ドル円見通し 115円手前からの急落調整落ち着き、上昇再開を伺う
〇ドル円、11/18午前113.86まで安値を切り下げたが、強めの米経済指標背景に114.47まで戻す
〇その後114.50超えに至らずにやや失速するも、114円台序盤を維持、上昇再開のきっかけ探るところか
〇米長期債利回りは上昇一服、NYダウは下げたがナスダックは終値ベースでの史上最高値を更新
〇インフレ懸念が深刻化し始める中、今後米連銀のインフレへの姿勢に変化があるか注目
〇114.50以下での推移中は一段安余地ありと注意し、113.86割れからは113.50前後への下落を想定する
〇114.50超えからは上昇再開に入ったと仮定して、再び115円へ挑戦する流れとみる
【概況】
ドル円は11月17日朝に114.97円へ上昇して今年1月6日の102.57円以降の最高値を更新、2017年3月5日以来4年半ぶりの高値水準に達したが、節目の115円に届かずに上値が重くなったことで利益確定売りが急がれたことと、11月10日夜の米消費者物価上昇率の跳ね上がりをきっかけとした米長期債利回りの上昇一服が重なったこと、さらに大幅下落していたユーロドルが17日昼に一段安したところから売り一巡となって戻したことなどが重なって急落となり、18日未明には113.92円まで下落、当日の高安で1円を超えて日足は大陰線となった。
11月18日午前には113.86円まで安値を切り下げたものの114円割れに対する売られ過ぎ警戒感から買い戻され、18日夜は米経済指標が強めだったことで114.47円まで戻した。114.50円超えには至らずにやや失速したが114円台序盤を維持している。11月17日夜の下落が大きかったものの、年初来高値更新後の高値警戒感からの調整安がやや勢いづいて連鎖反応を呼んだ「ふるい落とし」的な動きという印象だが、ひとまず落ち着いて上昇再開のきっかけを探るところと思われる。
【米経済指標は良好】
11月18日に米労働省が発表した週間新規失業保険申請は11月13日までの週間で前週比1000件減の26万8000件となり市場予想の26万件をわずかに上回ったが、7週連続で前週から減少しており2020年3月14日以来の最低を更新した。失業保険受給者総数は11月6日までの週間で208万人となり前週比12万9000人減少して市場予想の212万人を下回った。雇用改善は進んでいる。
米フィラデルフィア連銀による11月の製造業景況指数は39.0となり市場予想の24.0及び10月の23.8を大幅に上回り今年4月以来の高水準となった。このうち新規受注指数が47.4となり10月の30.8から大幅上昇して1973年3月以来の最高水準に達したという。
【米長期債利回りは10日からの急騰一服】
米10年債利回りは前日比変わらずの1.59%。30年債利回りは同0.01%低下の1.97%、2年債利回りは変わらずの0.50%だった。11月10日の米消費者物価上昇率が前年比で31年ぶりの高水準となりコア指数も30年ぶりの高水準となったことでインフレ進行懸念が深刻化したとして主要長期債利回りが跳ね上がったが、今週は上昇一服でやや低下しているものの高値圏を維持している。
NYダウは大手企業決算が不調だったことで前日60.10ドル安と下げたがナスダック総合指数は同72.14ポイント高と上昇、11月5日の取引時間中の最高値には届かなかったが終値ベースでの史上最高値を更新している。インフレ懸念が圧迫要因ではあるが景気回復継続期待が勝っており、ダウがやや調整的に足踏みしているもののナスダックとSP500は堅調な推移で株高基調維持している。
【米連銀の利上げ時期】
米シカゴ連銀のエバンズ総裁は18日のオンライン会合において「2022年半ばに量的金融緩和策を完了し、経済やインフレ期待の動向を見極めた上で2022年内に利上げを開始する可能性がある」と述べた。利上げ開始時期はインフレ指標次第とし、「量的緩和終了後の来年に始めるか、2023年にも行われるだろう」と述べた。同総裁はFOMC内ではハト派とされる。
パウエル議長は量的緩和が終了した段階で検討されるとしているが、テーパリング終了からすぐには利上げしないという「利上げを急がない」姿勢を強調してきた。しかしインフレ懸念が深刻化し始める中でバイデン政権によるインフレ対策への動き、来年2月の任期切れによる米連銀議長の選出(パウエル議長の再任かブレイナード理事の昇格か、11月25日までには決めるとされる)もあり、今後の米連銀によるインフレへの姿勢の変化があるのかどうかも注目される。
JPモルガンは米連銀の利上げ時期については2022年の第3四半期からと予想、実質金利がゼロになるまで0.25%ずつの利上げが継続するとの見通しを発表した。インフレ率については2021年第4四半期を4.2%とし、2022年第3四半期には2.2%と低下を見込んでいる。
世界規模のインフレ進行はパンデミックからの景気回復による消費の急拡大と供給サイドが間に合わないボトルネックによるものであり、いずれ解消してゆくとみられているが、最近の主要国におけるインフレ進行度合いは「インフレは一時的」としてきた主要中銀の見通しから外れて「インフレの長期化、深刻化、対策の必要な状況」に変わりつつある印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、11月12日深夜と15日午前に113.74円の同値を付けてダブルボトムとして強気サイクル入りしたが、12日高値から3日目となる17日朝高値でサイクルトップを付けてから急落となり弱気サイクル入りした。ボトム形成期は前回がダブルボトムだったため17日深夜から22日朝にかけての間と想定されるが、18日深夜にかけて下げ幅の凡そ半値を戻しているので既に18日午前安値でボトムを付けたと思われる。次の高値形成期は20日早朝から24日午前にかけての間と想定されるので18日午前安値割れ回避のうちは上昇余地ありとするが、18日午前安値を割り込む場合は底割れによる新たな弱気サイクル入りとして23日午前から25日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では11月17日夜の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、18日午前安値からの持ち直しで遅行スパンが好転した。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが悪化するところから下げ再開とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開感が強まるとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は18日未明に20ポイント台へ急低下したところから50ポイント超えへ持ち直し、その後も50ポイントを挟んで確りしている。40ポイント割れからは下げ再開を疑うが、50ポイント前後で確りしているうちは上向きとし、60ポイント超えからは70ポイント超えを目指す上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月18日午前安値113.86円を下値支持線、114.50円を上値抵抗線とする。
(2)114.50円以下での推移中はまだ一段安余地ありと注意し、113.86円割れからは113.50円前後への下落を想定する。113.50円以下は反発注意とするが114円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)114.50円超えからは上昇再開に入ったと仮定して再び115円へ挑戦する流れとみる。115円手前は反落注意だが、114.50円を超えた後も114.30円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
11/19(金)
休場 インド(シーク教ナナック生誕日、株式市場のみ休場)
16:00 (独) 10月 生産者物価 前月比 (9月 2.3%、予想 1.9%)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -0.2%、予想 0.5%)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 -1.3%、予想 -2.0%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 -0.6%、予想 0.6%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (9月 -2.6%、予想 -3.1%)
17:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演(欧州銀行業界イベント)
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調済 (8月 134億ユーロ)
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調前 (8月 176億ユーロ)
24:45 (米) ウォラーFRB理事、講演(NY)
26:15 (米) クラリダFRB副議長、講演(オンライン)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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