『タカ派なFRB・ECB vs ハト派なBOJの構図』
〇今週のドル円、月末ドル売りフロー、神田財務官の円安けん制発言等に週央にかけ114.15まで下落
〇その後は株式市場の堅調、米雇用統計の強い結果と米長期金利の急上昇に115.25レベルを回復
〇ユーロドル、週初1.1122まで下げた後、週末にかけて一時1.1483まで急伸
〇欧州でのインフレ率上昇、ラガルド総裁のタカ派発言を受けての欧州債利回り急上昇がサポート
〇ドル円、主要テクニカルポイントを上抜け、週末も一目均衡表の「雲」上限でサポートされ地合い強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違いがドル買い円売りを連想させる
〇ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想、来週は米1月CPIに注目集まるか
〇来週の予想レンジ(USDJPY):114.00ー116.50、(EURUSD):1.1350−1.1550
今週のレビュー(1/31−2/4)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初115.23で寄り付いた後、早々に週間高値115.61まで上昇しました。しかし、前週末金曜日に記録した直近高値115.69をバックに伸び悩むと、@米金利上昇一服に伴うドル売り圧力や、A月末ロンドンフィキシングに絡むドル売りフロー、B神田財務官による「(円安のデメリットとして)エネルギーや食品などの輸入価格が上昇し、消費者負担や企業の原材料費が増えることが挙げられる」との発言(市場では同発言が当局による円安牽制と解釈)、C米当局者によるハト派的な発言(カンザスシティ連銀ジョージ総裁や、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、セントルイス連銀ブラード総裁などからハト派的な発言が相次ぐ結果→市場の過度な利上げ織り込みを牽制→米10年債利回りが1.88%から1.73%へ急低下)、D米1月ADP雇用統計(結果▲30.1万人、予想+18.0万人)のネガティブサプライズが重石となり、週央にかけて、週間安値114.15まで下落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、E株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)や、F日米金融政策格差に着目したドル買い圧力、G若田部日銀副総裁によるハト派的な発言(金融政策の修正は全く考えていない)、H米1月雇用統計の力強い結果(非農業部門雇用者数が予想15.0万人に対して結果46.7万人。平均受給は予想+0.5%に対して結果+0.7%)、I上記Hを背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りは約2年1ヵ月ぶり高水準となる1.93%へ急上昇)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間2/5午前5時00分現在)では、115.25前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1147で寄り付いた後、早々に週間安値1.1138まで下落しました。しかし、前週末金曜日(1/28)に記録した約1年8ヵ月ぶり安値1.1122をバックに下げ渋ると、@短期間で下落したことに伴う反動(自律反発)や、A米金利上昇一服に伴うドル売り圧力、Bドイツ1月消費者物価指数(結果+4.9%、予想 +4.4%、※前年比)および、Cユーロ圏1月消費者物価指数(結果+5.1%、予想 +4.4%、※前年比)の市場予想を大幅に上回る結果(インフレ加速)、D上記BCに伴うECBのタカ派転換観測、EラガルドECB総裁(ECB理事会後の記者会見)によるタカ派的な発言(インフレに対する認識を従来までの「一時的」との見方から「上振れ方向に傾いている」に変更。また2022年中の利上げ可否についても従来までの「利上げを行う可能性は極めて低い:it is very unlikely that we will raise interest rates」との表現から「データ次第:We will be data-dependent」に変更)、F上記Eを背景とした欧州債利回りの急上昇(年内2回の利上げを織り込む展開)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.1483まで急伸しました。
もっとも、1/14に記録した直近高値1.1484をバックに伸び悩むと、G米雇用統計の力強い結果や、H上記Gを背景とした米長期金利の急上昇が重石となり、本稿執筆時点(日本時間2/5午前5時00分現在)では、1.1450前後で推移しております。
来週の見通し(2/7−2/11)
<ドル円相場>
ドル円は2/2に記録した安値114.15をボトムに反発に転じると、週末にかけて115円台前半へと持ち直しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーバンドや21日移動平均線を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆するパーフェクトオーダーも継続するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象づけるチャート形状となっております(週央にかけて下落した際も一目均衡表雲上限で確りサポート→下値の堅さを再確認)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米金融政策の早期正常化観測(今週は先週の米FOMC後の市場の過度な織り込みを牽制する目的で米当局者からハト派的な発言が相次ぎましたが、ドル売りでの反応は限定的。週末にかけては良好な米雇用統計を受けて米10年債利回りが約2年1ヵ月ぶり水準へ急上昇する中、ドル買い再開)や、A日銀による金融緩和の長期化観測(日銀は先々週の金融政策決定会合で金融緩和の長期化方針を強調。今週も若田部日銀副総裁が「金融政策の修正は全く考えていない」と発言)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差拡大観測)など、ドル買い・円売りを連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は2/10に予定されている米1月消費者物価指数に注目が集まります。市場予想を上回る場合には、米FRBによるタカ派傾斜観測再燃→米長期金利急上昇→米ドル買いの経路でドル円には強い上昇圧力が加わると見られることから、来週はアップサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(来週も米当局者より市場の過度な利上げ織り込みを牽制する発言が出てくる可能性がありますが、米中間選挙を控える今年はインフレ退治に向けた政治的圧力が加わりやすく、米当局者の牽制効果は限定的と判断。市場は大幅利上げ催促相場に移行すると見られ、ドル円は本年1/4に記録した約5年ぶり高値116.36に向けて上昇すると予想)。
来週の予想レンジ(USDJPY):114.00ー116.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は1/28に記録した約1年8ヵ月ぶり安値1.1122(2020年6月以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、一時1.1483まで急伸しました(1/14に記録した約2ヵ月ぶり高値1.1484まであと1ポイントに迫る値動き)。この間、主要レジスタンスポイント(一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや一目均衡表雲上下限、21日移動平均線や90日移動平均線など)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転も成立するなど、テクニカル的に見て、トレンド転換(下落トレンド→上昇トレンド)を意識させるチャート形状となっております。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、今週のECB理事会(ラガルド総裁による記者会見)を経て、ECBによるタカ派転換が明確となった為、これまでベア見通しのコア材料に据えていた「欧米金融政策の方向性の違いに着目したユーロ売り・ドル買い」は今後通用しなくなる可能性が高いと考えられます(ラガルド総裁はこれまで繰り返し用いてきた「インフレは一時的」「2022年中の利上げはない」との発言を封印し、市場参加者にタカ派転換のシグナルを発出)。以上を踏まえ、当方ではこれまで長期に亘り続けてきたユーロドルの「ベア見通し」を改め、来週以降「ブル見通し」に転換いたします(ウクライナ情勢を巡る地政学的リスクに留意しつつも、ECBによるタカ派転換を背景としたユーロ買いが続く見通し)。尚、来週は2/10に予定されている欧州委員会経済見通しや、米1月消費者物価指数に加えて、フランス中銀ビルロワドガロー総裁講演などにも注目が集まります。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1350−1.1550
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:上村 和弘
2022.02.07
ドル円見通し 米雇用統計予想以上の強さでドル高がぶり返す(週報2月第1週)
米労働省が2月4日夜に発表した1月の米雇用統計では非農業部門就業者数が前月比46万7000人増となり市場予想の15万人増を大幅に上回った。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2022.02.04
米雇用統計に注目、レンジ放れへの期待感も(2/4夕)
4日の東京市場はレンジ取引。115円挟み、20ポイント強の値動きにとどまり、動意は米雇用統計が発表されるNY時間に持ち越されている。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。