高値更新達成感でもみあいが続く
〇先週のドル円、116.35レベルと2017年1月以来高値更新、週後半はじり安展開で週末クローズ
〇今週はFRB地区連銀総裁講演、米国12月CPI とPPI、1月ミシガン大消費者信頼感速報値など発表予定
〇米CPI予想前年比7.0%、利上げ思惑強まる場合、株安懸念とリスクオフで円高の動きとなるか
〇FRBによるバランスシート縮小、債券価格下落=金利上昇で株式市場にとって悪材料に
〇今週は115.00レベルをサポートに116.25レベルをレジスタンスとする流れとみる
今週の週間見通し
年初のドル円は東京市場が再開した4日に昨年高値115.52レベルを上抜けたことでドル買いに勢いが付き、その日のうちに116.35レベルと2017年1月以来の高値を見ることとなりました。しかし高値更新の達成感と週後半は株式市場が下げに転じたことからリスクオフの動きとなり、じり安の展開での週末クローズを迎えました。
年初の動きもこれまで同様に米金利と米国株の動きを見ながらの展開で始まり、世界的に感染者が急増している新型コロナの動向に対する懸念は見られません。しかし国によっては行動制限が強化されていますし、日本の状況を見ても分かるようにクリスマスから年始の人の移動で感染者増はしばらく続きそうです。どの国にとって悪材料ということにはなりませんが、景気回復の腰を折る要因にはなりますので、特に株式市場の動向には注意が必要です。
またFOMC議事録発表後のFRBによるバランスシート縮小を気にした市場参加者が多かったのですが、これはある意味当然の動きであると言えます。下のグラフ(下段)を見ていただくとわかりますが、コロナショック以降のFRBのバランスシート拡大はこれまでの水準からかけ離れた水準にまで膨張しましたので、テーパリング終了後の利上げとともにバランスシートもかつての水準に戻していく必要があるでしょう。
ただテーパリング、利上げに加えてバランスシートの縮小はFRBによる再投資が減少していくことで債券価格下落=金利上昇の連想が起き、金利上昇となると株式市場にとっては悪材料という動きになったと言えます。今週も引き続き先週までの材料が中心となりますが、米国CPIの発表が12日にあり、コンセンサスは前年比で7.0%と前回からさらに上昇すると見られています。
実際に7%を超えるようなCPIが出てくると3月利上げ思惑がさらに強まる可能性があり、その場合には金利上昇によるドル買いよりも株安懸念とリスクオフの円高の動きとなるのではないかと見ています。
テクニカルにはいつもの日足チャートを見てみましょう。
ドル円(日足)チャート
先週安値はちょうど昨年高値の水準で下げ止まりましたが、どちらかというと目先の高値を見てもう一段の調整が入りやすそうなチャートです。11月安値と先週高値の38.2%押しは114.87ですが、現在の水準から1円ほど下にありますので、今週のところは115円の大台がサポートになりやすいでしょう。
今週は大台115.00レベルをサポートに先週高値の若干下となる116.25レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
1月10日(月)
**:** 東京市場休場
16:00 トルコ11月失業率
19:00 ユーロ圏11月失業率
24:00 米国11月卸売売上高
1月11日(火)
09:01 英国12月小売売上高
09:30 豪州11月小売売上高、貿易収支
23:10 クリーブランド連銀総裁講演 ☆
23:30 カンザスシティ連銀総裁講演 ☆
24:00 パウエルFRB議長再任公聴会 ☆
30:00 セントルイス連銀総裁講演 ☆
1月12日(水)
08:50 本邦11月貿易収支
10:00 黒田日銀総裁講演
10:30 中国12月CPI・PPI ☆
16:00 トルコ11月鉱工業生産
19:00 ユーロ圏11月鉱工業生産
22:30 米国12月CPI ☆
24:30 週間原油在庫統計
28:00 ベージュブック ☆
30:45 NZ11月住宅建築許可
1月13日(木)
09:01 英国12月住宅価格
22:30 米国12月PPI ☆
22:30 米国新規失業保険申請件数
24:00 ブレイナードFRB副議長指名公聴会
26:00 (リッチモンド連銀総裁講演)
27:00 (シカゴ連銀総裁講演)
1月14日(金)
**:** 中国12月貿易収支
16:00 英国11月鉱工業生産、貿易収支
16:45 フランス12月CPI
19:00 ユーロ圏11月貿易収支
22:30 米国12月小売売上高、輸入物価
23:15 米国12月鉱工業生産、設備稼働率
24:00 米国1月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆
24:00 米国11月企業在庫
25:00 NY連銀総裁講演 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
1月3日(月)
年初のドル円は全般的にドル買いが先行しアジア市場後場には115.36レベルまで水準を切り上げていましたが失速し昨年末の水準へと押してのNY市場入り。NY市場では株安の動きには反応せず米金利上昇によるドル買いから日中高値を1銭更新し高値圏での引けとなりました。
1月4日(火)
今年最初の東京市場は大発会で株が大幅高、為替市場も円独歩安の動きとなりました。欧州市場ではもみあいを挟んだもののNY市場ではダウが買われる動きと米金利上昇を材料に再び円安が加速し、一時116.35レベルの高値をつけやや押しての引けとなりました。
1月5日(水)
東京市場のドル円はダウ先の売りとともにドル売りが先行、その後欧州市場ではダウ先には買い戻しが入ったものの、ドル円は前日の買いポジションに対しての調整も入り、欧州市場昼頃には一時115.62レベルの安値をつけました。ドル売り一巡後は再び買いが目立ちNY市場では米金利上昇も手伝って116.19レベルまで戻したものの、引けにかけてダウが大幅安となったことから上値が重くなっての引けとなりました。
1月6日(木)
前日NYダウの大幅安を受け同様に大幅安で始まった日経平均株価の動きを見てリスクオフの円買いが先行しました。ドル円は116円台前半から欧州市場序盤には115.66レベルまで下げ、その後はNY市場までもみあいとなりました。NY昼前には115.63レベルとやや安値を切り下げたものの前日安値は下抜けなかったことで引けにかけてはやや買い戻されました。
1月7日(金)
ドル円は東京が3連休前で米国雇用統計発表もあることからNY市場までもみあいが続きました。雇用統計はNFPが予想よりもかなり弱い+19.9万人となりドル売りが先行、その後は失業率が3.9%とさらに改善したことで買い戻しと、発表直後こそ振れが見られましたが、引けにかけては改めてドル売りが優勢となり115.48レベルと安値引けになりました。
ディスクレーマー
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