ドル円見通し 原油高騰によるインフレ進行懸念で米長期債利回り上昇、ドル円は持ち合い上限に(22/3/9)

ドル円はリスク回避的な円の買い戻しよりも米長期債利回り上昇に同調、3月4日深夜安値114.63円からの反騰を継続して8日夜には115.78円に到達した。

ドル円見通し 原油高騰によるインフレ進行懸念で米長期債利回り上昇、ドル円は持ち合い上限に(22/3/9)

原油高騰によるインフレ進行懸念で米長期債利回り上昇、ドル円は持ち合い上限に

〇ドル円、3/8夜115.78到達、持ち合い上限からの推移試される
〇欧米によるロシア産原油禁輸への動き、原油相場の高騰続く
〇インフレ進行懸念で米長期債利回り連騰、円買い戻しよりもドル高円安の展開に
〇115.60以上での推移中は上向きとして、2/15高値115.87近辺や116円試しとみる
〇115.41割れからは下落期に入るとみて、115円台序盤への下落を想定する

【概況】

ドル円はウクライナ情勢と米長期債利回り動向を見ながらの展開を続けているが、欧米によるロシア産原油への禁輸へ向けた動きを警戒して原油相場の高騰が続く中、インフレ進行への警戒感が強まって米長期債利回りが上昇、ドル円はリスク回避的な円の買い戻しよりも米長期債利回り上昇に同調して3月4日深夜安値114.63円からの反騰を継続して8日夜には115.78円に到達した。深夜に115.41円まで反落したものの早々に買い戻されている。
2月後半からは115.80円前後を上値抵抗とし、114円台中盤では買い戻されるボックス型持ち合いで推移しているが、その上限に到達しており、持ち合い上放れへ進むのか、持ち合い継続としてその上限から再び下限へ向けて下落に転じるのか試されるところだ。

【米長期債利回りは連騰】

原油等国際商品全般の大上昇を踏まえて米長期債利回りは株安債券買いによる低下へは進まずに米連銀による利上げペースの加速を警戒してインフレへの反応を優先しており、3月8日は10年債利回りが前日比0.07%上昇の1.85%、30年債利回りが0.04%上昇の2.23%、2年債利回りが0.05%上昇の1.61%となった。
一方でNYダウは一時500ドルを超える反騰となる場面もあったものの前日比184.74ドル安に終わって4日続落、ナスダック総合指数も35.41ポイント安と下げた。ウクライナ情勢による世界経済の混迷、インフレの深刻化が一段とスケールアップしていることを懸念して売られており、ダウとナスダックはともには2月24日安値割れに余裕が乏しくなっている。安値更新の場合は調整安の長期化も警戒されるところだ。

【米国がロシア産原油の禁輸を決定、英欧もその流れに続く姿勢】

3月9日未明、バイデン米大統領はロシア産の原油や天然ガス、石炭の輸入を禁止すると発表した。また英国のジョンソン首相はロシアからの原油と石油製品の輸入を段階的に削減して2022年末までに完全に停止すると発表した。ロシア産原油や天然ガスへの依存度が大きいEUはロシア産天然ガスの依存度を年内に凡そ6割低下させて2030年よりかなり前に依存をゼロにする計画を発表した。
ロシアはこれに対して「ロシア連邦の安全を確保するため、特定の商品と原材料の輸出入を制限する法令に署名した」とインタファクス通信が報じている。対象とされる商品や原材料資源についての詳細は不明だ。
ロシアは世界2位の原油生産国であり最大級の輸出国である。2022年2月時点におけるロシアの石油輸出は日量760万バレル、このうち原油が460万バレル、石油製品が300万バレルとされ、輸出先の64%が欧州向け、22%がアジア向けとされる。

欧州は天然ガスの90%を輸入しており、そのうちの40%がロシア産。ドイツへのパイプラインであるノルドストリーム1はまだ稼働しているが、増設計画が進んでいたノルドストリーム2は今回のロシアによるウクライナ侵攻による制裁で許可が取り消された。EU加盟国では8割をロシア産天然ガスに依存しているところもある。
米国のロシア産原油・天然ガスへの依存度は1割程度であり、国内のシェールオイル・ガス業者の増産やカナダからの融通で対処できるが、欧州は抜本的なエネルギー政策の転換が必要であり簡単にはロシアからの輸入を止められず、止めれば大停電や暖房喪失となりかねない。依存度の違いで米英とEUの対応に差が出ているわけだが、アジア向けの需要も大きいことや、ロシア産を除いた世界の原油・石油製品の奪い合いとなり市場が大混乱する可能性がある。

欧米によるロシア産原油禁輸への動きが報じられたことでNY原油期近は3月4日に前日比8.01ドル高となり、3月7日高値で130.50ドルまで急伸、8日も一時は129.44ドルへ急伸して終値も123.70ドルとなり前日比は4.30ドル高の続伸となっている。終値ベースでの大幅続伸が続いているが、既に2014年の逆オイルショック(シェールオイル勢の増産による値崩れ)前の高値水準を超えており、リーマンショック前のBRICs高成長による需給ひっ迫で付けた2008年7月の過去最高値147.37ドルに迫ってきている。
原油等の資源高騰が食料品等の相次ぐ値上げに反映されており日本におけるインフレ進行懸念も強まるところだが、日本の1月経常収支は1.1兆円の赤字で過去二番目の赤字幅となった。輸入インフレと経常収支の悪化が円の実力を削いでおり、有事リスクにおける円買いのパワーがかつてほど無いために、ウクライナ情勢においても米長期債利回りが低下する場面では円高となるものの、米長期債利回りがインフレを反映して上昇するとドル高円安へ持って行かれる展開となっている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、114円台中盤から115円台後半までのボックス型持ち合いでの騰落が続いている中で、3月4日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けて上昇期に入った。高値形成期は8日夜から10日夜にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあり、ボックス型持ち合いの上限に達しているところにある。このため3月8日深夜の反落時安値115.41円を上回るうちは上昇余地ありとし、流れ次第ではボックス型持ち合いを上放れる可能性もあるとみるが、8日深夜安値割れからは弱気サイクル入りとして9日夜から11日深夜にかけての間へとボックス型持ち合いの下限試しを想定する。

60分足の一目均衡表では3月8日早朝時点で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からは下落期入りとみて安値試し優先とする。その際に先行スパンの上下限を試すとみるが、先行スパンから転落の場合はボックス型持ち合いの下限試しへ向かう流れとみる。

60分足の相対力指数は3月8日夜に70ポイント台に到達してからも60ポイント前後を支持線に高止まりしている。相場が高値を切り上げる際に指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られる場合は弱気転換注意とし、50ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント台を試す流れとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、115.41円を下値支持線、116.00円を上値抵抗線とする。
(2)115.60円以上での推移中は上向きとして、2月15日高値115.87円近辺や116円試しとみる。116円到達では売られやすいとみるが、勢い付く場合は116円台序盤(116.05円から116.25円)へ上値目途を引き上げる。また115.50円以上での推移なら10日の日中も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)115.60円割れを弱気転換注意とし、115.41円割れからは下落期に入るとみて115円台序盤(115.20円から115.00円)への下落を想定する。115.10円以下は反発注意とするが、115.41円を割り込んでの推移が続くなら10日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

3/9(水)
休場 韓国(大統領選挙)
10:30 (中) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 9.1%、予想 8.7%)
10:30 (中) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 0.9%、予想 0.9%)
17:00 (豪) ベル豪中銀副総裁、パネル討論会
24:00 (米) 1月雇用動態調査(JOLT)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省10年債入札

3/10(木)
EU非公式首脳会議[11日まで]
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前月比 (1月 0.6%、予想 0.6%)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前年同月比 (1月 8.6%、予想 8.6%)
21:45 (欧) 欧州中銀政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、定例記者会見
22:30 (米) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 0.6%、予想 0.8%)
22:30 (米) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 7.5%、予想 7.9%)
22:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前月比 (1月 0.6%、予想 0.5%)
22:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 6.0%、予想 6.4%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 147.6万人、予想 142.0万人)
27:00 (米) 財務省30年債入札
28:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 1187億ドル)


注:ポイント要約は編集部

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