ドル円見通し 8月2日からの反騰続かず仕切り直し、二段戻しか二段下げか試される(週報8月第三週)

重要インフレ指標発表を通過したことでひとまず買い戻し優勢となり12日夜には133.89円まで切り返したが134円には届かずに先週を終えている。

ドル円見通し 8月2日からの反騰続かず仕切り直し、二段戻しか二段下げか試される(週報8月第三週)

ドル円見通し 8月2日からの反騰続かず仕切り直し、二段戻しか二段下げか試される

〇先週のドル円、米物価指標軟化で11日に131.72まで安値切り下げるも、週末にかけ133.89まで切り返す
〇米7月CPI、PPIの鈍化はインフレピークアウトの可能性を示唆するも絶対水準は高く、8月の数値要注視
〇ドル円8/8に135.57まで反騰後に失速している、再度135.57を超えられるか否かが今後のポイントか
〇134円超えからは135円前後への上昇を想定、135円から135.57にかけては戻り売りにつかまりやすいか
〇133円割れからは下向きとし、8/11安値131.72を割り込む場合は、8/2安値130.39円前後への下落想定

【概況】

ドル円はドル全面高の流れで7月14日に139.39円をつけて2021年1月6日底102.57円以降の最高値をつけたが、米長期債利回りが大幅低下したことやユーロドルが1ユーロ1ドルのパリティを割り込んだところから反騰入りしたことでドル全面安の様相となり、8月2日安値130.39円まで9.00円の下落となった。下落規模は2021年1月以降では5月9日から5月24日までの4.99円を大きく超えてこの間の最大となった。
米FOMCの大幅利上げが7月14日にかけてドル円が大上昇した背景だったが、利上げペースが鈍化するとの見方が浮上したことで8月2日までいったん下げ、8月2日夜からは大幅利上げはさらに続くとの見方が再浮上したことで8月8日高値135.57円まで切り返した。
しかし8月10日の米7月CPIが予想を下回り、11日の米PPIも予想を下回る水準となったことで利上げペースの鈍化予想が再び強まったことで10日夜には132.01円へ急落、11日夜には131.72円まで安値を切り下げた。重要インフレ指標発表を通過したことでひとまず買い戻し優勢となり12日夜には133.89円まで切り返したが134円には届かずに先週を終えている。

【米FRBの利上げペースは鈍るのか?】

8月10日夜に発表された7月の米消費者物価指数(CPI)上昇率は前月比が0.0%の横ばいで6月の1.3%から低下、前年同月比は8.5%となり6月の40年ぶり高水準だった9.1%から鈍化した。エネルギーと食品を除くコア指数の伸び率も前月比が0.3%で6月の0.7%から低下、前年同月比は6月と同じ5.9%で頭打ち感を示した。
8月11日夜に発表された7月の生産者物価指数(PPI)の伸び率は前月比マイナス0.5%となり6月の1.0%から低下、2020年4月以来のマイナスとなり、前年同月比は6月の11.3%から9.8%へ大幅に鈍化した。PPIのコア指数も前月比0.2%で6月の0.4%から低下、前年同月比は7.6%で6月の8.2%から低下した。

8月12日発表の米7月輸入物価も前月比マイナス1.4%、輸出物価も前月比マイナス3.3%の大幅低下となった。
パンデミックショックから大規模金融緩和を背景に景気回復に入り感染の波が繰り返される中での人手不足とモノ不足によるインフレが進行、ウクライナ戦争勃発から一段と深刻化してきたが、7月のCPIとPPIは加速してきたインフレがピークアウトした可能性を示唆している。国際商品市況も原油や小麦等がウクライナ戦争勃発前の水準まで下落しており3月序盤に極大化したオイルショック型のインフレ悪化への懸念は後退している。しかしまだ水準そのものは高く、今年の中間選挙から2年後の再選を目指すバイデン政権にとってはインフレの鎮静化がより顕著になるところまで押し下げを図る必要がある。

CPI発表後にミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「最初の兆しだが勝利を宣言するには程遠い」とし、「年内に政策金利を3.9%、来年末までに4.4%へ引き上げる」べきとの見方を示し、シカゴ連銀のエバンズ総裁も「2022年末までに3.25〜3.50%、2023年末までには3.75〜4.00%へ利上げされる」見通しとし、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は9月のFOMCでは「0.50%利上げがベースライン」とした上で0.75%利上げの可能性も排除しないとした。

米FRBが年末までに政策金利を3.75%とするには現行の2.25%から残り3回のFOMCにおいてあと1.50%、0.50%ずつ3回の大幅利上げ継続とするが、最初に0.75%の超大幅利上げをする場合はその後を0.50%、0.25%とペースダウンすることになる。3.90%から4.0%まで引き上げるには0.75%の後も0.50%ずつ利上げする必要がある。8月のCPIやPPIがさらに鈍化するなら9月FOMCで0.50%、その後は通常の0.25%ずつの利上げへと落ち着くこともあり得るが、金融引き締めによる景気後退やロシア制裁に絡んだ欧州等のエネルギー不足や肥料不足、生育最重要期を通過して収穫期に入る穀物・飼料の世界需給動向、中国のゼロコロナ政策による景気停滞、サプライチェーン停滞による慢性的な半導体不足等を踏まえれば、金融引き締めによる景気後退でもインフレが続くスタグフレーション型でインフレ鎮静化に時間がかかる可能性も懸念される。
今後の米FOMC予定日は9月20-21日、11月1-2日、12月13-14日の3回だ。

【8月8日高値を超えて二段目の戻しに入るか、8月2日安値割れで二段下げへ向かうか】

【8月8日高値を超えて二段目の戻しに入るか、8月2日安値割れで二段下げへ向かうか】

ドル円は7月14日高値から8月2日安値まで9.00円の下落後に8月8日高値135.57円まで5.10円の反騰を入れて半値戻しをいったん超えたが、8月10日には当日の高安で3円を超える日足大陰線で失速した。8月11日夜安値からはやや持ち直しているものの、8月10日の大陰線による下落を解消できずにいる。
8月8日高値を上抜けば、8月11日夜安値を押し目として8月2日安値からの戻りが二段目に入る。米FRBによる大幅利上げ姿勢継続を背景に米長期債利回りが8月2日からの反騰を継続できればドル円も二段戻しで7月14日高値へ迫る可能性も高まり、2021年1月底を起点とした歴史的な大上昇継続で先行きに140円台へ向かうとの強気感が優勢になると思われる。
しかし8月8日高値超えへ進めずにいるうちは8月2日安値をもう一度試し、さらに底割れにより7月14日高値からの下落が二段下げ型に発展する懸念が強まる。その際は7月14日から8月2日への一段目と同規模の二段目の下げとして126.57円、5月24日安値126.35円、8月8日への戻り幅の倍返しで125.29円など120円台中盤へ向かうことも考えられる。

ドル円の日足レベルにおける主要な底打ちの動きは、概ね3か月から4か月周期のサイクルで推移しており、前回のサイクルボトムは5月24日安値であり、8月2日安値では底打ちのための日柄がやや浅い印象もある。8月2日安値を割り込む場合は8月後半からやや長引く場合は9月序盤にかけて下落基調が続きやすくなると思われる。

5月24日安値からの反騰開始と一段高へ向かった時の強気転換ポイントは26日移動平均を上抜き返すところだったが、現状は26日移動平均(現在135.64円)を上抜き返せていない。
日足チャートの相対力指数は8月2日安値時に30ポイントまで低下したが、相場が一段安する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行は見られず、指数のピークも切り下がり基調にあるため、60ポイントを超えるような反騰を実現しないうちはもう一段安の懸念が残る。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、8月11日夜安値131.72円を下値支持線、8月8日午前高値135.57円を上値抵抗線とする。
(2)134円超えからは135円前後への上昇を想定するが135円から135.57円手前にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる。米FRBの大幅利上げ継続姿勢が強まって米長期債利回りが大幅上昇する場合には135.57円を超えて136円台へ向かう可能性も出てくると思われ、その場合は8月2日安値からの上昇が二段目に入り先高感がかなり強まると思われる。
(3)133円割れからは下向きとし、131.72円割れからは8月2日安値130.39円前後への下落を想定する。130円台序盤では買い拾われやすいとみるが、ドル全面安が加速する状況なら130.39円割れへ向かう可能性もあると注意する。

【当面の主な予定】

8/15(月)
休場、韓国、インド
08:50 (日) 4-6月期 GDP速報値 前期比 (1-3月 -0.1%、予想 0.6%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP速報値 年率換算 (1-3月 -0.5%、予想 2.5%)
11:00 (中) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 3.1%、予想 4.9%)
11:00 (中) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 3.9%、予想 4.3%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 8.9%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 -3.1%)
13:30 (日) 6月 設備稼働率 前月比 (5月 -9.2%)
15:00 (独) 7月 WPI・卸売物価指数 前月比 (6月 0.1%)
21:30 (米) 8月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (7月 11.1、予想 5.5)
23:00 (米) 8月 NAHB住宅市場指数 (7月 55、予想 55)

8/16(火)
10:30 (豪) RBA・豪中銀 金融政策会合議事要旨
13:30 (日) 6月 第三次産業活動指数 前月比 (5月 0.8%、予想 0.4%)
15:00 (英) 7月 失業保険申請件数 (6月 -2.00万件)
15:00 (英) 6月 失業率・ILO方式 (5月 3.8%、予想 3.8%)
18:00 (独) 8月 ZEW景況感 (7月 -53.8、予想 -53.8)
18:00 (欧) 8月 ZEW景況感 (7月 -51.1)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調済 (5月 -260億ユーロ、予想 -220億ユーロ)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調前 (5月 -263億ユーロ)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数・年率換算 (6月 155.9万件、予想 153.0万件)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数 前月比 (6月 -2.0%、予想 -1.9%)
21:30 (米) 7月 建設許可件数・年率換算 (6月 168.5万件、予想 164.0万件)
21:30 (米) 7月 建設許可件数 前月比 (6月 -0.6%、予想 -3.3%)
22:15 (米) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -0.2%、予想 0.3%)
22:15 (米) 7月 設備稼働率 (6月 80.0%、予想 80.2%)

8/17(水)
休場、インドネシア
07:45 (NZ) 4-6月期 PPI・生産者物価指数 前期比 (1-3月 2.6%)
08:50 (日) 7月 通関貿易収支・季調前 (6月 -1兆3838億円、予想 -1兆3625億円)
08:50 (日) 7月 通関貿易収支・季調済 (6月 -1兆9289億円、予想 -1兆9236億円)
08:50 (日) 6月 機械受注 前月比 (5月 -5.6%、予想 1.3%)
08:50 (日) 6月 機械受注 前年同月比 (5月 7.4%、予想 7.7%)
10:30 (豪) 4-6月期 賃金指数 前期比 (1-3月 0.7%、予想 0.8%)
11:00 (NZ) RBNZ・ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 2.50%、予想 3.00%)
15:00 (英) 7月 CPI・消費者物価指数 前月比 (6月 0.8%、予想 0.4%)
15:00 (英) 7月 CPI・消費者物価指数 前年同月比 (6月 9.4%、予想 9.8%)
15:00 (英) 7月 CPI・消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 5.8%、予想 5.9%)
15:00 (英) 7月 RPI・小売物価指数 前年同月比 (6月 11.8%、予想 12.1%)

18:00 (欧) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.7%、予想 0.7%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 4.0%、予想 4.0%)
21:30 (米) 7月 小売売上高 前月比 (6月 1.0%、予想 0.1%)
21:30 (米) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 1.0%、予想 0.0%)
23:00 (米) 6月 企業在庫 前月比 (5月 1.4%、予想 1.4%)
23:30 (米) EIA・エネルギー省週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省20年債入札
27:00 (米) FOMC・連邦公開市場委員会議事要旨

8/18(木)
10:30 (豪) 7月 新規雇用者数 (6月 8.84万人、予想 2.65万人)
10:30 (豪) 7月 失業率 (6月 3.5%、予想 3.5%)
18:00 (欧) 6月 建設支出 前月比 (5月 0.4%)
18:00 (欧) 6月 建設支出 前年同月比 (5月 2.9%)
18:00 (欧) 7月 HICP・消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 8.9%、予想 8.9%)
18:00 (欧) 7月 HICP・消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 4.0%、予想 4.0%)
21:30 (米) 8月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (7月 -12.3、予想 -5.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 26.2万件、予想 26.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 142.8万人、予想 145.0万人)
23:00 (米) 7月 中古住宅販売件数・年率換算 (6月 512万件、予想 488万件)
23:00 (米) 7月 中古住宅販売件数 前月比 (6月 -5.4%、予想 -4.7%)
23:00 (米) 7月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (6月 -0.8%、予想 -0.5%)
26:20 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、講演
26:45 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会参加

8/19(金)
07:45 (NZ) 7月 貿易収支 (6月 -7.01億NZドル)
08:01 (英) 8月 GFK消費者信頼感 (7月 -41)
08:30 (日) 7月 CPI・全国消費者物価指数 前年同月比 (6月 2.4%、予想 2.6%)
08:30 (日) 7月 CPI・全国消費者物価指数・生鮮食品除く 前年同月比 (6月 2.2%、予想 2.4%)
08:30 (日) 7月 CPI・全国消費者物価指数・生鮮食品エネルギー除く 前年同月比 (6月 1.0%、予想 1.1%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前月比 (6月 -0.1%、予想 -0.2%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 -5.8%、予想 -3.3%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.4%、予想 -0.3%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (6月 -5.9%、予想 -3.1%)
15:00 (独) 7月 PPI・生産者物価指数 前月比 (6月 0.6%、予想 0.7%)
17:00 (欧) 6月 経常収支・季調済 (5月 -45億ユーロ)
22:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、討論会参加

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る