ドル円見通し ウクライナ情勢見ながら今晩の雇用統計へ向かう
〇ドル円、3/3夜に115.80まで上昇するも、その後失速し3/4早朝115.30台へ下落
〇本日夜の米雇用統計を控え、116円台へ進む勢い欠けいったん下げる
〇ウクライナ情勢、二度目の停戦協議開催されるも停戦合意に至らず
〇米10年債利回りは3/2からの反騰一服、NYダウ・ナスダック下落、ウクライナ情勢を気にする流れ
〇115.25以上での推移中は上昇再開余地ありとし、115.80超えからは116円を目指す上昇を想定する
〇115.25割れから、114円台後半(115.00から114.50)への下落を想定する
【概況】
ドル円は3月2日未明安値114.68円からの切り返しにより3月3日夜には115.80円まで上昇して2月26日早朝の115.76円と2月28日朝の乱高下で付けた115.77円をわずかに超えたが、その後は失速して4日早朝には115.30円台へ下落した。
ウクライナ情勢を見ながらの展開が続いているが、二度目の停戦協議も協議継続が確認されたものの停戦合意には至らず、ロシア軍の進撃は続き、欧米によるロシア制裁も拡大中だ。地政学的リスクの影響を受けるユーロドルの下落が目立つ中で米長期債利回りが3月2日に反騰したことでドル円も2日未明から反発してきたものの、3月3日夜は米10年債利回りが上昇一服となり、3月4日夜の米雇用統計も迫っているために116円台へ進む勢いには欠けていったん下げているところだ。
【ウクライナ情勢、停戦合意に至らず】
3月3日夜にロシアとウクライナの二度目の停戦協議が開催されたが、市民避難における人道回廊の必要性と協議の継続で合意したものの即時停戦に至る歩み寄りは見られなかった。数日中に三度目の協議を行う見通しだが、協議開始前にロシアのプーチン大統領はフランスのマクロン大統領との電話会談でウクライナにおける軍事作戦の目的を遂行すると主張して引き下がる姿勢を示さず、ロシア軍による主要都市への攻撃も激化しつつ進撃が続いている。人道回廊が設置される場合には一時的な限定地域での停戦となる可能性もあるが、限定地域を除いて交戦も続く。
ロシア制裁ではSWIFT排除の対象となるロシア金融機関の拡大や格付け会社による大幅な格下げ、エネルギー分野への制裁対象の拡大等が見られ、ロシア株とルーブルの暴落も続いている。しかしロシア経済への打撃と共に欧州への悪影響も顕著になっており、特に半導体不足による自動車工場の操業停止が始まっている。またロシアとウクライナは穀物や飼料輸出国であり、春の作付けへ向けた飼料確保による市場の混乱、穀物相場の高騰も顕著になっている。3月3日は連日大上昇していたNY原油が116.57ドルを付けて2011年5月高値114.83ドルを超えて2008年以来の高水準に達したところから10ドル強の反落が入る波乱となったものの利益確定売りが集中したことを反映したもので騰勢はさらに継続するのではないかと思われる。
【米10年債利回りは低下、ダウとナスダックは下落】
3月3日の米10年債利回りは前日比0.04%低下の1.84%となり前日からの反騰が一服した。10年債利回りは2月16日に2.06%まで上昇したところから株安債券高により3月1日の1.68%まで低下していたが、3月2日にパウエル米連銀議長が下院議会証言で3月FOMCでの利上げ開始姿勢を示したことでウクライナ情勢による安全資産買いによる低下から反騰に転じている。
3月3日もパウエル議長が上院で議会証言を行ったが、ウクライナ情勢によるインフレの上ブレリスクを指摘し、原油価格の高騰が長引くようだとインフレ対策としての利上げ幅や回数も多くなるとの見通しを示している。
利上げに敏感な米2年債利回りは3月3日も0.01%上昇して1.53%へ戻している。
3月3日のNYダウは前日比96.69ドル安と下落、ナスダック総合指数は214.08ポイント安と下落した。ウクライナ情勢を気にする流れであり、NYダウとナスダックはともにロシア軍がウクライナへ本格侵攻を開始した2月24日へ下落したところからは下げ渋っているものの上値が重い状況だ。ウクライナ情勢が長引くようだとロシアのみならず欧米への悪影響も大きくなること、インフレが一段と進行して米連銀等の金融引き締め姿勢が強まりかねないことが重石となっている。
ドル円としてはリスク回避的な円高の側面と、ユーロ安ドル高、米長期債利回り上昇によるドル高円安の側面が交錯する展開で推移してゆくところだが、週末にかけても米雇用統計、ウクライナ戦局報道等を見ながら慎重な展開で推移しそうだ。
【米経済指標はまちまち】
米労働省による新規失業保険申請件数は前週比1万8000件減の21万5000件となり2週連続の減少で市場予想の22万5000件を下回った。感染拡大の波が収まりウクライナ情勢を気にしつつも人手不足による雇用拡大の流れは継続しているようだ。
一方で米サプライ管理協会(ISM)による2月の非製造業景況指数は56.5となり1月から3.4ポイント低下して市場予想の61.0を割り込んだ。こちらからはウクライナ情勢がサプライチェーンの混乱を助長していることを反映していると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、3月2日夜に強気転換目安とした115.28円を超えたために3月3日午前時点では3月2日未明安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また高値形成期を3月2日未明から7日朝にかけての間と想定されるのですでに反落注意期にあるとしたが、115.25円以上での推移中は116円台回復を目指す可能性があるとした。
3日夜に115.80円へ続伸してから115.30円台まで反落しているので3日夜高値でサイクルトップを付けた可能性があると注意し、115.65円超えからは上昇再開とするが、115.25円割れからは弱気サイクル入りと仮定して5日未明から9日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では3月2日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いたが、3月3日夜高値からの反落で遅行スパンが悪化している。先行スパンを上回るうちは上昇余地ありとするが、先行スパンから転落する場合はさらに下落するとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月3日未明から3日夜への一段高に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行を見せて50ポイントを割り込んでいる。目先のピークを付けて下落期入りしているとみて30ポイント割れを試す流れと考える。強気転換には60ポイントを超えてその後も50ポイント以上を維持する反騰が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、115.25円を下値支持線、3月3日夜高値115.80円を上値抵抗線とする。
(2)115.25円以上での推移中は上昇再開余地ありとし、115.80円超えからは116円を目指す上昇を想定する。116円到達では売られやすいとみるが、115.25円以上での推移が続く場合は週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)115.25円割れから114円台後半(115.00円から114.50円)への下落を想定する。ウクライナ情勢や雇用統計等の反応で下げ足が早まる場合は3月1日安値114.68円、さらに2月24日安値114.39円などを試す流れとみる。
【当面の主な予定】
3/4(金)
冬季パラリンピック北京大会(3/13まで)
16:00 (独) 1月 貿易収支 (12月 70億ユーロ、予想 55億ユーロ)
16:00 (独) 1月 経常収支 (12月 239億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -3.0%、予想 1.3%)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 2.0%、予想 9.1%)
22:30 (米) 2月 非農業部門就業者数 前月比 (1月 46.7万人、予想 40.0万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 4.0%、予想 3.9%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.7%、予想 0.5%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前年同月比 (1月 5.7%、予想 5.8%)
3/5(土)
中国全国人民代表大会開幕(北京)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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