ドル円見通し 米雇用統計予想以上の強さでドル高がぶり返す(週報2月第1週)

米労働省が2月4日夜に発表した1月の米雇用統計では非農業部門就業者数が前月比46万7000人増となり市場予想の15万人増を大幅に上回った。

ドル円見通し 米雇用統計予想以上の強さでドル高がぶり返す(週報2月第1週)

ドル円見通し 米雇用統計予想以上の強さでドル高がぶり返す

〇ドル円、2/4の米雇用統計発表後に115.42まで上昇、115円台を維持して越週
〇米雇用統計の非農業部門雇用者数大幅増で3月0.5%の利上げや年5回以上の利上げの可能性ぶり返す
〇1月の米雇用統計、非農業部門就業者数が前月比46万7000人増、市場予想の15万人増を大幅に上回る
〇2/4の米10年債利回り、前日比0.08%上昇の1.91%を付け2020年1月以来2年ぶりの高水準
〇緩和継続を強調する日銀と主要国中銀とのスタンスの差は顕著、円安が加速しやすい状況
〇115.42を超えないうちは115円台推移、115円割れからは114.76試しを見込む
〇115.42超えからは1/28高値115.68試し、高値更新からは116円台への上昇へ進み順次高値切り上げか

【概況】

ドル円は2月4日夜の米雇用統計発表後に買われて115.42円へ上昇、2月2日夜安値114.14円以降の高値を更新した。深夜以降は上昇一服でやや下げたものの115円台を維持している。
1月27日早朝の米FOMCを前後したドル全面高により1月28日夕高値で115.68円へ上昇したものの、米連銀のタカ派姿勢への評価がやや過剰だったとしてドル安へと風向きが変わったことで1月24日から1月28日までの上昇幅に対する3分の2押しとなる114.20円を若干割り込むところまで下げたが、2月4日夜への反騰により、1月28日以降の下落幅の3分の2戻しとなる115.16円を若干超えるところまで切り返した。
1月27日早朝のFOMC後は3月のFOMCで0.5%の利上げとなる可能性や年5回以上の利上げ回数となる可能性も浮上したことがドル高要因となり、その後は米連銀高官が相次いで0.50%の引き上げに否定的な発言を行ったことでドル高が落ち着き、英中銀の利上げやECBのタカ派シフトがドル安を助長していた。しかし2月4日の米雇用統計における就業者増加数が予想を大幅に超えたことで再び米連銀による0.5%の利上げや5回以上の利上げ予想がぶり返している。

【予想以上の就業者増加、0.5%利上げの可能性再浮上】

米労働省が2月4日夜に発表した1月の米雇用統計では非農業部門就業者数が前月比46万7000人増となり市場予想の15万人増を大幅に上回った。
2月2日にADPが発表した民間部門の就業者数が市場予想の20.7万人増に対して30.1万人減となったため、今回の労働省統計でも予想に届かない可能性も懸念されていたところだったために発表数字はサプライズとなった。また12月分も速報の19.9万人増から51.0万人増へと大幅上方修正された。
失業率は12月の3.9%から4.0%へと悪化したものの、平均時給は前月比で0.7%上昇となり12月の0.5%及び予想の0.5%を上回り、前年同月比では5.7%上昇で12月の4.9%及び予想の5.2%を大幅に上回った。
2か月で100万人近い就業者増加となりインフレを進行させる平均時給の伸びも確認されたため、市場は3月の米連銀FOMCにおける0.50%の利上げ、年内5回以上の利上げ回数の可能性を再び強めることとなった。

【欧米の金融引き締め姿勢強化による円安】

2月4日にサマーズ元米財務長官が米連銀による今年の利上げは残りの7会合すべてで実施される可能性があり、1回の利上げ幅が0.25%より大きくなる可能性に投資家は備えるべきだと述べた。同氏は過少な利上げでは基調的なインフレ率が4%を超えればボルガー・ショックのようなことも発生しかねないと指摘している。
1970円台後半からの第一次及び第二次の石油危機等によるインフレで米国の消費者物価上昇率は1980年4月に14.6%に達したが、インフレ抑制のために当時のボルガー連銀議長は就任後に1979年8月の10.9%から1980年4月に17.6%、1981年1月に19.1%へとFFレートを引き上げて高金利状態を招いた。1980年12月には実勢のFFレートが30%を付け、TB3か月レートが17%、30年債利回りは15.25%に達した。インフレと高金利状態で低迷したNYダウは利上げ一巡から上昇期に入り1987年10月のブラックマンデー直前まで大上昇した経緯がある。
2月の米雇用統計も力強い数字となり消費者物価等のインフレ指標が高いままなら3月の0.50%の利上げ、利上げ回数も5回以上という可能性が高まり、米長期債利回りの上昇基調は継続すると思われる。

2月4日の米10年債利回りは前日比0.08%上昇の1.91%を付けて2020年1月以来2年ぶりの高水準となった。30年債利回りは0.05%上昇の2.21%で2021年6月以来の高水準となった。2年債利回りは0.12%上昇の1.32%となり2020年2月以来の高水準となった。
英中銀が2月3日に2会合連続の利上げに踏み切り、ECBも2022年の利上げ可能性はないとしていた見解を撤回して利上げ準備に入った。主要国中銀はそろって引き締めに走り始めており、黒田総裁在任中は金融緩和を継続すると強調している日銀と主要国中銀とのスタンスの差は顕著になりクロス円、ドル円での円安が加速しやすい状況感が強まっているのではないかと思われる。

【年初からの三角持ち合い上放れを試す】

【年初からの三角持ち合い上放れを試す】

中勢としては、昨年1月6日底102.57円から今年1月4日高値116.34円まで丸1年間の大上昇を実現したところから調整安に入り、1月14日安値113.47円と1月24日安値113.46円をダブル底として持ち直しつつあるところだ。
1月4日から1月24日までの下落幅は2.88円で昨年11月30日への下落幅2.99円や昨年4月23日への下落幅3.50円等と同程度の範囲内に収まり、11月30日安値112.52円から底上げした状況で切り返している。
1月28日の戻り高値からの反落も切り返してきたことにより、日足チャートでは11月30日安値及び1月4日高値を起点として三角持ち合いの様相であり、1月28日高値を超えれば三角持ち合いの抵抗線突破で1月4日高値へ挑戦となり、1月4日高値を超えればチャート上の上値目途は2016年12月15日高値118.65円から120円台へと切り上がってゆく可能性も開けると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月4日夜反落時の安値114.76円を下値支持線、2月4日夜高値115.42円を上値抵抗線とする。
(2)115.42円を超えないうちは115円台推移、115円割れからは114.76円試しを見込む。114.76円割れを見る場合には、114円台中盤(114.65円から114.35円)への下落余地を見込むが、そこは押し目買いされやすい水準と予想する。
(3)115.42円超えからは1月28日高値115.68円試しとし、高値更新からは116円台への上昇へ進み順次高値を切り上げてゆく流れと考える。

【当面の主な予定】

2/7(月)
休場、メキシコ(憲法記念日振替)、ニュージーランド(ワイタンギ条約記念日)   
米独首脳会談(ワシントン)
仏独外相ウクライナ訪問(2/8まで)
09:30 (豪) 1月 求人広告件数
10:45 (中) 1月 財新サービス業PMI (12月 53.1、予想 50.5)
14:00 (日) 12月 景気先行指数CI速報値 (11月 103.2、予想 103.7)
14:00 (日) 12月 景気一致指数CI速報値 (11月 92.8、予想 92.6)
16:00 (独) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 -0.2%、予想 0.5%)
16:00 (独) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -2.4%、予想 3.6%)
24:45 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、欧州議会定例公聴会
29:00 (米) 12月 消費者信用残高 前月比 (11月 399.9億ドル、予想 250.0億ドル)

2/8(火)
08:30 (日) 12月 全世帯消費支出 前年同月比 (11月 -1.3%、予想 0.0%)
08:50 (日) 12月 経常収支・季調前 (11月 8973億円、予想 1011億円)
08:50 (日) 12月 経常収支・季調済 (11月 1兆3695億円、予想 1兆1361億円)
08:50 (日) 12月 貿易収支・国際収支ベース (11月 -4313億円、予想 -2140億円)
09:01 (英) 1月 英BRC小売売上高 前年同月比 (12月 0.6%)
09:30 (豪) 1月 NAB企業景況感指数 (12月 8)
14:00 (日) 1月 景気ウオッチャー現状判断DI (12月 56.4、予想 48.2)
14:00 (日) 1月 景気ウオッチャー先行判断DI (12月 49.4、予想 45.8)
22:30 (米) 12月 貿易収支 (11月 -802億ドル、予想 -830億ドル)
26:00 (仏) ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省3年債入札

2/9(水)
08:30 (豪) 2月 ウエストパック消費者信頼感指数 (1月 102.2)
08:50 (日) 1月 マネーストックM2 前年同月比 (12月 3.7%、予想 3.6%)
14:30 (日) 中村日銀審議委員、記者会見
16:00 (独) 12月 貿易収支 (11月 120億ユーロ、予想 110億ユーロ)
16:00 (独) 12月 経常収支 (11月 189億ユーロ、予想 200億ユーロ)
22:10 (英) 英中銀チーフエコノミスト・ピル氏、講演
24:00 (米) 12月 卸売売上高 前月比 (11月 1.3%)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
24:30 (米) ボウマンFRB理事、講演
26:00 (加) マックレム・カナダ中銀総裁、講演
26:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省10年債入札

2/10(木)
ロシアとベラルーシの合同軍事演習(2/20まで)
08:50 (日) 1月 国内企業物価指数 前月比 (12月 -0.2%、予想 0.4%)
08:50 (日) 1月 国内企業物価指数 前年同月比 (12月 8.5%、予想 8.2%)
09:01 (英) 1月 英RICS住宅価格指数 (12月 69、予想 69)
22:30 (米) 1月 消費者物価指数 前月比 (12月 0.5%、予想 0.4%)
22:30 (米) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 7.0%、予想 7.3%)
22:30 (米) 1月 消費者物価コア指数 前月比 (12月 0.6%、予想 0.5%)
22:30 (米) 1月 消費者物価コア指数 前年同月比 (12月 5.5%、予想 5.9%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.8万件、予想 23.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 162.8万人、予想 162.5万人)
27:00 (米) 財務省30年債入札
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 5.50%、予想 6.00%)
28:00 (米) 1月 月次財政収支 (12月 -213億ドル、予想 250億ドル)
29:15 (英) ベイリー英中銀総裁、講演

2/11(金)
休場、日本
16:00 (独) 1月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
16:00 (独) 1月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 4.9%、予想 4.9%)
16:00 (英) 12月 月次GDP 前月比 (11月 0.9%、予想 -0.5%)
16:00 (英) 10-12月期 GDP速報値 前期比 (7-9月 1.1%、予想 1.1%)
16:00 (英) 10-12月期 GDP速報値 前年同期比 (7-9月 6.8%、予想 6.4%)
16:00 (英) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 1.0%、予想 0.1%)
16:00 (英) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 0.1%、予想 0.6%)
16:00 (英) 12月 貿易収支・物品 (11月 -113.37億ポンド、予想 -125.00億ポンド)
16:00 (英) 12月 貿易収支・全体 (11月 6.26億ポンド、予想 -4.00億ポンド)
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (1月 67.2、予想 67.5)

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る