『米CPIと米当局者発言に注目。ドル高リスクに引き続き警戒』
〇今週のドル円、週明け早々週間高値114.46(10/20以来、約2週間ぶり高値圏)まで上昇
〇その後米FOMCを控えたポジション調整や、株式、コモディティの軟調推移に一時113.46まで反落
〇さらに、米FOMCのタカ派的な内容、10月雇用統計の良好な結果に週末一時114.03まで持ち直す
〇終盤は週末前のポジション調整、米金利急低下が重石となり、週間安値113.31まで値を崩す
〇ユーロドル、週央1.1617まで上昇後、週末にかけ約1年3ヵ月ぶり安値1.1513まで急落
〇英中銀の予想外のハト派姿勢によるポンドの急反落、米雇用統計の力強い結果が重石
〇ドル円週末にかけ急落するもテクニカルの地合い強く、続落余地は限定的
〇ファンダメンタルズもドル円相場上昇を連想させる材料が増えつつある
〇来週は消費者物価指数、ミシガン大消費者信頼感指数等の米指標、米当局者発言に注目集まる
〇ドル円相場の反発をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):112.50ー114.50、(EURUSD):1.1450−1.1650
今週のレビュー(11/1−11/5)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初113.97で寄り付いた後、@衆院選で自民党が単独過半数を獲得したこと(一部で過半数に届かないとの懸念もあったことからマーケットはポジティブに反応)や、A上記@を背景とした日経平均株価の急上昇、B中国10月財新製造業PMI(結果50.6、予想50.0)の良好な結果、C世界的な株高を背景としたリスク選好の円売り圧力、D日米金融政策の方向性の違いに着目したドル買い・円売り圧力が支援材料となり、週明け早々に週間高値114.46(10/20以来、約2週間ぶり高値圏)まで上昇しました。しかし、10/20に記録した直近高値114.71をバックに伸び悩むと、E米FOMCを控えたポジション調整や、F株式市場の冴えない動き、Gコモディティ価格の軟調推移(原油や鉄鉱石など資源価格が軒並み下落)、H上記FGを背景としたリスク回避の円買い圧力が重石となり、翌11/2にかけて、一時113.46まで反落しました。
もっとも、10/28に記録した安値113.25をバックに下げ渋ると、I米10月ADP雇用統計(結果57.1万人、予想40.0万人)及び、J米10月ISM非製造業景況指数(結果66.7、予想62.0、※1997年の統計開始以来最高)の力強い結果や、
K米FOMCのタカ派的な内容(11月から月間ペースで米国債100億ドル、住宅ローン担保証券50億ドルの削減を決定した他、声明文中のインフレに対する表記を従来までの「一時的な要因を広く反映」という表現から「一時的であると見込まれる要因を広く反映」に変更)、L米主要株価指数の底堅い動き(テーパリング決定でも米主要株価指数が堅調に推移→テーパータントラム発生懸念の後退)、M米10月非農業部門雇用者数(結果53.1万人、予想45.0万人)および、N米10月失業率(結果4.6%、予想4.7%)の良好な結果が支援材料となり、週末にかけて一時114.03まで持ち直す場面も見られました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、O週末前のポジション調整や、P米金利急低下に伴うドル売り圧力が重石となり、11/5米国時間午後にかけて、週間安値113.31まで値を崩しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間11/6午前5時00分現在)では、113.38前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1559で寄り付いた後、@欧州株の堅調推移や、A上記@を背景としたリスク選好のドル売り・円売り圧力、B英仏間における漁業権問題の深刻化(対英ポンドでのユーロ買い圧力)、Cドイツの大衆紙ビルトによるラガルドECB総裁批判(ラガルド総裁がインフレ進行を容認し、一般世帯の所得や貯蓄を目減りさせているとの批判記事→金融緩和政策に対する不満の高まり)、D米長期金利の伸び悩み、EパウエルFRB議長による記者会見でのハト派的な発言(インフレは一過性との認識を維持)が支援材料となり、週央にかけて、週間高値1.1617まで上昇しました。
しかし、一目均衡表転換線や基準線に続伸を阻まれると、F欧米金融政策の方向性の違い(ラガルドECB総裁は11/3に「来年利上げする可能性は非常に低い」と発言)や、Gドイツ9月製造業受注(結果9.7%、予想11.3%、※前年同月比)および、Hユーロ圏10月サービス業PMI改定値(結果54.6、予想54.7)の冴えない結果、I英ポンドの急反落(英ポンドの下落が欧州通貨安に波及)、J米雇用統計の力強い結果が重石となり、週末にかけて、年初来安値1.1513(昨年7/22以来、約1年3ヵ月ぶり安値圏)まで急落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間11/6午前5時00分現在)では、1.1567前後で推移しております。
来週の見通し(11/8−11/12)
<ドル円相場>
ドル円は週明け11/1に約2週間ぶり高値114.46まで上値を伸ばすも、10/20に記録した約4年ぶり高値114.71に届かず失速すると、週末にかけて再び113.31まで反落しました(上値の重さが意識されるチャート形状)。とは言え、強い買いシグナルを示唆する三役好転や、移動平均線のパーフェクトオーダー、ダウ理論の上昇トレンドが全て成立している事実を踏まえれば、テクニカル的に見て、続落余地は限定的(上昇トレンド継続)と判断できます(足元の下落は上昇トレンドの過程で見られる一時的な押し目→ここからの更なる下落は容易ではない)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違い(テーパリングを決定し、来年7月頃の利上げ再開が織り込まれる米国と、金融緩和脱却の糸口すら掴めていない日本との金融政策格差)や、A米主要株価指数の堅調推移(米テーパリング開始でも米株が底堅さを維持。2013年のようなテーパータントラムが発生していないことに対する安堵感)、B黒田日銀総裁による円安容認観測(同氏は先週、「現時点で若干の円安だが、これが悪い円安とか日本経済にとってマイナスになるということはない」「日本経済に総合的にプラスであることは確実」「実質実効為替レートの水準について具体的なノルムがあるわけではない」と発言)、C世界的なスタグフレーション懸念(世界的に米ドルへの資金回帰の流れが強まるシナリオと、資源インフレ発生に伴う円の実質金利低下の組み合わせ)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。
こうした中、来週は米経済指標(11/10の米10月消費者物価指数や11/12の米11月ミシガン大消費者信頼感指数)に加えて、複数の米当局者発言(クラリダFRB副議長、パウエルFRB議長、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、ボウマンFRB理事、シカゴ連銀エバンス総裁、セントルイス連銀ブラード総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁など)に注目が集まります。米10月消費者物価指数が市場予想を上回る場合や、ブラックアウト期間明けの米当局者よりタカ派的な発言が相次ぐ場合などには、米早期利上げ観測再燃→米長期金利再上昇→米ドル高の経路でドル円には強い上昇圧力が加わることが予想されます。また、米11月ミシガン大消費者信頼感指数が市場予想を上回る場合には、コロナ明けの米景気回復期待の高まりを背景に、株高→リスク選好の円売りの経路で、ドル円やクロス円に上昇圧力が加わるものと推察されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の反発をメインシナリオとして予想いたします(ポジション調整一巡後の反発リスクに要警戒)。
来週の予想レンジ(USDJPY):112.50ー114.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は10/28に記録した約1ヵ月ぶり高値1.1693をトップに反落に転じると、今週末にかけて、約1年3ヵ月ぶり安値となる1.1513まで下落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転や、移動平均線のパーフェクトオーダーも継続するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを印象付けるチャート形状となっております(上値の重さを再確認→心理的節目1.1500割れに要警戒)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@欧米金融政策の方向性の違い(テーパリングを決定し、来年7月頃の利上げ再開が織り込まれる米国と、金融緩和の長期化が見込まれる欧州との金融政策格差。ラガルドECB総裁は今週、「来年利上げする可能性は非常に低い」と発言)や、A欧州経済の先行き不透明感(資源価格上昇に伴うスタグフレーション懸念)、Bドイツを巡る政局不透明感(連立政権の組み合わせに係る不確実性)、C英国とフランスの漁業権を巡る対立懸念など、ユーロドルの上値を抑制する材料が増えつつあります。
こうした中、来週は欧州経済指標(11/9のドイツ11月ZEW景況感調査や、11/12のユーロ圏9月鉱工業生産など)に加えて、複数の欧州当局者発言(レーンECB専務理事、パネッタECB専務理事、フィンランド中銀レーン総裁、ラガルドECB総裁、オランダ中銀クノット総裁、シュナーベルECB専務理事、エルダーソンECB専務理事など)に注目が集まります。欧州経済指標が冴えない結果となる場合や、欧州当局者よりハト派的な発言が相次ぐ場合などには、欧州経済の先行き不安を背景としたユーロ売り圧力と、欧米金融政策の方向性の違いに着目したユーロ売り・ドル買い圧力が組み合わさることで、ユーロドルにはもう一段強い下押し圧力が加わるものと推察されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(1.15台前半から1.11台半ばは真空地帯となっている為、心理的節目1.1500を割り込んだ場合には、一気に下げ足を速める恐れあり)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1450−1.1650
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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