ドル円見通し 10月20日高値以降の安値を更新、右肩下がりの下降チャンネル形成
〇ドル円、11/8深夜113.06まで下落、113円割れは回避するも10/20午前高値114.69以降の安値を更新
〇パウエル米連銀議長講演、景気見通し・金融政策への言及なく、他の高官の発言もサプライズ感なし
〇NYダウ・ナスダックともに史上最高値更新、米長期債利回りは週末の急落からややリバウンドで上昇
〇ドル円、10/20から下降チャンネル形成、チャンネルの範囲で調整を消化するか試される
〇113.40以下での推移中は下向きとし、113.00割れからは112.75を試す流れとみる
〇113.40超えからは11/8昼高値113.66試しとし、高値更新からは11/5夜高値114.02を試す流れとみる
【概況】
ドル円は11月8日深夜安値で113.06円まで下落、113円割れは回避しているものの年初来高値である10月20日午前高値114.69円以降の安値を更新している。
11月4日未明の米FOMCが11月からのテーパリング開始を決定したものの量的緩和が来年半ばで終了しても利上げを急がないとしたことで、いったんドル高反応となった後はドル安へと風向きが変わり、ドル円は4日夕高値114.27円から下落に転じた。
11月5日夜の米10月雇用統計は非農業部門就業者増加も失業率も予想以上の改善となったもののFOMCで示された利上げを急がない姿勢は変わらないとみてドル安基調を継続して6日未明には113.28円まで安値を切り下げた。
11月8日は主要な米経済指標の発表はなく、米連銀高官らの発言もいくつかあったが既出の内容で反応は薄く、NYダウやナスダックが史上最高値を更新する中でユーロやポンド、豪ドルなどが週末からの持ち直しを続けたことでドル円も安値を更新して113円台を維持できるのか試すところへと水準を下げている。
【パウエル米連銀議長講演、景気見通しや金融政策への言及なし】
11月8日にパウエル米連銀議長の講演があったものの景気見通しや金融政策への言及はなかった。他の高官による発言も特にサプライズ感はなかったが、いずれもインフレはいずれ沈静化するとの見方であり、利上げはしばらくないという印象付けだった。
米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は「インフレについてはサプライチェーンの目詰まりが解消すれは来年に緩和する」との見通しを示し、「量的金融緩和策の完了まで利上げはしない」との姿勢を繰り返した。
米シカゴ連銀のエバンズ総裁は「利上げ時期は経済状況次第」だが「今後しばらくは低金利環境にある」と強調、インフレについても「供給逼迫に対する調整が終わり需給が正常化してインフレは減速する」との見通しを示した。
クラリダ副議長は米連銀が利上げ開始の条件としている雇用最大化について「失業率が9月FOMCでの予想通りに3.8%へ低下すれば2022年末までには条件が満たされる」と述べ、インフレについては「物価高をもたらしている需給不均衡は労働市場の改善とサプライチェーンの正常化でいずれ解消される公算が大きい」と述べた。
【株高継続】
NYダウは11月8日に前日比104.27ドル高と上昇、週末に続いて史上最高値を更新、ナスダック総合指数も10.77ポイント高と小幅上昇だったが史上最高値を更新した。米連銀が利上げを急がない姿勢にあることに加え、バイデン政権による1兆ドル規模のインフラ投資法案が米議会を通過し、今年3月のコロナ対策としての1.9兆ドルの経済対策に次ぐ大規模政策がまとまったことが株高を助長している。
11月8日の米長期債利回りは週末の急落からややリバウンドで総じて上昇。10年債利回りは前日比0.04%上昇の1.49%、30年債利回りは変わらずの1.89%、2年債利回りは0.04%上昇の0.45%だった。独英の10年債利回りも下げ渋りから反発、豪10年債利回りは続落したが、総じて下げ渋りなものの下落基調の範囲という印象。
【10月20日からは下降チャンネルでの調整】
10月20日高値以降、10月23日未明安値113.39円へ1.30円の下落、26日深夜高値114.30円から28日深夜安値113.24円へ1.06円の下落、11月1日夕高値114.44円まで戻してから11月2日夕安値113.45円へ0.99円の下落、11月4日夕高値114.27円から11月8日深夜安値113.06円まで1.21円の下落であり、おおむね1円前後の値幅での騰落を繰り返している。10月20日高値と11月1日夕高値を結ぶ上値抵抗線と、10月23日未明安値、28日深夜安値及び11月8日深夜安値を結ぶ下値支持線はほぼ平行線となり、下降チャンネルを形成している状況だ。
8月4日安値108.71円と9月15日安値109.09円をダブル底として上昇してきたが、10月20日高値で当面のピークを付けて調整期に入っているところだが、当面のピークを付けての下落期としては3月31日高値から4月23日安値まで3.50円の下落、7月2日高値から8月4日安値まで2.94円の下落が発生しており、今回は現状の緩やかな下降チャンネルの範囲で調整を消化できるか、3月31日や7月2日の高値からの調整期並みの下げ幅へと発展するのか試されるところだ。主要国中銀の金融政策決定会合が一巡したがいずれも利上げを急がない姿勢の強調だったことで欧米豪の長期債利回りが低下しているため、長期金利面ではドル円が下げやすい局面といえる。
9月15日安値からの上昇幅に対する3分の1押しが112.82円、半値押しが111.89円、8月4日への下げ幅並みなら111.75円、4月23日への下げ幅並みなら111.19円等が下値目途として考えられるところだ。上昇再開は10月20日高値からの下げ幅の半値以上を解消するところからと考える。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、11月4日夕高値を起点として弱気サイクル入りしている。ボトム形成期は11月2日夕安値を基準とすれば5日夜から9日夕にかけての間と想定されるので既に反騰注意期ともみられるが、6日未明から小反発した後に一段安しているため、6日未明安値を基準とすればボトム形成期が11日未明から15日朝にかけての間へ長引く可能性もあると注意する。強気転換は戻り高値切り下がりパターンが解消される8日昼高値113.66円を超えるところからか、ないしは一段安したところから0.50円以上の反騰となるところからとする。
60分足の一目均衡表では11月4日夜の反落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したがその後も両スパン揃っての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。
60分足の相対力指数は11月8日深夜への安値更新に際しては指数のボトムも切り下がっているのでまだ強気逆行は見られず、50ポイント以下での推移中はもう一段安余地ありとみる。強気転換は55ポイントを超えてその後も50ポイント以上での推移が続く展開が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、113.00円を下値支持線、11月8日昼高値113.66円を上値抵抗線とする。
(2)113.40円以下での推移中は下向きとし、113.00円割れからは112.75円を試す流れとみる。112.75円以下は反発注意圏とするが勢い付く場合は112.50円台へ下値目途を引き下げる。また113.40円以下での推移が続くなら10日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)113.40円超えからは8日昼高値113.66円試しとし、高値更新からは5日夜高値114.02円を試す流れとみる。ただしその場合は113.80円以上を反落警戒圏とみてその後に113.40円を割り込むところからは下げ再開とみる。
【当面の主な予定】
11/9(火)
09:30 (豪) 10月 NAB企業景況感指数 (9月 5)
14:00 (日) 10月 景気ウオッチャー現状判断DI (9月 42.1、予想 48.5)
14:00 (日) 10月 景気ウオッチャー先行判断DI (9月 56.6、予想 57.0)
16:00 (独) 9月 貿易収支 (8月 107億ユーロ、予想 160億ユーロ)
16:00 (独) 9月 経常収支 (8月 118億ユーロ、予想 170億ユーロ)
19:00 (独) 11月 ZEW景況感 (10月 22.3、予想 20.0)
19:00 (欧) 11月 ZEW景況感 (10月 21.0)
21:50 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
22:00 (欧) ラガルドECB総裁、フォーラムの開会挨拶
22:30 (米) 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 0.5%、予想 0.6%)
22:30 (米) 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 8.6%、予想 8.6%)
22:30 (米) 10月 生産者物価コア指数 前月比 (9月 0.2%、予想 0.5%)
22:30 (米) 10月 生産者物価コア指数 前年同月比 (9月 6.8%、予想 6.8%)
23:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、討論会参加
23:00 (米) パウエル米連銀議長、講演
25:00 (英) ベイリー英中銀総裁、討論会参加
25:35 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、討論会参加
27:00 (米) 財務省10年債入札
27:30 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会参加
11/10(水)
08:30 (豪) 11月 ウエストパック消費者信頼感指数 (10月 104.6)
08:50 (日) 10月 マネーストックM2 前年同月比 (9月 4.2%、予想 4.0%)
10:30 (中) 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 0.7%、予想 1.4%)
10:30 (中) 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 10.7%、予想 12.0%)
16:00 (独) 10月 消費者物価指数改定値 前月比 (9月 0.5%、予想 0.5%)
16:00 (独) 10月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (9月 4.5%、予想 4.5%)
18:30 (欧) エルダーソンECB理事、講演
22:30 (米) 10月 消費者物価指数 前月比 (9月 0.4%、予想 0.5%、予想 0.6%)
22:30 (米) 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 5.4%、予想 5.8%)
22:30 (米) 10月 消費者物価コア指数 前月比 (9月 0.2%、予想 0.4%)
22:30 (米) 10月 消費者物価コア指数 前年同月比 (9月 4.0%、予想 4.3%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 26.9万件、予想 26.6万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 210.5万人)
24:00 (米) 9月 卸売売上高 前月比 (8月 -1.1%)
27:00 (米) 財務省30年債入札
28:00 (米) 10月 月次財政収支 (9月 -615億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2021.11.09
ドル円、約1ヵ月ぶり安値圏へ下落するも113円台は死守。反発リスクに警戒(11/9朝)
週明け8日(月)のドル円相場は上値の重い展開。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。