ドル円見通し 全般ドル安、115円台を維持するも上値重く右肩下がり
〇ドル円115円台維持、米連銀議長証言ドル高材料ならず1/4夜高値から戻り高値切り下げる
〇パウエル議長、利上げ回数増える可能性、バランスシート縮小検討を発言、内容市場織り込み済み
〇米長期債利回り、FOMC議事録公開から上昇一服の様相、NYダウは5日ぶり反騰
〇115.50以下での推移中は一段安警戒とし、115.03割れから114円台中盤を試す可能性ありとみる
〇115.67超えからは1/10昼高値115.84、1/7高値116.04を順次試す流れとみる
【概況】
ドル円は1月10日深夜に115.03円まで下落したものの115円割れを回避し、11日夜には115.67円までいったん戻した。その後、24時からのパウエル米連銀議長再任にかかわる上院公聴会では特にサプライズ内容無しとして米長期債利回り上昇基調がやや緩んでドル安となったために115.20円台まで反落している。
昨年1月6日安値102.57円を起点として今年1月4日夜高値116.34円まで1年間の上昇を続けてきたが、5年ぶりに116円台到達で高値警戒感が出やすいところにきて1月6日早朝の米FOMC議事録公開から1月7日夜の米12月失業率改善などを通過しながらも米連銀による金融引き締め姿勢に関しては市場も織り込んできたとして公聴会での議長証言も特段のドル高材料にはならず、逆にイベント通過後はドル安に振れやすくなる中でドル円も1月4日夜高値からは戻り高値を切り下げる展開が続いている。
【米長期債利回りは高止まりだが上昇一服、NYダウは5日ぶり反騰】
1月11日の米10年債利回りは前日比0.02%低下の1.74%となった。10日にはパンデミック前の2020年1月以来2年ぶりとなる1.81%まで上昇して昨年来の高値水準を更新したが、10日当日に1.75%へ低下、11日もパウエル議長の議会発言にサプライズ無しとして小幅続落した。ただ、11月24日の1.69%を超えて一段高した状態は維持されている。
2年債利回りは0.01%低下の0.89%、一時は0.94%を付けて2020年3月以来の高水準を更新してからやや下げた。米長期債利回りは総じてFOMC議事録公開からの上昇一服の様相。
一方、NYダウは前日まで4日間の続落だったが11日は前日比183.15ドル高と上昇した。米連銀の引き締め姿勢を意識して史上最高値更新後の手仕舞い売りが急がれての続落だったが、インフレを伴っての景気回復はさらに続くとの楽観がやや回復した印象だ。ナスダック総合指数も210.62ポイント高と反発した。
【米連銀、利上げ回数増える可能性、資産圧縮政策も検討入り】
1月11日24時にパウエル米連銀議長の再任に関する上院公聴会が開かれた。
パウエル議長は「想定より物価水準が高止まりすれば一層多くの利上げを実施する」と述べたが利上げのタイミングや回数については未定とした。またバランスシート縮小についても年内に始める必要があるとして今後のFOMCで協議を重ねるとしたが詳細を示さなかった。
総資産縮小については前回の金融正常化(リーマンショック後)局面よりも「総資産の規模がより大きいためにより速やかで早期の縮小となる可能性がある」とし、今後2〜4回のFOMCで協議を重ねるとした。
オミクロン株による感染急増については雇用や景気を一時的に鈍化させる可能性があるとしたもの影響は短期とし、その後は極めて堅調な成長になると予想した。
議長の発言は総じて市場が織り込んできた内容の範囲にあり、発言内容が報じられると為替市場はドル安で反応した。
米アトランタ連銀のボスティック総裁は1月11日に「総資産について月1000億ドル圧縮する必要がある」とし、「1兆5000億ドル分は過大な流動性であり速やかに市場から吸収する計画だ」とし、「1〜2年内に縮小を完了する速やかなペースで実施する必要がある」と述べた。また利上げについても「3月のFOMCで量的金融緩和終了とほぼ同時期に利上げする可能性が相当ある」とし、オミクロン株の急拡大が景気を腰折れさせるとは思わないがインフレを一段と加速すれば年内に4回の利上げに踏み切る必要性が大きくなる」とした。
オミクロン株による世界規模の感染急拡大が続き、米国でもエッセンシャルワーカーの感染増により社会インフラの運営に影響が出ている。中国のゼロコロナ政策やアジアの感染再拡大等がサプライチェーンの停滞を長期化させる可能性がある。これらは一時的に景気回復を減速させても物資不足や人出不足によるインフレは続くとの認識がコンセンサスとなりつつある。11日はNY原油が急伸、ゴールドもインフレヘッジ買いで上昇していることが目立ったが、主要国中銀が引き締め姿勢へと傾斜する中では米連銀の引き締め姿勢だけではドル全面高にはなびかないということかもしれない。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、1月4日夜高値を直近のサイクルトップとした下落が続いているが、10日深夜に115.03円を付けたところから11日夜に115.67円までいったん戻しているため、現状は10日深夜安値で目先のボトムを付けて戻したところと思われる。高値形成期は11日夜から13日の日中にかけての間と想定されるので既に11日夜高値でサイクルトップを付けてしまった可能性があるため、底割れ回避のうちは上昇余地ありとするが底割れからは新たな弱気サイクル入りとして13日夜から17日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では1月11日夜の反騰時に先行スパンから一時的に上抜けたが再び転落している。遅行スパンも好転したものの再び悪化しやすい位置にある。このため先行スパンを上抜き返すところからは上昇継続として遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落中は下向きとして遅行スパン悪化からは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は1月11日夜に60ポイント台まで戻したもののその後の反落で50ポイントを割り込んでいる。50ポイント台回復からは上昇再開の可能性ありとみるが、40ポイント割れからは一段安警戒として30ポイント割れを目指す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、115.03円を下値支持線、11日夜高値115.67円を上値抵抗線とする。
(2)115.50円以下での推移中は一段安警戒とし、115.03円割れから114円台中盤(114.70円から114.30円)を試す可能性があるとみる。114.50円以下は反発注意とみるが115.25円以下での推移なら13日も安値試しへ進みやすいとみる。
(3)115.50円から115.67円にかけては戻り売りにつかまりやすいとみるが、115.67円超えからは10日昼高値115.84円、7日高値116.04円等を順次試す流れとみる。116円手前は反落注意とするが、115.67円を超えた後も115.50円以上での推移が続くなら13日は高値試しへ向かいやすくなるとみる。
【当面の主な予定】
1/12(水)
10:00 (日) 黒田東彦日銀総裁、日銀支店長会議挨拶
10:30 (中) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 2.3%、予想 1.8%)
10:30 (中) 12月 生産者物価指数 前年同月比 (11月 12.9%、予想 11.1%)
14:00 (日) 12月 景気ウオッチャー現状判断 (11月 56.3、予想 56.3)
14:00 (日) 12月 景気ウオッチャー先行き判断 (11月 53.4、予想 51.2)
19:00 (欧) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 1.1%、予想 0.5%)
19:00 (欧) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 3.3%、予想 0.6%)
22:30 (米) 12月 消費者物価指数 前月比 (11月 0.8%、予想 0.4%)
22:30 (米) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 6.8%、予想 7.0%)
22:30 (米) 12月 消費者物価コア指数 前月比 (11月 0.5%、予想 0.5%)
22:30 (米) 12月 消費者物価コア指数 前年同月比 (11月 4.9%、予想 5.4%)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省10年債入札
28:00 (米) 12月 月次財政収支 (11月 -1913億ドル)
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
1/13(木)
06:45 (NZ) 11月 住宅建設許可件数 前月比 (10月 -2.0%)
08:50 (日) 12月 マネーストックM2 前年同月比 (11月 4.0%、予想 3.9%)
22:30 (米) 12月 生産者物価指数 前月比 (11月 0.8%、予想 0.4%)
22:30 (米) 12月 生産者物価指数 前年同月比 (11月 9.6%、予想 9.8%)
22:30 (米) 12月 生産者物価コア指数 前月比 (11月 0.7%、予想 0.5%)
22:30 (米) 12月 生産者物価コア指数 前年同月比 (11月 7.7%、予想 8.0%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.7万件、予想 20.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 175.4万人、予想 176.0万人)
24:00 (米) 上院銀行委員会、ブレイナード理事の米連銀副議長指名承認公聴会
26:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
27:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省30年債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.11.22
ドル円154円台前半、本邦CPI高止まり等で一時154円割れ (11/22午前)
22日午前の東京市場でドル円は「往って来い」。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2022.01.12
ドル円、安値圏から反発。パウエル議長証言は予想された程タカ派的とはならず(1/12朝)
11日(火)のドル円相場は安値圏から持ち直す展開。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。