ドル円見通し 米FOMC後のドル全面高に加えてクロス円で円全面高
〇ドル円、6/17深夜110.15まで急落、FOMCからの急騰幅の半値以上を解消
〇6/17夜にかけて米長期債利回り反転低下、クロス円全般の下落による円高感により、ドル円下落
〇対ユーロ、ポンドでは米債利回り低下でもドル売りとならず、株価続落のリスク回避感もあり大幅続落
〇今回のFOMC後の市場反応の推移、今晩のNY市場と週明け早々の動きで見定める必要あり
〇110.50超えからは上昇再開とみて、6/17午前高値110.81超えを目指す流れとみる
〇110.15割れから続落に入る場合は110.00及び109.90前後を試すとみるが、110円以下は反発注意
【概況】
ドル円は6月17日未明の米連銀FOMCの声明発表及び議長会見を強気サプライズとして16日夜安値109.79円から17日午前高値110.81円まで1円を超える急伸となったが、その後は伸びず、17日夜はドルストレートでのドル全面高が続く中でクロス円の大幅下落や米長期債利回り低下により深夜安値110.15円まで急落してFOMCからの急騰幅の半値以上を解消した。
6月17日未明に米連銀FOMCでは政策金利のFFレート誘導基準と量的緩和政策を現状維持としたもののFOMCメンバーの利上げ時期予想が前倒しとなり付利や翌日物レポレート等が引き上げられたことと、量的緩和縮小の議論開始が議長会見で明言された事で米長期債利回りが急上昇してドル全面高となり、ドル円は米長期債利回りの急上昇を見て15日夜高値を超えてから買いの連鎖反応で急伸した。しかし、17日夜にかけては米長期債利回りが反転低下となりFOMC後の上昇分を解消する逆流となったもののドル高は止まらずにユーロやポンド、豪ドル等が総じて一段安へと大幅続落した。その中でクロス円全般の下落による円高感と米長期債利回りが低下したことでドル円も下落に見舞われたようだ。
米労働省が発表した新規失業保険申請は前週比3万7000件増の41万2000件で市場予想の35万9000件を上回って7週ぶりに増加した。失業保険受給者総数は週間で351万8000人となり前週比1000人増で市場予想の343万人を上回った。
米フィラデルフィア連銀の6月製造業景況指数は30.7で5月の31.5から低下して市場予想値の31.0を下回った。また米コンファレンス・ボードの5月景気先行指数は前月比1.3%上昇の114.5となり市場予想と一致した。
ECBのレーン専任理事は17日、通信社のインタビューで「ECBが9月の定例理事会でパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を通じた資産購入の縮小時期について議論するのは時期尚早となる可能性がある」と述べた。米連銀の縮小議論開始との対比ではユーロ売り材料にもなっているが、今後は主要中銀の金融緩和姿勢への変化と米連銀の姿勢との比較が為替市場動向には重要となってくるだろう。
【米長期債利回りが反転低下するもユーロやポンドの大幅下落続く】
米10年債利回りはFOMC後に1.59%へ急伸したものの、17日夜にかけてはFOMC反応での債券売り・利回り上昇が一巡して債券買い戻し・利回り低下へ向かったのだが、同時に独10年債利回り等も急低下したため、欧米長期債利回り格差ではドル売りに向かえず、NYダウが前日比210.22ドル安となり6月14日から4日続落となったことでのリスク回避感も加わったためにユーロやポンドは大幅続落した。
ドルストレートでのドル高継続によりクロス円全般が大幅下落したが、クロス円での円高がドル円においても優勢となり、米長期債利回り低下により17日未明からの強気の梯子が外されたことでドル円は急落に見舞われる格好となった。
米10年債利回りは一時は1.47%台へ急落して17日未明からの急騰前水準の1.48%をいったん割り込んだが終盤は1.51%まで戻した。しかし、米連銀による量的緩和縮小準備への着手、利上げ時期の前倒し姿勢を踏まえて長期債利回りの再上昇傾向は続くとすれば、一時的な長期債利回り低下でドル円が下げるところは押し目買いされて次の上昇期入りの起点となる可能性もあるところと思われる。ただし、金融市場全般がやや楽観的に推移してきた流れが今回のFOMCをきっかけに楽観の後退となっていったん手仕舞いに向かう流れとなれば、ドル円も3月31日高値110.96円と6月17日高値110.81円をダブルトップとして下落期に入る可能性も否定できないところだ。
FOMC後の市場反応は、発表直後に材料消化となるケース、当日夜のNY市場でブレーキがかかって流れがもとに戻るか落ち着くケース、トレンド発生で継続してゆくケースがある。また週末から週明けにかけては市場のセンチメントも落ち着いて週明けから揺れ返しに入るケースもある。今回の反応がどう推移してゆくのか、今晩のNY市場と週明け早々の動きで見定める必要があるだろう。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
4月23日安値以降の上昇はジグザグの展開で戻り高値を切り上げてきた。6月7日安値109.17円から6月17日高値110.81円への上昇幅は1.64円であり、5月25日安値から6月4日高値への1.78円や、4月23日安値から5月3日高値への1.75円等と同レベルであり、ジグザグ上昇での高値を付けていったん1円を超える調整安でジグザグの安値形成へ向かう可能性がある。
米長期債利回りの急上昇とその一服におけるドル円の急伸と反落の前例としては、5月28日にかけて1.64円の上昇後に0.88円の反落を入れたものの持ち直して6月4日高値まで上昇幅を1.78円へ拡大した時に見られる。今回も110円台を維持して110.50円を超える反騰に入れば前例のように高値をもう一度切り上げる可能性もあるところと思われる。
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、6月11日早朝安値から4日目となる16日夜安値を底として一段高に入った。高値形成期は18日夕から22日夕にかけての間と想定されるのでまだ110.50円超えからの上昇再開余地ありとみるが、17日深夜安値110.15円を割り込む場合は16日夜安値109.79円試しへ向かう可能性もあると注意する。
60分足の一目均衡表では17日深夜への反落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落しつつある。両スパン揃って悪化の場合は下向きとするが、先行スパン突破からは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試しと一段高へ向かう上昇を想定する。
60分足の相対力指数は80ポイント到達から40ポイントまで急低下したがその後は下げ渋りとなっている。50ポイント超えからは上昇再開の可能性ありとみるが、40ポイント割れから続落にお場合は30ポイント割れを試す流れとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.15円を下値支持線、110.50円を上値抵抗線とする。
(2)110.15円割れを回避するか、わずかに割り込んでも回復するうちは反騰余地ありとし、110.50円超えからは上昇再開とみて17日午前高値110.81円超えを目指す流れとみる。高値更新の場合は111円到達を目指すとみる。また110.15円以上での推移なら週明けも反発余地ありとし、110.50円超えでの推移なら週明けは高値更新へ進みやすいとみる。
(3)110.15円割れから続落に入る場合は110.00円及び109.90円前後を試すとみるが110円以下は反発注意とし、その後に110.30円を超えるところから上昇再開とする。ただし急落商状の場合は16日夜安値109.79円を試す流れとし、110円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいものと予想する。
【当面の主な予定】
6/18(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
15:00 (独) 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 0.8%、予想 0.7%)
15:00 (英) 5月 小売売上高 前月比 (4月 9.2%、予想 1.6%)
15:00 (英) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 42.4%、予想 29.0%)
15:00 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前月比 (4月 9.0%、予想 1.5%)
15:00 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (4月 37.7%、予想 27.3%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
17:00 (欧) 4月 経常収支・季調済 (3月 178億ユーロ)
17:00 (欧) 4月 経常収支・季調前 (3月 310億ユーロ)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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