ドル円見通し FOMC後の上昇一巡、113円台半ばへ仕切り直しの下落
〇昨日のドル円、23時過ぎからの急落で113.54へ下落、113.50割れ回避するも113円台中盤での揉み合い
〇FOMC後の上昇一巡、ドル安への揺れ返しにより上値が抑えられ、いったん仕切り直しの下落か
〇NYダウ・ナスダックともに下落、昨日発表の米経済指標も冴えない結果に
〇英中銀、予想外に政策金利引き上げ、ECBはパンデミック対策の緊急資産購入策を2022年3月末で終了
〇113.90以下での推移中は一段安警戒とし、113.50割れからは113.21試しへ向かうとみる
〇113.90から114.00にかけて戻り売りにつかまりやすく、114.00超えから114円台中盤を目指すとみる
【概況】
ドル円は12月16日早朝の米FOMC金融政策発表後に114.26円へ上昇して11月30日深夜安値112.52円以降の高値を更新した。FOMC直後にいったんドル高となったところから急激なドル安へと巻き返されたことで上値が重くなり16日夜にかけては114円台を維持していたものの23時過ぎからの急落で113.54円へ下落、113.50円割れは回避しているものの113円台中盤での揉み合いに入っている。
12月16日早朝のFOMC、16日夜の英中銀とECBの金融政策発表と相次ぐ中で為替市場全般が乱高下となったが、ドル円としてはFOMC後の上昇一巡でいったん仕切り直しの下落が入ったところと思われる。
【米FOMCに対する反応一巡】
12月16日早朝の米FOMCでは2022年3月までに量的緩和を終了、2022年に3回の利上げ予想とされてインフレ対策を主眼としたタカ派的なスタンスへのシフトが見られた。発表直後にいったんドル高に振れたものの想定内として買い戻され、米長期債利回りの上昇も鈍くNYダウが大幅上昇したことでリスク選好感優勢としてユーロやポンド等が急落後に反騰した。その一方でドル円は当初のドル高局面で114円台序盤へ一段高となったものの、その後のドル安への揺れ返しにより上値が抑えられ、クロス円全般の上昇が支えとなって114円台を維持していた。
12月16日夜の英中銀による予想外の利上げやECBの来年2月でのパンデミック対策による追加の量的緩和終了方針等からポンドとユーロが一段高したものの、FOMC後の揺れ返しの上昇からの大幅高に対する高値警戒感からポンドとユーロドルが反落、米経済指標が冴えずにNYダウも反落して米長期債利回りが低下したことでドル円は114円台を維持できずに失速した。
【米国株反落、米経済指標冴えず】
12月16日のNYダウは前日比29.79ドル安と下落、15日の383.25ドル高の流れにブレーキがかかり、ナスダック総合指数も同385.15ポイント安と大幅下落して15日の327.94ポイント高の上昇分を吐き出した。FOMC後の上昇一巡感とこの日の米経済指標が冴えなかったことが背景だ。
米フィラデルフィア連銀による12月の製造業景況指数は15.4となり11月の39.0から低下して市場予想値の30.0を下回った。米労働省による新規失業保険申請は前週比1万8000件増の20万6000件となり市場予想の20万件を上回って2週ぶりに増加した。
米連銀による11月の鉱工業生産指数は前月比0.5%上昇で10月の1.7%上昇から減速、前年同月比は5.3%上昇だった。設備稼働率は76.8%で10月の76.5%から上昇した。
IHSマークイットによる12月の米製造業PMI速報値は57.8となり11月の58.3から低下して2020年12月以来の低水準で市場予想の58.5を下回った。サービス業PMI速報値は57.5で11月の58.0から低下して市場予想の58.5を下回った。
【英中銀予想外に利上げ、ECBはパンデミック対策の追加緩和終了へ】
英中銀は12月16日のMPC(金融政策委員会)で政策金利を0.1%から0.25%へ引き上げた。物価上昇に対応するための利上げだが、市場はコロナ感染拡大の影響もあり現状維持と予想していたためにサプライズとなってポンドドルが急騰した。量的緩和規模は現状維持とされたため、米連銀等のように当初に量的緩和を終了させてから利上げする手法とは異なる。
ノルウェー中銀は12月16日に政策金利を0.25%から0.50%へ引き上げた。2会合連続の利上げだが市場の予想通り。
メキシコ中銀も政策金利を5.0%から5.50%へ引き上げたが、市場予想は5.25%への引き上げだったので予想以上の利上げとなった。
欧州中銀(ECB)は12月16日の理事会でパンデミック対応として昨年3月に導入した緊急資産購入策(1兆8500億ユーロ)を2022年3月末で終了するとした。購入した資産の残高については2024年末まで維持するとし、パンデミック前から実施している量的緩和については継続するとし、政策金利も現状で据え置いた。各国中銀の出資比率に応じて国債を月額200億ユーロ買い入れている通常の量的緩和は継続となり、緊急対策の上積み分を終了することへのショック対策として通常の買い入れについて2022年4-6月に月額400億ユーロ、7-9月に同300億ユーロへ増額する。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、12月11日未明安値113.21円を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして12月13日夜から15日深夜にかけての間への上昇を想定してきた。FOMC後に一段高したため16日午前時点ではサイクルトップ形成期の延長入りによる上昇余地もあるとしたが、113.75円割れからはいったん弱気サイクル入りするとみて16日の日中から20日朝にかけての間への下落を想定するとした。
12月16日深夜に113.50円台へ下落したため、現状は16日早朝高値をサイクルトップとして弱気サイクル入りしたと思われる。既に反騰注意期にあるので114円台を回復できないうちはもう一段安余地ありとするが、114円超えからは新たな強気サイクル入りとして21日早朝から23日早朝にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では12月16日深夜の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は12月16日早朝に70ポイント台に乗せていたが16日深夜には30ポイント台序盤へ急落した。50ポイント以下での推移中はもう一段安余地ありとし、50ポイント超えからは上昇再開とみる。
【当面のポイント】
ドル円は11月30日深夜安値112.52円と12月4日未明安値112.54円をダブル底として上昇してきたが、114円を超えたものの維持できずに失速してるので、現状はまだ11月30日以降の112円台中盤から114円前後までのレンジ内での持ち合いから上放れしきれていない状況にあり、ここで押し目形成として12月16日早朝高値を超えて持ち合い上放れを確りと示せるか、もう一度112円台中盤まで押し返されるか試されるところだ。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月11日未明安値113.21円を下値支持線、114.00円を上値抵抗線とする。
(2)113.90円以下での推移中は一段安警戒とし、113.50円割れからは12月11日未明安値113.21円試しへ向かうとみる。下げ足が速まる場合は113円割れを試すとみるが113円以下は反発注意とする。
(3)113.90円から114.00円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみるが、114.00円超えからは上昇再開に入ったとみて114円台中盤(114.30円から114.70円)を目指す流れとみる。
【当面の主な予定】
12/17(金)
日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
16:00 (独) 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 3.8%、予想 1.4%)
16:00 (英) 11月 小売売上高 前月比 (10月 0.8%、予想 0.8%)
16:00 (英) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 -1.3%、予想 4.2%)
16:00 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前月比 (10月 1.6%、0.8%)
16:00 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (10月 -1.9%、予想 2.4%)
18:00 (独) 12月 IFO企業景況感 (11月 96.5、予想 95.3)
19:00 (欧) 10月 建設支出 前月比 (9月 0.9%)
19:00 (欧) 10月 建設支出 前年同月比 (9月 1.5%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 4.9%、予想 4.9%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 2.6%、予想 2.6%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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