来週の為替相場見通し:『短期ドル売りトレンドは終了か。来週は底固めのフェーズ入りに期待』(5/28朝)

ドル円は5/9に記録した約20年ぶり高値131.36をトップに反落に転じると、今週は一時126.36(4/18以来の安値圏)まで急落しました

来週の為替相場見通し:『短期ドル売りトレンドは終了か。来週は底固めのフェーズ入りに期待』(5/28朝)

『短期ドル売りトレンドは終了か。来週は底固めのフェーズ入りに期待』

〇ドル円、週初米国の対中関税引き下げ検討を背景にした株価、米金利上昇に128.09まで上昇
〇買い一巡後は米指標の不冴え、米金利低下、ユーロ高に一転126.36まで急落
〇週末にかけ下げ渋り、リスク選好回復、米中関係改善期待等に127円台に戻して越週
〇ユーロドル、ECB関係者のタカ派発言、米指標の不冴え等に週末にかけ1.0765まで急伸
〇ドル円、テクニカルの地合い悪化するも上位足では買いシグナル継続、下落余地は乏しいか
〇ファンダメンタルズもFOMC議事要旨で米FRBの金融引き締めスタンス再確認
〇ドル円、調整局面を終えた可能性が高く、来週はいよいよ底固めのフェーズ入りか
〇来週の予想レンジ(USDJPY):126.00ー129.50、(EURUSD):1.0550−1.0900

今週のレビュー(5/23−5/27)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初127.93で寄り付いた後、@バイデン米大統領による「対中関税の引き下げを検討している」との発言や、A上記@を背景とした株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、B米金利上昇に伴うドル買い圧力が支援材料となり、翌5/24にかけて、週間高値128.09まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、C米経済指標の冴えない結果(米5月総合PMI速報値、米5月サービス業PMI速報値、米4月新築住宅販売件数、米5月リッチモンド連銀製造業景気指数など)や、D米金利低下に伴うドル売り圧力、E対ユーロでのドル売り圧力が重石となり、一転して週間安値126.36(4/18以来、約1ヵ月ぶり安値圏)まで急落する場面も見られました。

もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、F本邦5・10日要因に絡む公表相場決定にかけてのドル買い・円売りや、GブレイナードFRB副議長による「FRBは高すぎるインフレ率の抑制に向けて金融引き締めにしっかりと取り組んでいく」とのタカ派的な発言、H米主要株価指数の持ち直し(リスク選好の円売り再開)、I米FOMC議事要旨(5/3ー5/4開催分)における「大半の参加者が6月・7月の会合で各々50bpの追加利上げを行うことが適切」「参加者の全員が米国経済は非常に力強く労働市場は極めてタイトでインフレ率は非常に高いという点で一致」「ウクライナ戦争や中国における新型コロナウイルス感染拡大などの影響でインフレリスクは上向きに偏っている」「インフレがピークに達したと確信するには時期尚早」とのタカ派的な内容、Jブリンケン米国務長官による「中国との冷戦を望んでいない」との発言(米中関係の改善期待)、K米4月PCEデフレータ(結果6.3%、予想6.2%)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間5/28午前5時45分現在)では、127.10前後で推移しております。

尚、黒田日銀総裁は今週、衆院予算委員会での立憲民主党江田氏への発言の中で、「金融市場の安定を確保しながら(出口戦略を)適切に遂行するのは十分可能だ」とのコメントが見られましたが、「日銀による出口戦略想起→円買い」での反応は一時的なものに留まりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0572で寄り付いた後、早々に週間安値1.0558まで軟化しました。しかし、21日移動平均線や一目均衡表転換線に下支えされると、@ドイツ5月Ifo企業景況感指数(結果93.0、予想91.4)の良好な結果や、AラガルドECB総裁による「金融政策は正常化に向かっている」「第3四半期末までにマイナス金利脱却の可能性大」とのタカ派的な発言、Bオーストリア中銀ホルツマン総裁による「7月会合で50bpの利上げが適切かもしれない」とのタカ派的な発言、Cラトビア中銀カザークス総裁による「ECBは50bpの利上げを排除すべきではない」とのタカ派的な発言、D上記ABCを背景としたECBによる早期利上げ観測の台頭(欧州債利回り上昇→ユーロ買い)、E米経済指標の冴えない結果(米リセッション懸念→米ドル売り)、F米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.0765(4/25以来、約1ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。

引けにかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間5/28午前5時45分現在)では、1.0730前後で推移しております。尚、今週はECB金融安定報告書にて「ユーロ圏経済見通しは弱体化している」「資産市場が急激に調整されるリスクがある」等のネガティブな見解が発表されましたが、市場の反応は限定的となりました。

来週の見通し(5/30−6/3)

<ドル円相場>
ドル円は5/9に記録した約20年ぶり高値131.36をトップに反落に転じると、今週は一時126.36(4/18以来の安値圏)まで急落しました(▲5.00円の大幅調整)。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線を下抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャート形状となりつつあります。但し、ダウンサイドに一目均衡表の分厚い雲が待ち構えている点、週足など上位足ベースで強い買いシグナルが継続している点などを踏まえると、ここからの更なる下落は容易では無いと考えられます(足元の下落は中長期上昇トレンドの過程で見られる一時的なポジション調整と整理。1/24に記録した年初来安値113.47と5/9に記録した年初来高値131.36のフィボナッチ38.2%押しが位置する124.52近辺までの下落余地を見込みつつも、ここから先は底固めのフェーズに入ってくると予想)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによる金融引き締めスタンスの明確化(パウエルFRB議長は先週「必要ならばFRBはさらに積極的な行動を検討する必要がある」と発言。今週発表された米FOMC議事要旨でも金融引き締めスタンスの継続を再確認)や、A日銀による金融緩和スタンスの明確化(黒田日銀総裁は今週、「金融市場の安定を確保しながら<出口戦略を>適切に遂行するのは十分可能だ」と発言しましたが、これを以って、金融緩和脱却示唆と捉えるのは時期尚早)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い、C資源価格上昇に伴う本邦貿易赤字の拡大懸念(経常収支悪化に伴う構造的な円売り圧力)など、ドル円相場の反発を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。

尚、来週は5/31に予定されている米5月カンファレンスボード消費者信頼感指数や、6/1の米5月ISM製造業景況指数、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁発言、6/2の米5月ADP雇用統計、クリーブランド連銀メスター総裁発言、6/3の米5月雇用統計、米5月ISM非製造業景況指数などに注目が集まります。市場のテーマが「米国の金融政策」から「米リセッション懸念」に移っているため、米経済指標が市場予想を上回る場合には、素直にドル買いで反応する可能性が高いと判断できます。今週は米経済のリセッション懸念が強まる中、アトランタ連銀ボスティック総裁より「6月と7月に50bpの利上げを行った後は、インフレと経済への影響を精査するため、いったん利上げを停止することは理にかなう」と9月以降の利上げ打ち止めを示唆する発言が初めて米当局者より発せられました(市場が織り込む過度な利上げ期待をけん制→米長期金利低下→米ドル売り→ドル円下落に繋がる展開)。

但し、来週発表される米国の重要経済指標が市場予想を上回る結果となれば、米リセッション懸念後退に伴うドル買い・円売りに加えて、米利上げ打ち止め観測の後退に伴うドル買いも見込まれることから、ドル円には強い上昇圧力が加わると予想されます。週足ベースで8週連続陰線を形成していた米ダウ平均株価も今週はようやく大陽線に転じるなど、悪材料出尽くしに伴う地合いの好転が意識されます。ドル円相場も調整局面を終えた可能性が高く、来週はいよいよ底固めのフェーズ入りに期待が集まりそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):126.00ー129.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は5/13に記録した約5年4ヵ月ぶり安値1.0350(2017年1月以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週は一時1.0765まで急伸しました。この間、主要レジスタンスポイント(一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線)を上抜けするなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を印象付けるチャート形状となりつつあります。但し、上方より一目均衡表の雲が垂れ下がってくる点、強い売りシグナルを示唆するパーフェクトオーダーが継続している点などを踏まえると、続伸余地は乏しいと判断できます。来週は一巡後に反落リスクに警戒が必要でしょう(今週の上昇は下落トレンドの過程で見られる一時的な調整局面と整理。一巡後は再びユーロ売りが強まる可能性あり)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシアを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシア・ウクライナ問題のみならず、フィンランドやスウェーデンへの飛び火リスクも残存)や、A欧州経済の先行き不透明感(インフレ昂進と景気後退が同時進行するスタグフレーション発生への警戒感)、B米FRBによるタカ派スタンスの明確化(今週発表された米FOMC議事要旨で金融引き締めスタンスが再度明確化)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。今週はラガルドECB総裁による「第3四半期末までにマイナス金利脱却の可能性大」との発言がサプライズとなり、7月ECBでの25bp利上げ、9月ECBでの25bp利上げが織り込まれる展開となりました(現行の預金ファシリティ金利▲0.5%が9月末までにゼロに浮上するとの思惑→マイナス金利脱却)。但し、欧州経済の先行き不透明感を考慮すれば、積極利上げの継続を織り込むことは容易ではなく、ECBによる金融引き締め転換を材料としたユーロ買いの賞味期限は案外短いと予想されます。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の反落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は5/30ユーロ圏5月企業景況感指数や、5/31のユーロ圏5月HICP速報値、6/1のラガルド ECB 総裁発言、レーンECB専務理事発言、6/2のフランス中銀ビルロワドガロ総裁発言、6/3のユーロ圏4月小売売上高などに注目が集まります(HICPが市場予想を下回る場合は、ECBによる積極利上げ観測の後退を通じて、ユーロドルに下押し圧力を加える恐れあり。一方、HICPが市場予想を上回る場合は、7月50bp利上げ説が再浮上する可能性があるため、来週はHICPとその後の欧州当局者発言に市場参加者の関心が移りそうです)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0550−1.0900

注:ポイント要約は編集部

『短期ドル売りトレンドは終了か。来週は底固めのフェーズ入りに期待』

ドル円日足

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