ドル円見通し 10月20日高値以降の下降チャンネル支持線を割り込む(21/11/10)

ドル円は11月9日午後に112.70円へ下落、10月20日に付けた年初来最高値114.69円以降の安値を更新、この間の下げ幅は1.99円に拡大した。

ドル円見通し 10月20日高値以降の下降チャンネル支持線を割り込む(21/11/10)

ドル円見通し 10月20日高値以降の下降チャンネル支持線を割り込む

〇ドル円、11/9午後112.70へ下落、10/20年初来高値114.69以降の安値を更新
〇米生産者物価指数、前年同月比で全体8.6%上昇と高止まり示す
〇主要国中銀は早期利上げ姿勢示さず、見通しに反するインフレ懸念拡大しやすい状況
〇11/9米長期債利回りはいずれも低下、株安による債券買いとインフレ連動債買い拡大が背景か
〇113.10超える場合、113.25から113.50にかけてのゾーンを試すとみる
〇112.70割れからは112.50、112.25、112.00を順次試す流れ、

【概況】

ドル円は11月9日午後に112.70円へ下落、10月20日に付けた年初来最高値114.69円以降の安値を更新、この間の下げ幅は1.99円に拡大した。9日夜の米生産者物価指数発表直後にはいったん113.10円まで戻したものの113円台を維持できずに深夜には112.72円へ反落、安値更新は回避しているものの10月20日から11月8日までの間に見られた概ね1円前後規模での騰落を繰り返しながらやや右肩下がりで推移してきた下降チャンネルにおける安値を結んだ下値支持線から転落しており、下落角度及び規模が一段と加速している印象だ。

【米PPIは高止まり、インフレ懸念拡大だが米長期債利回りは低下】

11月9日夜に米労働省が発表した10月の生産者物価指数は前月比0.6%上昇で市場予想と一致したが、9月の0.5%を上回った。エネルギーと食料品を除いたコア指数の前月比は0.4%上昇で市場予想の0.5%を若干下回ったが9月の0.2%から伸びが加速した。前年同月比では全体が8.6%上昇となり市場予想と一致したが9月の8.6%と変わらず高止まりを示し、コア指数の前年同月比も6.8%で予想と一致、9月の6.8%上昇と同じだった。

米連銀は物価上昇はまだ一時的な要因によるものとして警戒しつつも早期の利上げでインフレ抑制に動く姿勢を示していない。9月時点では利上げ開始時期予想を2023年から2022年に前倒しし、11月3日のFOMCでは11月からのテーパリング(量的緩和政策による資産購入規模の縮小)開始を決定して来年半ばに終了させる方針を示したもののテーパリング完了から直ちに利上げすることはないと強調した。
10月28日の日銀、ECB、11月2日の豪中銀、4日夜の英中銀と主要国中銀の金融政策が相次いだが、いずれも物価上昇を警戒しつつも徐々に落ち着くとして早期利上げ姿勢を示さなかったが、これら中銀の見通しに反してインフレが進行してゆくのではないかとの懸念が市場心理的には拡大しやすい状況だ。

11月9日のNYダウは前日比112.24ドル安、ナスダック総合指数は同95.82ポイント安と下落した。いずれも連日の史上最高値更新に対する利益確定売りに圧されたこと、バイデン政権による1兆ドル規模のインフラ投資計画の議会通過で目先の買い材料が一巡したことが背景だがインフレ懸念も圧迫要因になっている印象だ。
11月9日の米10年債利回りは前日比0.05%低下の1.44%、30年債利回りは同0.07%低下の1.82%、利上げ時期に敏感な2年債利回りは同0.03%低下の0.42%といずれも低下した。株安による債券買いでの利回り低下反応と共に、インフレ進行懸念が利回り上昇には向かわずにインフレ連動債への買いが拡大したことで全体の利回り低下を招いているようだ。10年物物価連動国債(TIPS)利回りは一時マイナス1.21%へ低下して8月初旬以来の低水準となり、30年ものTIPS利回りもマイナス0.592%となり過去最低水準となった。米長期債利回り低下がドル円の下落を加速させている。

【10月20日以降の下降チャンネルからも下抜ける】

10月20日高値114.69円を起点として1円前後の騰落を繰り返しながら戻り高値を切り下げて安値も切り下がる下降チャンネル型でドル円は下落してきた。11月8日深夜安値で113.06円を付けたところでこの下降チャンネルの下値支持線に到達したのだが、9日午後への下落で支持線から転落しており、これまでの騰落レベル、下降チャンネルでの下落角度を超える動きに入ってきた。
現状は8月4日安値108.71円と9月15日安値109.09円をダブル底とした上昇が10月20日高値で当面のピークとなっての調整期と思われるが、調整規模としては3月31日高値4月23日安値までの下落幅3.50円、7月2日高値から8月4日安値までの下落幅2.94円に匹敵する規模へ発展しかねないところとなってきた印象だ。

日足チャートではすでに26日移動平均を割り込んでおり、先週から連続の日足陰線となっているが特に11月5日から8日、9日への3日連続陰線=三羽烏により下げ足が速まっている印象だ。
9月15日安値からの上昇幅に対する3分の1押しラインの112.82円をすでに割り込んだため、半値押しラインの111.89円を試す可能性、7月2日高値から8月4日安値への下げ幅並みなら111.75円、4月23日への下げ幅並みなら111.19円等へと下値目途が切り下がる可能性も考えておく必要がありそうだ。上昇再開は10月20日高値からの下げ幅の半値以上を解消する必要があると考える。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、11月3日夕安値を前回のサイクルボトム、11月4日夕高値を同サイクルトップとして弱気サイクル入りしている。ボトム形成期は11月2日夕安値を基準とすれば5日夜から9日夕にかけての間と想定されるため、11月9日午後安値を直近のサイクルボトムとして反騰入りする可能性も考えられるが、既に6日未明安値でいったんボトムを付けて底割れから新たな弱気サイクル入りしている可能性も高そうだ。
11月9日夜高値113.10円を超える場合は9日午後安値をボトムとして戻しに入る可能性があるとみて10日の日中から11日夕にかけての間への上昇を想定するが戻りは短命の可能性があると注意し、この間の安値を更新するところからは次の弱気サイクル入りとして12日から16日にかけての間への下落を想定する。
11月9日夜高値を超えずに安値更新が続く場合は既に弱気サイクル入りしているとみて11日未明から15日朝にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月4日夜の反落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落してその後も両スパン揃っての悪化が続いているが、9日午後安値からの下げ渋りで遅行スパンは好転しやすい位置にある。9日夜高値を超えるところからは戻しに入るとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返せないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とする。
60分足の相対力指数は11月9日午後の下落時に20ポイントへ低下してから40ポイント台へ戻している。50ポイント台を回復、維持して行く場合は戻りを試す流れとみて60ポイント前後への上昇を想定するが、40ポイント以下での推移が続くようなら、そのままもう一度20ポイント前後を試す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月9日午後安値112.70円を下値支持線、11月9日夜高値113.10円を上値抵抗線とする。
(2)113.10円を超える場合はいったん戻しに入るとみて113.25円から113.50円にかけてのゾーンを試すとみるが、113.50円手前は戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)112.70円割れからは112.50円、112.25円、112.00円を順次試す流れとみる。また9日午後安値を割り込んだ後も113円以下での推移なら11日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

11/10(水)
10:30 (中) 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 0.7%、予想 1.4%)
10:30 (中) 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 10.7%、予想 12.4%)
16:00 (独) 10月 消費者物価指数改定値 前月比 (9月 0.5%、予想 0.5%)
16:00 (独) 10月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (9月 4.5%、予想 4.5%)
18:30 (欧) エルダーソンECB理事、講演
22:30 (米) 10月 消費者物価指数 前月比 (9月 0.4%、予想 0.5%、予想 0.6%)
22:30 (米) 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 5.4%、予想 5.8%)
22:30 (米) 10月 消費者物価コア指数 前月比 (9月 0.2%、予想 0.4%)
22:30 (米) 10月 消費者物価コア指数 前年同月比 (9月 4.0%、予想 4.3%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 26.9万件、予想 26.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 210.5万人、予想 209.5万人)
24:00 (米) 9月 卸売売上高 前月比 (8月 -1.1%、予想 0.4%)
27:00 (米) 財務省30年債入札
28:00 (米) 10月 月次財政収支 (9月 -615億ドル、予想 -1790億ドル)

11/11(木)
休場、米国(ベテランズデー、政府・為替・債券は休場、株式・商品は通常取引)
休場、カナダ(戦没者追悼日、株式通常取引、商品、債券休場))
中国、「独身の日」ネット通販バーゲンセール
08:50 (日) 10月 国内企業物価指数 前月比 (9月 0.3%、予想 0.4%)
08:50 (日) 10月 国内企業物価指数 前年同月比 (9月 6.3%、予想 7.0%)
09:00 (NZ) 11月 ANZ企業信頼感 (10月 -13.4)
09:01 (英) 10月 英RICS住宅価格指数 (9月 68、予想 65))
09:30 (豪) 10月 新規雇用者数 (9月 -13.80万人、予想 5.00万人)
09:30 (豪) 10月 失業率 (9月 4.6%、予想 4.7%)

16:00 (英) 9月 月次GDP 前月比 (8月 0.4%、予想 0.4%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP速報値 前期比 (4-6月 5.5%、予想 1.5%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP速報値 前年同期比 (4-6月 23.6%、予想 6.8%)
16:00 (英) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 0.8%、予想 0.1%)
16:00 (英) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 3.7%、予想 3.2%)
16:00 (英) 9月 製造業生産指数 前月比 (8月 0.5%、予想 0.1%)
16:00 (英) 9月 貿易収支・物品 (8月 -149.27億ポンド、予想 -143.00億ポンド)
16:00 (英) 9月 貿易収支・全体 (8月 -37.16億ポンド、予想 -31.00億ポンド)
25:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 4.75%、予想 5.00%)

注:ポイント要約は編集部

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