ドル円見通し 黒田バズーカ第四弾の様相、米FOMCと雇用統計を通過して上昇基調を継続(週報5月第2週)

米長期債利回りの上昇基調は継続している。

ドル円見通し 黒田バズーカ第四弾の様相、米FOMCと雇用統計を通過して上昇基調を継続(週報5月第2週)

黒田バズーカ第四弾の様相、米FOMCと雇用統計を通過して上昇基調を継続

〇ドル円、5/5未明のFOMC後128.61までの急落を解消、6日午前に130.80まで戻り高値切り上げる
〇米長期債利回りはFOMC後の一時的な低下から反転上昇、NYダウも急騰が続かずに急落に転じる
〇5/6夜の雇用統計は事前予想に近い数字、ドル円の上昇再開感に変化なく130円台を維持して越週
〇米株式市場、調整入りへの懸念高まり下落基調、NYダウ2/24安値を下回ると下げ足加速の恐れ
〇米長期金利は理論的にはまだ上昇の余地ありとの見方も
〇125円越えの水準での4/28の日銀の連日指値オペ宣言は黒田バズーカ第四弾ともいえるか
〇135円は円安容認の限界としては近すぎ140円台から147.68にかけてのゾーンへ向かうことに現実味も
〇131.24超えからは、132円台、133円台、134円台と段階的に高値水準を切り上げる展開
〇上昇トレンドの下値支持線が129円台に来ており、129円台序盤へ下げる場面が有れば買われやすいか

【概況】

ドル円は5月5日未明の米FOMCによる0.50%利上げ決定直後に130.37円から128.61円まで1.76円の急落となったが、売り一巡から買い戻されて5日夜には急落分を解消、6日午前には130.80円まで戻り高値を切り上げて4月28日の日銀金融緩和政策継続発表後の高値131.24円に迫った。
米FOMCの利上げと量的金融引き締め開始決定は市場予想通りとしてひとまずドル買い一巡で売られたのだが、米連銀による引き締め姿勢が一段と強まる可能性は継続するとして米長期債利回りは一時的な低下から反転上昇となり、NYダウもイベント通過による急騰が続かずに急落に転じたため、金融市場のセンチメントもFOMC前の流れへ回帰した印象だ。
5月6日夜の米雇用統計は市場の事前予想に近い数字だったため、FOMC通過後の上昇再開感は圧迫されないとしてドル円は130円台を維持して週を終えた。

【米FOMC、米雇用統計は市場予想の範囲】

5月5日未明に声明発表・議長会見のあった米連銀FOMCでは、政策金利を0.50%引き上げて年0.75〜1.00%とし、凡そ9兆ドルに膨れ上がった米連銀の保有資産についても6月から毎月475億ドル(国債300億ドル、MBS175億ドル)を削減、9月以降は月950億ドル(国債600億ドル、MBS350億ドル)削減とした。
通常は0.25%ずつの利上げが基本だが今回は0.50%の大幅利上げであり、6月と7月のFOMCでも0.50%利上げが検討されるとしたが、パウエル米連銀議長は0.75%利上げについては積極的に検討していないとした。
米労働省が5月6日に発表した4月の米雇用統計では非農業部門就業者数が前月比42万8000人増となり市場予想の39.1万人増を上回ったものの前月と変わらずだった。失業率も前月と変わらずの3.6%で、パンデミック発生直前の2020年2月の3.5%以来の水準を維持した。平均時給は前月比0.3%上昇で3月の0.5%から伸びが鈍化して市場予想の0.4%を下回り、前年同月比は5.5%で予想と一致、3月の5.6%から若干の低下となった。

雇用状況は改善基調を継続しており賃金の伸びを見る限りではインフレもピーク期に来ている印象があるので5月11日に発表予定の米4月消費者物価上昇率が注目されるものの、米連銀の引き締め強化姿勢を緩めるものにはならないだろうと思われる。
金利先物市場では次回FOMCでの0.75%の利上げ可能性も見られるが、3月序盤に急騰した処から落ち着いている原油相場が再び騰勢を強めれば国際商品全般の上昇感を一段と強めることになり、米連銀及び主要国中銀の引き締め姿勢も強化されてゆくと思われる。

【米株式市場の調整局面入りへの懸念強まる】

NYダウはFOMC直後の反騰により5月4日は前日比932.27ドル高の大上昇となったが、5日は同1063.09ドル安の急落となり一時は1300ドル安を超える下落規模となった。6日は乱高下一服だが前日比98.60ドル安と下落した。ナスダック総合指数は5月4日に前日比401.10ポイント高、5日に647.17ポイント安と乱高下し、6日は173.03ポイント安の続落となった。
NYダウは1月5日に史上最高値36952.65ドルから2月24日に32272.64ドルへ下落、いったん35000ドル台へ戻したものの再び失速しており2月24日安値を割り込むようだと調整局面入りの印象が強まり、世界連鎖型の株安を助長しやすくなると思われる。ナスダック総合指数はすでに昨年11月22日の史上最高値以降の安値を更新しており昨年1年間の上昇幅も解消している。S&P500も1月4日の史上最高値以降の安値を更新しているが、心理的節目の4000ポイント(5月6日終値は4123.34)を割り込むと下げ足が早まると危惧される。

株安が進行する場合、主要国中銀による金融引き締めによる景気減速感、量的引き締めによるドルストレートでのドルの買い戻しや新興国市場からの投資マネー引き上げ等によりドル高感が強まるのではないかと思われる

【米長期債利回りはまだ上昇余地あり】

米長期債利回りの上昇基調は継続している。5月6日の米10年債利回りは前日比0.09%上昇の3.14%となり2018年11月以来の高水準に達した。FOMC直後に若干低下したものの5日からの連騰で2018年10月天井の3.26%へ迫っている。利上げに敏感な2年債利回りは0.02%上昇の2.74%で終了、5月4日に2.83%を付けて2018年11月の2.98%以来の高水準に達した後も高値圏を維持している。
米セントルイス連銀のブラード総裁は6日に「テイラー・ルールに従えば適正水準は3.63%」「(米連銀のインフレ対策は)後手に回っている」と述べている。これを踏まえれば10年債利回りも2年債利回りもまだかなり上昇余地がある。 
※ テイラー・ルールとは、インフレ率やGDPギャップ等の経済変数の変化に対して政策金利をどの水準に設定すれば良いかを示した関係式で、1993年に米経済学者テイラー氏が提唱したもの。

【黒田バズーカ「第四弾」?、日銀の円安容認限界を試す】

日銀は4月28日の金融政策決定会合でマイナス金利維持、量的金融緩和の継続、毎営業日の指値オペによる長期金利抑制方針を示し、ドル円は131.24円まで急伸した。
2012年12月に発足した第2次安倍政権による所謂アベノミクスと呼応した日銀の異次元金融緩和が2011年10月底75.57円を起点として2015年6月天井125.84円までの歴史的大上昇を招いた。黒田総裁による段階的な緩和拡大政策は黒田バズーカと呼ばれ、2013年4月の第一弾では物価目標を2%とした量的・質的金融緩和政策を発表、2014年4月に消費税が5%から8%へ引き上げられた後の2014年10月に第二弾として量的・質的金融緩和の拡大を決定、2016年1月には第三弾としてマイナス金利導入付きの量的・質的追加金融緩和を決定した。
米国からの円安へのけん制を背景に黒田総裁がこれ以上の円安は考えられないと述べたことで125円台=黒田ラインとしてドル円は天井を打ったのだが、昨年来の大上昇により黒田ラインを超えた状況の中で4月28日の連日指値オペ宣言が行われており、主要国が利上げに走る中での決定は、ある意味では円安を招く黒田バズーカの第四弾となったのだろうと言える。

既に2015年6月天井125.84円を超えた状況での「第四弾」であり、130円台到達に対するけん制や円安を抑えようとする姿勢は感じられず、市場としては月足チャートにおける過去の主要高値である2002年1月31日天井の135.15円、1998年8月11日天井の147.63円、1990年4月2日天井の160.36円を順次試してゆくことになるのだろうと思われる。ならば、135円台では円安容認の限界としては近すぎるため、140円台から1998年8月天井の147.68円にかけてのゾーンへ向かうことも現実味があるのではないかと思われる。

黒田バズーカ第四弾の様相、米FOMCと雇用統計を通過して上昇基調を継続

ドル円月足

【3月末からの上昇トレンドを維持、当面のポイント】

【3月末からの上昇トレンドを維持、当面のポイント】

日銀金融政策発表後の高値131.24円から米FOMCの利上げ発表直後の安値128.61円まで2.63円の下落が入ったが、5月6日午前に130.80円まで持ち直しており、現状はイベント通過後の調整安を消化して上昇再開に入り高値更新を伺う位置取りと思われる。
2月後半からの上昇においては、3月28日高値から3月31日安値まで3.84円の下落、4月20日高値から4月27日安値まで2.47円の下落、4月28日高値から5月4日安値まで2.63円の下落が入っている。今後もこの規模の調整安を入れつつも高値更新を続けてゆく展開が期待される。
高値更新の前ないしは高値更新後にいったん仕切り直しの下落が入る可能性がある点に注意しつつ、突っ込んだところはバーゲンハント買いが出易いものと予想される。

(1)当面、130円以上での推移か一時的に割り込んでも回復する場合、4月28日夜高値131.24円超えから132円台、133円台、134円台と段階的に高値水準を切り上げる展開と考える。
(2)3月31日深夜安値と4月28日安値、5月5日未明安値はほぼ1直線で上昇トレンドの下値支持線を形成しており、現在は129円台に来ているため、129円台序盤へ下げる場面が有れば買われやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/9(月)
休場、香港、ロシア(旧ソ連の対ドイツ戦勝記念日)
フィリピン大統領選挙
未 定 (中) 4月 貿易収支・米ドル建て (3月 473.8億ドル、予想 506.5億ドル)
未 定 (中) 4月 貿易収支・人民元建て (3月 3005.8億元、予想 3394.8億元)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
15:30 (日) 十倉経団連会長、会見
21:45 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、挨拶
23:00 (米) 3月 卸売売上高 前月比 (2月 1.7%、予想 1.8%)

5/10(火)
休場 ロシア
尹錫悦氏、韓国大統領就任
08:30 (日) 3月 全世帯消費支出 前年同月比 (2月 1.1%、予想 -3.3%)
10:30 (豪) 4月 NAB企業景況感指数 (3月 18)
18:00 (独) 5月 ZEW景況感 (4月 -41.0、予想 -43.0)
18:00 (欧) 5月 ZEW景況感 (4月 -43.0)
20:40 (米) ウィリアムズ・ニューヨー連銀総裁、講演
21:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、挨拶
22:25 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
23:00 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
26:00 (米) ウォラーFRB理事、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省3年債入札
28:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、パネル討論会

5/11(水)
08:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会
09:30 (豪) 5月 ウエストパック消費者信頼感指数 (4月 95.8)
10:30 (中) 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 1.5%、予想 1.9%)
10:30 (中) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 8.3%、予想 7.8%)
14:00 (日) 3月 景気先行指数速報値 (2月 100.0、予想 100.9)
14:00 (日) 3月 景気一致指数速報値 (2月 96.8、予想 97.0)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.8%、予想 0.8%)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 7.4%、予想 7.4%)
16:15 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
17:00 (欧) ラガルドECB総裁、講演

21:30 (米) 4月 消費者物価指数 前月比 (3月 1.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 8.5%、予想 8.1%)
21:30 (米) 4月 消費者物価コア指数 前月比 (3月 0.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 消費者物価コア指数 前年同月比 (3月 6.5%、予想 6.0%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
25:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 () 4月 財政収支 (3月 -1927億ドル、予想 2200億ドル)

5/12(木)
バイデン米大統領、ASEAN首脳とサミット(5/13まで、ワシントン)
G7外相会合(5/14まで、独ワイセンハウス)
岸田首相、フォンデアライエン欧州委員長等と会談
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合(4月27-28日分)主な意見
08:50 (日) 3月 経常収支・季調前 (2月 1兆6483億円、予想 1兆7500億円)
08:50 (日) 3月 経常収支・季調済 (2月 5166億円、予想 6282億円)
08:50 (日) 3月 貿易収支・国際収支ベース (2月 -1768億円、予想 1070億円)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー現状判断 (3月 47.8、予想 51.0)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー先行判断 (3月 50.1、予想 51.0)

15:00 (英) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 1.3%、予想 1.0%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP速報値 前年同期比 (10-12月 6.6%、予想 8.9%)
15:00 (英) 3月 月次GDP 前月比 (2月 0.1%、予想 0.0%)
15:00 (英) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -0.6%、予想 0.0%)
15:00 (英) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 1.6%、予想 0.6%)
15:00 (英) 3月 貿易収支・物品 (2月 -205.94億ポンド、予想 -185.00億ポンド)
15:00 (英) 3月 貿易収支・全体 (2月 -92.61億ポンド、予想 -79.00億ポンド)

21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 1.4%、予想 0.5%)
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 11.2%、予想 10.7%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前月比 (3月 1.0%、予想 0.6%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前年同月比 (3月 9.2%、予想 8.9%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.0万件、予想 19.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 138.4万人、予想 136.0万人)
26:00 (米) 財務省30年債入札
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 6.50%、予想 7.00%)
29:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、討論会

5/13(金)
08:50 (日) 4月 マネーストックM2 前年同月比 (3月 3.5%、予想 3.4%)
11:00 (豪) ブロック豪中銀総裁補、パネル討論会
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 0.7%、予想 -2.0%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 2.0%、予想 -1.1%)
21:30 (米) 4月 輸入物価指数 前月比 (3月 2.6%、予想 0.6%)
21:30 (米) 4月 輸出物価指数 前月比 (3月 4.5%、予想 0.7%)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (4月 65.2、予想 64.0)
24:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
25:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演

注:ポイント要約は編集部

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