 155.9万件、予想 152.8万件)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数 前月比 (6月 -2.0%、予想 -2.0%)
21:30 (米) 7月 建設許可件数・年率換算 (6月 168.5万件、予想 164.0万件)
21:30 (米) 7月 建設許可件数 前月比 (6月 -0.6%、予想 -3.3%)
22:15 (米) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -0.2%、予想 0.3%)
22:15 (米) 7月 設備稼働率 (6月 80.0%、予想 80.1%)
8/17(水)
休場、インドネシア
07:45 (NZ) 4-6月期 PPI・生産者物価指数 前期比 (1-3月 2.6%)
08:50 (日) 7月 通関貿易収支・季調前 (6月 -1兆3838億円、予想 -1兆3625億円)
08:50 (日) 7月 通関貿易収支・季調済 (6月 -1兆9289億円、予想 -1兆9236億円)
08:50 (日) 6月 機械受注 前月比 (5月 -5.6%、予想 1.3%)
08:50 (日) 6月 機械受注 前年同月比 (5月 7.4%、予想 7.7%)
10:30 (豪) 4-6月期 賃金指数 前期比 (1-3月 0.7%、予想 0.8%)
11:00 (NZ) RBNZ・ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 2.50%、予想 3.00%)
15:00 (英) 7月 CPI・消費者物価指数 前月比 (6月 0.8%、予想 0.4%)
15:00 (英) 7月 CPI・消費者物価指数 前年同月比 (6月 9.4%、予想 9.8%)
15:00 (英) 7月 CPI・消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 5.8%、予想 5.9%)
15:00 (英) 7月 RPI・小売物価指数 前年同月比 (6月 11.8%、予想 12.1%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.7%、予想 0.7%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 4.0%、予想 4.0%)
21:30 (米) 7月 小売売上高 前月比 (6月 1.0%、予想 0.1%)
21:30 (米) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 1.0%、予想 0.0%)
23:00 (米) 6月 企業在庫 前月比 (5月 1.4%、予想 1.4%)
23:30 (米) EIA・エネルギー省週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省20年債入札
27:00 (米) FOMC・連邦公開市場委員会議事要旨
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2022.08.16
ドル円133円台前半、上下ともに抑えられ方向感に欠ける動き (8/16午前)
16日午前の東京市場でドル円は133円台前半中心の動き。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2022.08.16
ドル円、下落後に持ち直すなど133円台での底堅さを維持。ユーロは大幅下落(8/16朝)
週明け15日(月)のドル円相場は下落後に持ち直す展開。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。