ドル円見通し 新変異株騒動の急落一服だが114円台回復へ進めずFOMC待ち(週報12月第2週)

米連銀(連邦準備制度理事会=FRB)は12月14−15日に金融政策決定会合である連邦公開市場委員会=FOMCを開催、日本時間16日未明に声明発表、議長会見がある。

ドル円見通し 新変異株騒動の急落一服だが114円台回復へ進めずFOMC待ち(週報12月第2週)

ドル円見通し 新変異株騒動の急落一服だが114円台回復へ進めずFOMC待ち

〇ドル円、11/25に年初来高値115.52をつけた後オミクロン株発生で11/30に112.52まで下落
〇先週はオミクロン懸念後退から持ち直すも、半値戻し114.01達成できず、勢いづかない状況
〇米11月CPI前年比6.8%と1982年以来の高水準、市場は事前予想通りで反応薄
〇株式市場は冷静、低金利続くと見込み上昇して越週、米長期金利も上昇一服
〇今週は12/14-15のFOMCはじめ主要国の中銀金融政策発表相次ぐ
〇FOMC「インフレは一時的」との見解を撤回したパウエル議長がテーパリング終了早めるか注目
〇ECB、日銀は景気腰折れ懸念して慎重姿勢、ドル円はリスク選好続けば高値追及か
〇114円台到達から高値を切り上げる場合115円台回復を目指す流れ
〇112.50割れからは下落基調長期化、持ち合い幅の倍返し111円前後試すか

【概況】

ドル円は12月10日夜に113.79円まで戻していたものの12月8日夜高値113.95円には届かず、米11月CPI伸び率が予想通りだったことでサプライズ無しとしてドル安反応となったところで113.21円まで反落した。11月25日未明高値で115.51円を付けて年初来高値を更新後、11月26日に感染力の強いオミクロン株発生報道をきっかけにリスク回避型の円高となって11月30日深夜には112.52円まで安値を切り下げてこの間の下げ幅は2.99円の円高ドル安となったが、その後は過度の変異株への懸念が後退したとして金融市場全般が持ち直す中でドル円も下げ渋りからやや持ち直しに入り12月8日夜には113.95円まで戻していた。しかし11月30日に一段安する前の11月29日深夜高値と同値にとどまり、また11月25日未明高値からの下げ幅に対する半値戻し114.01円には届かずに勢い付かない状況にある。
12月14−15日に米FOMC(16日未明に声明発表、議長会見)、16日夜には英中銀MPCとECB理事会、17日には日銀金融政策決定会合の結果発表と主要中銀の金融政策発表が相次ぐため、それらを見定めてから年末への方向性を確認して流れをつくるのだろうと思われる。

【米11月CPIは予想通り、高止まりだがサプライズなく株高、長期債利回りは落ち着いた動き】

12月10日夜に米労働省が発表した11月の消費者物価指数上昇率は前年同月比で6.8%となり10月の6.2%を超えて1982年6月以来凡そ39年ぶりの高水準となった。1982年の物価上昇はオイルショックによりトイレットペーパーの買い溜め騒動が発生して社会問題となるようなインフレだった。現状も数字の上ではそこまでインフレが深刻化している状況であり、所得水準の低い世帯には厳しい状況となっている。ただ、市場の事前予想と一致したことで株式市場及び債券市場では大きな動きにならず、為替市場も発表直後に若干動いたものの比較的冷静だった。
食品とエネルギーを除いたコア指数の前年同月比も4.9%となり10月の4.6%を上回り1991年6月以来凡そ30年ぶりの伸び率となった。エネルギー関連は前年同月比33.3%上昇、半導体不足により新車の減産が続いているために中古車等が同31.4%上昇と際立った上昇となっている。

12月10日のNYダウは前日比216.30ドル高と上昇、ナスダック総合指数も同113.23ポイント高と上昇した。NYダウは11月8日の史上最高値3万6565.73ドルから12月1日安値3万4006.98ドルまで2559ドル安の大幅下落だったところからV字反騰しており、12月10日高値3万5982.69ドルまで1975ドル高、77%の戻りとなっている。インフレは進行しているが景気回復を反映したものであり、米連銀は量的金融緩和を早期に終了して利上げを前倒ししたとしても暫くは低金利水準が続いて株式市場を崩すような事はないだろうとの楽観が優勢のようだ。

12月10日の米10年債利回りは前日比0.01%低下の1.49%で、米CPI発表後に1.51%近辺から1.45%まで低下してから持ち直している。オミクロン株騒動による安全資産買いと株売り債券買いで11月24日の1.69%から12月3日に1.33%まで急低下したが、その後の株高債券安で再び利回り上昇で推移してきているところだが、9日と10日は上昇一服の様相。
30年債利回りは前日比変わらずの1.88%で終了、2年債利回りは0.03%低下の0.66%で週を終えた。

【米FOMC、ECB理事会、英中銀MPC、日銀金融政策決定会合】

米連銀(連邦準備制度理事会=FRB)は12月14−15日に金融政策決定会合である連邦公開市場委員会=FOMCを開催、日本時間16日未明に声明発表、議長会見がある。11月10日の10月CPI上昇率の上ブレに対してバイデン大統領がインフレ対策を最重要課題とすると演説し、その意を受けて11月22日にパウエル米連銀議長の再任が決定、議長もインフレ対策を主眼とする姿勢を示し、その後の議会証言では従来まで繰り返してきた「インフレは一時的」との見方を撤回した。このため市場は今回のFOMCでテーパリング(量的金融緩和による資産購入の縮小)のペースを速めて早期に終了させて利上げ準備に入ると予想している。テーパリング終了時期は来年3月末から6月にかけての間でより早められ、2022年には2回の小幅な利上げが行われるのではないかというのが市場のコンセンサスとなりつつある。

一方でECBや英中銀としては欧州の感染再拡大問題もあり、インフレ進行への懸念が深まるものの景気回復の腰折れを回避したい思惑もありやや慎重姿勢だ。英中銀については10月の段階では11月と12月の二度の利上げ可能性も予想に上がったが11月は利上げを見送り、12月も現状維持とするのではないかと予想されている。

日銀についてはコロナ対応策での中小企業向け無利子・無担保融資を実施した金融機関への優遇措置と大企業が資金調達する際の社債とCPの買い入れについては終了するのではないかと思われるが、年末のために今回は現状維持として年明け以降の決断となるのではないかと予想される。
オミクロン株の感染拡大については当初警戒されていたデルタ株並みの重症化率にはならずにワクチンのブースター接種で対抗しうるとして11月26日の総悲観が大幅に後退している。中国恒大集団と佳兆業集団に対するデフォルト問題が新たな火種ではあるが、まだ世界市場全般への波及については様子見となっている。米連銀による引き締めへの姿勢変化についても株式市場に影響を与えるほどではないとして株式市場の楽観は続きやすいところであり、FOMC等を通過してリスク選好優勢の状況が続けばドル円としては114円の壁を超えて高値追及の流れで進むのではないかと思われる。

【当面のポイント 114円を抵抗とした安値圏持ち合いからの脱却を試す】

【当面のポイント 114円を抵抗とした安値圏持ち合いからの脱却を試す】

11月30日深夜安値112.52円と12月4日未明安値112.54円をダブルボトム型の下値支持線とし、11月29日深夜高値と12月8日夜高値の同値での113.95円を上値抵抗線とした持ち合い相場となっている。12月7日以降は113円台を維持して持ち合い圏の上部にあるが、戻り高値は12月8日夜から10日夜へ切り下がり気味となっている。
(1)FOMC前は動きも鈍いと思われるが、114円台へ乗せてくれば持ち合い上放れ、113円割れからは持ち合い下限の112.50円台試し、112.50円を割り込めば持ち合い下放れに入ると切り分けて、持ち合い放れにつくスタンスで臨みたい。
(2)114円台到達からさらに高値切り上げへ進めば115円台回復を目指す流れとして年末年初にかけての上昇継続と今年1月6日底以降の高値更新に挑戦するとみる。
(3)112.50円割れからは下落基調がさらに長期化し、この間の持ち合い幅の倍返しとなる111円前後試しへ向かう流れとみる。(了)<12日15:30執筆>

【当面の主な予定】

12/13(月)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (7-9月 18、予想 19)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業製造業先行き (7-9月 14、予想 19)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (7-9月 2、予想 5)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (7-9月 3、予想 9)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (7-9月 10.1%、予想 9.8%)
08:50 (日) 10月 機械受注 前月比 (9月 0.0%、予想 1.8%)
08:50 (日) 10月 機械受注 前年同月比 (9月 12.5%、予想 4.2%)
16:00 (独) 11月 卸売物価指数(WPI) 前月比 (10月 1.6%)

12/14(火)
米連邦公開市場委員会(FOMC)初日
09:30 (豪) 11月 NAB企業景況感指数 (10月 11)
13:30 (日) 10月 鉱工業生産・確報 前月比 (速報 1.1%)
13:30 (日) 10月 鉱工業生産・確報 前年同月比 (速報 -4.7%)
13:30 (日) 10月 設備稼働率 前月比 (9月 -7.3%)
16:00 (英) 11月 失業保険申請件数 (10月 -1.49万件)
16:00 (英) 11月 失業率 (10月 5.1%)
16:00 (英) 10月 失業率・ILO方式 (9月 4.3%、予想 4.2%)
19:00 (欧) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -0.2%、予想 1.3%)
19:00 (欧) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 5.2%、予想 3.2)
22:30 (米) 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 0.6%、予想 0.5%)
22:30 (米) 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 8.6%、予想 9.2%)
22:30 (米) 11月 生産者物価コア指数 前月比 (10月 0.4%、予想 0.4%)
22:30 (米) 11月 生産者物価コア指数 前年同月比 (10月 6.8%、予想 7.2%)

12/15(水)
06:45 (NZ) 7-9月期 経常収支 (4-6月 -13.96億NZドル)
08:30 (豪) 12月 ウエストパック消費者信頼感指数 (11月 105.3)
11:00 (中) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 4.9%、予想 4.8%)
11:00 (中) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 3.5%、予想 3.8%)
13:30 (日) 10月 第三次産業活動指数 前月比 (9月 0.5%、予想 1.2%)
16:00 (英) 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 1.1%、予想 0.4%)
16:00 (英) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 4.2%、予想 4.8%)
16:00 (英) 11月 消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 3.4%、予想 3.7%)
16:00 (英) 11月 小売物価指数 前月比 (10月 1.1%、予想 0.3%)
16:00 (英) 11月 小売物価指数 前年同月比 (10月 6.0%、予想 6.7%)

22:30 (米) 12月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (11月 30.9、予想 25.0)
22:30 (米) 11月 小売売上高 前月比 (10月 1.7%、予想 0.8%)
22:30 (米) 11月 小売売上高・除自動車 前月比 (10月 1.7%、予想 0.9%)
22:30 (米) 11月 輸入物価指数 前月比 (10月 1.2%、予想 0.8%)
22:30 (米) 11月 輸出物価指数 前月比 (10月 1.5%、予想 0.5%)
24:00 (米) 10月 企業在庫 前月比 (9月 0.7%、予想 1.1%)
24:00 (米) 12月 NAHB住宅市場指数 (11月 83、予想 84)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC) 政策金利 (現行 0.00-0.25%、予想 0.00-0.25%)
28:30 (米) パウエル米連銀議長、定例記者会見

12/16(木)
休場、南ア
日銀・金融政策決定会合初日
06:45 (NZ) 7-9月期 GDP 前期比 (4-6月 2.8%、予想 -4.5%)
06:45 (NZ) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4-6月 17.4%、予想 -1.6%)
08:50 (日) 11月 貿易収支・季調前 (10月 -674億円、予想 -5952億円)
08:50 (日) 11月 貿易統計。季調済 (10月 -4447億円、予想 -3208億円)
09:30 (豪) 11月 新規雇用者数 (10月 -4.63万人、予想 20.00万人)
09:30 (豪) 11月 失業率 (10月 5.2%、予想 5.0%)
17:30 (ス) スイス中銀 政策金利 (現行 -0.75%、予想 -0.75%)
17:30 (独) 12月 製造業PMI速報値 (11月 57.4、予想 57.0)
17:30 (独) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 52.7、予想 51.0)

18:00 (欧) 12月 製造業PMI速報値 (11月 58.4、予想 57.9)
18:00 (欧) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 55.9、予想 54.3)
18:30 (英) 12月 製造業PMI速報値 (11月 58.1、予想 57.6)
18:30 (英) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 58.5、予想 57.0)
19:00 (欧) 10月 貿易収支・季調済 (9月 61億ユーロ、予想 58億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 貿易収支・季調前 (9月 73億ユーロ)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 15.00%、予想 14.00%)
21:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
21:45 (欧) 欧州中銀 政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)

22:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、定例記者会見
22:30 (米) 11月 住宅着工件数・年率換算件数 (10月 152.0万件、予想 157.0万件)
22:30 (米) 11月 住宅着工件数 前月比 (10月 -0.7%、予想 3.3%)
22:30 (米) 11月 建設許可件数・年率換算件数 (10月 165.0万件、予想 166.0万件)
22:30 (米) 11月 建設許可件数 前月比 (10月 4.0%、予想 0.4%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 18.4万件、予想 20.0万人)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 199.2万人)
22:30 (米) 12月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (11月 39.0、予想 28.5)
23:15 (米) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 1.6%、予想 0.7%)
23:15 (米) 11月 設備稼働率 (10月 76.4%、予想 76.8%)
23:45 (米) 12月 製造業PMI速報値 (11月 58.3、予想 58.5)
23:45 (米) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 58.0、予想 58.8)
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 5.00%、予想 5.25%)

12/17(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
09:00 (NZ) 12月 ANZ企業信頼感 (11月 -18.1)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
16:00 (独) 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 3.8%、予想 1.4%)
16:00 (英) 11月 小売売上高 前月比 (10月 0.8%、予想 0.8%)
16:00 (英) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 -1.3%、予想 4.2%)
16:00 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前月比 (10月 1.6%、0.8%)
16:00 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (10月 -1.9%、予想 2.3%)
18:00 (独) 12月 IFO企業景況感指数 (11月 96.5、予想 95.2)
19:00 (欧) 10月 建設支出 前月比 (9月 0.9%)
19:00 (欧) 10月 建設支出 前年同月比 (9月 1.5%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 4.9%、予想 4.9%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 2.6%、予想 2.6%)

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る