ドル円 ドル高トレンド継続で新高値を見に行く展開
〇先週のドル円、FOMC直後に130.38レベルに上昇後、議長記者会見の0.75%利上げ否定で128.62へ急落
〇翌日は株安の動きで行って来い、ドル円はFOMC直後や月曜の高値上回り上昇に転じる
〇今週11日米CPI発表予定、前回8.5%でピーク打ち今回8.1%がコンセンサス
〇バイデン大統領、10日にインフレ対策発表予定、今後の方向性判断材料に
〇今週は129.40レベルをサポート、131.90レベルをレジスタンスとする流れとみる
今週の週間見通し
先週のドル円は概況にも書いた通りですがFOMC後のパウエル議長会見で0.75%の利上げは考えていないとの発言が過度にタカ派な見方を抑え、それが株高・ドル安につながったとされましたが、先週末のコラムでも確認したように年末、あるいは来年半ばのFF先物と取引水準を見ると、現在の0.75%から年末時点で2.73%とここから2%の利上げが見込まれていますし、来年6月には更に0.5〜0.75%の利上げがコンセンサスです。
株式市場が0.75%の利上げが無いことを好材料としたことは不思議でしたが、翌日の株安の動きで行って来いとなった動きの方が自然です。現状から年内に2%もの利上げが行われるとするならば株式市場にとっては十分に悪材料ですから、大口の仕掛けに乗せられた動きとでも考えておいた方が良いように思います。
そして今週は注目の米国CPIが11日に発表されますが、10日にバイデン大統領がインフレに関して何らかの対策を発表することが発表されました。中間選挙に向けてのポーズ程度なのか、金融市場に影響を与えるような内容となるのか現時点ではわからないものの、11日のCPIは前回の8.5%でピークを打ち8.1%になるという見方がコンセンサスでもあり、気になる日程での発表ではあります。
ピークアウトせずに更なるインフレ率上昇といった情報でもホワイトハウスに届いているのかもといった勘ぐりも出てきそうではありますが、FRBは今後着実に利上げとQTを進めていくこととなり、仮に今月で無くとも今後の米国のインフレは抑えられていく方向であることはたしかでしょう。
他にも経済指標や要人発言が続きますが、今週はバイデン大統領の発言と米国CPIを見ながら今後の米国のインフレについての見方に調整を加えるかどうかを判断することとなります。
テクニカルにはFOMC後に変に下げたために現在では130円の大台割れではドル買いが構えていると見てよいでしょう。そのあたりも含めて日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
現在のドル円は3月末の押しを起点とした上昇チャンネル(青の平行線)の中での動きを継続中で、この起点121.27を短期上昇N波動の起点と捉えると、次のターゲットとなる61.8%エクスパンションが131.95(ピンクのターゲット)となることは先週も書いた通りです。また中期的には100%エクスパンションが135.05と2002年高値とほぼ一致しているため、135円が今回の円安のゴールとなる有力な水準と言えます。
今週のところは年初来高値をトライして61.8%エクスパンションがせいぜいだと思いますが、下値は先週の不意な下げがあったため130円を割れたとしても押し目買いが出やすくなってきてしまったと見てよいでしょう。最近はレンジも広めですから129円台半ば程度までの下げは考え、今週は129.40レベルをサポートに131.90レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
5月9日(月)
**:** 香港市場休場
08:50 日銀会合議事要旨公表
**:** 中国4月貿易収支
15:45 フランス3月貿易収支
23:00 米国3月卸売売上高
5月10日(火)
08:01 英国4月小売売上高
10:30 豪州4月企業景況感
16:00 トルコ3月失業率
18:00 ドイツ5月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏5月景況感 ☆
20:40 NY連銀総裁講演 ☆
**:** バイデン大統領インフレ対策発表
23:00 ドイツ連銀総裁講演
26:00 ウォラーFRB理事講演、(ミネアポリス連銀総裁講演)
28:00 クリーブランド連銀総裁講演
5月11日(水)
08:00 (アトランタ連銀総裁講演)
09:30 豪州5月消費者信頼感
10:30 中国4月CPI・PPI ☆
15:00 ドイツ4月CPI ☆
17:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
17:55 オランダ中銀総裁講演
21:30 米国4月CPI ☆
23:30 週間原油在庫統計
5月12日(木)
08:01 英国4月住宅価格
08:50 日銀会合主な意見公表 ☆
08:50 本邦3月貿易収支(国際収支)
15:00 英国1〜3月期GDP速報値 ☆
15:00 英国3月貿易収支
17:05 スペイン中銀総裁講演
21:30 米国4月PPI ☆
21:30 米国新規失業保険申請件数
29:00 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
5月13日(金)
15:45 フランス4月CPI
16:00 トルコ3月鉱工業生産
18:00 ユーロ圏3月鉱工業生産
21:30 米国4月輸入物価
23:00 米国5月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
先週は東京がゴールデンウィークだったため、通常とは異なり一週間をまとめて振り返らせていただきます。
前週に131.25レベルと20年ぶりの円安水準をつけていたこともあって、4日FOMCまでは130円の大台をもみあいの中心とした方向感がはっきりしない横方向の動きを続けました。FOMCでは0.5%の利上げと6月からのQT(量的引き締め)の実施を決定しました。QTは当初3ヶ月475億ドル、それ以降は950億ドルとなりますが、950億ドルとして年1.14兆ドルですから、コロナショック以降で膨張したバランスシート4.73兆ドルを減らすだけでも4年以上かかる計算です。
FOMCの結果発表直後には130.38レベルと月曜高値圏に近づいていましたが、パウエルFRB議長会見において0.75%の利上げは積極的に検討していないとの発言で過度な引き締め観測が後退、株高とドル安の動きとなりドル円は128.62レベルへと急落しました。この動きはやや違和感がある流れでしたが翌日には株安が強まると同時にドル買いの動きとなりFOMC直後の高値、月曜高値を上回りました。
金曜は雇用統計発表はあったものの最近は雇用統計の注目度は低く、また結果も強弱はあったものの想定内の数字に留まったため130円台半ばでもみあいのままでの週末クローズとなりました。
ディスクレーマー
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