ドル円見通し ウクライナ情勢からの円高圧力と米長期債利回り再上昇による円安が交錯(22/2/15)

ウクライナ情勢を背景としたリスク回避的な円高と、米連銀の金融引き締め姿勢による円安が交錯する展開。

ドル円見通し ウクライナ情勢からの円高圧力と米長期債利回り再上昇による円安が交錯(22/2/15)

ドル円見通し ウクライナ情勢からの円高圧力と米長期債利回り再上昇による円安が交錯

〇ドル円、2/14午前115.50台をいったん回復したが、夜に114.99まで下落
〇西側との協議継続を露大統領が了承との報道、米長期債利回り再上昇で2/15未明115.74まで反騰
〇ウクライナ情勢を背景としたリスク回避的な円高と、米連銀の引き締め姿勢による円安が交錯
〇ロシア軍による侵攻が現実のものとなれば、金融市場全般の動揺が増す懸念も
〇NYダウ・ナスダックは3日続落、米連銀高官の利上げを急ぐ姿勢表明により米長期債利回り再上昇
〇ドル円、1/4と2/10の両高値のダブルトップ形成に終わるか、ブレイクして一段高に入るのか試される
〇115.20以上での推移中は上向きとし、115.75超えからは116円台序盤を目指すとみる
〇115.20割れからは115円試しとし、114.99割れからは114円台中盤を試す下落を想定する

【概況】

ドル円はウクライナ情勢の緊迫化を背景に2月10日夜高値116.33円から12日早朝安値115.00円へ急落し、14日午前に115.50円台をいったん回復してから14日夜にも114.99円まで(ベンダーによっては115.00円)下落していた。しかしロシアのラブロフ外相による西側との協議継続姿勢をプーチン大統領が了承したとの報道や、米連銀高官による利上げを急ぐ姿勢の表明から米長期債利回りが再上昇したために15日未明には115.74円まで反騰した。その後はウクライナ情勢に絡む要人発言等で緊迫感が再び増したことが上値を抑え、15日早朝にかけては115.50円近辺での揉み合いとなっている。
ウクライナ情勢を背景としたリスク回避的な円高と、米連銀の金融引き締め姿勢による円安が交錯する展開。

【ウクライナ情勢の緊迫化続く】

2月14日夜、ロシアのラブロフ外相が西側との協議継続をプーチン大統領に具申し大統領が了承したとの報道が入ったところで、それまでリスクオフ優勢で下落していたドル円が反発、ユーロなども戻してドルストレートでのドル高もいったん緩んだ。しかしその後には情勢の緊迫を伝える報道が相次いだためにドル円の上昇も一服、ユーロは15日早朝へ一段安となっている。
ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、「ロシアによる侵攻は2月16日に行われるとの情報を得ている。我々はこの日を連帯の日にする」とビデオで演説した。米国は11日に大統領補佐官が「いつロシアの侵攻が始まっても不思議ない、空爆から始まるだろう」との見解を示し、米政府は自国民のウクライナからの退避を勧告していたが、14日には米大使館機能を首都キエフから移転し始めた。
英国のジョンソン首相は「状況は極めて危険」と述べ、フランスのルドリアン外相は「ロシア軍はウクライナ侵攻の準備を完全に整えた」と述べている。
ロシア正規軍による侵攻ないしは親ロ派武装勢力と称しての軍事行動か、国境における偶発的衝突等が発生すれば金融市場全般の動揺が増すことも懸念される。

【NYダウは3日続落、米長期債利回りは再上昇】

2月14日のNYダウは前日比171.89ドル安と下落、10日の526.47ドル安、11日の503.53ドル安に続いて3日続落となった。ナスダック総合指数は前日比0.23ポイント安とわずかな下落だったものの10日の304.73ポイント安、11日の394.49ポイント安からの3日続落だった。ウクライナ情勢について一時的に安堵したものの再び緊迫化への懸念が優勢となり、米連銀による金融引き締め姿勢の強化を意識して売られた。
米10年債利回りは前日比0.05%上昇の1.99%となった。2月11日に2.02%まで上昇したところからウクライナ情勢を意識した株売り債券買いにより1.90%へ低下していたが、14日は米連銀高官による引き締め姿勢を強調する発言等から再上昇しており、1月19日の1.90%を超えて一段高した状況が維持されている。
米2年債利回りは前日比0.07%上昇の1.58%となり、高値では1.61%を付けて2月10日に付けたこの間の最高値1.64%へ迫っている。

米セントルイス連銀のブラード総裁が14日のTVインタビューにおいて、「3月から7月1日までのFOMC3会合で1%まで利上げすることが望ましい」「4-6月期には資産縮小を開始するべき」との姿勢を示したことが米連銀による3月FOMCでの0.50%利上げとその後の連続利上げの可能性を高めた。同総裁は量的金融引き締めについても4-6月期に保有債券償還分の再投資をやめ、必要に応じて資産売却を始めるべきとした。
米カンザスシティー連銀のジョージ総裁はWSJ紙インタビューにおいて「3月FOMCで0.5%の大幅利上げに踏み切るか言明するのは時期尚早」として数字次第とし、9兆ドルに膨れ上がった保有資産の売却を始めるべきだとしたが、「オーバーステアは望ましくない」として慎重に資産圧縮を進めるべきとした。

【1月4日高値とのダブルトップ形成に終わるか、ダブルトップ破りへ進むか試される】

米長期債利回りの上昇基調を背景にドル円は1月4日高値で116.34円を付けた。116円台到達後の修正安により1月24日安値113.46円まで反落したところから切り返して2月10日高値で116.33円を付けて1月4日高値とほぼ並んだ。
1月4日と2月10日の両高値をダブルトップとして下落期に転じるのか、ダブルトップラインをブレイクして一段高に入るのか、ウクライナ情勢と米連銀等の金融引き締め姿勢とそれらを反映した米長期債利回り動向により試されてゆくところだ。
ウクライナ情勢については、2014年のロシアによるクリミア半島占領とドンパス地区2州の実効支配確立までに凡そ3月強を要した経緯があるが、今回はさらに踏み込んだ軍事作戦となる可能性や欧米によるロシア制裁が当時よりも一層厳しくなることも考えられる。リスク回避的な円高が優勢となるのか、ウクライナ情勢に対して冷静となり米連銀の引き締め姿勢を焦点として円安優勢で進むのか、まだしばらく見定めが続きそうだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、2月12日早朝と2月14日夜の115円試しとなった両安値をダブルボトムとして戻しているところと思われる。2月10日夜高値を基準として高値形成期は15日夜から17日深夜にかけての間と想定されるが、戻りは短命の可能性もあるので115.20円割れを弱気転換注意とし、115円割れから続落する場合は新たな弱気サイクル入りとみて17日夕から21日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では2月14日夜からの反発で遅行スパンが好転したものの先行スパンが上値を抑えている。先行スパンを上抜くところからは上昇継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンからの転落状況が続くうちは下げ再開を警戒し、14日夜安値割れからは遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は2月12日早朝と14日夜の両安値がほぼフラットだったところを指数のボトムを切り上げる強気逆行が見られた。このため50ポイントを割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、60ポイント超えからは70ポイント前後を目指す上昇を想定するが、40ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、114.99円を下値支持線、115.75円を上値抵抗線とする。
(2)115.20円以上での推移中は上向きとし、115.75円超えからは116円台序盤(116.00円から116.25円)を目指すとみる。116円到達ではいったん売られやすいと注意するが、115.50円以上での推移なら15日の日中も高値試しへ進みやすいとみる。
(3)115.20円割れからは弱気転換注意として115円試しとし、114.99円割れからは一段安入りとして114円台中盤(114.70円から114.30円)を試す下落を想定する。114.50円以下は反発注意とするが、115円を割り込んでの推移なら15日の日中も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

2/15(火)
米上院銀行委員会、パウエル米連銀議長再任承認投票
独ロ首脳会談(モスクワ)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 -1.0%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 2.7%)
13:30 (日) 12月 設備稼働率 前月比 (11月 8.0%、予想)
16:00 (英) 1月 失業保険申請件数 (12月 -4.33万件)
16:00 (英) 1月 失業率 (12月 4.7%)
16:00 (英) 12月 失業率・ILO方式 (11月 4.1%、予想 4.1%)

19:00 (独) 2月 ZEW景況感 (1月 51.7、予想 55.0)
19:00 (欧) 2月 ZEW景況感 (1月 49.4)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調済 (11月 -13億ユーロ、予想 -47億ユーロ)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調前 (11月 -15億ユーロ)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.3%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 4.6%)
22:30 (米) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 0.2%、予想 0.5%)
22:30 (米) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 9.7%、予想 9.1%)
22:30 (米) 1月 生産者物価コア指数 前月比 (12月 0.5%、予想 0.5%)
22:30 (米) 1月 生産者物価コア指数 前年同月比 (12月 8.3%、予想 7.9%)
22:30 (米) 2月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (1月 -0.7、予想 12.2)

2/16(水)
北大西洋条約機構(NATO)国防相会合(2/17まで)
10:30 (中) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 1.5%、予想 1.0%)
10:30 (中) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 10.3%、予想 9.5%)
13:30 (日) 12月 第三次産業活動指数 前月比 (11月 0.4%、予想 0.3%)
16:00 (英) 1月 消費者物価指数 前月比 (12月 0.5%、予想 -0.2%)
16:00 (英) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 5.4%、予想 5.4%)
16:00 (英) 1月 消費者物価コア指数 前年同月比 (12月 4.2%、予想 4.3%)
16:00 (英) 1月 小売物価指数 前月比 (12月 1.1%、予想 -0.4%)
16:00 (英) 1月 小売物価指数 前年同月比 (12月 7.5%、予想 7.4%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 2.3%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -1.5%、予想 -0.5%)

22:30 (米) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -1.9%、予想 1.8%)
22:30 (米) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 -2.3%、予想 1.0%)
22:30 (米) 1月 輸入物価指数 前月比 (12月 -0.2%、予想 1.3%)
22:30 (米) 1月 輸出物価指数 前月比 (12月 -1.8%、予想 1.3%)
23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -0.1%、予想 0.4%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 76.5%、予想 76.8%)
24:00 (米) 12月 企業在庫 前月比 (11月 1.3%、予想 2.1%)
24:00 (米) 2月 NAHB住宅市場指数 (1月 83、予想 83)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省20年債入札
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨




※ポイント要約は編集部

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