FOMC通過後のドル安継続、日銀金融政策決定会合から円安再開か試される
〇ドル円、6/16日中は134円台を回復し様子見だったが、夕刻134円を割り込み、深夜131.48へ大幅続落
〇スイス中銀と英中銀の利上げ、米経済指標の悪化、NYダウの下落などを背景としたドル安
〇NYダウ下落で3万ドル割れ、ナスダックも下落し2020年9月以来の安値水準、米長期債利回りは上昇一服
〇本日は日銀金融政策発表予定、円安再開のきっかけになるか、効果的な円安けん制できるか注目される
〇132円以上での推移中は上向きとし、133円超えからは134円台回復を目指す上昇を想定する
〇131.48割れからは、130円前後への下落を想定する
【概況】
ドル円は6月16日未明の米FOMCが27年半ぶりとなる0.75%の超大幅利上げを決定したものの6月14日時点でWSJ紙が0.75%利上げの可能性を報じていた為、想定内として当面のドル買い材料消化と受け止めて通過後はドル安へと変化、発表直後の高値134.94円から16日早朝安値133.49円へ下落した。
6月16日の日中はしばらく134円台を回復して様子見の動きが続いていたが、夕刻に134円を再び割り込んだところから一段安へと向かい、スイス中銀と英中銀の利上げ、米経済指標の悪化、NYダウの下落などを見て16日深夜には131.48円まで大幅続落した。売られ過ぎの反動で17日早朝には132円台を回復したが、6月15日に135.58円をつけて2021年1月底102.57円以降の最高値としたところから6月16日深夜安値までの下げ幅は4.10円となり、短期的な下落規模としては3月28日の125.10円から3月31日の121.26円まで3.84円の下落時や、昨年11月24日高値115.51円から11月30日安値112.52円までの2.99円の下落時等を超える急落規模となっている。
本日は日銀金融政策決定会合があり、午後には黒田総裁会見もある。円安けん制をしつつ金融緩和を継続せざるを得ない状況にある中で円安再開のきっかけになるのか、効果ある円安けん制で市場を押さえられるのか注目される。
【NYダウ下落、米長期債利回りは低下】
6月16日のNYダウは前日比741.46ドル安の2万9927.07ドルで終了したが、3万ドル割れは1年5か月振りで1月5日の史上最高値3万6952.65ドル以降の安値を更新、昨年1月以降の上昇幅を解消した。ナスダック総合指数も前日比453.06ポイント安の10646.10ポイントへと下落して昨年11月22日の史上最高値16212.23ポイント以降の安値を更新、2020年9月以来の安値水準となった。
スイス中銀が予想以上の0.50%の利上げで-0.75%から-0.25%へしたこと、英中銀が予想通りではあったが1.00%から1.25%へと連続利上げを決定したことにより、16日未明のFOMCによる0.75%利上げも含めて欧米の金融引き締め強化が景気鈍化を招くとして株安反応となった。
6月16日夜に発表された米住宅統計も冴えない数字で、5月住宅着工は4月の181.0万件から154.9万件へ、着工許可件数は4月の182.3万件から169.5万件へと大幅低下したが、米連銀の利上げが住宅ローン金利を押し上げていることで住宅市況の悪化が目立ち始めている。週間失業保険申請件数も前週の23.2万件に続いて22.9万件と高い水準で市場予想の21.5万件を上回り、1週遅れで発表される失業保険申請件数も前週の130.9万人から131.2万人へと増加している。
米FOMCの0.75%利上げ決定を材料消化とし、7月以降も大幅利上げが続くものの0.75%利上げの連続等の過剰な利上げペースの加速感が後退したために米長期債利回りは上昇一服となっている。10年債利回りは前日比0.09%低下の3.20%、30年債利回りは0.09%低下の3.25%、2年債利回りも0.10%低下の3.10%へと低下した。
ドル円は米長期債利回り上昇=日米金利差拡大として米長期債利回り動向と同調した上昇を継続してきた。ともに数日から3週をまたぐような調整を入れつつ一段高を繰り返してきたため、現状の米長期債利回り低下とドル円の反落が数日レベルの調整なのか、週をまたいで長引くのか試されるところだが、7月以降も米連銀の利上げは継続するため現状の調整時間が短期か長引くかどうかはともかく、日銀の金融政策変更がなければ歴史的な円安は継続してゆくのだろうと思われる。
円高が本格化するためには米経済の不況入りと株安が一層悪化してゆくような流れの中で金融市場全般が換金売り優勢となり、クロス円での円の買い戻しが円高を招くという展開が必要だろう。
【円安と貿易赤字拡大、日銀は円安を抑えられるか】
6月16日朝に発表された5月の日本貿易収支は2兆3847億円の赤字となり現統計の遡れる1979年以降では2014年1月の2兆7951億円につぐ過去2番目の大幅赤字となった。輸入が前年同月比48.9%増、輸出が同15.8%増だったが、資源エネルギー価格等の高騰と円安により赤字拡大基調は続いており、赤字は10か月連続となった。このうち対米では7828億円の黒字、対中国では6078億円の赤字となり、円安でも対米収支は黒字だが対中では円安が直接響いている印象だ。
貿易赤字が経常収支の悪化を招いて円安を助長し、円安がさらに貿易赤字を拡大する悪循環となっているが、昨年来のパンデミックからの回復過程における人手不足とモノ不足によるインフレ進行という状況からロシア制裁によるインフレの深刻化へと様相も変わり始めており、低成長や不況下でのインフレ進行も懸念される。
こうした中で本日は日銀金融政策の発表がある。4月会合ではマイナス金利維持・量的緩和維持に加えて毎営業日の指値オペによる長期金利上昇抑制を強調し、黒田総裁はその後の国会答弁や講演等において「金融引き締めへの転換はありえない」「円安にはメリットもある」として金融緩和政策継続姿勢に固執している。
しかし円安に対する批判も高まっており、なにがしかの対応も必要となっている。6月10日には日銀・財務省・金融庁の三者共同声明で円安をけん制したが市場は口先介入に過ぎないとして効果は薄かった。今回の金融政策決定会合でYCC(イールドカーブコントロール)の許容範囲の拡大というような事実上の利上げ等はないだろうと市場は見ているが、円安に対するブレーキを掛けるような市場へのアピールができるのかどうか注目される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては6月15日午前高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしたと思われる。ボトム形成期は13日夜安値を基準として16日夜から20日夜にかけての間と想定されるので早ければ16日深夜安値でボトムをつけた可能性もあるため、133円を超えないうちは一段安余地ありとするが、16日深夜安値を割り込まずに133円を超える場合は強気サイクル入りと仮定して20日朝から22日午前にかけて間への上昇を想定する。また一段安してからの上昇で安値から1.20円以上の反騰となる場合は直前安値をボトムとした強気サイクル入りとする。ただしいずれのケースでも強気サイクル入りした後に15日以降の安値を更新する場合は新たな弱気サイクル入りとなる点に注意する。
60分足の一目均衡表では6月15日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いている。遅行スパン好転からは高値試し優先とするが、先行スパンを超えないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とみる。先行スパンを上抜き返す上昇なら歴史的上昇の再開感が強まるとみる。
60分足の相対力指数は6月16日深夜に20ポイントへ低下してから戻しているが、強気逆行は見られないため、もう一段安余地が残るとみる。50ポイントを超えるところからはさらに戻りを試すとみるが、50ポイントを超えないか一時的に超えた後に40ポイントを割り込む場合は下げ再開とみる。相場が安値を更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られる場合は反騰警戒とする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月16日深夜安値131.48円を下値支持線、133.00円を上値抵抗線とする。
(2)132円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上向きとし、133円超えからは134円台回復を目指す上昇を想定する。また16日深夜安値割れを回避しての推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)131.48円割れからは130円前後への下落を想定する。130円以下は反発注意とするが、131.48円を割り込んだ水準での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすく、調整期が長引く可能性を懸念する。
【当面の主な予定】
6/17(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現状 -0.10%、予想 -0.10%)
15:30 (日) 黒田日銀総裁、記者会見
18:00 (欧) 5月 HICP消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 8.1%、予想 8.1%)
18:00 (欧) 5月 HICP消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 3.8%、予想 3.8%)
22:15 (米) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 1.1%、予想 0.4%)
22:15 (米) 5月 設備稼働率 (4月 79.0%、予想 79.2%)
23:00 (米) 5月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (4月 -0.3%、予想 -0.4%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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