ドル円見通し 3連騰ならず、134円台維持できずに反落
〇ドル円、8/4午前133.41まで下げたところを買われ、夕刻134.42まで戻すも高値更新へ進めず
〇その後米10年債利回り低下等を背景に133円割れ、8/5早朝に132.75、午前序盤には132.50へ下落
〇英中銀、27年ぶりに0.50%利上げ、リセッション入り予想で発表後はポンドドル急落
〇本日米雇用統計、発表後騰勢継続へ持ち直すか、下落継続となるのか試される
〇米10年債利回りは続落、NY原油が90ドル割れでウクライナ戦争勃発以降の最安値更新
〇133.50以下での推移中は一段安警戒とみるが、132円割れは買い戻しも入りやすいとみる
〇133.50超えからは反騰入りの可能性ありとし、134円超えからは134.54を上抜いてゆく上昇を想定
【概況】
ドル円は8月2日午前安値130.39円から8月3日深夜高値134.54円まで2日間の連騰で4.15円の上昇となったが、8月4日は午前に133.41円まで下げたところを買われて夕刻に134.42円まで戻したものの高値更新へ進めず、20時に英中銀が0.50%の大幅利上げを決定したものの10-12月期のリセッション入り予想を示したためにポンドが一時急落したこと、台湾近海で威嚇的な軍事演習を行っていた中国の弾道ミサイルが日本のEEZ圏に着弾したとの報道による有事リスクの拡大、21時半の米週間新規失業保険申請件数と失業保険受給者数が予想を上回ったことをきっかけに米10年債利回りが低下したこと等が相次いだために133円割れとなり8月5日早朝に132.75円へ下落し、8月5日午前序盤には132.50円まで安値を切り下げた。
8月5日夜には米雇用統計の発表も控えているが、2日連続の日足陽線で切り返したところ、3日連続陽線とはならずに2日目の陽線を打ち消した。米雇用統計から騰勢継続へと持ち直すか、戻り一巡による下落継続となるのか試される。また台湾訪問で中国の態度を硬化させたペロシ米下院議長が来日しており岸田首相との会談も予定されているため、中国による威嚇的な軍事行動に対する警戒感も終日続くところだ。
【英中銀、27年ぶり0.50%利上げとリセッション入り予想】
英イングランド銀行(BOE=英中銀)は8月4日夜の金融政策委員会で通常の0.25%の二倍となる0.50%利上げを決定、政策金利を1.75%とした。利上げは6会合連続で0.50%利上げは1995年2月以来27年ぶりだった。また9月からは英国債売却を開始して量的引き締めを図るとした。
市場は当初0.25%利上げを予想していたものの直前には0.50%利上げ予想へ引き上げていたため予想通りの利上げ幅だったが、中銀声明では「必要に応じてインフレ圧力に力強く対応する」として9月以降の連続利上げを示唆した上で今年10-12月期にはインフレ率が13%へ上昇しリセッション入りする見込みとしたため、為替市場はリセッション予想を重視して発表後はポンドドルが急落したため、ポンド円の急落がクロス円全般の下落にも波及した。ポンドドルは売り一巡から声明発表前水準近くまで戻したが、台湾有事リスクや米経済指標発表後のドル安円高によりポンド円は急落後も安値圏にとどまりクロス円全般の下落基調も継続した。
【今晩米雇用統計】
8月4日に米労働省が発表した新規失業保険申請件数は前週比6000件増の26.0万件となり2週ぶりに悪化、市場予想の25.9万件を上回った。1週遅れの失業保険受給者総数は141.6万人で前週比4.8万人増、市場予想の137万人を大幅に上回った。この発表をきっかけに米FRBによる利上げペースが大きく加速することへの懸念がやや和らいだために米長期債利回りは低下してドル安のきっかけとなった。
米商務省による6月の貿易赤字は前月比6.2%減の796億ドルとなり3か月連続で赤字幅減少となり市場予想の801億ドルよりも若干小さかった。
今晩、7月の米雇用統計がある。非農業部門就業者数に対する市場の事前予想は前月比25万人増で6月の37.2万人増から鈍化するとが見込まれている。失業率は3.6%で6月と変わらずの予想となっている。
7月後半に米FRBによる大幅利上げペースが一段と加速するとの懸念が後退して早期の利下げ再開もあり得るのではないかとの観測が浮上していたところ、8月2日から地区連銀総裁らによる利上げ継続と利上げ水準の長期維持支持発言が相次いだことが8月2日夜からドル円が反騰するきっかけとなった。
雇用統計から金融引き締め強化と早期利下げ再開の可能性が後退すればドル高感が強まりドル円も8月3日夜高値を超えて反騰基調に乗る可能性もあるが、さほど強い内容でなければ大幅利上げペースへの警戒感も再び緩んでドル安円高の再開となる可能性もある。
クリーブランド地区連銀のメスター総裁は「9月のFOMCでは0.75%利上げが妥当だが0.50%利上げでもよい」、「来年前半まで利上げを続け、政策金利は4%を若干上回る水準へ引き上げ、その後も据え置く可能性がある」と述べている。今週はサンフランシスコ連銀総裁やミネアポリス連銀総裁らが利上げ継続及び利上げ水準をインフレ低下が確認するまで据え置くべきとの発言を繰り返した。
【米10年債利回りは続落、米国株は気迷い、NY原油が90ドル割れ】
8月4日の米10年債利回りは前日比0.02%低下の2.69%へ下げた。30年債利回りは0.02%低下の2.97%で3%を下回ったままとなり、2年債利回りは0.01%低下の3.06%にとどまり、2年債と10年債及び30年債の逆イールドが続いている。
10年債利回りは6月14日に3.50%を付けたところからの下落継続で8月2日に2.52%まで切り下がったところから2日夜に2.77%へ反騰し、8月3日は2.83%までさらに切り上がったものの2.71%まで失速して前日比0.05%低下となっていた。2日連続の低下となったため、ドル円としては米長期債利回り反騰=ドル円の本格反騰という流れにブレーキがかかっている。ただ、2年債利回りは年末から来年への利上げを踏まえて高水準を維持しているために逆イールドを招いている事はドル円の下支え要因でもある。
8月4日のNYダウは前日比85.68ドル安と下落したが、8月2日に402.23ドル安、3日に416.33ドル高と反騰したものの勢いは続かず、景気減速への懸念が上値を抑えている印象だ。一方でナスダック総合指数は米10年債利回り低下を見て52.42ポイント高と上昇して3日の319.40ポイント高から続伸した。
株式市場がまちまちだったことはドル円にとっては中立だったが、NY原油が90ドルを割り込んでウクライナ戦争勃発以降の最安値を更新したことは輸入インフレが緩むものとしてドル円には円高要因となった。NY原油期近は7月29日に101.88ドルまで戻したところから失速し、8月2日に前日比3.76ドル安、4日に同2.12ドル安と続落して安値では87.55ドルを付けて3月7日高値130.50ドル以降の安値を更新、ウクライナ戦争勃発前の2月23日安値90.64ドルを割り込んでいる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月2日午前安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたとして8月3日夜から5日夜にかけての間への上昇を想定していたが、8月4日夜に4日午前安値を割り込んで5日午前序盤へと続落しているため、3日深夜高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしたと思われる。次のサイクルボトム形成期は5日午前から9日午前にかけての間と想定されるのですでに反騰注意期に入っており今晩の米雇用統計がそのきっかけになるか注目される。
133.50円以下での推移中は一段安警戒とし、133.50円超えから強気転換注意、8月3日深夜高値134.54円超えからは強気サイクル入りとして8日夜から10日深夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では8月4日夜の反落で遅行スパンが悪化、5日午前には先行スパンから転落しつつあるため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとし、その際は遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月3日午前高値から3日深夜高値への一段高に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られていたが、8月4日夜の急落で30ポイント台へ低下している。50ポイント以下での推移中は一段安余地ありとし20ポイント前後を試す可能性があるとみる。強気転換は50ポイント超えから続伸するような反騰が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、132.00円を下値支持線、133.50を上値抵抗線とする。
(2)133.50円以下での推移中は一段安警戒とみる。132円割れは買い戻しも入りやすいとみるが、台湾有事情勢や米雇用統計反応次第では8月2日安値130.39円を試す可能性もあるとみる。また133.50円以下で週を終える場合は週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)133.50円超えからは反騰入りの可能性ありとし、134円超えからは8月3日深夜高値134.54円を上抜いてゆく上昇を想定する。また133.70円以上を維持して週を終えるか、直前安値から1.50円を超える反騰の場合は週明けも高値試しへ向かう可能性があるとみる。
【当面の主な予定】
8/5(金)
ロシア・トルコ大統領会談(ロシア・ソチ)
ペロシ米下院議長と岸田首相会談
中国の台湾近海軍事演習(8月4日から7日まで)
10:30 (豪) 豪中銀(RBA)、四半期金融政策報告
14:00 (日) 6月 景気先行指数CI速報値 (5月 101.2)
14:00 (日) 6月 景気一致指数CI速報値 (5月 94.9)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.2%、予想 -0.4%)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -1.5%、予想 -1.3%)
21:30 (米) 7月 非農業部門就業者数 前月比 (6月 37.2万人、予想 25.0万人)
21:30 (米) 7月 失業率 (6月 3.6%、予想 3.6%)
21:30 (米) 7月 平均時給 前月比 (6月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 平均時給 前年同月比 (6月 5.1%、予想 5.0%)
28:00 (米) 6月 消費者信用残 前月比 (5月 223.5億ドル、予想 285.0億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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