ドル円見通し 米長期債利回り急上昇と共に8月2日午前安値から3円を超える急伸(22/8/3)

夜に米長期債利回りが急伸に転じたところに合わせて急上昇した。

ドル円見通し 米長期債利回り急上昇と共に8月2日午前安値から3円を超える急伸(22/8/3)

ドル円見通し 米長期債利回り急上昇と共に8月2日午前安値から3円を超える急伸

〇ドル円、8/2午前130.39まで一段安、7/14高値139.39からの下げ幅が9円となる
〇その後当局者の利上げ継続支持発言等から流れが変わり、米長期債利回り急伸に同調しドル円急上昇
〇日足は4営業日続落からの上昇で前日の下落を解消、週足は途中経過で3円を超える長大下ヒゲ
〇米10年債利回りは当日高安で0.25%の上昇となる大陽線、30年債・2年債利回りも上昇
〇米地区連銀総裁、利上げ継続と長期化を強調する発言、利下げ再開は程遠い印象
〇134円前後では戻り売りにつかまりやすいが、買いの連鎖が続く場合135円に迫る可能性もあるとみる
〇131.70割れからは反動安入りの可能性を優先して、131円台序盤への下落を想定する

【概況】

ドル円は米長期債利回りの低下を見ながら7月14日高値139.39円を当面のピークとして大幅下落してきたが、8月2日午前に130.39円まで一段安となりこの間の下げ幅が9円となった後は新たな安値更新を回避して下げ渋り、夜に米長期債利回りが急伸に転じたところに合わせて急上昇した。
米FRBによる今後の利上げペースが鈍化して利上げ終了時期も早まるのではないかとの観測が米長期債利回りを大幅低下させてきたのだが、8月2日夜は地区連銀総裁らによる大幅利上げ継続支持発言や利上げ状態の長期化を示唆する発言等で流れが変わった。またペロシ米下院議長が米軍機により訪台し、中国側が軍事演習を通告したことによる有事緊張感が高まっていたものの混乱なく着陸したことによる安心感も債券売りを助長した。ドル円は米長期債利回りの急伸に同調して反騰し、地政学的リスク回避感の後退による押し上げも重なった印象だ。しかし直前までの大幅下落による先安感から売り込まれていたところを逆襲高となったために売り方が狼狽的な買い戻しに動いたことが、ドル買い円売りの連鎖を引き起こした印象もある。

【日足は前日の下落を解消、週足は途中経過で3円を超える長大下ヒゲ】

ドル円の日足は7月27日から8月1日まで4営業日続落となり、早朝の終値ベースでは8月1日が前日比1.58円の下落だったところ8月2日を前日比1.55円の上昇となり8月1日の下落分を解消した。4営業日続落中においては7月28日に前日比2.30円の下落となる大陰線もあり、8月2日も大陽線ではあるが7月28日の大陽線よりも小さい。
日足の移動平均では26日線割れから52日線割れへ進み104日線(8月2日時点で129.76円)手前で下げ止まって切り返しに入ったところだが、52日線(現在134.29円)を上抜き返せずにいる。52日線超えからさらに26日線(現在136.15円)超えへと連騰で進めば歴史的な大上昇再開感が強まるが52日線に絡む程度にとどまるようだと下げ一服の一時的反騰にとどまる「化け線」となりもう一段安へ進む懸念も残る。

週間足では130.39円の安値から133円台中盤まで戻しており、3円を超える長い下ヒゲ=タクリ足の様相となっている。2020年3月のパンデミック発生ショックによる暴落と直後の反騰においては2.97円の下ヒゲから翌週へさらに大幅続伸しており、2019年1月3日へ急落したところから同年4月24日まで戻した時も3.63円の下ヒゲからの切り返しだった。今回はまだ週足の途中経過に過ぎないが、3円を超える下ヒゲを維持して週末の米雇用統計を強気で通過するなら大上昇再開感も強まる可能性がある動きとして注目したい。

【米10年債利回り急伸】

8月2日の米長期債利回りは総じて大上昇した。指標の10年債利回りは前日比0.18%上昇して2.76%となった。6月14日に3.50%まで大上昇したところから二段下げ型で大幅下落となり8月2日は安値で2.52%まで続落していたが、米下院議長の無事訪台や地区連銀総裁らの大幅利上げ支持発言等で債券売り・長期債利回り低下へと流れが変わり2.77%を付ける場面もあり当日高安で0.25%の上昇となる大陽線だった。7月6日からの反騰時等に匹敵する勢いであり、8月3日も続伸するようだと一時的な反騰にとどまらずに上昇再開感を強めることも考えられる。
30年債利回りも前日比0.09%上昇の3.01%、2年債利回りは0.18%上昇の3.06%となった。2年債と10年債の逆イールドは継続している。
一方でNYダウは前日比402.23ドル安と下落、ナスダック総合指数も同20.22ポイント安と下落した。米中関係悪化への懸念、米長期債利回り上昇と利下げ再開が遠のいた印象が強まったことで、先週末にかけての3連騰から小反落となった8月1日からの続落となっている。

【米地区連銀総裁、利上げ継続と長期化を強調】

米シカゴ連銀のエバンズ総裁は8月2日に次回のFOMCにおいては0.75%以上の利上げに否定的な見方を示し、「0.50%の利上げが妥当」、「年末までに政策金利を3.25〜3.50%へ引き上げる想定が正しい」と述べた。また来年にも利下げに転じるのではないかとの市場の見方について「私の見通しではない」「利上げした後も雇用最大化と物価安定維持という2つの責務を満たすと考えられる適切な金利水準でしばらくは据え置く可能性が高い」「2%のインフレ目標に戻るには長い道のりがある」と述べた。利上げペースが鈍り利下げ再開が早まるのではないかとの市場の楽観をいさめる発言だった
米クリーブランド連銀のメスター総裁も「インフレを押し下げるために景気減速が必要」「物価統計が前月比で低下するという極めて納得できる証拠を望んでいる」「インフレがピークに達したという数か月にわたる証拠はまだない」と述べ、インフレ抑制には相当時間がかかり利下げ再開は程遠い印象を示唆した。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、7月22日夜安値から5日目となる7月29日午後安値を直近のサイクルボトムとし、底割れから新たな弱気サイクル入りしたとして8月3日午後から5日午後にかけての間への下落を想定した。しかし8月2日午前安値から下げ渋り夜に急伸したため、8月2日午前安値で短めのサイクルボトムを付けて強気サイクル入りしたと思われる。サイクルトップ形成期は8月3日夜から5日夜にかけての間と想定されるが、急騰後の反動安も警戒すべきところとみて131.70円割れからは下げ再開を疑い8月2日午前安値試しへ向かう可能性があるとみる。

60分足の一目均衡表では8月2日夜の急騰により遅行スパンが好転、先行スパンも突破したため遅行スパン好転中の高値試し優先とする。先行スパンへ潜り込む場合はその下限が下値支持線となりやすいとみて再び上抜き返すところからは上昇再開とするが、先行スパンから転落するような急反落が発生する場合は下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は7月29日午後安値から8月2日午前安値への一段安に際して指数のボトムがほぼフラットとなる強気逆行型を示し、8月2日夜の急伸で70ポイント台に到達している。50ポイント以上での推移中は一段高余地ありとするが、相場が小反落後に高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られる場合は下げ再開を疑う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、131.70円を下値支持線、134.00円を上値抵抗線とする。
(2)134円前後では戻り売りにつかまりやすいとみるが、買いの連鎖が続く場合は135円に迫る可能性もあるとみる。
(3)132.50円割れを弱気転換注意とし、131.70円割れからは反動安入りの可能性を優先して131円台序盤への下落を想定する。急騰後の反動安及び乱高下が続きやすいところと注意する。

【当面の主な予定】

8/3(水)
英中銀(BOE)金融政策委員会初日
10:45 (中) 7月 財新サービス業PMI (6月 54.5、予想 54.0)
15:00 (独) 6月 貿易収支 (5月 -10億ユーロ、予想 2億ユーロ)
16:55 (独) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 49.2、予想 49.2)
17:00 (欧) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 50.6 予想 50.6)
17:30 (英) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 53.3 予想 53.3)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (5月 0.7%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (5月 36.3%、予想 35.7%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.2%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 0.2%、予想 -1.6%)

22:45 (米) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 47.0、予想 47.0)
23:00 (米) 7月 ISMサービス業景況指数 (6月 55.3、予想 53.5)
23:00 (米) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 1.6%、予想 1.2%)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計

8/4(木)
10:30 (豪) 6月 貿易収支 (5月 159.65億豪ドル、予想 142.00億豪ドル)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 0.1%、予想 -0.7%」)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前年同月比 (5月 -3.1%、予想 -9.1%)
20:00 (英) 英中銀(BOE)、政策金利 (現行 1.25%、予想 1.50%)
21:30 (米) 6月 貿易収支 (5月 -855億ドル、予想 -801億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 25.6万件、予想 26.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 135.9万人)
25:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、対話集会に参加


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