来週の為替相場見通し:『ドル高・円安トレンドの再開を想定。米FOMCに注目』(12/11朝)

ドル円は11/30に記録した約1ヶ月半ぶり安値112.53をボトムに反発に転じると、週央にかけて、一時113.94まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『ドル高・円安トレンドの再開を想定。米FOMCに注目』(12/11朝)

ドル高・円安トレンドの再開を想定。米FOMCに注目

〇今週のドル円、オミクロン株を巡る過度な悲観論の後退に週央にかけ113.94まで上昇
〇その後は中国恒大集団の格下げ実施や、米CPIの予想通りの結果にやや戻し113.35前後で推移
〇今週のユーロドル、欧州の感染拡大等で週初は1.1228まで下げる
〇その後は市場のリスクセンチメントの改善に、週央にかけて週間高値1.1352まで急伸
〇週末にかけてはECBの資産買入増額報道に1.1320レベルに反落
〇ドル円、112円台半ばで下値の堅さ確認、ドル高円安トレンド再開、115.53を試す展開想定
〇来週は12/16の米FOMCに要注目、(ドットチャート発表あり)
〇来週の予想レンジ(USDJPY):112.25ー114.75、(EURUSD):1.1175−1.1425

今週のレビュー(12/6−12/10)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初112.78で寄り付いた後、早々に週間安値112.77まで軟化しました。しかし、11/30に記録した直近安値112.53をバックに下げ渋ると、@新型コロナウイルス・オミクロン株を巡る過度な悲観論の後退(バイデン米政権の首席医療顧問アンソニー・ファウチ氏による「オミクロン株はこれまでのところ深刻さの度合いは高くない」との発言や、米CNBCによる「米ファイザー社製ワクチンを3回接種することで新型コロナウイルス・オミクロン株が中和される」との試験データに関する報道など)や、A株式市場の急反発(リスク回避ムード後退→リスク選好ムード再開→世界的な株高→クロス円上昇→ドル円連れ高)、B米金利上昇に伴うドル高圧力(米10年債利回りは先週末金曜日に記録した1.33%から1.53%へ急上昇)、C米MBA住宅ローン申請指数(結果2.0%、前回▲7.2%)の良好な結果が支援材料となり、週央にかけて、週間高値113.94(11/29以来の高値圏)まで急伸しました。

もっとも、心理的節目114.00をバックに伸び悩むと、D格付会社フィッチ・レーティングスによる中国恒大集団の格下げ実施(部分的な債務不履行を意味する「RD」に引き下げ)や、E米11月消費者物価指数の予想通りの結果(一部で予想を大きく上振れるとの警戒感があったものの、結果は予想通りでサプライズなし→安堵のドル売り)、F上記Eを背景とした米金利の急低下(米10年債利回りが1.53%から1.45%へ急低下→米ドル売り)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間12/11午前3時20分現在)では、113.35前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1321で寄り付いた後、@欧米金融政策の方向性の違いに着目したユーロ売り・ドル買い圧力や、A欧州圏で広がる新型コロナウイルス・オミクロン株の感染拡大懸念(行動制限強化の思惑→欧州経済の先行き不透明感)、Bドイツ10月製造業新規受注(結果▲1.0%、予想5.5%、※前年同月比)の冴えない結果、Cウクライナ情勢を巡る地政学的リスク、Dドイツ12月ZEW現況指数(結果▲7.4、予想5.7)の半年ぶりマイナス転落が重石となり、翌12/7にかけて、週間安値1.1228まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、E米CNBCによる「米ファイザー社製ワクチンを3回接種することで新型コロナウイルス・オミクロン株が中和される」とのポジティブ報道(オミクロン株を巡る過度な悲観論の後退)や、F上記Eを背景としたリスク選好ムードの再開(株式市場の堅調推移→クロス円上昇→ユーロ円上昇→ユーロドル連れ高)、G対英ポンドでのユーロ買い圧力(米系金融機関がイングランド銀行の利上げ時期が来年2月にずれ込むとの見通しを発表。また、ジョンソン英首相は新たな規制をイングランドで導入すると発言)などが支援材料となり、週央にかけて、週間高値1.1352まで急伸しました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、H欧州経済の先行き不透明感や、IECBによる追加緩和観測(12/16の理事会で資産購入プログラムAPPを一時的且つ限定的に拡大することを検討中と報道)などが重石となり、本稿執筆時点(日本時間12/11午前3時20分現在)では、1.1320前後で推移しております。

来週の見通し(12/13−12/17)

<ドル円相場>
ドル円は11/30に記録した約1ヶ月半ぶり安値112.53をボトムに反発に転じると、週央にかけて、一時113.94まで急伸しました。112円台半ばで下値の堅さを再確認できたことで(11/30安値112.53および12/3安値112.56と112円台半ばで確りサポート→下値の堅さを再確認→ショートカバー誘発)、テクニカル的に見て、アップサイドリスクを連想させるチャート形状となりつつあります(ドル高・円安トレンドの再開を連想。年末に向けて11/24に記録した約4年10ヵ月ぶり高値115.53を試すシナリオを想定)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違い(米テーパリング加速・利上げ前倒しを織り込む米国と、金融緩和の長期化が織り込まれる日本との金融政策格差)や、A新型コロナウイルス・オミクロン株を巡る過度な悲観論の後退(株高を背景とした円売り圧力)、B世界的なインフレリスク(新興国から米国への資金シフト→ドル買い圧力)、C日銀による円安容認発言(黒田総裁、安達日銀審議委員共に「円安は日本経済にプラス効果をもたらしている」と発言)など、ドル買い・円売りトレンドの継続を連想させる材料が増えつつあります。

こうした中、来週は12/16に予定されている米FOMCに注目が集まります。今回は経済見通しとドットチャートの発表を含む会合となるため、注目点は大きく以下3つに分類できます。一つ目はドットチャートで中央値の上方修正が見られるか否か、二つ目は声明文のインフレ部分の文言に変更が見られるか否か、三つ目はテーパリング加速についての決定がなされるか否かとなります。一つ目については、ブラックアウト期間に入る前の米当局者によるタカ派的な発言を見る限り、上方修正される可能性が高いと判断できます。二つ目については、パウエルFRB議長が11/30に「一時的という文言を使うことをやめるべきだと考えている」と発言したことで、これまで声明文で用いられてきた「一時的(transitory)」という文言は削除されると考えられます。

三つ目についても、ブラックアウト期間に入る前に複数の米当局者よりテーパリングペースの加速の必要性に関する言及がなされているため、現行の月間150億ドル(米債100億ドル、住宅ローン担保証券50億ドル)の削減額が、月間300億ドル(米債200億ドル、住宅ローン担保証券100億ドル)の削減額へと増額されるシナリオが有力視されております。これらはいずれも、米金利上昇→ドル高を連想させる材料であるため、来週はドル円のアップサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(タカ派な米FOMCを背景としたドル買い圧力と、新型コロナウイルス・オミクロン株の懸念後退に伴う円売り圧力の組み合わせを想定)。

来週の予想レンジ(USDJPY):112.25ー114.75

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は11/24に約1年5カ月ぶり安値となる1.1185(昨年7/1以来)まで下げ幅を広げるも、その後は1.1200−1.1400のレンジ相場に突入しました。但し、上方に複数のレジスタンスポイントを控えていること(戻り売りが出やすいチャート形状)や、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転、移動平均線の弱気のパーフェクトオーダー、ダウ理論の下落トレンドが成立していること等を踏まえれば、テクニカル的に見て地合いは弱いと判断できます(余程強いユーロ買い材料が出てこない限り、上値余地は限定的)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@欧米金融政策の方向性の違い(米テーパリング加速および米利上げ前倒しが織り込まれる米国と、金融緩和の長期化が見込まれる欧州との金融政策格差)や、A欧州経済の先行き不透明感(欧州圏で広がる新型コロナウイルス感染再拡大懸念→欧州圏における行動制限強化の思惑)、B北アイルランド議定書を巡る英国・欧州連合間の不確実性、Cウクライナを巡る地政学的リスクなど、ユーロドル相場の上値を抑制する材料が複数残っております。

こうした中、来週は12/16に予定されているECB理事会に注目が集まります。本会合では、(ECBが引き締めモードに入ったと市場参加者に見なされないように)、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を来年3月に終了することと併せて、既存の資産購入プログラム(APP)の増枠が同時決定される公算が大きく、欧米金融政策格差を背景としたユーロ売り・ドル買いの流れは来週以降も続くと予想いたします(11/24に記録した約1年5カ月ぶり安値1.1185を試すシナリオを想定)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1175−1.1425

注:ポイント要約は編集部

ドル高・円安トレンドの再開を想定。米FOMCに注目

ドル円日足

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