ドル円見通し インフレ本格化懸念による円安、年初来の上昇基調継続(週報11月第3週)

ドル円は、ドル全面高となったことで10日深夜に114円台に到達、12日午前には114.30円まで高値を伸ばした。

ドル円見通し インフレ本格化懸念による円安、年初来の上昇基調継続(週報11月第3週)

ドル円見通し インフレ本格化懸念による円安、年初来の上昇基調継続

〇ドル円、週末に一時114.30まで上昇、11/9安値112.70から切り返し、押し目形成から上昇再開へ
〇米CPI年率6.2%と31年ぶり高水準、インフレ本格化か
〇米10年債利回り11/9の1.41%から翌日1.59%に急伸、低下幅の半値以上を一日で解消
〇バイデン政権のインフレ対策、パウエル議長再選の有無、欧州のコロナ感染再拡大等要注視
〇113円台中盤までを支持線とし、114.30を超えるところから114.69、115円を目指す流れか

【概況】

ドル円は11月10日夜の米消費者物価上昇率が予想を大幅に上回ったことでインフレ懸念が深刻化して米長期債利回りが急伸、ドル全面高となったことで10日深夜に114円台に到達、12日午前には114.30円まで高値を伸ばした。12日夜にかけては上昇一服で深夜に113.74円まで小反落したものの113円台後半では買い支えられた状況となっている。10月20日に114.69円を付けて調整安に入っていたが、11月9日安値112.70円からの切り返しにより、すでに押し目形成から上昇再開に入りつつあるところと思われる。

【インフレは「一時的」から「本格化」へ】

10月の米消費者物価上昇率は前月比0.9%となる8月の0.4%から大幅に加速、前年同月比は6.2%となり9月の5.4%及び市場予想の5.8%を超えて凡そ31年ぶりの高水準に達した。エネルギー食品を除くコア指数の上昇率でも前月比0.6%と加速、前年比は4.6%となり凡そ30年ぶり高水準となった。米連銀は「インフレは一時的」としてきたが、「インフレの本格化」へと状況も変わってきた印象だ。
米10年債利回りは10月21日の1.70%から11月9日に1.41%まで低下したところから10日に1.59%へ急伸してこれまでの低下幅の半値以上を1日で解消し、11日、12日も高止まりしている。

米長期債利回り上昇からドル全面高の様相だが、通常であれば長期債利回り上昇でドル高なら売り圧力に晒されるゴールドが急伸していることもインフレヘッジ買いが優勢となっていることを示唆している。
米長期債利回りの上昇と共に独英豪等の長期債利回りも反発したが、勢いとしては米長期債利回り上昇によるドル高感が勝ること、リスク回避的なドルストレートでのドル買い戻し、投機通貨買いへの積極性後退としてユーロやポンドが年初来安値を更新する状況となっている。
ドル円にとってはYCCによる実質ゼロ金利政策とETF等の買い入れによる緩和政策から脱却できない日銀の姿勢も踏まえてドル高円安へと進みやすい状況だ。

【バイデン政権によるインフレ対策は?】

11月12日夜に発表されたミシガン大の11月消費者信頼感指数は66.8となり10月から4.9の低下となった。市場予想は72.4への改善だったことに反しての失速であり、2011年11月以来の低水準という。物価上昇が消費者心理を大きく悪化したことを反映したものだが、消費者動向については与党民主党支持者よりも野党共和党支持者における信頼感が大幅に低下しているとされる。
11月10日夜にバイデン大統領はインフレ対策が最大の問題として対処姿勢を示したのも当然だが、米戦略備蓄放出により原油価格高騰などを一時的に抑えること以外には実効性のある対策も難しく、米連銀へ利上げ圧力をかければその姿勢もまた批判されるため難しい政策対応となる。財政出動による景気刺激もサプライチェーンがボトルネックを発生させている状況では資材・賃金高騰によりインフレを加速させかねない。

11月12日に発表された9月のJOLT(雇用動態調査)では求人数が1043万800件、採用数が645万9000件だったが、求人と採用のギャップが400万人近い状況であり、企業の求人需要を満たせずに賃金上昇を招いている印象だ。11月5日の米10月雇用統計では平均時給の前年比は9月の4.6%から4.9%へ上昇している。
2月にはパウエル米連銀議長の任期も切れるが、再任するのかどうか、パウエル議長が在任中に利上げ時期前倒しへの姿勢を示すのかどうかも注目される。
もう一つ、注目しておくべきは欧州の感染再拡大であり、ドイツでは1日に5万人前後、英国では4万人前後の増加で年末への混乱拡大も懸念される。中国も絶対数は少ないものの感染拡大がみられて当局の規制が強まっているが、世界的なサプライチェーンの混乱が続く中での世界的なインフレ問題の深刻化が続けば、資源輸入国通貨としての円の下落要因ともなり、ドル円としては米長期債利回り再上昇による上昇圧力と輸入インフレによる円安圧力が両面からかかってくる状況と受け止めるべきところと思われる。

【3〜4か月サイクルの上昇再開感と中長期的な円安規模の再認識】

【3〜4か月サイクルの上昇再開感と中長期的な円安規模の再認識】

ドル円は概ね3か月から4か月周期のサイクルで天井及び底を付けるリズムで推移しているが、今年は1月6日底から4か月弱の4月23日底、3か月強の8月4日底と続き、8月4日底から3か月目の11月9日安値でこのサイクルの底を付けて上昇期に入っている可能性がある。10月20日高値を超えることが条件となるが、既に26日移動平均を割り込んでからV字反転していること、11月10日に当日の高安レンジで1円を超える大陽線により直前3日間の連続陰線による下げ幅を一挙に解消していることを踏まえれば、高値更新から115円超を目指す可能性も出てくるところと思われる。
今年の高値は3月31日、7月2日、10月20日と付けており、3〜4か月サイクルにおける次の高値形成期は1月後半から2月前半にかけての間と想定されるため、当面は小規模な調整安を消化しつつ高値切り上げへ向かいやすいのではないかと思われる。

改めて中長期的な現状を確認すれば、週足レベルにおいては2016年12月高値を起点とした4年強の下降チャンネルを超える最大級の上昇であり、月足レベルでは2015年6月天井を起点とした大きな三角持ち合いの抵抗線を突破しての上昇であり、2016年以降では26週から28週規模の上昇だったところ、今年1月6日底から7月2日高値まで26週の上昇を経て早々に新たな上昇期に入っていることからここ数年の認識で高を括れない円安という位置づけで考えるべき状況と思われる。

以上を踏まえれば、短期的には11月12日午前高値で目先のピークを付けてやや調整気味に下げているところと考えられるが、113円台中盤(113.70円から113.30円)までを下値支持帯とし、12日午前高値114.30円を超えるところからは10月20日高値114.69円、さらに115円台を目指す流れとみる。

【当面の主な予定】

11/15(月)
米中首脳会談(オンライン)
米商務長官、米USTR代表ら日本などアジア歴訪
休場 メキシコ(革命記念日)、ブラジル(共和制宣言記念日)
08:50 (日) 7-9月期 GDP速報値 前期比 (4-6月 0.5%、予想 -0.2%)
08:50 (日) 7-9月期 GDP速報値 年率換算 (4-6月 1.9%、予想 -0.7%)
09:30 (豪) エリス豪中銀総裁補、豪議会出席
11:00 (中) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 4.4%、予想 3.7%)
11:00 (中) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 3.1%、予想 3.0%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 -5.4%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 -2.3%)
13:30 (日) 9月 設備稼働率 前月比 (8月 -3.9%)
13:45 (日) 黒田日銀総裁、記者会見

18:30 (英) ハスケル英中銀委員、講演
19:00 (欧) 9月 貿易収支・季調済 (8月 111億ユーロ、予想 115億ユーロ)
19:00 (欧) 9月 貿易収支・季調前 (8月 48億ユーロ)
19:00 (欧) ラガルドECB総裁、発言
22:30 (米) 11月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (10月 19.8、予想 22.0)
23:30 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、発言

11/16(火)
フィラデルフィア連銀、年次フィンテック会議(11/17まで)
世界経済フォーラム関連イベント(11/18まで、中国天津)
国際エネルギー機関(IEA)月報
09:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
11:30 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
13:30 (日) 9月 第三次産業活動指数 前月比 (8月 -1.7%、予想 0.8%)
16:00 (英) 10月 失業保険申請件数 前月比 (9月 -5.11万件)
16:00 (英) 10月 失業率 (9月 5.2%)
16:00 (英) 9月 失業率・ILO方式 (8月 4.5%、予想 4.4%)

19:00 (欧) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 2.2%、予想 2.2%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 3.7%、予想 3.7%)
22:30 (米) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.7%、予想 1.1%)
22:30 (米) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 0.8%、予想 0.9%)
22:30 (米) 10月 輸入物価指数 前月比 (9月 0.4%、予想 1.0%)
22:30 (米) 10月 輸出物価指数 前月比 (9月 0.1%、予想 1.0%)
23:15 (米) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -1.3%、予想 0.8%)
23:15 (米) 10月 設備稼働率 (9月 75.2%、予想 75.8%)
24:00 (米) 9月 企業在庫 前月比 (8月 0.6%、予想 0.6%)
24:00 (米) 11月 NAHB住宅市場指数 (10月 80、予想 80)
25:10 (欧) ラガルドECB総裁、発言
26:00 (米) リッチモンド連銀、アトランタ連銀、カンザスシティ連銀の各総裁、イベント参加
28:55 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
29:30 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演

11/17(水)
06:45 (NZ) 7-9月期 生産者物価指数 前期比 (4-6月 2.6%)
08:30 (豪) 10月 ウエストパック景気先行指数 前月比 (9月 -0.02%)
08:50 (日) 10月 貿易統計・通関・季調前 (9月 -6228億円、予想 -3200億円)
08:50 (日) 10月 貿易統計・通関・季調済 (9月 -6248億円、予想 -6092億円)
08:50 (日) 9月 機械受注 前月比 (8月 -2.4%、予想 1.8%)
08:50 (日) 9月 機械受注 前年同月比 (8月 17.0%、予想 17.7%)
09:30 (豪) 7-9月期 賃金指数 前期比 (4-6月 0.4%、予想 0.6%)
09:30 (豪) 7-9月期 賃金指数 前年同期比 (4-6月 1.7%、予想 2.2%)
16:00 (英) 10月 消費者物価指数 前月比 (9月 0.3%、予想 0.8%)
16:00 (英) 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 3.1%、予想 3.9%)
16:00 (英) 10月 消費者物価コア指数 前年同月比 (9月 2.9%、予想 3.1%)
16:00 (英) 10月 小売物価指数 前月比 (9月 0.4%、予想 0.8%)
16:00 (英) 10月 小売物価指数 前年同月比 (9月 4.9%、予想 5.7%)

18:00 (欧) ECB金融安定報告
19:00 (欧) 9月 建設支出 前月比 (8月 -1.3%)
19:00 (欧) 9月 建設支出 前年同月比 (8月 -1.6%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (9月 4.1%、予想 4.1%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (9月 2.1%、予想 2.1%)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数・年率換算件数 (9月 155.5万件、予想 158.0万件)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数 前月比 (9月 -1.6%、予想 1.6%)
22:30 (米) 10月 建設許可件数・年率換算件数 (9月 158.9万件、予想 163.0万件)
22:30 (米) 10月 建設許可件数 前月比 (9月 -7.7%、予想 2.8%)
23:10 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
25:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
25:20 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、ウォラーFRB理事、講演
26:40 (米) ウォラーFRB理事、講演
27:00 (米) 財務省20年債入札

11/18(木)
米国・カナダ・メキシコ首脳会議(ワシントン)
未 定 (南) 南ア中銀 政策金利 (現行 3.50%、予想 3.50%)
14:35 (豪) エリス豪中銀総裁補、講演
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 16.00%、予想 15.00%)
22:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 26.7万件、予想 26.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 216.0万人)
22:30 (米) 11月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (10月 23.8、予想 24.0)
24:00 (米) 10月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (9月 0.2%、予想 0.8%)
27:00 (米) 財務省インフレ指数連動10年債入札

11/19(金)
休場 インド(シーク教ナナック生誕日、株式市場のみ休場)
08:30 (日) 10月 全国消費者物価 前年同月比 (9月 0.2%、予想 0.1%)
08:30 (日) 10月 全国消費者物価・生鮮食品除く 前年同月比 (9月 0.1%、予想 0.1%)
08:30 (日) 10月 全国消費者物価・生鮮食品・エネルギー除く 前年同月比 (9月 -0.5%、予想 -0.7%)
09:01 (英) 11月 GFK消費者信頼感 (10月 -17、予想 -18)
16:00 (独) 10月 生産者物価 前月比 (9月 2.3%、予想 1.9%)

16:00 (英) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -0.2%、予想 0.5%)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 -1.3%、予想 -1.9%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 -0.6%、予想 0.6%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (9月 -2.6%、予想 -2.8%)
17:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調済 (8月 134億ユーロ)
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調前 (8月 176億ユーロ)
24:45 (米) ウォラーFRB理事、講演
26:15 (米) クラリダFRB副議長、講演


注:ポイント要約は編集部

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