下値トライ失敗で、再びドル高進行も
〇先週のドル円、112.73まで一時下落し1か月ぶり安値示現、週末にかけ114円台へ上伸
〇下値トライ失敗、今週ドル続伸し115円台乗せか、113-114円台中心とした新レンジ形成か
〇今週発表の米経済指標、10月小売売上高、11月フィラデルフィア連銀製造業景気指数
〇今週はFRB議長人事に関する報道、米地区連銀総裁による講演、15日米中首脳会談に注目
〇レモンド米商務長官とタイ通商代表部(USTR)代表訪日も予定
〇今週のドル/円予想レンジは、112.90-115.10
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、ドルが小じっかり。週のザラ場ベースでは一時112円台と1ヵ月ぶりの安値を示現したものの、下値は攻め切れなかった。
前週末は、バイデン米大統領がパウエルFRB議長とブレイナード理事にそれぞれ面会したことが明らかとなり、近くFRB議長指名人事が発表されるとの思惑が聞かれていた。また、ドローンを使ったイラク首相暗殺未遂事件が起こったことも、そこここで話題になっていたようだ。
そうした状況下、ドル/円は113.35-40円で寄り付いたのち、当初はドル売り先行。1ヵ月ぶりに113円を割り込み、112.73円まで一時下落している。しかし、米金利の動きなどをにらみつつ、下値トライはダマシに終わると流れは反転。週末に掛けてはVの字型の急回復をみせつつ114円台へ。月間高値114.44円に迫るなか、週末NYは114円をわずかに下回った113.90-00円で取引を終え越週となった。
なお、為替市場ではトルコリラなど、なかなか興味深い動きをたどった通貨ペアは少なくなかったが、ハイライトとなると暗号資産(仮想通貨)ビットコインか。10日には一時69000ドル寸前まで上昇し、史上最高値を更新している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「新型コロナの感染拡大」と「FRB情勢」について。
前者は、米ジョンズ・ホプキンス大が10日に、新型コロナの累計感染者数について「2億5000万人を突破した」と発表。世界で感染再拡大の兆しが観測されるなか、とくに欧州地域の警戒感は強い。実際、ドイツは11日に新規感染者が5万人を超えて一日の感染者数としてはこれまでの最多を記録したことが明らかとなった。そうしたこともあり、ドイツのほかデンマーク、オーストリア、オランダなどのように冬の拡大期を前に、規制強化へと踏み切る先も多数観測されている。
対して後者は、まず米金融政策について、たとえばクラリダFRB副議長は「利上げ条件は来年末までに満たされる」、セントルイス連銀総裁「22年に2回利上げを実施する」、シカゴ連銀総裁は「利上げは23年を想定」−−などと発言するなど、週間を通して全体的には強気なトーンが多かった。一方、来年2月で現パウエル氏の任期が切れるFRB議長人事について、当初は再選観測が優勢だったが、先週はブルームバーグが「ブレイナード理事はホワイトハウスを訪れた際に、FRB議長の職について聞き取りを受けた」と報じるなど風向きの変化もうかがえはじめたことが話題に。いずれにしても、政治サイトのポリティコは「バイデン米大統領、25日までにFRB議長人事を決定」と報じており、問題が長期化する可能性は低いのかもしれない。
<< 今週の見通し >>
先週のドル/円相場は、過去1ヵ月近く推移していた113.20-114.70円といったレンジを一時下回るも、終わってみれば結局「ダマシ」。下値トライが失敗に終わったこともあってか、週末に掛けてドルは114円台へと上伸するなど、逆に上値トライの様相が観測されていた。その流れを継ぐ格好で、今週ドルは続伸し115円台乗せなどをうかがうのか、それとも113-114円台を中心とした新レンジを形成するのか、次の方向性をしっかりと見極めたいところだ。
一方、日米欧英などの金融政策を注視しつつも、単純な金利差という点では円を買い進めにくいという基本的な状況に変化なし。そうしたなか、今週も引き続き発表される米経済指標のほか、前述したFRB議長人事に関するニュースや発言に要注意。また、今週はレモンド米商務長官とタイ通商代表部(USTR)代表による訪日や、米中首脳による会談など大きな政治ファクターもいくつか予定されており、そちらも注意を払いたい。
テクニカルに見た場合、ドル/円は先週ドルの下値を試すも失敗に終わった格好で、短期的なリスクは上方向か。月間高値の114.44円や年初来高値114.69円などを意識した動きをまずはたどりそうだ。それらを超えればいよいよ115円乗せも。
しかし、ここ最近はトレンドが長く続かず、猫の目のようにコロコロと変化することも少なくないことがやや気掛かり。一旦崩れれば下落も意外に早く、先週安値112.73円程度までの深押しは想定しておく必要があるかもしれない。
材料的に見た場合、中長期的には、まずは15日に「米中首脳会談」が注目されている「中国情勢」や、クリスマスや年末年始が近づくなか欧州を中心とした感染拡大が気掛かりな「新型コロナ問題」、「日米欧英などの金融政策」−−が注視されている。
そうしたなか今週は、10月の小売売上高や11月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数といった重要な米経済指標が発表される見込みだ。また、週間を通して米地区連銀総裁やFRB理事等による講演などの発言機会も多く、内容次第では波乱要因となりかねないだろう。リスク管理はしっかりしておきたい。
そんな今週のドル/円予想レンジは、112.90-115.10円。ドル高・円安については、まず先週高値の114.30円の攻防に注目で、上抜ければ114.44円や114.69円、115円などを目指す。対するドル安・円高方向は、時間足など短期ベースでは113.70-80円がサポートとして意識され始めている感。割り込んでも買い遅れ筋のビッドが厚い113円台では下げ渋る可能性が高そうだ。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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