ドル円見通し 125円到達後の反動安、露・ウクライナ停戦協議進展報道からも売られる
〇ドル円、125円到達後の反動安、29日深夜121.97まで一段安に
〇日銀連続指値オペ実施、円安容認姿勢への不安から要人による円安けん制相次ぐ
〇米2年債利回り一時2.45%、10年債利回り上回る「逆イールド」、逆転19年9月以来
〇停戦協議進展でNYダウ前日比338.30ドル高、米経済指標は概ね良好
〇123.70以下での推移中はもう一段安余地ありとし、122.50割れからは121.97試しとする
〇123.70超えからは反騰入りの可能性を優先し、124円台中盤を目指すとみる
【概況】
ドル円は3月28日の日中に日銀が長期債利回りを抑える二度の指値オペを実施し、夕刻には29日からの連続指値オペを通告したことが円安容認とされて28日夕刻に125.10円へ上昇、2015年8月12日高値125.27円以来の高値水準となったが、アベノミクスと日銀の異次元金融緩和政策により付けた2015年6月5日天井125.84円に迫ったことでの高値警戒感と当面の円売り材料一巡として29日未明には123円台序盤へ失速した。
3月29日の日中は123円台を中心とした持ち合いとなっていたが、20時過ぎにトルコのイスタンブールで開催されたロシアとウクライナの停戦交渉で合意に向けた進展があったと報じられたことでリスク選好的なユーロ高ドル安となり、米債券市場で10年債利回りが低下に転じて一時2年債利回りに逆転されたことからドル円も125円到達後の反動安を継続して29日深夜には121.97円まで一段安となった。122円割れは買い戻されて30日午前序盤は123円近辺へ戻している。
停戦協議進展報道でユーロ高ドル安となり、米10年債利回りが2年債利回りに逆転されたことからドル円も125円到達後の反動安を継続し29日深夜121.97円まで一段安となった。
【日銀の連続指値オペによる円安容認への不安も露呈】
3月29日の日銀による連続指し値オペでは24626億円の応札があったと報じられたが、規模や話題性は28日夕刻の指値オペ通告時の上昇で材料消化としており、29日のドル円への影響は限定的だったようだ。125円という、2015年にかけての異次元金融緩和時代に黒田ラインとされた円安の許容限界に達したことで、政府日銀による円安容認レベルが125円台ではなくさらに130円に迫るレベルへ押し上げられたのかどうか、市場もやや疑心暗鬼な状況にある。
3月29日は政府高官や財界からの円安けん制も相次いだ。財務省の神田財務官は29日に来日中のボーコル米財務次官代行と会談し、円安を含めて最近の為替市場の動向について意見を交換した。神田財務官は会談後に「為替の問題に関し日米の通貨当局間で緊密な意思疎通を図っていくことを確認した」、「過度の変動や無秩序な動きは経済・金融に悪影響を与える」、「最近の円安の動向含めて緊張感をもって注視する」と述べた。
松野官房長官は29日の会見で「最近の円安の進行を含め、為替市場の動向や日本経済への影響を緊張感を持って注視していく」、「為替の安定は重要であり、急速な変動は望ましくない」と述べた。
経済同友会の桜田代表幹事も「現在の水準が適切だとはとても思えない」とし、日本鉄鋼連盟の橋本会長も「円安を容認する政策でよいのか真剣に議論しなければならない」と述べている。かつては円安要請スタンスにあった経済界も原油高騰による輸入インフレに円安が輪をかけていることで厳しい状況に追い込まれているようだ。
【米2年債と10年債の利回りが一時逆転したのは2019年9月以来】
3月29日の米10年債利回りは前日比0.06%低下の2.40%となった。一時は2.54%へ上昇して28日に付けたパンデミック以降の高値2.55%へ迫っていたが、ウクライナ停戦協議進展報道をきっかけに低下に転じた。30年債利回りも前日比0.04%低下の2.50%となったが、利上げペース加速を意識して2年債利回りは前日比0.04%上昇の2.37%となり、一時は2.45%を付けて10年債利回りを上回った。2年債と10年債利回りの逆転は2019年9月以来であり、長短金利逆転の逆イールドはリセッション入りの先行指標とされる。
米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は3月29日の講演で2022年は0.25%ずつ7回の利上げを予想しているとしたが、次回の5月FOMCで0.5%の大幅利上げも大いにありうるとした。3月21日パウエル米連銀議長が0.50%利上げの可能性を示唆して以降、米連銀高官による年内複数回の0.50%利上げの可能性等、利上げペースを加速させる姿勢が強調されている。このためより短期の2年債や5年債が売られて利回りが上昇、10年債や30年債は裁定的に買われて利回り上昇もストップしやすい状況ともいえるが、それでも米10年債利回りは高水準にあるため、ドル円としては10年債利回り低下局面で売られつつも2年債利回りの騰勢継続で下支えられる印象だ。
【米経済指標は概ね良好、停戦協議進展でダウは高い】
3月29日のNYダウは前日比338.30ドル高、ナスダック総合指数は同264.74ポイント高と反発した。米連銀による金融引き締め強化を織り込みつつ、ウクライナ停戦協議進展期待による原油安が安心材料とされたようだ。しかしロシアと欧州の天然ガス供給を巡るルーブル払いでの対立、欧米のロシア制裁解除への機運が見えないことで先行き不透明感は継続しており、原油も100ドル割れを買い戻されて下げ幅を削っている。
米コンファレンス・ボードによる3月の消費者景気信頼感指数は107.2となり2月の105.7から上昇、市場予想の107.0を若干上回った。現況指数は2月の143.0から153.0へ改善、期待指数は2月の80.8から76.6へ低下した。
米労働省による2月の雇用動態調査(JOLTS)では非農業部門求人数が前月比17000件減の1126万6000件となり2か月続いての減少だったが市場予想の1100万件を上回った。
米連邦住宅金融局(FHFA)による1月住宅価格指数は前年同月比18.2%上昇、前月比も1.6%上昇となり12月の1.3%上昇から伸びが加速した。またS&Pケース・シラー全米住宅価格指数は前年同月比19.2%上昇、前月比も1.1%上昇となり住宅市況の堅調さを示した。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては3月5日未明安値を起点とした大上昇が3月28日高値125.10円で目先のピークを付けて下落に転じているが、29日夜への急落からは持ち直しているのですでに新たな上昇期に入っている可能性もあるところだ。124円台を回復できないうちは3月28日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとし29日夜安値を割り込む場合は30日夜から4月1日にかけての間への下落を想定するが、123.70円超えを強気転換注意とし、124円超えからは強気サイクル入りとして31日夕から4月4日夕にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では3月29日夜の急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。このため先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月28日夕刻に80ポイント台後半へ急伸してから低下に転じて29日夜には30ポイント台へ下げたが、その後の持ち直しで50ポイントまで戻している。55ポイント超えからは上向きとし、60ポイント超えからは70ポイント台を目指す上昇を想定するが、50ポイント台を維持できずに45ポイント割れへ失速する場合は下げ再開とみて30ポイント割れを目指すとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月29日夜安値121.97円を下値支持線、60分足先行スパン入り攻防の123.20円近辺、123.70円を上値抵抗線とする。
(2)123.70円以下での推移中はもう一段安余地ありとし、122.50円割れからは29日夜安値121.97円試しとし、底割れからは121円前後への下落を想定する。121.25円以下は反発注意とするが、122.50円以下での推移なら31日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)123.70円超えからは反騰入りの可能性を優先して124円台中盤(124.30円から124.70円)を目指すとみる。124.50円以上は反落注意とするが、123.70円を超えた後も123円台を維持しての推移なら31日は高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
3/30(水)
10:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
17:00 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、講演
17:10 (英) ブロードベント英中銀副総裁、講演
18:00 (欧) 3月 経済信頼感 (2月 114.0、予想 109.0)
18:00 (欧) 3月 消費者信頼感確定値 (速報 -18.7、予想 -18.7)
21:00 (独) 3月 消費者物価指数速報値 前月比 (2月 0.9%、予想 1.6%)
21:00 (独) 3月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (2月 5.1%、予想 6.3%)
21:15 (米) 3月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (2月 47.5万人、予想 45.0万人)
21:30 (米) 10-12月期 GDP確定値 前期比年率 (改定値 7.0%、予想 7.0%)
21:30 (米) 10-12月期 GDP個人消費確定値 前期比年率 (改定値 3.1%、予想 3.1%)
21:30 (米) 10-12月期 アPCE確定値 前期比年率 (改定値 5.0%、予想 5.0%)
22:15 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、挨拶
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
3/31(木)
OPECプラス閣僚級会合
08:50 (日) 2月 鉱工業生産速報値 前月比 (1月 -0.8%、予想 0.5%)
08:50 (日) 2月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (1月 -0.5%、予想 0.8%)
09:30 (豪) 2月 住宅建設許可件数 前月比 (1月 -27.9%、予想 7.5%)
10:30 (中) 3月 製造業PMI (2月 50.2、予想 50.0)
14:00 (日) 2月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (1月 2.1%、予想 1.2%)
15:00 (英) 10-12月期 GDP改定値 前期比 (速報 1.0%、予想 1.0%)
15:00 (英) 10-12月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 6.5%、予想 6.5%)
15:00 (英) 10-12月期 経常収支 (7-9月 -244億ポンド、予想 -190億ポンド)
15:00 (英) 3月 ネーションワイド住宅価格 前月比 (2月 1.7%、予想 0.5%)
15:00 (独) 2月 小売売上高 前月比 (1月 2.0%、予想 0.5%)
15:00 (独) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 10.3%、予想 6.3%)
16:55 (独) 3月 失業者数 前月比 (2月 -3.30万人、予想 -2.00万人)
16:55 (独) 3月 失業率 (2月 5.0%、予想 5.0%)
17:00 (欧) レーンECB理事、講演
18:00 (欧) 2月 失業率 (1月 6.8%、予想 6.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 18.7万件、予想 20.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 135.0万人、予想 135.0万人)
21:30 (米) 2月 個人所得 前月比 (1月 0.0%、予想 0.5%)
21:30 (米) 2月 個人消費支出(PCE) 前月比 (1月 2.1%、予想 0.5%)
21:30 (米) 2月 PCEデフレーター 前年同月比 (1月 6.1%、予想 6.4%)
21:30 (米) 2月 PCEコア・デフレーター 前月比 (1月 0.5%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (1月 5.2%、予想 5.5%)
22:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、挨拶
22:45 (米) 3月 シカゴ購買部協会景況指数 (2月 56.3、予想 57.0)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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