ドル円見通し 115円を挟んだ持ち合い、リスク回避的円高感あるも米債利回り上昇でドル高円安(22/3/8)

ドル円はリスク回避的な円高感を持ちながらも全般のドル高及び米長期債利回り上昇に押し上げられる展開となった。

ドル円見通し 115円を挟んだ持ち合い、リスク回避的円高感あるも米債利回り上昇でドル高円安(22/3/8)

115円を挟んだ持ち合い、リスク回避的円高感あるも米債利回り上昇でドル高円安

〇ドル円、リスク回避的な円高感を持ちつつも、ドル全面高と米長期債利回り上昇に押し上げられる
〇115.80前後を上値抵抗帯、114円台を中盤下値支持帯としたボックス型持ち合いでの推移続く
〇NYダウは今年最大の下落、株安の中でも米長期債利回り上昇、インフレの深刻化への反応強い
〇欧米によるロシア原油禁輸検討がきっかけとなり、NY原油・北海ブレント原油が暴騰的な大上昇
〇115.20以上での推移中は上向き、115.50超えの場合115.70から115.90にかけてを試す上昇を想定する
〇115.20割れを弱気転換注意とし、115円割れからは下落期に入るとみて114.50前後への下落を想定する

【概況】

ドル円はウクライナ情勢と米長期債利回り動向を見ながらの展開が続いているが、3月7日は欧米によるロシア原油禁輸検討報道から原油市場が暴騰的な上昇となり、金、非鉄、穀物等の国際商品が大幅高、インフレ懸念が深刻化する一方、ロシアとウクライナの三度目の停戦協議も不調に終わったことでウクライナ紛争の長期化とロシア制裁による世界景気への悪影響を懸念する状況だったが、NYダウが今年最大の下落となるなど世界連鎖株安となり、米長期債利回りは安全資産買いよりもインフレ深刻化への反応を優先して上昇、為替市場ではユーロやポンドが売られ、原油高で上昇してきた豪ドルなど資源通貨もリスク回避に下落するなどドル全面高となった。このためドル円はリスク回避的な円高感を持ちながらも全般のドル高及び米長期債利回り上昇に押し上げられる展開となった。

【ボックス型持ち合い】

ドル円は2月15日深夜高値115.87円から下落した後は、2月26日早朝高値115.76円、28日午前の乱高下で付けた高値115.77円、3月3日夜高値115.80円等による115.80円前後の水準が上値抵抗帯となり、2月22日安値114.48円、2月24日安値114.39円、3月2日未明安値114.68円、3月4日深夜安値114.63円と114円台中盤では買い戻されて下値支持帯を形成しており、ボックス型の持ち合いでの推移が続いている。
ウクライナ情勢による有事リスクと金融市場全般の動揺はリスク回避的な円の買い戻しを助長するが、その際に米長期債利回りがインフレへの反応を優先して上昇する場面ではドル高円安となり、米長期債利回りが安全資産買いを優先して低下する場面ではドル安円高となっており、やや板挟みの状況でボックス型持ち合いを抜けられずにいる。
かつては経済力や地政学的距離感から有事リスクでは円買いが顕著に進んだが、現状の日本経済は力も落ちていること、インフレ進行には弱いこと、ロシア制裁での日本経済への返り血も大きいことから全面的な円高反応を見せられずにいる印象だ。

【NYダウは今年最大の下落】

3月7日のNYダウは前日比797.42ドル安と大幅下落したが、一時は800ドル安を超えて今年最大の下落幅となった。ナスダック総合指数も前日比482.48ポイント安と大崩れした。ウクライナの戦場化とロシア制裁によるインフレの深刻化、世界経済への悪影響と景気後退懸念が株売りを助長している。3月7日は日経平均、上海総合株等のアジア株安から欧州株安、米国株安と世界連鎖株安となっている。
一方で米長期債利回りは上昇した。10年債利回りは前日比0.05%上昇の1.78%、30年債利回りは0.03%上昇の2.19%、2年債利回りは0.08%上昇の1.56%となった。株安なら安全資産として米国債が買われて利回り低下反応となるのが基本だが、インフレの深刻化への反応を優先して上昇した。

【新たなオイルショックと狂乱物価への懸念】

3月7日の早朝からNY原油とロンドンの北海ブレント原油が暴騰的な大上昇となった。欧米がロシア産原油の禁輸を検討と報じられたことがきっかけとなった。NY原油は先週末終値115.68ドルから7日午前高値で130.50ドルまで14.82ドル高の急伸となり、その後は欧州各国がロシア原油の禁輸に消極姿勢と報じられたことで急騰幅を削ったが終値は前日比3.72ドル高の119.40ドルと上昇、期近限月としてはリーマンショック暴落前の2008年9月以来13年半ぶりの高値となった。
ロシアは米国に次ぐ世界第二位の産油国であり、生産規模はサウジよりも大きい。欧州は原油需要の凡そ4割をロシア産に依存しており、禁輸となれば電力や燃料の不足がパニックレベルに陥る。米国のロシア産原油への依存度はわずかでありバイデン政権はロシアへの制裁強化を推し進めるものの欧州としては返り血が大きすぎる。仮にロシア産原油禁輸が欧米等で合意される場合には原油相場は300ドルになるとロシアの石油担当相が述べているが、欧州勢の駆け込み需要を賄いきれずに大混乱となるだろう。

また3月7日にはロシアのノバク副首相がパイプラインによる欧州向けの天然ガス供給を削減する可能性を示唆して欧州を脅している。ロシア制裁でドイツと結ぶノルドストリーム2の計画が停止されたが、ノルドストリーム1は稼働中であり依存度の高いドイツは制裁対象にしていない。ロシア側はノルドストリーム1の供給削減で報復する権利があると主張している。
ロシアとウクライナが穀物・飼料の輸出国であることから穀物市場も高騰しているが、7日はニッケル、銅、アルミ等が原油と共に急騰している。ロシアはニッケル、パラジウム等の輸出国だが、ニッケル不足によるEVでのバッテリー生産への影響、パラジウム不足による半導体生産への影響も大きい。
情勢としては1970年代の第一次、第二次石油危機時代に近く、金融市場全般の動揺も続くと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、114円台中盤から115円台後半までのボックス型持ち合いでの騰落が続いている中で、3月3日夜高値でサイクルトップを付けて下落したが、4日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けて上昇期に入っている。高値形成期は8日夜から10日夜にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地ありとみるが、115円を割り込む場合及び直前高値から0.50円以上の下落となる場合は弱気サイクル入りとして9日夜から11日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では3月8日早朝時点で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いているので上昇継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパン転落からは下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は3月7日深夜に70ポイント手前へ上昇、その後も50ポイント以上を維持しているのでまだ上昇余地ありとみるが、45ポイント割れからは下落期に入るとみて30ポイント割れを目指す流れと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、115.00円を下値支持線、115.50円を上値抵抗線とする。
(2)115.20円以上での推移中は上向きとし、115.50円超えの場合は115.70円から115.90円にかけてのゾーンを試す上昇を想定する。115.80円以上は反落注意とするが、115.20円以上での推移なら9日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)115.20円割れを弱気転換注意とし、115円割れからは下落期に入るとみて114.50円前後への下落を想定する。114.50円以下は反発注意とするが、115円以下での推移なら9日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

3/8(火)
休場 ロシア
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー現状判断DI (1月 37.9、予想 38.0)
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー先行判断DI (1月 42.5、予想 43.0)
14:00 (日) 1月 景気先行指数CI速報値 (12月 104.8、予想 103.6)
14:00 (日) 1月 景気一致指数CI速報値 (12月 92.7、予想 92.3)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -0.3%、予想 0.5%)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -4.1%、予想 -1.7%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP確定値 前期比 (改定値 0.3%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 4.6%、予想 4.6%)
22:30 (米) 1月 貿易収支 (12月 -807億ドル、予想 -871億ドル)
24:00 (米) 1月 卸売売上高 前月比 (12月 0.2%、予想 1.0%)
27:00 (米) 財務省3年債入札

3/9(水)
休場 韓国(大統領選挙)
06:45 (NZ) 10-12月期 製造業売上高 前期比 (7-9月 -2.2%)
07:15 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
08:30 (豪) 3月 ウエストパック消費者信頼感指数 (2月 100.8)
08:50 (日) 2月 マネーストックM2 前年同月比 (1月 3.6%、予想 3.5%)
08:50 (日) 10-12月期 GDP改定値 前期比 (速報 1.3%、予想 1.4%)
08:50 (日) 10-12月期 GDP改定値 年率換算 (速報 5.4%、予想 5.7%)
10:30 (中) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 9.1%、予想 8.6%)
10:30 (中) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 0.9%、予想 0.9%)
17:00 (豪) ベル豪中銀副総裁、パネル討論会
24:00 (米) 1月雇用動態調査(JOLT)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省10年債入札



注:ポイント要約は編集部

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